変化の連鎖は、10年前のあの日から   作:七人の母

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3発売日が3/23に延期になりましたね。無論予約はしました。

アトリエでの話し合い→ボオス達への説明。いつものことながら、色々原作より話が早いです。
今回はクラウディア視点→アルム視点です。


理由は有る、決意もした、準備はこれから

「さて、まず淡水化装置についてだが…これはもう必要な物は解っている。そうだな、タオ?」

「うん。えーっと…あったあった。この「超鋼ギア」っていうのを3つ揃えれば直せるよ」

「ん-…うん、思った通りの素材で作れそう。数も三つ分あったはずだし、これで淡水化装置の方はOKね」

 

クーケン島の地下を調査してすぐに、私達はアトリエで現状の確認をした。まず島の水源の淡水化装置は今からでも直せるみたいだから、そこは一安心だね。

…というかタオ君、もしかして本の内容全部記憶してるの?そうじゃなかったらそんなすぐにこれが必要って解らないと思うけど…なんていうか、凄くない人が一人もいないなあ、私の友達。

 

「で、次は核の方だが…リラ」

「構わん、こいつ等の為だ。それに、私達が何も言わなくともそこにたどり着いていただろうからな」

「…だろうな」

 

えっと、核の為に必要な物を教えるのに何でリラさんに…あっ。

 

「お前達、覚えているな?何のためにクリント王国がいくつもの『門』を開いたのか」

「…錬金術の為の、資源が欲しかったから」

 

確かに、クリント王国があんなことをしてまで欲しがったものなら核を造れるかもしれないけど、でも…

 

「でも、それだとクリント王国の奴らと同じことをすることになるじゃねえか!」

「お前達の故郷を救うためだ。そこに拘っている場合ではない」

 

…強いなあ、リラさん。強くて優しい、凄い人。

 

「でも、それならそれでフィルフサが周りに居る状況で探さなきゃいけないんだよね…あの時みたいに、フィルフサだけをおびき寄せる道具とか作れたりしないかな」

「…解らんな、私も奴らの全てを知っているわけでは無い。ただ、そう言った臭いに釣られるような話は聞いたことは無いな」

「うーん、ダメかぁ。それなら…」

「もっと直接的に、フィルフサを黙らせるしかないな」

 

…アルム君?えっと、直接的ってことは…

 

「…『蝕みの女王』を倒す、と言うことか?」

「ええ。それをすればフィルフサの侵攻を止められますし、資源も余裕をもって探せます」

「確かにそうだが…」

 

オーレン族の人達もクリント王国もほとんど壊滅させたフィルフサの、一番強い個体が『蝕みの女王』なんだよね?戦って、勝てるかなぁ…

 

「それと、もう一つ理由が。侵攻が始まるのは乾季に入ってかららしいが…それがタイミング的にかなりマズくてな」

「どうマズいの?」

「…クラウディア、この辺りが乾季に入るまであと1~2週間程なんだが、その頃には何がある?」

「え?えっと…」

 

私に聞くってことは、私に関することなんだよね?その頃には確か…あ!

 

「…そうだ、このままじゃ…!」

「ちょ、ちょっとちょっと。何か凄く焦ってるけど、一体何があるのよ?」

「…お父さんが中央に販路の申請を出してて、それが通るかもしれないって言うのが丁度1~2週間後くらいらしいの」

「…えーっと、つまり…どういうこと?」

「…バレンツ商会は、乾季に入る頃に中央に商売しに行くってことだよ」

「うん…だから、皆ともう少しでお別れしなきゃいけないの」

「そう、なんだ」

「いけない、んだけど…」

 

ライザ、凄く寂しそうな顔してる。レント君もタオ君も、アルム君も。…私も、今から寂しくなっちゃうな。

でも、今アルム君が言おうとしてることはそれどころじゃないって話。だって…

 

「…って、ちょっと待って!?じゃあこのままフィルフサを放っておくと…」

「ああ。…フィルフサの侵攻と、バレンツ商会が島を発つタイミングが被りかねない」

「…なんだそりゃ、最悪じゃねーか…!」

「商会にも護衛の人達は居るだろうけど、流石に対処はできなさそうだよね…」

 

確かにタオ君の言う通り腕のいい護衛の人を雇ってはいるけど…フィルフサの大群に襲われたらどうしようもないよ。

 

「…確かに、それは寂しがっている場合では無いな」

「私達も、彼らにはこの島に来る上で世話になった。奴らに蹂躙されかねないのを見過ごす訳にはいかん」

「ええ。それに、あまりボオスやキロさんを待たせるのも申し訳ないですから」

 

…うん、蝕みの女王を倒したい理由、倒さなきゃいけない理由は沢山ある。じゃあ、何としてでもやるしかない…よね。

 

「よっし…じゃあ、色々準備しないとね。まず最初に装置の部品は作っておくとして、武器とか道具はもっと強くしたいけど…」

「道具なら、レシピに使えそうなものをルベルトさんから貰っておいた。『月の魔力』(ルナーランプ)『大地の怒り』(エターンセルフィア)だな」

「どれどれ…これは、凄いものを手に入れたな。クラウディア、彼は一体どこでこんなものを?」

「えっと…いろんなところに伝手があるのは間違いないんですけど、ちょっと解らないです…」

 

アンペルさんが唸るくらい凄いものが載ってたの…?本当にどんなルートでお父さんの所に渡って来たのかな…

 

「そういやまだ見つけてねえお宝があったよな…また何かのレシピがあったりしねえか?」

「どうせなら道具そのものにあってほしいけどね、もっと良いコアクリスタルとかさ」

「ふむ、ならばそちらの調査もするぞ。今までの傾向を見るに、損はしなさそうだからな」

 

…そうやって、皆と冒険できるのもあと少しなんだね。うん、だったら最後まで楽しまなきゃ。楽しんで、頑張って、勝って…

 

「よーっし!じゃあ、島の為と、クラウディア達が安全に旅立てるように!」

「『蝕みの女王』討伐の為に、全力を尽くそう」

「おう!」「「うん!」」「「ああ」」

 

「またね」って言って、笑顔でお別れしたいな。

 

 

 

 

「――そういう理由があって、俺達は蝕みの女王の討伐を決めた」

「…成程、話は理解した。確かにそれはさっさとどうにかしねえと不味いな」

「乾季が近いからまさかと思ってたが…本当、偶然にしてもひどいタイミングだな」

 

いきなりの報告に面食らっていた2人に、俺は昨日の話し合いの内容を話した。とりあえず、事の深刻さを伝えることはできたみたいだから何よりだ。

 

「で、勝つ算段はあるのか?」

「その為の準備をこれからする。道具に武器に作戦に…それら全てをギリギリまで詰める」

「…行けるのか?正直、そこまで時間は無いだろ」

 

…そうだ。確かに、国1つ落としかねない怪物共を7人で相手にするなんて、普通は無茶もいいところだ。だが…

 

「やらなければこの辺りの土地は何もかも破壊し尽くされる。それに、被害がそれだけで済むという保証も無い」

「…そうか。クリント王国は一応追い返しはしたが、そういう抵抗が無ければ奴らはこの世界に留まるかもしれないのか」

「そしてここから地続きの土地をどんどん侵攻していって…か。仮にどこかで止められたとしても、被害は出るだろうな」

 

フィルフサ達にはこっちの世界の環境が合わないから時期が来たら帰る…なんて可能性もあるだろうが、そんなものに賭けられるほど呑気な話じゃない。

 

「本当なら死ぬほど止めたいんだが…言っても聞かないよな。それで、確かアタシに何か頼むかもしれないって言ってたな?」

「ええ。蝕みの女王を倒しても雑兵がこっちに漏れ出てこないとは限らないので、その辺りの確認が取れるまで島の人達が外に出ようとしないか見張っていて欲しいんですが…」

「ああ、任せろ。…止められないなら、せめて直接手を貸したいんだがな」

「…特に何も無い筈なのにアガーテさんを島の中で見かけないなんて気づかれたら、何かあると思われてしまいかねないですから。あくまで俺達の冒険の延長の出来事として、誰にも何も知られず済ませたいんです」

 

極力話を広めて欲しくないというアンペルさん達との約束もあるが…俺自身、この島の日常にこんな話は必要ないと思ってる。皆の中では、「乾きの悪魔」は言い伝えだけの存在。万が一にも、実在することを知ってほしくは無い。

…それに、知られたうえで上手く行ったら「島を救った」なんて周りから囃されかねないしな。そういうのは、別に要らない。窮屈になるだけだ。

 

「…こういう時、待つ事しかできねえのは歯痒いな」

「お前にはその後に任せることがあるからな。…さて、淡水化装置の方は上手く行ったみたいだな」

 

話が大方終わったタイミングでライザ達が地下から上がって来た。…特に何事も無さそうだな。これでまず一つクリアだ。

 

「こっちは上手く行ったよ。で、そっちは話し終わった?」

「ああ、丁度な」

「では、早速蝕みの女王討伐の準備に移ろうか。時間は有限だ、可能な限り効率良くやるぞ」

「ならまずチーム分けした方が良いか?探索と調合のよ」

「調合はライザとアンペルさんだけでいいんじゃ?」

「いや、錬金術士2人は調合に集中させた方が良いだろう。大掛かりな調合は大きく体力を消耗するからな」

「じゃあ、そっちはアルム君に居てもらった方がいいかな?2人以外なら一番道具を使うのが上手だし」

「…俺か」

 

俺も探索側に回りたかったが…まあ、そういう理由があるなら仕方が無いな。

 

「それにほら、ライザってこういう時無茶しそうだから、いざって時のストッパーが出来そうなのは誰かなって思ったら…」

「ああ、それはアルムしかいねえ」

「僕らだと押し切られるかもしれないからね。ちょっと情けない話になるけど…」

「いや、あたしだってそれくらいは自分で」

「いつもより目を光らせておく」

「アルム!?」

「ふむ、まあ私が何か言うよりは手っ取り早そうだな」

「お前も熱中し過ぎて倒れるなよ、アンペル。今のお前はそうなりそうな雰囲気がある」

 

そもそも錬金術そのものに熱中している所に「頑張らなければいけない理由」がつけ足されるわけだからな…今のライザなら本当に倒れるまで無茶をしかねない。

しかもアンペルさんも割とそのクチらしい。…ライザは兎も角、俺にアンペルさんまで止められるか…?

 

「アルム、もし無理そうだと感じたなら遠慮なく蹴り飛ばせ。私が許可する」

「おいやめろ。アルムの遠慮ない蹴りなぞ食らえば即座に地獄が見えるぞ」

「…やりませんから安心してください」

 

余程の事が無い限り人に向けたら拙い威力してる自覚はあるんですよ、これでも。レントは…まあ蹴るとしたら模擬戦だしセーフで良いか。人並外れて頑丈だしな。

 

「…こんな時でもいつも通りか。全くお前らは…」

「もはや安心感すら覚えるよ、本当に」

 

褒められたのか呆れられたのか…まあ、前者だろうな。

 

「さて…じゃあ、準備に取り掛かるか」

「まず新しい道具の調合と、次に今使ってる道具の改良と…」

「その前に素材の確認だな。畑で採れる分と(ぷに)が持ち込んでくる分もあるから、色々試せるぞ」

「んじゃ、こっちはまず宝の地図の確認だな」

「えっと…今残ってるのはあと2つだっけ?」

「何か役に立つものが見つかれば良いけど…」

「そっちに気を取られ過ぎて採取を怠る真似はするなよ。どれだけ優れた錬金術士も、素材が無いのでは何もできんからな」

 

そうやって全員で話し合いながらこの場を後にしようとすると…

 

「…お前等」

「どうした?ボオス」

 

ボオスが声をかけてきた。何か言いたいことがあるのか?

 

「…絶対に、帰ってこい。全員無事で、だ」

 

…ああ、確かに。何を言っても、結局それが一番大事なことだな。

 

「ああ。当然だ」

 

絶対に蝕みの女王を倒し、またここに帰って来よう。絶対にな。

 




考えれば考えるほど、アンペルとリラがこのタイミングで島に来てなかったら始まる前からゲームオーバーなレベルで色々タイミングが悪かったな…
ライザ達とバレンツ商会はどうなっていたやら…想像したくは無いですね。

Q.なんでアルムがこのタイミングで中央への申請云々を知ってるの?
A.アルムがいつものメンバーのリーダーだと思われてるのと、ゴールドコイン限定とはいえ取引相手みたいなものだからです。「大体このタイミングで居なくなるからそれまでに粗方この取引終わらせようね」「おk」みたいな感じで。
なお聞いて直ぐに最悪なタイミング被りに気づいたので、顔色がちょっと悪くなったのを少し不審に思われた模様。スルーしてくれましたが。

ここまで読んで頂き、有難うございました。
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