もしも竈門炭治郎のもとを訪れたのが比古清十郎だったら   作:オサレの伝道師

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伊之助があの刀を手に入れたことに関して感想頂いたことですけども……鬼はほら、いっぱい人を喰ってるから…それで脂乗ってるんだよ。脂乗った鬼は無○刃の大好物。



日天と柱編
日天と炎柱


 

 

 夜明けを想わせる曙色の日輪刀を持つ剣士と、炎を想わせる赫い日輪刀を持つ剣士が背中を合わせ戦っている。

 

「君はいったい何者なんだ?

 

(強い…とてつもなく強い。

 この子がお館様が言われていた"親しい友"。

 だが、()()()()()()())」

 

 赫く燃え上がるような日輪刀を持つ剣士──"炎柱"煉獄杏寿郎は今宵、不思議な剣士と鬼に遭遇した。

 

 しかし、その剣士は悪鬼滅殺を掲げ鬼を狩る鬼殺隊に所属する剣士として決して見過ごせない存在だ。

 

 だがその剣士と鬼に煉獄杏寿郎は助けられてしまった。その剣士と鬼がいなければ、鬼殺隊最高戦力の一人に数えられる炎柱である彼ですら間違いなく殺されていただろう。彼が今回の任務で()()()()()()()()に巣食う鬼は、それ程までに厄介な血鬼術を使う鬼だったのである。彼一人だけならば確実に、自身だけではなく乗客諸共皆殺しにされてしまっていたはずだ。

 

「今は竈門炭治郎とだけ名乗っておきます。

 それよりもまず…この鬼を葬らなければなりません。

 この鬼の討伐は()()()()()()に任せましょう。恐らく、前方に鬼の急所はある。俺と禰豆子は前方四車両の乗客達を守りながら善逸と伊之助を援護します。あなたは後方四車両をお願いします」

 

 その上、こうも的確な指示をされてしまっては…。

 

「了解した。

 

(助けられた上に、こうも的確で正確な指示を出されようとはな。うむ…柱として不甲斐なし!!)」

 

 今は従うしかなく、何よりもやるべきことはこの無限列車の乗客達を誰一人犠牲を出すことなく救うことが大切だ。

 

 煉獄杏寿郎にとって、鬼は斬るべき対象であることは変わらない。それでも今は、弱き人々を守る為に戦う目の前の鬼を信じてみようと……その鬼の兄だと名乗る強い剣士を信じ、己のやるべきことを優先しようと決意し、大人しく指示に従う。

 

 煉獄杏寿郎の人生に於いて、この出会いは生涯忘れることのできないものとなる。

 

 そして、炎柱である煉獄杏寿郎にとってあまりにも大きな影響を与える出会いとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無限列車編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は遡り──数日前。

 

 半年に一度、鬼殺隊総本部にて開催される"柱合会議"から二ヶ月経過した頃のこと…。

 

「"()()"の可能性がある。

 杏寿郎…この任務を君に任せようと思っているんだ」

 

「お館様!

 その任務、炎柱として必ずや遂行してみせます!!」

 

 短期間のうちに、"無限列車"という列車で四十人以上の人間が行方不明となり、数名の鬼殺隊士を送り込むも全員が消息を絶ってしまう事件が発生していた。

 

 事態を重く見た産屋敷耀哉は、並の隊士では何人送り込もうが結果は変わらないと判断し、事件解決の為に鬼殺隊最高戦力の"柱"を送り込むことにした。

 

 その任務に選ばれたのが歴代最強の"炎柱"(煉獄家歴代最強)の呼び声高い漢──煉獄杏寿郎である。

 

 現在の鬼殺隊を支える柱達は、千年以上もの長きに渡り存在する鬼殺隊に於いて、"全集中の呼吸"を最初に使用し、歴代最強の呼び声高い戦国時代の柱達以来の精鋭揃いと言われるほどのもの。煉獄杏寿郎は、その柱達の中でも上位の力を持つ剣士だ。

 

 産屋敷の予測通り上弦の鬼が関わっているのならば柱が出向くのは当然のこと。だからこそ、煉獄杏寿郎が今回の任務に選ばれたのだろう。

 

 百年以上もの間、鬼殺隊は上弦の鬼の討伐に成功していないが、煉獄杏寿郎ならば可能だと産屋敷は信じて疑っていない。

 

 彼本人も敬愛する産屋敷の期待に応えるべく、覚悟と決意に満ちた表情を浮かべ、力強く宣言している。

 

 そして、この任務が煉獄杏寿郎にとって大きな転換期となるのだが……それを本人が知るはずもない。

 

「それとね杏寿郎…君には伝えておかなければならないことがあるんだ」

 

 ただ、転換期を迎えるのは煉獄杏寿郎だけではない。今、鬼殺隊そのものが大きな転換期を迎えている。

 

「近いうちに、()()()()()()()退()()ことになる」

 

「なんとッ!!

 それは本当ですか!?」

 

 これから上弦の鬼が関わっているかもしれない任務に赴く煉獄にとって、それは青天の霹靂。煉獄にとって尊敬に値する存在である"蟲柱"胡蝶しのぶが突然、柱から退くというのだから驚かないはずがないだろう。

 

 しかも、二ヶ月前の柱合会議では五体満足で何一つ異変は見られなかっただけに余計である。

 

「もしや柱合会議後の任務で胡蝶の身に何か!?」

 

「いや、そういうわけではないよ杏寿郎」

 

 だがどうやら、胡蝶しのぶが柱の座から退くには深い理由があり、それは鬼殺隊にとって決して悪い話ではないことが産屋敷の様子からも見て取れる。

 

「しのぶが柱から退く理由はね、自身の毒の研究に集中する為なんだ」

 

 とは言え、そのきっかけはやはりあまり良いものではない。

 

 鬼殺隊にとって最大の仇敵である鬼舞辻無惨。その鬼舞辻についての新たな情報が、二ヶ月前の柱合会議後に発覚したのが大きなきっかけなのである。

 

 鬼殺隊ですら把握できていなかった鬼舞辻の情報が、産屋敷の()()()()から告げられたそうなのだが、その情報は産屋敷ですら冷や汗を流しかけたほどのものだったそうだ。

 

 下手をしたら危なく鬼殺隊本部でもある産屋敷邸の場所が鬼舞辻に知られてしまっていたかもしれないのだから、それは仕方がないだろう。

 

 そして、鬼殺隊ですら把握できていなかった鬼舞辻の情報というのが、鬼舞辻が配下に置く全ての鬼が知覚する様々な情報を自身も共有することができる"知覚掌握"という厄介極まりないものだったのである。つまり、鬼舞辻は配下の視覚を通じて遠方を見ることが可能であるということ。

 

 幸い、産屋敷の親しき友は()()()()()()()()()()()()為に、その能力は発動されることなく、産屋敷邸の場所が鬼舞辻に知られることはなかったようだ。

 

 ただ、鬼舞辻のこの能力のせいで、鬼殺隊士達は自身の情報を鬼舞辻に把握されてしまっている。もっとも、鬼舞辻は全ての鬼殺隊士の情報を把握するつもりはないだろう。鬼舞辻にとって、柱以外の鬼殺隊士は蟻も同然だ。

 

「よもやよもや…鬼舞辻無惨にそのような能力があったとは…いや、最初からそう考えておくべきだったかもしれん!」

 

「そうだね。

 我々も迂闊だった」

 

 柱にとって、これは由々しき事態だ。とくに、柱達の中で唯一鬼の頚を斬り落とす事ができない胡蝶しのぶにとっては死活問題だ。

 

「しのぶは二ヶ月前、那田蜘蛛山で窮地に立たされてしまった。硬い皮膚を持った下弦級の鬼に、刺突がまったく通用せずに毒を打ち込めなかったみたいだ。それに、鬼舞辻からしても頚を斬り落とす以外で鬼を殺す方法を持つしのぶは無視できない存在になる可能性もある」

 

 裏を返せば産屋敷の言葉通りで、胡蝶しのぶは柱達の中で最も厄介な存在として鬼舞辻に認識されてしまっている可能性も高い。彼女は、日光と頚を斬り落とす以外で鬼を殺す方法を開発した唯一の存在だ。今後、鬼舞辻や上弦の鬼ですら分解する事ができない毒を開発する可能性もある。

 

「なるほど!

 それで、胡蝶は更なる強力な毒の開発と剣術(刺突)の強化を図る為に柱から退くと!!」

 

 那田蜘蛛山ではたまたま、産屋敷の親しき友が胡蝶しのぶを助けてくれたが、次も助けてくれるとは限らない。無論、その場に居合わせたなら助けてはくれるだろうが、共に行動しているわけではない為に、毎回助けてくれるわけがない。そもそも、柱が()()()()()()()()()()に助けられるというのは、柱として面目丸潰れだろう。

 

 だが、胡蝶しのぶの場合は他にも大きな理由がある。彼女は鬼殺隊にとって、絶対に欠かせない存在なのだ。

 

 薬学だけではなく、医学にも精通している彼女は鬼殺の任務以外に、自身の私邸"蝶屋敷"にて負傷した隊士達の治療や、機能回復訓練などの後方支援を担うなど、他の柱達と比べてもその役目は多岐に渡っている。

 

「しのぶは鬼殺隊の専門医だ。

 杏寿郎や他の柱達よりも担当区域は狭くしてあるけど、それでも多忙すぎることに変わりはない」

 

 胡蝶しのぶは鬼殺隊の生命線と言っても過言ではないだろう。

 

 煉獄も彼女には何度も世話になっており、彼女がもしいなくなってしまったらと想像した瞬間に身震いしている。

 

「確かに胡蝶の負担が大きすぎる!

 だがお館様…柱が一人欠けてしまうのは士気に関わるのでは!?それに、柱級の隊士がまったく育ってはいない状況だ!」

 

 とは言え、煉獄の言うことももっともだ。現在の鬼殺隊は柱以外の隊士達の質が落ちている。負傷者、死亡者が多く、胡蝶しのぶが多忙なのもそれが理由なのだ。

 

「その点は大丈夫だよ。

 この二ヶ月間、何もしてなかったわけではないんだ」

 

 しかし、聡明な産屋敷が何の対策もせずにただ黙っているはずがない。

 

「この二月(ふたつき)()()…三人の隊士が厳しい修行を乗り越えて柱級の隊士と言えるまでに成長してくれたんだ。私の親しき友と、しのぶからもお墨付きを貰っている」

 

「なんと!?」

 

 胡蝶しのぶが抜けた穴を埋めてくれる存在が三人もいる。

 

 柱は、並の隊士数十人……いや、百人分に相当する剣士とまで言われる実力者揃い。その柱に匹敵する力を持った剣士が三人もいるというのは、戦力が低下している鬼殺隊にとっても朗報だ。

 

「杏寿郎。

 実は君の今回の任務に、その三人の内の二人を同行させるつもりなんだ。だから、君もその子達の実力を見極めてほしい」

 

「うむ!時透も刀を握って二月で柱になっている!本人の努力と才能にもよるが、成長するには十分な期間だ!

 会うのが楽しみで仕方ない!!」

 

 二ヶ月前の柱合会議でも鬼殺隊士の質の低下は問題視されていただけに、これを機に隊士の質が全体的に改善されたらと思っているはずだ。二ヶ月という短期間で柱級の隊士を育てたという修行法も気になっているだろう。

 

「それと、今回の任務は私の親しい友も同行している」

 

「それはお館様の呪いの進行を抑えてくれたという!

 ぜひとも会ってみたい!!」

 

 その修行法を考案した……いや、考案したというのは少し語弊がある。

 

 産屋敷が"親しい友"と呼ぶ存在はひたすら三人を扱き、鍛え上げただけだ。人を指導するということが壊滅的に下手で、その者はただ実戦形式で打ち合い、体に叩き込んだようなもの。

 

「杏寿郎…私の親しい友はとても強い。

 けど、本来なら君達とは()()()()()()()だ。だから、冷静になって判断してほしい。すぐに答えを決めるのではなく、その者がいったいどのような人物なのか、しっかりとその目で見て、確かめてから判断してほしいんだ」

 

 柱達全員が敬愛する産屋敷耀哉が親しい友と呼ぶ存在──竈門炭治郎。

 

 良い意味でも悪い意味でも鬼殺隊に多大な影響を及ぼしている竈門炭治郎と、その者に鍛え上げられた隊士達が如何程のものなのか、煉獄は任務とは別にそれを見極めなければならない。

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 鬼は人間を遥かに凌駕する身体能力を持つ。

 

 その鬼の中には、"血鬼術"と呼ばれる異能な力によって音速の速度を出せる鬼すらも存在する。

 

「権八郎に速さで挑むなんてバカな鬼だぜ」

 

「相変わらず容赦ねえ…。

 

(けど…音速ってこんなに遅かったっけ?

 炭治郎がかなり手加減した速さよりも遅いような?俺もこれくらいの速さなら簡単に出せるけど…やっぱ()()()()()だよな…炭治郎の地獄の訓練のおかげというか、所為というか…)」

 

 だが、音速を目で捉えることができるどころか、遅いとまで口にする人間達が存在している。

 

 猪から剥ぎ取った頭皮を被った上半身裸の少年と黄色い頭の少年は至って冷静な様子で、寧ろ憐れみの籠った瞳でその鬼の行く末を悟っているようにすら思える。

 

「なッ──消えた!?

 

(い、いったいどこに!?)」

 

 そして案の定と言うべきか…。

 

 音速の鬼は花札のような耳飾りをした赫灼の髪の青年に襲いかかり、鋭い爪で頚を引き裂いた……のだが、その青年は幻だったかのように姿を消してしまったのである。

 

 

 

──日天御剣流・白龍幻日──

 

 

 

 そして、気付くと全てが終わって(反転して)いた。

 

「え…?」

 

 地に落ち行く頭。瞳に映り込んだ景色は逆さまで、最後に捉えたのは絶対的強者の後ろ姿だ。

 

「す…凄え…。

 

(ちくしょう…まったく見えなかった!)」

 

 音速の鬼の速度は捉えることができた猪頭の少年ですら、その青年がいったい何をしたのか捉えることができなかった。

 

 音速を遥かに凌駕する神速。

 

「あれは…。

 

(()()()()()()の超人的な動体視力を翻弄した躱し特化の舞"幻日虹"…けど、それに更に剣撃を加えた?)」

 

 音速を上回る神速の捻りと回転で、幻だと思わせるかのような瞬間回避は辛うじて捉えることができた黄色い頭の少年だが、どのように鬼の頚を斬り落としたのかまでは捉えることができずにいた。

 

 猪頭の嘴平伊之助と黄色い頭の我妻善逸。この二人は見ていただけだが、音速で動く鬼を遅いと言えるほどに強く、彼らが戦っていたとしても間違いなく鬼を討伐していただろう。

 

 しかし、花札のような耳飾りをした青年──竈門炭治郎は、その二人よりも遥かに強い。

 

「この鬼は()()

 実力と犠牲者の数が見合わない…恐らく"下弦"か、はたまた"上弦"か…本当の黒幕は他にいると思う」

 

 その上、冷静なこの分析力。見た目こそ少し大人っぽく見える青年だが、実はまだ十五歳の少年だ。

 

 竈門炭治郎は現在、四十人もの乗客が犠牲になったという事件の情報を受け、その事件の調査に当たっていた。その過程でこの鬼と遭遇したのだが、どうやらこの鬼の所業ではなかったと、すぐに鬼の実力を把握し、真の黒幕がいることを悟っていた。

 

「紋次郎!

 次は俺の番だからな!」

 

「ああ、真の黒幕の討伐は伊之助と善逸に任せる」

 

「えええええ!?

 ちょッ──嘘だろ!?十二鬼月かもしれないんだぞ!?俺を死なせるつもりなのか!?とんでもねえ奴だ!マジで鬼だ!お前は鬼より鬼だよ炭治郎!!」

 

 そして、竈門炭治郎はこれが序章に過ぎず、これから先に起きるであろう事態がより混沌と化すであろうことを嗅ぎとっているようだ。

 

 その証拠と言っては何だが、混沌と化す状況を表すかのように()()()()()()

 

「君達は何者だ!?

 

【炎の呼吸 陸ノ型 天火突】」

 

「あなたこそ…何者ですか?」

 

 

 

──日天御剣流・碧羅龍巻──

 

 

 

 盛んな火気の如く鋭く襲いかかる刺突。

 

 その刺突を躱わし、腰を回す要領で水平に回転しながら放たれる返し技。

 

「ッ!

 

(俺の最速の突き(陸ノ型)を躱された!?)」

 

 夜明けを想わせる曙色の日輪刀と、赫く燃え上がる炎を想わせる日輪刀が交差する。

 

「俺は"炎柱"煉獄杏寿郎!!」

 

 今宵、運行再開する無限列車。

 

 人と鬼の戦いがより激化しようとしている。

 

 

 






お待たせしました!

1日遅れでの更新申し訳ないです!

さてはて、ここから始まる無限列車はどうなるのかな?

▪️日天御剣流・白龍幻日
龍巻閃と幻日紅の合わせ技。
高速の捻りと回転を加えた瞬間回避の身体捌きに龍巻閃を合わせた返し技の極意。

由来は白龍白雲。
古代中国で使われていた裁判官の別名だそうです。
鬼狩りを裁く者とかけてみました。

▪️日天御剣流・碧羅龍巻
龍巻閃に碧羅の天の腰回しを加え威力を上げた技。

そしてようやく出てきたぜ煉獄さん!

炎の呼吸は陸、漆、捌ノ型が未発表な為にオリジナルです。
ただ、炎の呼吸と基本に五大呼吸の中でも一番、日の呼吸の影響を受けてるのではのいかと思うのはわたくしだけ?

▪️陸ノ型・天火突
陽華突に似た突き技。

由来は天火日。
盛んな火気を例えている天火日より。


新章開幕!ってなわけで!執筆捗るので色好い感想とご評価ぜひぜひよろしくです!!

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