今回はレント視点→アンペル視点です。
3/19 アンペルの考察部分を加筆しました。
「「…」」
「アルム、レント。大丈夫?」
「…全く」
「見ての通りだよ…」
仰向けで大の字になっている俺と、座り込んでいるアルムに、ライザが声をかけてきた。
今日俺はリラさんに実戦形式で稽古をつけてもらっていた。アルムと時々やっている手合わせの事を話したら、なら私ともやってみるか、と。
リラさんが見ただけで強いのは解ったが、実際どれくらいかまでは読めてねえ。俺の師匠になってくれた人がどれだけ凄いのか体で理解するいい機会だ、と気合を入れて臨んだ。
結果は勿論、いいようにやられまくった。動きが速すぎて、頭で来ると解っても体が追いつかない。先を読もうにもそんな暇すらない。何もできなかったとしか言えなかった。
で、俺が疲労でぶっ倒れかけたタイミングで偶々近くにいたアルムが来て、
『ドライビスク』
コアクリスタルに組み込んだ道具で俺を回復してきた。有難えけど、先に言ってくれよ。微妙な味がするんだよそれ…
そこからはアルムも誘って、2人でリラさんに稽古をつけてもらってたんだが、まあボロボロになった。何度もドライビスクで体力を回復させて挑んだんだが、それでもリラさんには冷や汗1つかかせられなかった。強すぎんだろ…
で、限界にきたタイミングでライザが来た。何か青いものを脇に抱えてるけどなんだそれ?
「それは?」
「これ?ぷにまくら」
「…ぷにまくら?」
「アンペルさんに新しいレシピ貰って、レシピ変化っていうのも教わったんだけど、青ぷに玉から何か作れないかなーって考えてたらふとレシピが浮かんだの。ぷにぷにしたひんやり枕よ!」
なんか変なもん作ってんな…子供は好きそうだけどよ。
「で、これ今度クラウディアのところに遊びに行くときに持っておこうかなーって思ったから、先に寝心地だけ誰かに聞いてみようかなって。というわけでレント、感想お願い!」
「うおいきなり頭持ち上げんな!…やべぇ、メチャクチャ寝心地良いぞこれ。超落ち着く」
「ふふふ、あんたからそんな素直な感想が出るなら成功ね!」
これ結構売れるぞ。暑くなってる今の時期は特に。すげえもん作ったな…
「…俺には無いのか」
「あー、えっと、1つ分しか素材無かったから。…代わりって言ったら、なんだけど…」
そう言ってライザが、アルムの近くで正座した。そして自分の膝をしきりにポンポン叩き出した。…これアレだよな、膝枕だよな。
「…」
驚いてるアルムと、顔を赤くしながら笑顔で「ここだよ!ここだよ!」とでも言いたげに膝を叩き続けるライザ。いや、確かに進展させろとは言ったけどよ、少ないけど人いるぞここ?極端から極端に走ってないかお前?
「あー、なんだ。…失礼します」
「~っ!!」
観念したアルムと歓喜したライザ。…アルムも最近隠さなくなってきたっつーか。最近いろんな人から「アルムってライザの事好きなの?」みたいなこと聞かれるしよ。
「なんだ、あの二人は番か何かなのか」
「今は違うっすけど、将来的には多分」
つーか番って、リラさんも随分固い言い方するな。
「さて、このまま二人の戦い方について話すが…レントは肉体の頑強さに頼りすぎている節があるな。そして、反応は良いが動きが大きすぎる。先を読む力を養うことと、可能な限り小さく動くことで体への負荷を減らすことを重視しろ」
「うへ、あれでもまだ大きいのか…気を付けます」
「アルムは…恐らく、受ける事を一切考えていないだろう。相手の攻撃は回避して反撃するかそのまま迎撃するか。とにかく、攻撃することに全神経を注いでいる」
「…どちらかと言うと、気が昂りすぎて受けの意識がなくなるというか」
「受けを覚えるか今の戦い方を貫くか、どちらにしろ冷静さは必要だ。感情に振り回され過ぎるなよ」
「…頑張ります」
やっぱりリラさんから見るとアルムでもまだまだなんだな。本当に遠い背中だぜ。
「さて、今日はこれで終わりにしよう」
「分かりました!…で、ライザ、これどうするんだよ?」
「あ、それ?持って帰って良いわよ」
「おう。使わせてもらうわ」
コイツがあれば今夜からいつもよりぐっすり眠れそうだぜ。
「…俺達も帰るか」
「うん。…あ、えっと」
「何だ?」
「…どうだった、かな?あたしの膝枕」
「…黙秘する」
「えー」
…なあ、お前らそれで本当に付き合ってないのか?
次の日、過去最高に近いスッキリした朝を迎えた俺は、いつものメンバーを集め旅人の道に魔物を倒しに行く提案をした。リラさんの教えを形にする為と、4人での連携を覚えるためだ。
まず錬金術で作ったものは無しで、俺達自身の力だけでやってみたんだが…
「このっ!」
「おりゃっ!」
タオの衝撃波で怯んだ魔物を、ライザが杖で追撃。
「レント!」
「任せろ!タービュランス!」
アルムが蹴り飛ばしてきた魔物を、俺が止めを刺す。
「アクセルダイブッ!」
「黄昏の炎!」
俺が打ち上げた魔物をタオが炎で追撃、そして同時にとどめの一撃。
「新技!シャイニートレイル!」
「巻き込んでやる!」
ライザの範囲攻撃の中に魔物を蹴りこむアルム。
「縛術・影縫い!」
「おおおおおおおおッ!」
タオが動きを止めた魔物に、アルムが風を纏った百裂蹴りを放つ。
「コーリングスター!いっぱい持ってけ!」
「ソリッド…ブレイクッ!」
ライザが連続攻撃で相手をひるませ続け、そこに俺が大技を叩き込む。
「…うん」
「なんていうか…」
「…おう」
「ああ…」
「「「「連携、できてるな」」ね」」
実はお前ら打合せしてただろ?ってレベルで連携取れてたな。連携を意識したの、これが初めてなはずなんだがな。全員アイコンタクトでポジションを入れ替え、その場その場で技を組み合わせて確実に魔物を倒していく。10年来の幼馴染たちの絆はこんなところでも変わらないってか。
「これなら心配いらないわよね!じゃあ…」
「おう、コアクリスタルも使っていこうぜ」
「ライザがどれだけのものを作ったか、楽しみだ」
「向きとか間違えないようにしないとね…」
俺は一つしかセットできなかったからあまり活用はできないかもしれないけどな。ここはアルムとライザの独壇場だろうな。
「さーて、まず…うにっ!」
近づいてきたミニワイバーンに爆粉うにの力を使う。すると、大量の針が凄い勢いで飛び出して、ワイバーンの胴体をハリネズミにし、翼膜をボロボロにした。…えげつねえ。
「…アルムが想像だけで引いちゃうわけだよ、こんなの」
「絵面的にはフラムの方が気が楽かもしれないな…」
そっちもそっちで魔物が吹っ飛ぶから、えげつなくないはずはないんだけどな。
「でも、爆粉うにでミニワイバーン相手にこれだから、もう少し強い魔物じゃないとフラムの効果がわかりづらいんじゃないかな?」
「それなら向こうに大きいオオイタチがいたぞ」
「なら、そいつに試してみようぜ」
というわけで見つけたデカいオオイタチ。オオイタチマザーって言うらしいな。
「よーし、じゃあ…フラムッ!」
オオイタチマザーを爆発が襲う。相当堪えたみてえだが、まだ倒れなさそうだな。
「なら、もう一つ持って行け」
そこに間髪入れずアルムがフラムを使う。二発目なら流石に満身創痍、息も絶え絶えって感じだな。
「次で終わりだな」
「じゃあ、一緒にやろう!せーの、」
「フラム」「フラムッ!」
アルムとライザの同時フラムで、オオイタチマザーは完全に動かなくなった。
「ふふん、流石私!」
「かなりの威力だな。これで探索も大分楽になる。…まだ続けるか?ならコンバートしておくが」
「頼むぜ。さあ、今度は技も絡めながら行くぜ!」
「そろそろ本の解読を進められそうだから、程々で切り上げてよ?」
この後、クリスタルのエネルギーを使い切るまで続けた。タオからちょっとだけ文句を言われた。悪い悪い。
「…ふむ」
先日、アルムが私のところを訪ねてきた。内容は二つ。1つ目は「読めないなりに例の本の内容について推理したことがあるので、その内容を聞いてほしい」、2つ目は、「クーケン島についてとある秘密を知っている。もしかしたらアンペルさんの目的に関わりのあることかもしれない」。どんな内容なのかと期待して聞いてみたら…成程、かなり興味深い内容だった。
まず1つ目。「クーケン島に置いてある本だから、クーケン島に関する何かしらが書いてあるかもしれない」「読めない文字で書かれていることから、何かしら秘匿すべき知識ないしは技術に関する本かもしれない」「途中にある図は、何かしらの操作方法や部品のような物が描かれている」。そしてそこにアルムの妹のエルが思い付きで言った「クーケン島が人工のもの」と、「それなら管理が必要」という予想を組み合わせると「専門的な技術が必要な、クーケン島の説明書の可能性がある」というものだ。
正直、よくぞそこまで組み立てられるものだと思った。特にいきなり「人工島」という予想を出してきたエル。物語を読んでいて思いついた事らしいが…普通は結びつけないだろう。
因みにエルは少し前1人で私達を訪ねてきている。リラを羨まし気に見ていたが…まあ、そういう年頃か。因みに錬金術についても少し教えたが、残念ながら才能は無かった。もし才能が有ったら、その発想の結びつけの力は大いに生かせただろうに。
…まあ、これだけなら「やけに具体的だが、妄想レベルと本人たちも思っている突飛な推理」ですむ。問題は、2つ目。クーケン島の秘密だ。
それは、クーケン島が本当に人工の島で、しかも浮島であるということ。なんでも実際に潜って確かめたらしい。
そして、その話を聞いた途端私は確信した。――大当たりだ、と。
まず間違いなくこの島は錬金術で建造されている。そして、島に残されているクリント王国の遺跡の数々。つまりこの島は、「クリント王国の錬金術で建造された人工の浮島」の可能性が非常に高い…というか、もうそう断定していいだろう。
そして、この島には【枯れた噴水】がある。何故か形だけあり、水を吹き出さない噴水だ。それが本当は、噴水としての機能を持つものだったとしたら?そう問うと、その可能性にはアルムもたどり着いていたらしく、すぐにこう答えた。「この島が故障若しくは燃料不足による機能不全に陥っている可能性がある」。恐らく本来は、海水をくみ上げて濾過したものを噴水から出していたのだろう。ただのオブジェの可能性も否定はできないが、わざわざそんなものを作る必要もないだろう。
ならば、今の水源は?これはアルムも解らなかったようだが…アルムには話していないが、私には確信がある。それは恐らく、私たちの目的の一つ。
噴水が一つだけ機能しているなんてことはまずないだろう。ならば、外付けの水源が必要になる。それが可能なものは恐らく古式秘具、それもかなり高度なもの。島1つの水を賄える程の水量を産み出せる古式秘具。私が思いつく限り、それは、リラの…
「随分と考え込んでいるな」
「ああ、あまりにも興味深い話が聞けたからな。…もしかしたら、今回の調査でお前たちの悲願が成るかもしれん」
「!…そう、か」
私がそういうと、リラが目を瞑る。恐らく、故郷に想いを馳せているのだろう。…クリント王国の錬金術士により水を奪われ、そのせいで「奴ら」の侵攻を許し、荒廃してしまったという生まれ故郷に。
一錬金術士として、何度聞いても腹立たしい話だ。
「もう少しで、我らオーレン族の故郷に、水が…」
…叶えてやらねばな。普段つっけんどんなところがあるが、誰よりも戦い続け、故郷を想う、こいつの願いを。
今回のアルムの技
烈風の牙(タオが拘束した敵に叩き込んだ百裂蹴り) 右足で風を纏った百裂蹴り→左足で蹴り上げ、飛び回し蹴りで追撃(TLv2以上)→両脚で挟むように蹴る(TLv3以上)
初期習得 AP4 無属性物理ダメージと風属性魔法ダメージを与える TLv2以上で中確率で裂傷を与える TLv5でクリティカルダメージ上昇
アンペル視点でアルムがした話は「アルムとタオ」を参照してください。
アルムがアンペルさんに島の事を話したタイミングは、冒頭の訓練の直前です。話し終わって「さあ今日は後何するか」と考えていた時に訓練で倒れかけたレントを目撃、そのまま自分も参加した、という流れです。つまりあの場にいたのは一応本当に偶々。
Q,ぷにまくらって何?原作に無かったよね?
A,今作オリジナルアイテムです、一応。ぷにぷにな感触で安らかな眠りに誘う錬金術特有の一品です。
Q,膝枕って、ライザも攻めすぎじゃない?
A,「疲れ切ってる今が甘えてもらうチャンス!」みたいな心境でやってました。割と勢い任せ。
Q,で、膝枕の感想は?
A,「…あれは多分、麻薬に等しいと思う」
ここまで読んでいただき、有難うございます。