もしも竈門炭治郎のもとを訪れたのが比古清十郎だったら   作:紅涙

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飛天御剣流を呼吸で例えたら……龍の呼吸が多いですね!

ただ聞いといて誠に申し訳ねェェェ!!



二つの御技

 

 

 逃れ鬼の珠世。

 

 彼女はかつて、鬼舞辻無惨の側近を務めていた鬼だ。

 

 だが、今の彼女は名医であり、鬼舞辻無惨を抹殺することを心に誓った女傑。

 

「あ…ああ…何という…()()()()()が途切れることなく継承されていたなんて…」

 

 恐らく、珠世は鬼舞辻無惨を除く鬼達の中でも最長寿の鬼だ。女性に年齢を聞くのは失礼だが、戦国時代に鬼舞辻無惨の側近を務めていたのなら、その可能性は非常に高い。

 

 人生経験に於いて、彼女に及ぶ人間はいない。

 

 だが、そんな珠世が今……冷静さを失いかけている。それも、悪い意味ではなく、とても良い意味でだ。かつてないほどに気分が高揚している。彼女がこれほどまでに気分が高揚したのはいつ以来だろうか…。

 

「何と美しい…あなたは神の使いなのでしょうか…」

 

「た、珠世様?」

 

 珠世にとって()()()のこと…。彼女は今日、赫灼の髪と瞳を持つ少年に出会い、運命の歯車が動き出したのを強く感じ取っていた。

 

()()()()()、私はあなたに会えたことを心から感謝します。あなたは私にとって希望の光…」

 

「なッ!?

(こ、こんな珠世様見たことない!

 うっとりとされる珠世様も美しく愛くるしいが、あのガキはいったい何なんだ!?)」

 

 そんな状況のなか、珠世の心情を知るはずもない少年……見た目は炭治郎と同年代だが、実は30代の男性は、これまで見たことのない珠世の姿に見惚れると同時に驚愕し、珠世がこのような状態になった原因でもある炭治郎に嫉妬し、激しい憎悪を向けている。

 

 鬼舞辻無惨以外で唯一、珠世が鬼化することに成功した存在──それが愈史郎だ。

 

「太陽のような温かさ、耳飾り…そして、龍を前にしたような荒々しさと神々しさ…何から何までが懐かしく、全てを昨日のように覚えています」

 

「ッ!

(ま、またッ!?

 美しいのに…珠世様が美しいのは自然の摂理!なのに、あのガキにその表情を向けられているのが赦せない!!)」

 

 愈史郎は珠世を心から尊敬するだけではなく、好意まで抱いている。見ず知らずの炭治郎が珠代にそのような表情をさせているのが気に入らないのだろう。

 

 まったく違った心情の珠世と愈史郎。

 

 その二人の視線の先では、竈門炭治郎が十数体の鬼を相手にたった一人で戦っていた。

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 珠世と出会った炭治郎は珠世の力を借りることで、どうにか警官達から逃れることに成功し、珠世が拠点としている洋館に招かれた。

 

 しかし、その洋館に招かれざる()が十数体…。

 

 

 

──()()()()()・龍舞──

 

 

 

 炭治郎は今、たった一人で十数体の鬼を相手にしている。

 

 炭治郎を殺害するべく放たれた鬼達……だが、炭治郎の力を鬼舞辻無惨は見誤っていたようだ。

 

「!?

(な、何なのこのガキは!!

 も、もしかして"()"なの!?)」

 

 左目に"()()"の文字が刻まれ、赤い着物を着用した二本角の女の鬼が今まさにそのことを代弁している。

 

 瞬く間に、七体の鬼が一瞬にして頚を斬り落とされてしまった。竈門家に代々伝わる"ヒノカミ神楽・炎舞"の二連撃かと思いきや、更にそこから飛天御剣流の"龍槌"、"龍翔"、"龍巻・凩"、"旋"、"嵐"による七連撃。

 

 飛天御剣流とヒノカミ神楽を会得した炭治郎だからこそ成せる……二つの御技を会得し、その二つを複合することで誕生した"日天御剣流"を前に、鬼舞辻無惨直属の配下の精鋭"十二鬼月"の一体に数えられる鬼も、恐怖を感じている。

 

「あ…あ…

(こ、こんなの…勝てるはずない…バケモノ)」

 

 

 

──日天御剣流・陽牙突──

 

 

 

 まるで天災にでも見舞われたかのような気分だろう。

 

 飛天御剣流とヒノカミ神楽。この二つの御技を駆使し、鬼と戦う炭治郎はまさしく天災。

 

 突き技で鬼の頚を抉り斬る炭治郎が鬼神にすら見えているはずだ。

 

「ひッ!!」

 

 そして、十数体の鬼は一分もしない内に残り一体になってしまった。厄介な血鬼術を使う鬼もおり、並の剣士ではたった一人で相手にするなど到底無理だっただろうが、飛天御剣流の最期の使い手が如何に凄いのかを、この光景が強く物語っている。

 

 最後に残された鬼──"下弦の肆"零余子には、もう戦う意思すらない。ただ、死を待つのみだ。

 

「炭治郎さん。

 その鬼は"十二鬼月"です。鬼舞辻無惨に限りなく近い血を持っています。なので、血を回収して頂けると有難いのですが…」

 

「わかりました」

 

 零余子は今、己のこれまでの行動を後悔していた。

 

 理不尽に、自分の欲求のままに多くの人間達を喰い殺してきた。その零余子が今、奪う側ではなく奪われる側となり、終わりを迎えようとしている。

 

 珠世から短刀を受け取った炭治郎にそれを突き刺され、血を奪われ、夜明けを思わせる曙色に輝く日輪刀を突き付けられている。

 

 まさに因果応報だ。

 

「己の行いを悔い改め…もし生まれ変わったら、今度は正しく生きてくれ」

 

 

 

──日天御剣流・龍円──

 

 

 

 ただ、最後は痛みなど一切なく、人間だった頃を思い出させてくれる……優しく温かい、太陽そのものだった。

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 鬼舞辻無惨が放った鬼達は、炭治郎によって全滅した。

 

「まさか炭治郎さんが飛天御剣流と()()()()()()()()()()の剣術を受け継いでいたとは驚きです」

 

「俺は珠世さんが飛天御剣流とヒノカミ神楽を知っていたことの方が驚きですよ」

 

 大都会浅草で鬼の首領・鬼舞辻無惨と遭遇し、珠世と出会い、十数体の鬼を差し向けられ……炭治郎からしたら慌ただしくなってしまったが、珠世との出会いは炭治郎にとってあまりにも大きなものだった。

 

 まさか、珠世が過去に飛天御剣流の使い手に助けられていたとは…。もしかしたら、飛天御剣流の使い手が鬼という存在を知ったのも珠世を守ったことが関係しているのかもしれない。

 

 ちなみに、珠世を助けた先代の比古清十郎も、炭治郎の師匠と似て自信家だったとのことだ。

 

 ただ、何よりも炭治郎が驚いたのは竈門家に代々伝わるヒノカミ神楽が、鬼舞辻無惨をあと一歩のところまで追い込んだ剣術だったとは…。

 

 しかし何故、それほどの剣術が炭焼きでしかない竈門家に代々伝わっているのだろう。珠世から話を聞いた炭治郎は、ふとある日に見た()を思い出したそうだ。炭治郎が比古清十郎に弟子入りして半年経った頃、不思議な夢を見たのだそうだ。その夢というのが、竈門家のご先祖様の目の前で耳飾りを付けた剣士がヒノカミ神楽を舞い、炭治郎が父親から託された耳飾りを、ご先祖様がその剣士から託されたのだそうだ。この夢が意味するものはつまり、その剣士こそがヒノカミ神楽の最初の使い手にして、無惨をあと一歩のところまで追い込んだ最強の鬼狩りだったということである。

 

 炭治郎と同じ痣、赫灼の髪と瞳を持った最強の鬼狩り。

 

 そして炭治郎は、かつて炭治郎の父が幼い炭治郎に託した言葉を思い出す。

 

『炭治郎…ヒノカミ神楽と耳飾りだけは必ず、途切れさせず継承していってくれ。

()()()との約束なんだ』

 

 その言葉の意味を、炭治郎はようやく知ることとなった。

 

 恐らく、炭治郎の父も同じように夢を見たのかもしれない。

 

「継国縁壱さん。

 それが、最強の鬼狩りの名です。

 当時私が掴んだ情報では、無惨は縁壱さんを強く恐れ、縁壱さんと同じ()()()()()()の使い手を率先して殺していたそうです」

 

 そして何故、鬼殺隊にではなく竈門家にヒノカミ神楽が伝承されているのか……その理由も今こうして発覚した。

 

「…!

(漆黒の日輪刀?

 俺は師匠と同じ曙色の日輪刀だ。もしかして、俺はヒノカミ神楽に適合できていない?)」

 

 新たな疑問点も浮かんだが、その点はまた後々にわかることだろう。恐らく、珠世でもわからないはすだ。

 

 炭治郎が適合しているかしていないのかはともかく、継国縁壱がどのような思いで鬼殺隊に伝承させなかったのか……今となっては憶測でしか語ることはできないが、その判断に間違いは一切なかったのだろう。

 

「あの方のような剣士は早々現れるものではありません。

 飛天御剣流の使い手も然り…」

 

 鬼舞辻無惨は継国縁壱の存在を恐れ、継国縁壱が生きている間は姿を隠していたのだそうだ。その後、継国縁壱の死を確認して再び行動を再開。ヒノカミ神楽の使い手の可能性がある漆黒の日輪刀を持つ隊士を率先して殺し続けていた。

 

 仮に、鬼殺隊に伝承されていたとしたら、ヒノカミ神楽は本当に途絶えていた可能性もある。

 

 だが、鬼舞辻無惨も予想していなかっただろう。何よりも恐れたヒノカミ神楽が、鬼殺隊ではなく炭焼きの一族に継承されていたとは…。しかも、その正当な継承者の逆鱗に触れてしまうなど……これもまた因果応報。ついに、鬼舞辻無惨は報いを受けるべき時が来たのかもしれない。

 

「珠世さん、これから宜しくお願いします」

 

「ええ、もちろんです。

 炭治郎さん、こちらこそ宜しくお願いします」

 

 鬼舞辻無惨をあと一歩まで追い込んだヒノカミ神楽。

 

 鬼舞辻無惨の呪いから解放された珠世。

 

 そして、最強の暗殺剣──飛天御剣流。

 

 運命の歯車が大きく動き出す。

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

「ね、禰豆子!

 珠世さんが困ってるだろう!離れるんだ!」

 

「ま、まさか私以外にも無惨の呪いから逃れた存在がいたなんて…それにしても、禰豆子さんはどうされたのでしょうか?」

 

 炭治郎が珠世と協力関係を築き上げた後、当然のことだが炭治郎は禰豆子を珠代に紹介した。

 

 炭治郎の最大の目的は、禰豆子を人間に戻すことなのだから当然だろう。

 

 医者である珠世なら、禰豆子を人間に戻す薬を完成させることができるかもしれない。

 

 炭治郎にとって、珠世という存在は鬼殺隊以上に大きな協力者だろう。もちろん、それは珠世からしても同じくだ。鬼を人間に戻す薬を完成させるには、鬼舞辻無惨の血が必要不可欠。そして、血を手に入れる為にも、炭治郎の力は必要不可欠。

 

 互いにとって最高の協力者だ。

 

「参ったなー。

 もしかして、珠世さんを母さんと勘違いしてるのかな?」

 

「まあ…それはちょっと嬉しいかもしれませんね」

 

 ただ、今この場所に漂う雰囲気は協力者同士という感じではない。

 

「うわ!?

 ひ、引っ張るな禰豆子!

 す、すみません珠世さん!!」

 

「い、いえ…ッ!

(た、炭治郎さん…ち、近い…そ、そういえば、殿方とこんな近い距離で接するのは主人以来で…)」

 

 禰豆子が珠世を母親と勘違いしてるのは本当なのかもしれない。

 

「ぐぬぬぬぬ、竈門炭治郎…赦せん!!

(鬼舞辻無惨!今なら俺はお前を応援するぞ!!)」

 

 その光景を柱の影から血涙を流しながら、怨めしそうに眺める男が一人いた。

 

 

 






ここは敢えて、飛天御剣流で行かせてもらう!!

けど、原作でヒノカミ神楽に水の呼吸の体捌きを取り入れた炭治郎のように、ここの炭治郎は飛天御剣流にヒノカミ神楽を…または、ヒノカミ神楽に飛天御剣流を取り入れることに…。
ヒノカミ神楽に水の呼吸の体捌きを取り入れるよりも、遥かに優れた代物になってしまった。

それ故に、龍の呼吸でも、天の呼吸でもなく、炭治郎の扱う飛天御剣流は、日天御剣流(読み方は同じ)へと昇華された。

それと、飛天御剣流ではないけども、皆が大好きな突き技の極意を出してみました!
比古師匠曰く、お前の兄弟子のライバルが得意とした突き技…手札が多いに越したことはないから覚えとけとのことで会得。鬼に突き技はあまり効かないはずだけど、この突き技だけは頚を抉り斬るので効く。

日天御剣流・陽牙突。
陽華突に牙突が加わったもの。
るろ剣といえば……牙突だよね。

日天御剣流・龍舞。
炎舞と、龍槌、龍翔、龍巻・凩、旋、嵐の七連撃。

日天御剣流・龍円
円舞に飛天御剣流の速さ、威力が加わったもの。
龍が円を描くように飛ぶ姿を思わせる。
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