変化の連鎖は、10年前のあの日から   作:七人の母

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そろそろ短編から連載に切り替えます。明日から仕事が始まるのでこれまでのペースでの投稿はまずできないと思います。

アルムの母親を出してなかったので、原作開始前の前振りと一緒に。
時間軸は原作まであと1~2週間くらい。

終始アルム視点。後半に行くにつれてシリアスになります。


アルムと島の人達

「お早う、母さん」

「あら、お早うアルム!」

 

朝からこのハキハキした挨拶を返してくれるのは、俺の母親のルーテリア・レーゼン。水色の真っ直ぐな長髪に大きめのタレ目、周りの女性と比べても少し低い身長が特徴だ。いつも一家で一番早く起きて、俺たちの朝食を作っている。

 

「今日は早く起きれたし、手伝おうか?」

「本当?じゃあ、スープお願いしちゃおっかな」

「了解。…クーケンフルーツ余ってるな、これにするか」

 

まあ、俺も早めに起きるので、こうして朝手伝うこともよくあるのだが。因みに親父は俺より早く起きるが、厨房に立たせると碌なことにならないので居間に座っている。…母さんが真剣な顔で「ゴメン、こんなこと言いたくないけどアナタは一生料理しちゃダメ!」なんて言ったのは本当に衝撃的だった。多分今までで一番真剣な顔だった。今後更新されるかも怪しいくらいに。

まあ、実際そこまで言うレベルだったが。下手したら指どころか手首が飛ぶところだったからな。あのまま続けてたらエルのトラウマになってたな…

 

「ふぁ…おあよ…」

「エル、お早う」

「お早うエル!もうちょっとで出来るから待っててね?」

「うん…お顔洗ってくるね…」

 

エルも起きてきた。朝は少し弱いからまだ半分寝てるようなものだが、それでもあれくらいの年の子としては早い方だと思う。

 

「…よし、味はこれくらいでいいか」

「うん、こっちもいい感じ」

 

作り終わったので、2人で料理を居間に運ぶ。机に並べ終わったところで丁度エルが戻ってきたので、そのまま俺達も椅子に座り…

 

「いただきます!」

「「「頂きます」」」

 

全員そろって朝食を摂る。いつものこの家の朝だ。因みに、いただきますの号令はエルの1日の最初の仕事だ。

 

 

「…これなら、もうすぐ収穫できるだろう」

 

朝食を食べ終わった俺は親父と一緒に畑まで来ていた。収穫の手伝いは無いが、それならそれで色々勉強ができるいい機会だ。クーケンフルーツの「摂り頃」とかな。

 

「どこを見たら解りやすい?」

「まずヘタの際まで見ろ、そこまで赤く染まっていれば採り時だ。それか、ヘタから簡単に外れるものはまず完熟している。実の柔らかさで判断もできるが…それはまだお前には難しいだろう」

「なるほど」

 

言われてみると解りやすい特徴だ。一応後でどこかにメモしておくか…

 

「さて、他の奴らはしっかり様子を見に来ているだろうか…」

「ウェインさん、アルム君、お早うございます」

「カールか。ああ、お早う」

「お早うございますカールさん。…ところで、ライザは向こうで何を?」

 

いくつか並べられたクーケンフルーツの前でうんうん唸っているが…

 

「ああ、ちょっと品質の見極めのテストをね。自分からやってみたいって言いだして」

「…あいつが?」

 

…本当に、去年から思っていたがどういう心境の変化だ?別人じゃないかってレベルで農業に積極的だな。

 

(…どうやって乗せた)

(私は何も。ミオが「主婦の必須スキルみたいなものだよ」なんて言ったら物凄く乗り気になりました)

(扱いをよく解っていると言うべきか。で、実際はどうなんだ)

(近所の主婦が集まって真剣に情報共有するくらいには本気です)

(…そうなのか)

(最近エルちゃんが生徒として参加してるそうですよ、お使いの役に立つからって)

(…いらん知識を身につけさせたりしないだろうな、それ)

 

親父たちが何か話してるみたいだが…そっちはいいか。とりあえずライザの様子を見るか。

 

「…むむむむむむむむむむむ…」

 

ガ チ だ 。特に目が真剣通り越して鬼気迫っている。何がお前をそこまで駆り立てるんだ。

 

「…結婚…結婚した後、役に立つ…いやでも、お母さんいつもこんな苦労…?いや私が知らないだけで…?それとも一瞬で見分けられるようになってる…?むむむ…」

 

悩みながらそうブツブツと言っているが、とりあえずうちの母さんは苦労してる側だ、心配しなくてもいい。エルは何か直感が働くみたいで、良いのを掴んだうえで割とすぐ終わるみたいだが。

…しかし、結婚か。ライザだってそういうことは気にするよな、女の子だし。…どんな相手を、想定してるんだろうか。

 

「…よし、コレ、コレ、コレ、コレ、コレの順!お父さんに答え合わせを…ひあぃっ!?

「…あー、ずいぶん真剣だったな」

 

考えてる間にライザが答えを決めたらしく顔をあげたが、俺を見た瞬間奇声を上げて顔を赤くした。いや、そんなにビックリすることか…?

 

「ん、終わったのかいライザ?どれ…おお、完全正解だよ。しかも5分で。凄いじゃないか」

「品質を見極める才能があるのか。5個同時で順番も当たりならまぐれの線は薄いだろうな」

「え、あ、えっと、ふははー、これがライザちゃんの才能だー!」(聞かれてないよね聞かれてないよね!?頭の中でアルムとの「そういう」生活を妄想してたの気づかれてないよね!?声に出てないよね!?なかったよね!?)

 

腰に手を当ててどや顔をするライザ。どう見てもなんか無理してるようなリアクションだが、そこには突っ込まないでおこう。単純に気になったこともあるしな。

 

「ところで、どうやって品質を見極めたんだ?」

「えっ!?えっと、いろんな角度から隅々までみたり、実の柔らかさとか重さとか比べたり、後は…」

「後は?」

「…勘?」

「…勘」

「まあ、結局のところはそこだ。とはいっても、本来は長年の経験を積み重ねて少しづつ養うものなんだが」

 

まさか、ライザにそんな才能があるとは。何に役立つのか、と言われたら…まあ、料理人か、それこそ主婦かといったところだろうか。…ライザは料理に関してはどうにも苦手みたいだが。まあ、食えないレベルではないので練習次第で上達は十分見込めるだろう。

 

「…凄いな。俺にはそこまで早くはできそうに無い」

「そ、そうかな。えへへ…」

「っ…」

(…カール、場違いじゃないか私達は?)

(いえ、むしろ近くで見守る特権を得たと思いましょう)

 

俺に褒められて喜ぶライザ。ああもう、直視できないだろうがそんな可愛い表情されたら。

後その暖かいのかよく解らん視線、気づいてるぞ親父共。やめてくれ。

 

 

農場での用事も終わり、昼食も済ませ、昼。エルがお使いを済ませてからシュタウト家に突撃に行くそうなので俺はいつも通り島中を練り歩くことに。

因みに例のどや顔は未だにライザに有効らしい。最近はその後抱きしめという反撃を食らうそうだが。

 

「よう、アルム」

「レント。今日も特訓か?」

「ああ。お前もどうだ?」

「…そうしようか」

 

いきなりレントと遭遇したので特訓開始。実践形式の手合わせ無しなら大体これで2~3時間くらいは経つ。

 

「二人とも、偶には私もいいか?」

「アガーテさん。…どうだ、レント?」

「願ってもねえ!今の俺の明確な目標2人との訓練なんてよ!」

「ふふ、護り手として、お前達にも遅れは取りたくないからな」

 

そして近くで聞いていたアガーテさんも参加することに。アガーテさんにも魔力無しでようやく渡り合えるようになってきたが、まだ足りない。

…外であの本の手掛かりを掴むためにも、もっと強くならなければな。

 

「しかし、最近かなり乗り気だよなアルム。何か目的でもできたのかよ?」

「まあ、そんなところだ。」

「何だ、ライザ絡みか?」

「…違いますよアガーテさん。何でライザが出てくるんですか」

「相場が決まっているだろう?男が強くなろうとする理由は、愛かロマンか、とな」

「…」

 

…愛は愛でも故郷愛である。しかも、現状杞憂かもしれない可能性の方が高い危惧が理由とは言えない。

まあ、アガーテさんは「ライザへの」という意味で言っただろうが。

 

「…あまり表に出してる自覚無いんですけど。解りやすいですかね、俺」

「いや、そう露骨ではないな。ただ…」

「ただ?」

「どれだけお前たちの姉貴分をやっていると思っている?気づくさ」

「…敵わないな」

 

どれだけ力で上回っても、この人には敵わないんだろうな、俺たちは。

 

「というか思ったんだけどよ、アガーテ姉さんそういうの興味あるんだな。男がどうとかって」

「ああ、エルからおすすめされた本があってな。中々面白くてついまとめ買いしてしまった」

 

…島中で流行らせる気か、エル?この前ボオスも買ってるのを見たぞ。

というかレント。お前まるで驚いてないが、知ってたのか。いつからだ。

 

 

特訓が終わってもうすぐ日が暮れるといったタイミングで、タオとボオスと遭遇した。…この組み合わせは珍しいな。

 

「…少なくとも、現状繋ぎがとれる商人たちは全員外れだ。読めそうな人間に心当たりも無いそうだ」

「…そっか。うん、ありがとう」

 

あの文字についての話か。しかし、ブルネン家の伝手でも空振りか。となると、いよいよ…

 

「…島の外に出て、直接痕跡や人物を探すしかないな」

「あ、アルム」

「だが、それでも見つかるかどうかわからないぞ。当てもないんだろう」

 

確かにそうだ。だが、少しでも手を広げた方が見つけやすいだろう。そうなるとやはり、近いうちに外に探しに行くべきかもしれない。

 

「…いい加減聞かせてくれ。お前たちはあの本に何が書かれていると睨んでる?以前までは「読み解きたい」だったが…今のお前たちは「読み解かなければ」と考えているように見える」

「…正直、全部は言えないぞ。荒唐無稽すぎて混乱させかねない」

「ああ、今話せそうなところまででいい」

「…もしかしたら、今の僕たちが知らないクーケン島の秘密について書いてあるんじゃないかって思ってる」

「秘密?」

「例えば、枯れている噴水の事だ。あそこから水を出す方法があるんじゃないか、とかな」

 

そういうと、ボオスは少し考えるような仕草をした。

 

「…なぜ、秘密が書いてあると?」

「クーケン島に残されている解らない文字で書かれた本なんて代物、そういうことを書いてあるに決まっている。…と、エルが」

「…アイツか。どう考えても妄想や思い付きの類なのに、否定しきれないのがな」

「実際僕達も最初は「まさか」だったよ。…今は「多分そうだろうな」くらいまでは思ってる」

「それが何故か…は、言えなさそうだな」

「ああ。これ以上は、な」

 

俺達の推理の過程を少し話せば、多分ボオスならたどり着くだろう。俺達の抱いた最悪な懸念に。…碌な根拠も無しに「実はこの島は人工物で、故障してる疑惑がある」「そう遠くない未来、この島が沈むかもしれない」なんて、伝えられはしない。なんならタオにも、クーケン島が浮島であることは伏せたままだ。

 

「…もしあの本に書いてある内容が、この島にとってよほど重大な内容だったら。絶対に、包み隠さず、話してくれ。約束だ」

「…ああ」

「…分かったよ」

 

そういって俺達はボオスと別れた。…正直、俺達はなんとなく予感していた。その約束は、果たされることになるだろう、と。

 

 

もうすぐ日が落ちそうなくらいになって、俺は家に戻った。…よし、エルもちゃんと帰ってきているな。あいつ偶にシュタウト家に泊まりたがるからな。

 

「アルム」

「何だ、母さん?」

「悩んでるの?それとも、何かを決めたの?もしかして、両方?」

「…正解、だよ。完璧に」

 

…本当、鋭いな。

 

「相談できるようになってからでいいから、ちゃんと私達に話してね。家族なんだから」

「解った。有難う、母さん」

 

俺は本当に家族に恵まれた。友達にも。だから、そんなみんなとの日常があるこの島に、危機が迫ってるかもしれないというなら。

俺は、動く。




Q,クーケンフルーツの収穫時期の見分け方ってどこから来たやつ?
A,公式でトマトの一種らしいので、現実のトマトのものをそのまま。

Q,アルムってライザの手料理食べたことあるの?
A,レントとタオもいました。多分そうじゃないと恥ずかしがって無理です。因みに評価は「もっと頑張りましょう」で3人一致。

Q,アガーテさんってそういう本が好きとかって設定あるっけ?
A,確か無いです。つまりオリ設定。独自設定のタグも入れておこうかな…

Q,エルはシュタウト家が泊まろうとしてるのはなんで?
A,あの子的にライザは既に「姉」認定です。要するにもう家族で良いじゃん的な。あとライザのあのスタイルの秘密を探ろうとしてます。つまり大体ライザが理由。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。次からもう原作突入ですかね。
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