もしも竈門炭治郎のもとを訪れたのが比古清十郎だったら   作:OSR

3 / 19


飛天御剣流を呼吸で例えたら何の呼吸がいいのだろう?飛の呼吸?龍の呼吸?



鬼斬り抜刀斎

 

 

 鬼を連れた流浪人──竈門炭治郎。

 

 彼は現在、暗い森の中で大勢の鬼に囲まれていた。

 

「けへへへへ、獲物がまた1人。しかも1人でやって来るとは…間抜けな()()だぜ!!」

 

「ガキじゃねェか!

 せめて小娘の隊士だったら良かったのによォ!!」

 

 鬼は基本的に、極めて独善的で自己本位的な性格であり、同じ鬼同士での同族意識や仲間意識などは皆無。寧ろ、同族の事を互いに餌や立場を巡って争うライバルとしか認識しておらず、一つの集団や種族としては殆ど成り立っていない。

 

「鬼は徒党を組むことはないはずじゃ…?

(それよりも、俺…鬼殺隊の隊士と勘違いされてる?

 どうして…あ、"鎹鴉"を連れてるからか)」

 

 その鬼達が何故、徒党を組んでいるのか…。

 

「に、逃げて!!」

 

「は、早く逃げるんだ!!」

 

 その理由は、たまたまの偶然である。

 

 どうやら、この近くに存在する幾つかの村で、それぞれ別々の鬼による被害が発生していたらしく、それぞれの村に別々に鬼殺隊の隊士が派遣されたらしいのだが、その隊士達が揃いも揃って鬼を仕留め損ね、取り逃がしてしまったのだそうだ。

 

 そして、その鬼達が逃げ去った方向──この森に、縄張り争いをする複数の鬼がおり、その鬼達が逃げ延びた鬼から鬼殺隊の隊士がこの森に向かっていることを知らされたのである。

 

 その結果、鬼達は鬼殺隊の隊士達を皆殺しにすべく、徒党を組んだのだ。正確には、早い者勝ちという思考が真っ先に働いたのだろう。殺した隊士を横取りしようと考えている鬼もいる。実に、独善的な鬼らしい思考だ。

 

「あぐ…こ、殺さ…ないで…」

 

「ひ…い、いや…死にたくない」

 

 ただ、連携などまったく取れていない鬼ではあるが、鬼殺隊の隊士4人に対し、鬼が10体と数で勝っており、隊士達は危機に瀕している。

 

 炭治郎がこの森の近くにいなければ、間違いなく殺されていたはずだ。

 

「あまり、鬼殺隊の前では戦いたくなかったけど、今回は仕方ない」

 

「に、逃げッ──」

 

 しかし、逆もまた然りだ。

 

 炭治郎がこの森の近くにいなければ、鬼達は今頃……食事にありつけていたはず。

 

 

 

──飛天御剣流・龍猛閃──

 

 

 

 鬼が10体いようと、炭治郎にとっては些細な問題でしかないのだ。

 

「え?

(鬼の頚が…1体…え?

 5体…あれ?

 全部…頚が斬り落とされてる…?)」

 

 鬼に殺されそうな状況でありながらも、炭治郎の身を案じた女性の隊士(隊士の鑑)は、瞬きなど一切していない。それなのに、目で動きをまったく追うことができず、気付くと全ての鬼の頚が斬り落とされており、炭治郎は抜刀した瞬間すら視認させることなく、日輪刀を鞘に納めていた。

 

 誰も、炭治郎が日輪刀を振るった瞬間を捉えることはできていない。

 

 斬られた鬼すらも、何が起きたのか理解することなく体が朽ち果て、跡形もなく消え去っている。

 

「ふう…禰豆子を元に戻せる方法を知っていそうな強い鬼はいない…か…」

 

 これが、飛天御剣流。

 

 一対多数の戦いを得意とし、最少の動きで、一撃のもとに終焉をもたらす暗殺剣の境地。

 

「やっぱり、お前が言っていた()()に行くべきなのかな?」

 

「ソ、ソレガイイ!

 浅草ァ!浅草ァ!」

 

 この日を境に、鬼殺隊内でとある噂が広がる。

 

 赫灼の髪と瞳、額に痣を持ち、市松模様の羽織を羽織った"()"並に強い隊士が存在するという噂が…。

 

 しかし、その噂の隊士……いや、真実を知るのは、鬼殺隊の最高管理者のみ。柱並に強い一般人が存在するなど、誰も思うまい。

 

「仕方ない。

 浅草に行くか…」

 

 飛天御剣流の最期の使い手である炭治郎と鬼殺隊の間に、少しずつ繋がりができていく。

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

「な…何だ…これは…。

(ま、街は…こんなにも発展しているのか!?

 明るい!眩しい!目がチカチカする!!)」

 

 炭治郎は未知なる都会(浅草)にやって来ていた。

 

 何故、炭治郎が浅草を訪れているのか……それは数日前、炭治郎のもとに喋る鴉が現れたのが事の発端だ。

 

 その喋る鴉は、鬼殺隊で伝令役として使役されている"鎹鴉"というものだそうで、鬼殺隊の最高管理者──通称"お館様"が炭治郎に向けて放ったのだそうだ。炭治郎も喋る鴉に最初こそ驚いていたが、鬼が存在するのだから喋る鴉がいてもおかしくないとすぐに納得……受け入れたらしい。

 

 そして、炭治郎はこれをきっかけに飛天御剣流の使い手と鬼殺隊の繋がりを知ることとなった。

 

 どうやら、飛天御剣流の使い手は鬼殺隊のお館様から、鬼殺隊に加わってほしいと何度も勧誘されているらしく、炭治郎の師匠も何度もしつこく勧誘されていたのだそうだ。

 

 きっかけは、飛天御剣流の使い手が鬼殺隊隊士を助けたから……どこにでもありそうな、ありふれた簡単な話である。ただ、助けられたのが鬼殺隊の最高戦力に数えられる"柱"で、炭治郎の師匠の先々代がとても強い鬼を倒したが故に、お館様は何としても飛天御剣流の使い手に鬼殺隊に加わってほしいのだそうだ。

 

 ちなみに、炭治郎の師匠も隊士を助けたことがあるらしく、日輪刀を所持していたのも、炭治郎が日輪刀を手に入れることができたのも、そういった理由なのだそうだ。

 

 もちろん、飛天御剣流の使い手は組織に加わることを頑なに拒み続けたそうだ。しかし、時代の苦難から弱き人を助けることを流派の理としている為に、鬼による被害は無視することができず、その結果……鬼殺隊には加わらないが鬼を狩るということで、日輪刀を貰い受けたのだそうだ。

 

 つまり、持ちつ持たれつの関係である。

 

 だが、お館様は未だに諦めてはいない。竈門炭治郎という新たな飛天御剣流の使い手を鬼殺隊に加えるつもりでいる。恐らく、鬼殺隊内で飛天御剣流を広めたいのだろう。

 

「め、目眩がしてきた…」

 

 都会慣れしていない、まだ幼い少年ではあるが、飛天御剣流の使い手が強大な力を持った剣士であることは明白。

 

 数日前に、炭治郎が複数の鬼を瞬殺したことで、ますます欲しくなったことだろう。

 

 飛天御剣流の使い手が鬼殺隊に加わることは決してないが、それでも諦めることはないだろう。

 

 何より、竈門炭治郎はある意味……鬼殺隊にとって特別な存在なのだ。

 

「!

(ど、どうしてッ!?こ、この()()は間違いない!こんな所にいるなんて!()がいる!)」

 

 優れた嗅覚を持つ炭治郎は、家族が惨殺された場所で家族以外の匂いを嗅ぎ取っていたのだそうだ。そしてその匂いこそ……家族を惨殺し、禰豆子を鬼にした忌まわしき仇敵のもの。

 

「鬼無辻…無惨!!」

 

 鬼殺隊にとって、最強にして最大の敵。鬼無辻無惨と遭遇し、生き残った者は()()()()()()存在しない。

 

 炭治郎は唯一、その鬼無辻無惨を追う術を持っている。鬼殺隊が、喉から手が出るほど欲しがるはずだ。

 

「禰豆子、何があっても…俺がいいと言うまで出てきたら駄目だからな」

 

 しかし、炭治郎も鬼殺隊に加わるつもりは一切ない。

 

 彼にとって、一番の目的は禰豆子を人間に戻すことなのだ。

 

「禰豆子、兄ちゃんが必ず…お前を人間に戻してやる」

 

 大都会浅草が、混沌と化す。

 

 

 






オリジナルの飛天御剣流を出してみた。

▪️飛天御剣流・龍猛閃
一対多数の戦いを得意とする実戦本位の殺人剣とされていながら、実は一対多数の描写が少ない飛天御剣流。実写映画は多かったけどね!
飛天御剣流の速さを活かし、一撃で命を刈り取っていく……だけの剣術だけど、飛天御剣流が一対多数の戦いを得意としていると言われている所以のような技。

派生技に龍猛閃"(はやて)"
こちらは呼吸術を用いることで、さらにスピードアップ。

つまり、炭治郎は呼吸を用いずに10体の鬼の頚を斬り落とした。飛天御剣流を会得した炭治郎は、遊廓編で遅い遅いと言われ続けた炭治郎と違う!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。