『ゴジラ対ヴ級海底軍艦 轟天振武の章』   作:モーター戦車

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プロローグ 第0話「はじまりのはじまり」Dパート

 咄嗟に、建築現場のプレハブ事務所じみた海の家が目に入った。

 

 式波・アスカ・ラングレーは、横一列に並んだ窓の一つに迷わず全力で飛び込む。

 

 思いの外固い感触、しかし防弾ガラスの類ほどではないため、彼女の膂力であれば、いともたやすく突き破ることができた。

 

 ガラスの砕け散る響きが耳朶を打つ。彼女は素早く虚空で猫のように身を翻すと、固い打ち放しのコンクリート床の上に音もなく、片膝を立てるようにして着地した。同時に彼女が突き破ったガラス窓の残滓が、床に大量落下して砕ける響き。真冬時だけに当然人の気配はなく、テーブルや椅子のほかに目立つものはない。勿論、反撃に使えそうなものもない。

 

 あの忌々しい雷鳴が聞こえてこないあたり、電熱線の同時被弾によって不幸な炎上爆発四散を遂げたヤシの木のためにこちらを見失ったのだろう。位置を把握しているなら、攻撃しているはずだ。

 

 彼女は脳裏で自分が担当するマギプラスにシンクロ同調する。

 

 観測した電熱線の光パターンは、大気中で発生する自然の雷ガンマ線による光核反応に酷似していたが、マギプラス3基は、赤外線域から紫外線域までの発光パターンを精査、フーリエ変換してスペクトル解析をかけることにより、大気中にはほぼ存在しないはずの重金属元素の存在を見逃さなかった。

 

 そして、それら重金属核種とその配合によって形成される物体のうち、99.85%の確率で合致するものが、眼帯裏側の光学モニタを通じ、彼女の左目に映像情報となって飛び込んでくる。彼女は小さく舌打ちした。

 

「ナノマテリアル、この世界でも生成できたってわけ? 基幹となるナノマシン、入手不能だって言ってたくせに。

 三味線引いてた? でもないか、あれば使ってる。ベルベのやつ、ムウ帝国から入手した?

 ともかく、今考えることじゃないわよね……」

 

 音を全力で殺しながら彼女は自らが破ったガラス窓に忍び寄りつつ、ポケットを探り、右手で5円玉を取り出した。

 

「ごえんが……」

 

 姿勢を低くし、窓から頭が出ないよう注意しながら窓桁の下の壁に背をもたれさせるようにして座ると、右腕を振り、手にした5円を窓の外へ放り投げた。

 

直後、雷鳴に酷似した、耳を聾する爆音が轟く。ムウ帝国工作員たちが、飛翔する5円を目撃し、反射的に携帯武装を発砲したのだ。

 

「なくなったわよね、この音のヤバさ」

 

 連中ともとっとと縁切りして、早く休暇に入りたいんだけどと内心で思いながら舌打ちしつつ、しかし彼女は店内に響いた音響パターンを迅速に分析、敵携帯武装の性質と工作員たちの概算位置の推定を迅速に終わらせていた。

 

(まずナノマテリアルペレットを射撃に使う曳光弾じみて射出、推進方式は多分射出装置側からのレーザー推進。ナノマテリアルはレーザー光による推進剤反応に押されて飛翔しつつ周囲にナノマテリアルミストを散布、大気状況の改変と散布ナノマテリアル自体で導電回路を空間内に形成する。

 直後、銃本体のコンデンサから放電、電撃が形成された回路を伝って目標へ到達すると。何しろナノマシンに誘導された撃つ雷。誘導体であるナノマテリアルペレットだって、食らって体にいいか正直怪しい。ムウ帝国の民は生けるジェネレーターもいいところ、ナノマテリアルも必要量は恐らく微量、500連マガジンをつけた電動ガンより撃てるかしらね、もしかして無限? は、ないか。リルエル・ベルベ、助けた恩を仇で返してくれる。とはいえ、これに関しちゃ向こうも同じことを言いそうだけど)

 

 一瞬で思考と愚痴を終えつつ、彼女は作戦の進捗状況を確認した。 

 

(北部方面の別働隊を捕捉、これを制圧するも弾切れ、しばらく支援不能、ゴメンじゃないっちゅーに。

 

 とっととセーフハウスで補給済ませりゃいいのに、ランディ共々、散歩もいいとこの歩く速さよね。

 

 私達が片付けるって踏んで余裕綽々? もうちょっと勤務態度を……まあいいけど。

 

 身体張った威力偵察で敵情把握は概ね完了、細工は流々)

 

 式波は軽く自らの唇を舐めた。皮膚が相当に乾いている。

 

(冬だものね。しかもこの冬の潮風だし、しかたがないか。あー、さっさとリップ塗りなおしたい)

 

 益体もないことを考えながら、彼女はその瞬間を待った。

 

=====================================

 

「地上の奴隷どもとは違うという、同盟者の警告を聞くべきだったな。

 我らの体熱と電撃を受けて制圧できぬとは、全く信じがたい。

 この電熱銃ならば制圧しえたかもしれんが、その隙を与えぬとは、恐るべき肉体強度、恐るべき判断力。海底軍艦の副長を勤める器ということか」

 

 轟天号副長を務める少女が立てこもった建築物からやや離れた浜辺から眺めつつ、頭頂からつま先にいたるまでの全身を、大神の眷属の皮衣で鎧ったムウ帝国工作員32号は顔を顰めた。

 

「しかし包囲しました。逃げるすべもない。

 あの少女は、地上奴隷たちのあの野蛮な銃も持ち合わせぬ様子。

 北方面の同胞と連絡が取れぬ以上、持てる電熱銃全ての掃射で建物ごと始末してしまいましょう。

 奴隷共の援軍が来る前に北の同胞たちを回収する必要もあります」

 

 64号の言葉に、32号は苦い表情を浮かべる。

 

「何の利も得ず帰っては、偉大なるムウの皇帝と、我らに奴隷共と戦う術を齎した同盟者に申し訳が立たぬ。

 まして奴隷ごときにやり込められるとは、ムウ帝国臣民としてこれほどの恥はない」

 

「一度の恥は一度の勝利で拭えば良いのです。まして轟天号副長を屠る好機、そうは訪れますまい。本来の潜入の目的は果たせずとも、これは間違いなく戦果。地上の奴隷の如き硬直と油断が、先の敗北の原因ではありますまいか。いますぐご決断を」

 

 32号は頷いた。

 

「そのとおりだ。

 総員、電熱銃構え。最大電力で建物ごと轟天号副長、式波・アスカ・ラングレーを抹殺する」

 

 告げ、自らも背負った電熱銃に手を伸ばし、構えようとして──身体が動かないことに32号は気づいた。

 

「これは」

 

 64号に視線を合わせる。彼の目も狼狽している。

 

「体が動きません。いえ、身体ではなく纏う眷属の皮衣が動かないのです。一体」

 

 彼の言うとおりだった。32号は気づく。自らの肉体にはなんらの支障もないのだが、彼らが全身に護りとして纏う眷属の生ける皮衣、同盟者と皇帝の聖断によって生み出された、地上の奴隷のあらゆる武器を無効とする鎧が、つい先程までは身体に従い、如何なる服よりも軽やかに動いていたというのに、今や鉛のように重く、ムウ帝国臣民の膂力を持ってしてすら関節がまるで動かない。彼らに万能の力を与えていたものが、今や着る檻のように彼らを束縛してしまっていた。

 

「何事──」

 

 首をひねることすら至難となった状況で、眼だけを必死に動かして32号は周囲を探ろうとして──不意に、浜辺の砂を踏みしめる足音が、彼の耳に聞こえてきた。

 

 後ろからだ。

 

 近づいてくる。

 

 その足音と気配は32号のすぐ背後で止まった。

 

「『風下に立ったがうぬが不運よ』って奴ですよ」

 

 まだ幼さを残した、玻璃のなるような涼し気な少年の声音が背後から聞こえてくる。

 

「忍法『春花の術』──の、真似事です。

 

 つまり昔の忍者の漫画のパクリ──昔の漫画すぎるせいか、誰も読んだことがないようなんですよね。かくいう僕も綾波が見つけてくるまで全然──まあ、どうでもいいですよね。

 要するに、あなた方の纏う、『生きた』防護服にだけ効く麻酔ガスを、沖合から散布しただけのことです。

 怪獣由来細胞は個体ごとに差異が激しく、未知の要素が多いので研究が難しいんですが、うちは組織成立の都合上、その道のプロが大変多いもので、研究者には困りませんでした。効き目に関しては、いま体験していただいているとおりです」

 

 背後の声が緩やかに彼の右側を通り、正面に回り込み──そして、黒いスーツに白いワイシャツ、黒いネクタイを身に着けた、地上人で言えば14才程度であろう少年が、32号の視界の中に入ってきた。右目を、黒い眼帯で覆っている。少女とは逆の側だ。何か意味があるのか、と32号は思う。

 

 同盟者から話には聞いていたが、驚くほど幼い顔立ちだった。表情は柔らかく、皮肉な笑みすら浮かべている。

 

 しかしその瞳は無表情であり、視線はあまりにも揺るがず、冷ややかだった。

 

 白手袋に包まれた手で、少年は白い軍帽を目深に被り、無形の強い意志を秘めた、異様に鋭い眼光をその鍔で隠した。そして、言葉を冗談めかして続ける。

 

「一種のパワーアシストスーツとしてマンダの体組織を使うというのは面白い発想ですが、マンダの体組織の強度と生命力に頼るあまり、体組織自体の防御を忘れたのは迂闊でしたね。

 我々が生成したガスは、マンダに特化した分子組成です。怪獣の代謝に合わせてあるため、タンパク質としての特異性が高い。通常生物には概ね、そしてあなた方にも無害。

 年の瀬にやたら喧しくしてしまいましたが、兎も角、それも仕舞いです」

 

 少年はそこまで言うと、不意に32号から視線をそらした。そして、誰も居ないであろう方向に、語りかけるかのように話し出す。

 

「状況終了。綾波大尉、真希波大尉、ランディとモニクさんは撤収、お疲れ様です。あとは僕らで引き継ぎますので」

 

 地上人の無線通信のようなものか、と32号は気づく。彼らの精神は、海底軍艦の巨大電子演算装置と直結しているという。人の身でありながら、半ば人たることを捨てた、人としての側面と機械としての側面を持つ存在。それは、同盟者が固執する所以でもある。

 

 だが、と32号は密かに笑む。北の別働隊は恐らく殲滅されたかもしれないが、まだ我々の母艦がある。

 

 この少年は油断した。母艦の予備隊が動けば、海底軍艦の艦長と副長、その二人を同時に──

 

 だが、彼の思考を読んだかのように、海底軍艦の艦長を務める、少年にしか見えない存在は、涼しさすら感じる声音で冷静に彼に告げた。

 

「あなた方の増援は来ません。母艦なら、先程鹵獲させていただきました。

 だからこそこうして僕が顔見世できるわけで」

 

 言いながら、再び少年は彼から視線をそらした。少年の後方、潜んでいた建物の割れた窓から軽やかに飛び出した少女が、やはり軽やかな足取りで、少年と、身動きが取れぬ32号たちがいる場所目指して浜辺を駆けてくる。

 

 2秒ほどで少女は少年の左脇にたどり着く。全力疾走に近いだろうに、そのくせ息も乱していなかった。それも、かれら工作隊と派手な立ち回りを演じた後なのだ。或いはムウ帝国国民より、よほど体力があるのかもしれない。やはり、同盟者の言う通り、彼と彼女は、地上の奴隷どもの域から『外れて』いるのかもしれなかった。

 

 そんな彼のことを、黒い眼帯で左目を覆った少女は、訝しげに見つめ──おもむろに右目を不機嫌そうに、立ったまま素早く右足で以て、32号の足を払った。

 

 全身を覆う皮衣の重み故に立つのがやっととなっていた32号は、それだけでいともたやすく砂浜に転倒してしまう。

 

「副長、蹴った理由は?」

 

「人のこと見下してたから」

 

 少年の呆れを滲ませた言葉に、少女は平然と答えた。

 

「物理的に?」

 

「精神的にも」

 

「了解」

 

「どういたしまして」

 

 仰向けに倒れた彼の視界の中で、少年と少女が茶番じみた会話を交わす。

 

 そして、少女が32号の顔を高圧的な表情で、夜空を背にして見下ろしながら口を開いた。

 

「人間未満とか仮称ナントカカントカとかBMなんたらかんたらとか言われた時代を思い出させる目つきをする奴って蹴りたくなるのよね。あ、自決とか考える目つきだけど、それ止したほういいわよ?

 マンダスーツの拘束状態だから舌噛んで死ぬとか考えそうだけど、苦しいだけでなかなか意識飛ばないし。

 身体形象自体は地上人類と酷似してるから、可能っちゃ可能なんだろうけど、見張り番終わったら私らひさっびさのオフだから、仕事増やさないで。マジで。悶え苦しんでる怪力のやつの蘇生で年末年始潰れるとかマジ最悪」

 

「まともなオフ、どれぐらいぶりだっけ?」

 

 少女の言葉を聞いて、先程の冷徹な無表情とは打って変わって肉体年齢相応のくだけた笑み──苦笑を浮かべた少年に、少女が指を折りながら応える。

 

「えーと、ひーふーみぃ、第二次二アサーから数えて9──10年ぐらい? んでこっちに来てからもあれやこれやで1年経過だから、勤続11年ってとこか。まあ、プリント仮説だとそう思ってるだけで、せいぜい勤続1年だけど──いや、まともな休み要求するには充分な勤続日数よこれ。月月火水木金金にもほどがあるっちゅーの」

 

「まあ、悪いことばかりじゃないよ。こっちに飛ばされたおかげで娑婆の空気が吸える。

未来はわからないけれど、少なくとも今はそうだ。初詣にも行ける」

 

「運は異なもの味なもの、ってやつ? ま、万事悪いことではないわよね。何事も」

 

「アスカ、それ言うなら運じゃなくて縁だ」

 

「いいじゃないのよ似たようなもんだし。もう年が終わるんだし」

 

 少年と少女は、全て片付いたかのように、油断し、世間話のような会話すら始めていた。

 

 むろん、それが油断などではなく、そうしても構わないからそうしているだけの余裕であるということに、気づいていない32号ではない。

 

 何故だ? 32号の脳裏を、混乱と疑念が回る。彼の隊を運んだ母艦は、地上の脆く哀れな金属風船のごとき潜水艦など皮革にならぬ速力と潜水性能を誇る。如何な海底軍艦とはいえ、それを、赤子の手をひねるように無力化するなど考えられない。

 

 そんな彼に、再び少女が視線を落としてきた。

 

「母艦のことが気になってしょうがないってツラね。こっちの戦力が、あんたの母艦の潜水性能も速力も凌駕したってことよ。この辺の海域だと、海底深度の関係上、満足な性能も出せなかったろうし。

 そっちの艦の戦術機動は、ナイジェルシリーズやら自衛隊のソナー網使ってモニタリングしてたけど、呆れるぐらい性能いいわね。解析におやっさん混ぜないと機嫌悪くするまで見える。あの形状でどうやって海中をああも静かに突進できるんだか。

 ともあれ、潜水艦は拿捕、護衛のゲソラ幼体30匹も敢え無く全滅。ゲソラ幼体、人間相手ならともかく、うちのジュニアが相手じゃ分が悪いわ。ま、ツキがなかったわよ、あんたら。諦めなさい」

 

 30体のゲソラを──幼体とはいえ、全滅? 信じがたい。32号は呻いた。ゲソラは、同盟者が訪れた後、彼らが肥育し始めた最初の怪獣であり、幼体の段階でも油断すればムウ帝国民すらスミで捕獲・捕食する極めて危険な怪獣であった。成体となれば、マンダほどではないにせよ、ムウの新たな護りとして、相応しい神獣の一柱となる。

 

 それほどの存在が、幼体とはいえ、海上に逃れることすら叶わず、敗れる。幼体には母艦を守る本能が与えられていたにも関わらずだ。それほどの獣が? 同盟者は、あの獣はまがい物だ、偽りの破局だ、電熱銃で撃破可能だ、警戒などには値しないと言っていたが──。

 

「へぇ」

 

 32号の心の言葉を聞いたかのように、金髪の少女は目を細めた。そして、32号の傍らに座り込む。

 

「ベルベに何吹き込まれたか知らないけど、あんまり舐めないほうがいいわよ?

 私達のことじゃなくて、きっとあんたが思い浮かべている、きっと馬鹿にしたことを言われた獣のこと──そ、クレイブン。分析ありがとう。タキオン場に感あり、と。シグナル出てたってことは、この会話、ベルベに丸聞こえ? 性格悪いわねあいつ。所詮生身にこだわる連中はミソッカス扱い。ちょっとだけあんたたちに同情するわよ。この展開、あいつには見えてたってことだもの。ぶっ壊れの機械主義者(マシニスト)、あの世界から喚ばれた最後のビルサルド人。何企んでんだか」

 

 腹立たしげに少女は言い放つと、32号の皮衣の首の後ろ側あたりを掴み、上体を起こした。視界に浜辺と潮騒、そして遠く彼の故郷へと続く、海が広がる。

 

 その視界に姿を表さないまま、少年──碇シンジの、声が響き始めた。

 

「ベルベさん。聞いているなら、前に君が聞いたことへの答えを告げます。

 Noです。僕はハルオという存在の代わりになるつもりはない。彼が何を思い、何を果たすつもりだったのかもわからないし、その後がわからない以上、彼の決断や結論について評価する手段を持たない。

 ただ、君が望み、ハルオなる人物に拒絶された未来は、僕もまた拒絶する。君の願いと理想像は誤っている。この世界の機械が、破局と戦うために繰り返した演算の中でそれを証明している。

 もちろん、君は決して納得などしないだろう。破局は終わっていないと君は思っているだろうし、僕もそれは否定しない。

 だから、ここから先の言葉は、事実上の宣戦布告だ。そこにムウ帝国の皇帝が居るというのなら、この言葉は彼女と彼女の臣民に対して告げたものでもある」

 

 静かで、平静で──凪の海にも似て、しかし奥底に、奇妙なほどの力を秘めた声音。普段は凪いで、万人を受け入れるようでありながら、怒り狂うときは恐るべき大波と成り全てを飲み込む、海底の潮流のような底知れなさが、少年の声音にはあった。

 

「リルエル・ベルベ。君たちの放浪と戦いがどれほどの長さと激烈さか知らないが、僕らもまた自らの世界で破局と戦った。故に破局に屈するつもりはなく、そして君の齎すものは、僕らの世界の言葉で言うならば旧生命の絶滅、破局にほかならない。

 僕ら──我々は、その破局に抗う組織にほかならない」

 

 少年が紡ぎ続ける言霊とともに、緩やかに、ムウ帝国工作員32号の視界を満たす暗い海、その水平線の方角に、なにかゆらぎのような物が見え始めた。

 

 ゆらぎはレンズのように波蟠る海面を歪め──そして、何かが世界を透過し、滲み出てくるかのように姿をあらわす。

 

 工作員32号は目を見張った。

 

 それはあまりにも巨大であった。1キロ近い幅があるだろうか。艦首をこちらに向けているがために、全長はうかがい知ることすらできない。

 

 地上人を遥かに凌駕する彼の両眼は、星灯り程度の光量ですら、その艦が、ムウ帝国で語り継がれた如く、恐るべき巨大な螺旋の衝角を備えているのを見とった。

 

 だが、違う。

 

 かの船は、あれほど馬鹿げた巨艦では無かったはずだ。

 

 あの大きさは、まるでムウ帝国の神話に伝わる救いの方舟にも比肩しよう。救いの方舟。つまりは伝説でしかない、物理的に馬鹿げた規模の超戦艦。同盟者がその存在を伝えはしたが、32号も含め、大半がその巨大さを信じなかった。

 

 語り継がれたかの船は、老人たちの話では、もっと小さかったのだ。

 

 せいぜいが1万トン程度。しかして空、陸、海、その全てを作戦域としうる万能戦艦、ムウ帝国を破局へ至らしめた忌まわしき破壊の船。

 

 だから、奴隷共がかの船を改修し、あるいは再建造するにしても、そのスケールアップと彼ら工作隊は考えていたのだが──しかし、同盟者の言葉は事実だった。そう。かの船が齎した破局より、さらに古代から伝わる『救いの方舟』の伝説に近い巨大さ。

 

 自らの正気を疑う。だが、これが現実だ。

 

 そして、おそらくは人類史上無二であろう、恐るべき巨艦の艦首部、その恐るべき螺旋の衝角の上に、それ(・・)は佇んでいた。

 

 自らが足場とする巨艦に比べれば小さいにせよ、それはやはり、恐ろしく巨大な生物であった。

 

 全高、60メートル。

 

 地上の奴隷たちのいう『白亜紀』に闊歩していた、二足歩行の肉食恐竜を思わせる姿。

 

 黒い肌、黒色のトカゲめいたフォルム、厳つく四角い顔立ち、しかし何よりも印象的なのは、一等星の如く輝く目だった。

 

 夜の黒の中に溶け込むような体色でありながら、その眼は黄金色に輝いていた。

 

 何かを反射しているのではない。眼自体が、光っているのだ。

 

 32号の震えに気づいたのだろう。少女──式波・アスカ・ラングレーが、何かを楽しげにつぶやき始めた。

 

 

Godzilla, Godzilla, Flammenpracht(獣よ! 獣よ! 煌々と燃ゆる)

 

 in der Ozean dunkler Nacht:(闇蟠る 夜の海に)

 

 Welcher Schöpfer, welcher Gott(如何な創り手 如何なる神が)

 

 schuf dich, der Angst gebiert und Tod?(創り出したのか、畏怖と死たる汝を)

 

 その詩がその恐るべき獣を詠っているのだと気づいた32号は、いよいよもって全身を怖れに震わせ始める。

 

 彼女が詩を吟じ終えると、少年はその詩に連ねるように言葉を発した。

 

「僕らは──いえ。我々はアトラゴン(Atragon)

 例え万億の生命全てに憎まれたとしても、それでもなお群れたろうと手を伸ばした巨竜、その朋友たる組織です。

 僕らのいる世界では、一つルールがありましてね。自らの同位体がいる場合、後進の側が名を変える。

 

 轟天号。法則のエラーを来し、衰えた僕らの艦に宿り、僕らを破局から救った艦。

 僕らの艦は、今はその名を戴きました。それこそが今は相応しいからです。

 そして、この世界に『碇慎司』がオリジナルとして存在する以上、僕もまた姓名を変えています」

 

 ひどく静かな夜の中。星々が浮かぶ空の下、どの星よりも輝く一対の金色の瞳から目を離せない。しかし、32号には、なぜか、今言葉を連ねる少年こそが、眼前で目を輝かせる巨獣よりも、なお恐ろしいように思われた。

 

「神宮寺シンジ。

 かつて人知れず地上人類を、そして世界を破局より救った人の姓を戴きました。

 これが今の僕の名です。戦争相手はこの世界の碇慎司ではない。

 これで一度刃を交えた。

 二度目、三度目があるというのならば、僕らは合切容赦しません。

 アトラゴン旗艦『轟天号』は、あなたの言う下等生命護持のため、総力を上げてこれを撃滅します。

 破局を以て破局から救わんと企てるならば、我が『轟天号』もまた、本来は破局たりうる撃槍。そのリスクはあなたもご存知のはず。

 破局を以て破局を討つことに、一切合切の躊躇はありません」

 

 少年の声は、どういう手段によるものか、32号を通じて少年の声を聞いているらしき、ムウ帝国の同盟者、リルエル・ベルベに向けられているようだった。つまり、32号は最早眼中にすらないのだ。

 

 地上の奴隷種族の、しかも贋物に過ぎぬらしい少年の、ただ静かなだけの声音が、しかし、32号にはあまりに恐ろしくてならなかった。

 

 その声の静かさ、そして明瞭な発音は、その意思の明確さと、決意を示していた。

 

 討つという以上、彼は躊躇わず討つのだと、32号は理解した。

 

 かつてムウ帝国を襲った破局、轟天号の名を戴いた艦は、まさに今眼前に有り。

 

 その艦は、本来奴隷種たる地上人類などと群れるはずのない恐るべき種族、怪獣をも輩としているのだ。その証拠に、ムウのゲソラ幼体は、そのことごとくがあの恐るべき眼光を放つ獣によって、苦もなく殲滅されてしまったのだろう。

 

 少女が、明確に上機嫌な声音で、先程の詩の続きらしきものを呟いた。

 

Als der Sterne Speer herab(星ぼしの世界より撃槍が落ち)

 

 Tränen unserm Himmel gab:(涙、天国を満たす時)

 

 Hat vollbracht er's und bedacht,(彼が念慮し成し遂げたるは何ぞ)

 

 daß er Lamm und Dich gemacht? cht,(子羊たる者達の如くに、お前を作りたるか?)

 

 その言葉が、ドイツ語であることを、32号は理解できた。だが、その言葉の意味するところまでは、理解できなかった。獣と、獣を作ったものへの問いかけのようであるかのように思われた。

 

 世界と、ケモノの歌。世界の構造の歌。意味はあるのかも知れない。だが、それを理解してはならないと、彼の魂が怯えていた。

 

 わかってはならないうた。耳に響いても理解できない、理解したときには既にして機能している言霊。

 

 それが呪いであるのか、祝いであるのか、32号には理解できなかった。

 

 あるいはこの少年と少女は、既にして言葉でもって、彼の向こう側で彼らの言葉を聞く同盟者と、交戦を開始しているのかも知れなかった。

 

 すでに32号の心理から、戦意は完全に喪失していた。自らが戦っていた戦争が、征服し勝利するだけという単純なものではなく、なにかもっと危険で、弄んではならぬたぐいのものを知らず激発させかねぬ危険なものであったことを、既にして彼は悟ってしまっていた。

 

「それを選ぶというのなら、躊躇はしません、リルエル・ベルベ。

 あなたの理想を、願いで砕く。あなたと共に来るムウ帝国諸共に」

 

 冬の大気よりなお冷たい声音が32号の耳朶を、魂を凍らせ、砕く。この少年は、それを為しうるだろう。

 

 皇帝陛下を止めるべきだった、と32号は思う。それで己が殺されようと。

 

 ムウ帝国は地上になど関わるべきではなかったのだ。同盟者の甘言になど乗るべきでは無かったのだ。

 

 少年と少女。黄金の輝きの眼光の巨獣。それらが同質の、破局を司る、あるいは司りうるものであることを、32号は確信し、かつて轟天号と名付けられた船とその乗り手たちがそうしたように、彼らもまた同質の破局を齎すことを迷わないだろう。自らの破局を阻むためならば。

 

 32号には何も出来ない。戦いの意義を見失い、まして身動きも取れぬ今はなおさらのことだ。絶望の他に、彼にできることはなかった。

 

 重い響きを放つ類の弦楽器を、およそ人には思いもつかぬ奇怪な鳴らし方をすれば、このような音が鳴るだろうか、という響きが、衝撃波めいた重さを孕み、冬の暗い夜天を震わせる。

 

 あの恐るべき艦の衝角、その上で黄金色の眼光を放つ、人智至り得ぬ恐るべき獣が上げた、あらゆる生物を恐怖させ、屈服させずにはおかぬ、獣の王たる種族にこそ相応しい咆哮であった。

 

 その響きに、音圧に、彼は震え上がる。それは恐怖であった。識ってはならぬもの。聞いてはならぬもの。それを聞いている、識ってしまっている、その自覚ゆえの、あまりにも、純粋な、恐怖そのものにほかならなかった。

 

=====================================

 

「神々と悪魔たちが海をかき回すと、そこにはまず毒が浮かんだ。

 ハラーハラ。アムリタの対、世界と万物を侵す猛毒。

 海を沸き立たせ、全てを飲み込むそれを、神々も悪魔もどうにも出来ない、彼らはシヴァに助けを求めた。 

 シヴァはハラーハラを飲み干し、シヴァの姿は青く変じた。

 だが、『万物は毒である』なんて言葉もある。シヴァが不滅となったのは、アムリタではなくハラーハラを飲み干したからこそ。

 そう言いたいのかな? 神宮寺シンジ艦長殿」

 

 ベイラ・バーン、通称BBは、借り物のトヨタbBの車内、その運転席でつぶやいた。

 

 北条海岸通りのほど近く、年の瀬で客が来る気配のない、コンビニエンスストアの駐車場である。

 

 アトラゴンが運用する自律無人探査ユニット『ナイジェル2』シリーズの量産には、シヴァ共同事業体関連の企業も参画している。音波電波重力波タキオン波に至るまでを検知する探知能力を誇るがゆえに、盗み聞きをするための盗聴・監視装置を忍び込ませ、未だ謎多きアトラゴンという組織を調査・監視するには最適と言えた。

 

 無論、あの艦長のことだから、そういう仕掛けをしてくること自体は承知の上だろう。むしろ一枚噛ませてそういう仕掛けをさせる余地を残す程度の余裕を、シヴァ共同事業体に対して見せているとも言える。

 

 笑顔で貸しを作って面倒な仕事に巻き込んでくる、面倒な年配の上司の仕草だな、とBBは内心でつぶやいた。

 

 14のガキは14のガキらしく振る舞ったほうが楽なんだが、どうもそういうのは卒業済みのタイプなようだ。若いくせにあまり賢しらなのは嫌われるんだがねえ。まあ、彼の場合は賢しらが過ぎるから当てはまらんかもしれんが。

 

 それにしたって半年かそこらの活動で、日本国首都圏の復興事業に絡んで暗躍したり、日本だけじゃなくアメリカにまでパイプがあるのは、賢しらを通り越して気持ちが悪いというもんだ、とBBは思う。

 

 気持ちが悪いを通り越して、特異点が人の革をかぶって生きているようなもんだ。ミレニアムが過ぎて30年が立つというのに、1945年に終わった戦争絡みの都市伝説であるG資金絡みの文脈で調査報告が上がってきているらしいのも始末に負えない。

 

 だいたいG資金の都市伝説で海軍士官たちが大日本帝国再興のために奪取した伊号403号潜とかいうのは建造中止になってるんだが、そういう与太話を監査部含めて複数筋から上に上がっているんだから始末に悪い。

 

 あるいはあの少年艦長が、冗談半分本当半分に吹聴しているのかもしれなかった。嘘に本当を混ぜ、本当に嘘を混ぜ、境界を曖昧にしてしまい、結果どの調査情報を信じていいかわからなくしてしまうという、一種の欺瞞方法である。

 

 そういうテクニックを使いこなせる、そういう人間が、シヴァ共同事業体という、クリーンとは程遠い組織を相手に笑顔で手を差し伸べ、自ら刺しやすい脇腹を示して見せもする。昔はどうであったにせよ、人生の経緯で間違いなくろくでなしに成り果てた類の存在だろう。

 

 そういうろくでもない、見た目は若造でしかない人間が、疑いなく人類圏でも最強クラスの戦力らしい存在を有する。しかもおそらくは複数。ナイジェル2ひとつとっても、2030年になって未だ理論の中にしか存在しなかった超光速粒子タキオンの存在と、それを用いた超光速通信が前提になっている。タキオンを商売で持ち出すやつは、狂っていてタキオン利用が可能だと本当に信じているか、正気だが詐欺師でバカを騙して金をむしり取ろうとする悪人のどちらかだ。

 

 そして困ったことに、ナイジェル2のタキオンセンサーは、間違いなく本物である。量子レベルの熱力学挙動に完全に当てはまりつつ、さらに前提となるのが虚数質量の超光速粒子が形成する場と、それを伝う波であると、3桁を越える追試が完全に保証してしまっている。

 

「光速で移動する物体の経過時間はゼロになり、光速を越えだすと今度は時間をさかのぼり始める。そして質量のある物体は決して光速を越えられない。

 逆に言えば、質量がどうあがいてもマイナスにしかならないような物体は、どうあがいても光速より下に速度を下げられない。あくまで理論上であり、李の研究対象の一つでもあった。俺もそういう提案をしたし、実際あのAIはやってのけたが──それはあくまで『破局』前の話だ」

 

『破局』の季節が終わり、紅塵が青く染まり、シヴァもあのAIも喪われた今となっては、再現性がない。空を埋め尽くすラドンも消え、サルンガも青い結晶に冒され余命幾ばくもなし、そのはずなんだが──

「破局駅の次は破局、破局でございます。破局線は破局でお乗り換えください。ホームは3番線となります、お間違えのないように──」

 

 艦長と副長の会話内容が、やれキモノの着付けがどうだの、私のキモノの色が赤だからあんたも赤いハオリハカマにしろだの、お仕着せみたいで嫌だし赤いハオリハカマはないだの、そういうティーンエイジャーのカップルがするようなくだらない内容に変わったところでBBは助手席においたトランクの中の、盗聴システムのスイッチを切った。本年の放送は終了いたしました、来年もご愛顧のほど、何卒よろしくお願いいたします。

 

 ムウ帝国と、あの艦長と知り合いらしい『同盟者』、それに艦長自身と副長、夏に東京を破滅に追いやった巨大怪獣と同じ鳴き声で鳴く黄金の眼光を放つ怪獣。それに、とBBは内ポケットから二枚の写真を取り出した。

 

 写真の一枚には、浜辺から野原にかけてを使って寝転ぶ、強いて例えるならゴリラに似た類人猿が映っている。問題はサイズで、一緒に映っている人間があまりにも小さすぎるため、恐らくサイズは先程ナイジェル2のセンサーを利用して盗撮した黄金の目の怪獣と同等だろう。無論、こんな馬鹿げたサイズのゴリラが、有史以来この地球で確認されたことはない。

 

 撮影場所は、米軍が管轄する小笠原諸島の七軒島という、昭和時代に爆発事故を起こして以来無人島となり、買い手が長らくなかったことから米軍への供与が決まったという曰くのある島であり、撮影者も米軍内に潜り込んだエージェントの一人である。

 

 そしてもう一枚は、アフリカ投げナイフじみた奇怪な形状の、何かの動物の背びれか何かを加工して作ったと思しき手斧であり、運搬用船舶の甲板から推測するに、先程のゴリラの化け物が持てばちょうどよいサイズだろう。

 

 黄金の肉食恐竜型怪獣に、武器を使うと思しきゴリラ型怪獣。そして、それら怪獣よりも遥かに大きな巨大戦艦。

 

 そのいずれもが、サルンガや東京に現れたあの恐るべき獣のように、破局を担いうるとしたら?

 

 あるいは今スティーブンたちがかかりっきりになっているらしい、あの謎めいた骨のように。BBの笑みが深まった。

 

「葦原ノート。その図形の一つには、無数の破局点が描かれ、その重力的近郊により破局と破局が衝突せず近郊が保たれている、無数の細胞核だか目だか矢印だかの寄せ集めのようなものもあったが、複数の破局点同士の対立。あるいは重力均衡によるグループ化。より巨大な破局を回避するために、破局を敢えて受け入れる。

 なるほど、万物は毒であり、量次第で当然薬にもなる。だが、『破局』そのものを飲む覚悟を決められるやつはそうは居ない。

 ハラーハラを平然と飲み干して、量を間違えなければ健康にいいですよ、どうですかと言われて飲めるやつはさらに少ない。わかっているのか、いないのか」

 

 神宮寺シンジ。やつのことは好きになれそうにないな。

 

 そう思った矢先、不意にポケットのスマートホンが鳴る。

 

 娘からだった。

 

「もしもし? ああ、今ホテルに戻る。用事が終わったからな。年が明ける? 仕方ないだろう、明けない年はないからな。

 帰る時間? 60年後。 いや1万2千年後だ。あまり夜ふかししないでおとなしく寝てろ、サンタさんが来ないぞ。

 ああ、明日は大丈夫だ。ウラヤスの、なんだったか? 大抵のところが怪獣騒ぎに巻き込まれて破壊されたが、微妙に東京から場所がずれていたせいで無事だったとかいうテーマパーク。まあそりゃ混むだろうが──」

 

 マイク会話モードに切り替え、鍵をひねって車のエンジンをかける。通話を切り上げて、彼は車を走らせた。ベイラ・バーンは面倒な男だが、年明けに親と過ごしたがる娘を無視しきれるほどには親を辞めてはいなかったし、怪獣騒ぎで貴重になってしまった類のテーマパークのチケットを娘のために押さえておく程度には優しさもあるのだ。

 

 

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 2030年の終わりを、彼らはこのようにして迎えた。

 

 2031年が始まる。

 

 破局の夏が終わった時、誰もが破局は最後だと思っていた。

 

 笑い飛ばしたかったのだ。大滝社長の「あのゴジラが最後のゴジラとは思えねえ」という、破局を越えたあと彼が口癖にしてしまったその言葉を。彼のみならず、誰もが内心胸の中に抱いていた不安を、可能性として具象化シたくなかったのだ。

 

 2031年は容赦なくタイムラインに従って始まりつつあり、そしてそれに備えているものたちも、一人や二人ではないのだ。

 

 結局、ジェットジャガーはいかなる破局から彼らを救ったのか?

 

 サルンガが、青色結晶に冒されながら未だ生き延びている理由とは?

 

 神宮寺シンジとは?

 

 ムウ帝国にかつて訪れた破局、それを齎した轟天号とは。

 

 米軍が管轄する島に住まうという、謎の類人猿怪獣とは。

 

 ルールも目的も不明なまま、無数の駒が並べられた。

 

 最後の除夜の鐘が鳴り、年が明けてゆく。

 

 だれもが未だ見えぬゲームの全貌を思いながら、叶う限り高く掛け金を積み上げていく。

 

 それを総取りするのは、果たして誰か──一時の秩序が終わり、混沌(カオス)が始まる。

 

 

『G+A Singular Point Prologue EOF』

 

 

 

──G+A Singular Point Season1総集編 「怪獣王ゴジラという時代 2031年の闘争」に続く


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