変化の連鎖は、10年前のあの日から   作:七人の母

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番外編その2、今回は2本。まあタイトルの通りというか、シリアスなんて欠片も無い話です。


これと言って取り留めのない、アトリエでの話

1、髪に触れる(ライザ視点)

 

「ねえレント、ちょっと髪の毛触らせて?」

「何でだよ?」

「いいから、ちょっとだけ」

「…解ったよ」

 

皆でアトリエに集まってたある日、あたしはふと気になったことがあってちょっとみんなの髪の毛を触らせてもらうことにした。…レントは、うん。

 

「思った通りちょっと硬いっていうか、ゴワゴワしてる」

「そりゃ元々こんな髪質だし、そんなに気を遣ってるわけじゃねえしな」

「じゃあ、次はタオ、良い?」

「良いけど、僕もそこまで気にしてるわけじゃないから、手触りはあんまりよくないと思うよ?」

「それを確めたいの。…うん、可もなく不可もなくって感じだわ」

「…一番返答に困るコメントだなぁ」

 

やっぱり、普通はこんなもんなのよね、普通は。

 

「えっと、私のも触る?」

「うん、触る触る。…わぁ、凄くサラサラしてる」

「ありがとう。…なんか、ちょっと恥ずかしいな」

 

うんうん、やっぱり裕福なところのお嬢様だからすごく手入れされてるのが解るなぁ。あたしも一応気を遣ってるつもりだけど、ここまでじゃないもん。…で。

 

「…えっと、アルム」

「俺のもか?別にいいが」

「うん。…やっぱり」

「どうした?」

 

…見た目で、なんとなく解ってたけど。

 

「…クラウディアのと同じくらい、サラッサラ」

「そうなのか?確かに、最低限気を遣っていたつもりではあるが」

「いや、これはちょっと最低限じゃすまないと思う…」

 

アルムの場合、髪が荒れそうな行動をよくしてるから手入れはむしろ大変な気がするけど…

 

「最低限って…どうやってるの?」

「髪を洗った後、早く乾かさないと痛むらしいからな。髪の毛を洗った後に、炎と風を付与して即水気を飛ばしてる」

「…そんなことできるんだ」

「俺以外にやると、即髪が燃えるだろうがな」

 

えっと、つまり…

 

「炎と風で水気とか汚れが飛んで行くから、髪が痛まないってこと?」

「だろうな。…母さんも髪が綺麗だから、それが遺伝した可能性もあるが」

「あー、それもありそう」

 

ルーテリアさんもエルちゃんも真っすぐで綺麗な髪だもんね。

 

「で、どうしたいきなり?」

「あー、えっと。アルムの髪って妙に綺麗に見えたからちょっと確かめてみたくて、できればコツとか聞いてみたいなって。ついでに、他の皆の髪もちょっと比べてみようかなって」

「…クラウディアに聞けばいいんじゃないか、そこは」

「それは勿論聞くけど、出来るだけ多くの意見が欲しいって言うか」

「そういうものか」

 

色々聞いた方が参考になるし、そこからあたしに合った方法が見つかるかもしれないしね。

 

「…」

「えっと、アルム?」

 

アルムがこっちに手を伸ばして…あたしの髪を撫でた。…え、あれ、えっと?

 

「あの、えっと、アル、ム?」

「…柔らかいな」

「え、あ、そ、そうかな」

「それに…今のままでも、十分綺麗だと思うぞ」

「ふぇ」

 

え、あ、きれっ…!?

 

「どうした、ライザ」

「…そ、その…流石に、恥ずかしくなってきたから…」

「ん、そうか。悪かった」

 

…ダメだ、これ。今日一日は恥ずかしすぎて何もできそうに無いよ。髪の話だって解ってても、いきなり綺麗だなんて言われたら、うぅ…

 

「…アイツ、俺達が見てるとこでなにやってんだ」

「なんか感覚狂いそうだよね、あの2人を見てると」

「…その、本で読んだことあるんだけど、男性が撫でるように女性の髪に触れるのは、好意を持っている証なんだって」

「今更だな、そりゃ」

「それで、触られた女性が元々その男性に好意を持ってたら、もっと好きになるんだって」

「うん、まさに実例を今目にしてるね、僕達」

 

3人が何か話してるみたいだけど、全然頭に入ってこない。…そうだよ今のアレみんな見てたんじゃん。う~、アルムのバカぁ…

 

 

2、睨みあい(レント視点)

 

「…」

「…」

 

ある晴れた昼下がり、俺とタオは1つの戦いを見守っていた。相対しているのはライザとクラウディア。お互い本気で睨みあっている。

この戦い、敗者である俺達には介入する権利なんて有りはしない。ただ、勝敗が決まるのを待つだけだ。

 

「…っ!」

「…っ!」

 

両者一歩も譲らない、実力伯仲と言ってもいい状態。このまま膠着状態が続きそうだ。裏返せば、切っ掛け1つでどっちに転んでもおかしくないということ。

固唾をのんで俺達は見守っていた。勝利の女神は、果たしてどちらに微笑むのか。

 

「~!」

「~!」

 

しかし、例えどちらに軍配が上がろうとも、俺達は勝者と敗者を区別せず讃えよう。それが真剣勝負を戦い抜いた二人への――」

 

「「ぷはぁっ!」」

 

お、同時に息を吐いたか。引き分けだな。

 

「はぁ…はぁ…レント、アンタねぇ…」

「どうだ、中々いい語りだったろ?」

「たかがにらめっこに仰々しいのよ!笑う笑わないより恥ずかしくなってくるわよあんなの!」

「ズルいよ、レント君…」

「何かアルムの影響受けてない?レント」

「いや、あいつはこういうの普通に見守ると思うぜ?」

 

影響が無いっつったら嘘になるけどな。

 

「しかし、結構長えな。そろそろ来てもおかしくないんだが…」

「すまん、遅くなった。ちょっとランバーの特訓に熱が入りすぎてな」

「全員で外に出ていたのか。特訓をしていたわけでは無さそうだが…」

「その割には、ライザとクラウディアが疲れているな」

 

お、丁度いいタイミングできたな。

 

「えーっと、今みんなでにらめっこしてたんだよ」

「…にらめっことは何だ?」

「子供の遊びだな。自分の表情を崩しながら相手と睨みあい、笑わせるか目を逸らさせるかしたら勝ちというルールだ」

「クラウディアが、こういう遊びができる相手が今までいなかったからやってみたかったんだって」

「成程。そういうことなら俺も参加した方が良さそうだな」

 

コイツ強いんだよなぁ、変顔じゃ碌に笑わねえし。

 

「私は止めておこう。表情を崩すと言われても、どうやればいいのか解らん」

「私も遠慮しておこうか。子供の遊びに混ざれるほど若くは無いからな」

「じじむさいぞ、アンペル」

「わきまえていると言ってくれ」

 

相変わらず、仲のよろしい事で。

 

「ところで、今までどういう組み合わせでやっていたんだ?」

「えっと、僕とライザでやってライザが勝った」

「で、俺とクラウディアでクラウディアが勝ったな」

「決まり手は?」

「渾身の変顔。多分僕らの前じゃないと絶対に出せないレベルだよアレ」

「…普通に負けた。あれはちょっと勝てねえ」

 

思いっきり頬を膨らましたクラウディアにこっちをじっと見られたら、そりゃ負けるだろ…アレはなんか無理だ。

ライザの変顔は…まあ、女がしちゃいけない顔とか言われそうな、言われなさそうな、何かギリギリのレベルの奴だったな。

 

「なら、俺はライザとクラウディアとやればいいのか」

「えっと、じゃあ私からでいいかな?」

 

お、まずはクラウディアか。さあ、どっちが勝つ?

 

「じゃあ行くよ…あっぷっぷ!」

 

その瞬間、アルムが口と目を思いっきりすぼめた。メチャクチャ酸っぱい顔って感じの表情だ。

遠くで見てた俺達ですら笑いを抑えきれないくらいの表情。なら、間近で見てるクラウディアは…

 

「~~~~っ!」

 

顔を真っ赤にしてメチャクチャ震えながら堪えてるが…もう長くねえな。

 

「…ああいう表情もできるんだな、アルムは」

「遊びにも全力で、ということだろうな。にしても、普段との差があまりにも大きいが」

「しかし、これは一種の忍耐の訓練になるかもしれん。いつか取り入れてみるか?」

「誰とやるつもりかはわからんが、付き合わされる側の身にもなるべきだな」

 

…リラさんの変顔とか死んでも見たくねえ。なんか、あまりにもイメージとかけ離れてるっつうか…

 

「…んふっ、も、もう無理…!」

「アルムの勝ち!…いや、アレはちょっと反則じゃないかな」

「あと「釣り針が引っ掛かった顔」とか「突風に晒され続けてる顔」とかがあるが」

「態々バリエーション考えてんのかよ」

 

全力すぎんだろ、にらめっこに。

 

「さて、次はライザか」

「えっ、あ、あたしともやるの!?」

「そりゃ、後残ってんのお前だけだしな」

「ライザ、頑張って!」

「いやその、流石にちょっと自信無いって言うか」

 

いやまあそうだろうけどよ、だからって不戦敗はちょっと、なあ?

 

「まあ、それならそれであっさり笑って終わりで良いんじゃないかな」

「えっと、そういうことじゃなくて、その」

「じゃあ、どういうことなの?」

「…うー。解った、やるだけやってみるわよ」

「それじゃあ…あっぷっぷ!」

 

ライザは普通に頬を膨らませるだけで、アルムは…ほぼ真顔だけど目力すげえな。

 

「…」

「…」

「…やっぱ無理…」

 

あ、アイツ照れて目逸らしやがった。

 

「アルムの勝ち!…ってライザ、アルム特に変な顔してなかったけど」

「…だって、真正面からアルムにジッと見られてるってだけでもう凄く恥ずかしくて…」

「お前、アルムが絡むとホント弱くなるな…」

 

惚れた弱み…ってのとはまた違うか?

 

「アルム君は恥ずかしくないの?」

「いや、むしろずっと見ていられるが」

「成程、つまりライザは負けるべくして負けたというわけだ」

「そういうものか。…しかし、やはり忍耐というか、羞恥心に耐える訓練として有効そうだな」

 

…明日から、マジで取り入れてきたりしないだろうな、リラさん。




どっちもアルムとライザがイチャついて終わってるよね?って思う方もいるかもですが、その通りです。
まあイチャつきなんて言う割には、一方的にアルムが攻めてますが。

1はまあ、ライザも年頃の女の子だし気にするよねって話。自分の容姿に自覚はあまり無いけど、美容そのものは意識してるイメージ。そして実は結構美髪なアルム。因みに母親からの遺伝が理由の8割くらいです。
2は、クラウディアってこういう遊び経験無さそうだなと思ったので。子供組はクラウディアがやりたいって言い出したらみんな断らないと思う。「断れない」じゃなくて。ちなみに「あっぷっぷ」言ってるのは二回ともタオです。レントの妙なナレーションは…何かこうノリで。アルムなら、タオVSレントとかなら間違いなくやります。

Q,ライザはタオとのにらめっこで、どんな表情をしてたの?
A,「「苦虫を10匹くらい同時に噛み潰した顔」みたいな、そんな感じかな…うん、アルムの前じゃ流石にやれない顔だと思うよ」

ここまで読んでいただき、有難うございました。
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