もしも竈門炭治郎のもとを訪れたのが比古清十郎だったら 作:紅涙
アニメ遊廓編の最新話が熱かった。そもそも、堕姫の声が沢城みゆきさんというのがもう最高だよね。
今回、こちらのご都合で時系列が前後しております
人喰いの鬼の始祖、鬼舞辻無惨の本拠地──"無限城"。
無惨の側近を務める鳴女という女の鬼の血鬼術で作り出されたその空間は、物理の法則を無視したような出鱈目に継ぎ接ぎされたような奇怪な空間となっており、如何に異能の鬼の血鬼術が常軌を逸しているのかを物語っている。
その無限城に現在、
召集された六体の鬼は、無惨の配下の精鋭"十二鬼月"……その下位の鬼達で、左目に"下弦"の証明である下の文字と、それぞれが与えられた数字を刻んでいる。その内一体は、
しかし、当の本人達に至っては、何故この場所に呼び出されたのか理解できていない。寧ろ、下弦の鬼達全員が初めてこの場所に呼び出されたらしく、己達がいったい何処にいるのかすら理解できていないようだ。
「頭を垂れて蹲え…平伏するのだ」
それでも、ただ一つだけ確かなことがあった。
それは、この場所に下弦の鬼達を揃って召集できる存在はたった一つのみ……鬼舞辻無惨しかいない。鬼舞辻無惨を除いて存在しないということだ。
故に、人間にとって恐怖の存在である下弦の鬼達ですら、即座に平伏している。重く乗しかかる重圧に、そうせずにはいられない。
「今、私は頗る不機嫌だ。
よって、お前達は一切口を開くな。私の話を黙って聞き、私の行動を黙って受け入れ感謝するのだ」
ただ、下弦達の目の前に現れた鬼舞辻無惨は頗る……かつてないほどに不機嫌だ。一言でも発したら、間違いなく即刻処刑されてしまうだろう。
「下弦の肆・零余子が鬼狩りに殺された。
そこで、私はお前達にその鬼狩りの始末を命令する」
無惨が不機嫌な理由、それは数日前に遡る。
数日前、鬼舞辻無惨は大都会浅草にて、とある鬼狩りの少年と出会した。額に痣、赫灼の髪と瞳、花札のような耳飾りを付けた鬼狩りだ。正確には、鬼殺隊に属していない鬼狩りなのだが、さすがの無惨もその点に関しては知っておらず……いや、そこはどうでもいいだろう。鬼殺隊に所属してようがいまいが、鬼狩りであることに変わりはないのだ。
無惨は常々、鬼達に鬼狩りの抹殺を命令しており、十二鬼月には鬼殺隊の最高戦力である"柱"の抹殺を義務化している。
だが今まで、無惨が特定の
十二鬼月でも極一部の鬼のみ……上弦の鬼は与えられたことが在るかもしれないが、下弦の鬼達にそのような重要な任務を無惨が与えるはずもない。
だからこそ、下弦の鬼達は無惨の命令に驚愕している。それと同時に疑問を抱く。
無惨が、特定の鬼狩りの抹殺を命令するということは、その鬼狩りは鬼殺隊の最高戦力とされる"柱"または、柱に匹敵する実力がある鬼狩りなのではないかと…。
「その鬼狩りは柱でこそないが、柱に匹敵する実力を持っているだろう」
すると、無惨は下弦達の思考を読んだのか、疑問に対して即座に答えを返していた。
「がッ!?」
それと同時に、下弦達の頚に無惨は何かを突き刺していた。いったい何をされたのか理解できず、下弦の壱から順に床に倒れ込み、激しくもがき苦しんでいる。
「私の血をふんだんに与えてやる。
これで貴様達は、上弦に近しい力を得ることができるだろう。それと
鬼の強さは、無惨から与えられた血の量も大きく関係しており、強い鬼ほど無惨の血が濃く、多く流れている。無論、その血の量に順応できなければ、細胞が破壊され死んでしまうが…。
無惨は今回、一人の鬼狩りを確実に抹殺するべく下弦達の強化を図った。
「私の血を与えてやったのだ…決して失敗は赦さん。
必ずその鬼狩りを殺せ」
脳内に流れ込んでくる無惨の記憶に混乱する下弦達。その記憶を垣間見た下弦達は、赫灼の髪と瞳、額に痣を持った市松模様の羽織りを着用した鬼狩りの存在を知る。それが、無惨が何としても殺したい鬼狩りだ。
一度
「これを機に下弦級の鬼を増やし、目障りな鬼狩り達も一掃するとしよう」
その鬼狩りの出現により、鬼舞辻無惨が大きく動き出す。
☆☆☆☆☆
大都会浅草から南南東。
鬼殺隊に所属することなく鬼を狩る孤高の存在──竈門炭治郎は、鬼にされてしまった妹の禰豆子を人間に戻すべく、そして弱きを助ける為に旅を続けていた。
逃れ鬼の珠世と協力関係を築き上げることができたこともあり、炭治郎の旅の目的はより明確となり、足下が軽い。一時は、まったく鬼の情報もなく途方に暮れていたが、今は鬼殺隊からの情報提供もある。
何より、珠世と協力関係を築き上げることができたおかげで、炭治郎に拠点ができたのだ。
『炭治郎さん、決して無理はなさらずように…。
定期的に戻ってきてください。必ずですよ。あなたは人間なのです。如何にあなたが強くても、あなたは鬼ではない。失った手足は再生することなく、怪我もなかなか治らない。体力も無限ではない。身体をゆっくりと休めることも必要です。
ですので、必ず私のもとに戻ってきてください。傷つき、疲れたあなたの心と身体は、私が全身全霊を込めて治し、癒してさしあげます』
名医でもある珠世からの支援、助力は炭治郎にとってこれ以上ないほどに有難いものだろう。
炭治郎は飛天御剣流の最期の使い手だが、身体はまだ成長の途中にある。無理は避けられないだろうが、しっかりと身体を休める環境は絶対に必要だ。
だから、炭治郎は珠世の言葉をしっかりと胸に刻み込み、目的の為に旅を続けている。
それに、炭治郎は己の師とも約束したのだ。決して、己の命を蔑ろにしないと…。
生きようとする意思は、何よりも強い力をもたらすのだ。
飛天御剣流の最期の使い手として、炭治郎は己の責務を全うし目的を果たすべく、決意新たに前に進む。
「師匠と珠世さんとの約束は絶対に守らないと…。
ただ、珠世さんのもとに戻ると愈史郎さんから
ちょっとした些細な悩みはあれど、今のところ大きな問題もなく進めているようだ。
ちなみに、珠世の助手を務めている愈史郎は、炭治郎が旅立った今は頗る上機嫌のはずである。珠世との約束もあり、数週間または一ヶ月に一回は必ず拠点に戻らないといけない為に、炭治郎が戻ると愈史郎の機嫌は最高に悪くなるだろうが……こればかりは時間をかけて少しずつ改善していくしかないだろう。
「とりあえず、愈史郎さんについては根気強く話しかけて仲良くなろう。それしかない。
けど、今はそれよりも無惨達だ。珠世さんの予想通り、無惨は俺を狙っている」
しかし、炭治郎には愈史郎の件よりも気にするべきことがあった。いや、気にする程度では駄目だろう。最大限に警戒し、注意しなければならない。
炭治郎は間違いなく鬼舞辻無惨から命を狙われている。
狙われている理由はもちろん、浅草での邂逅だ。
無惨は炭治郎という存在を強く恐れている。その証拠に、炭治郎はこの数日で鬼に三度も襲撃されているのだ。
一度目は、下弦の肆を含む十数体による襲撃。炭治郎がたった一人で下弦の肆も含め全ての鬼を討伐したが、並の剣士では無理だっただろう。
そして、炭治郎が浅草を立ち、珠世と別行動を開始してから炭治郎を襲撃してきた鬼は
何より、珠世が炭治郎に説明していた通り、鬼舞辻無惨がその気になれば下弦級の鬼をすぐに作り出せるようだ。
その下弦級の鬼の口振りから見ても、標的は間違いなく炭治郎なのだろう。飛天御剣流が一対多数の斬り合いを得意としていなければどうなっていたか…。しかし、このような状況が長く続くと思うと、炭治郎でも不安を感じずにはいられないはずだ。人間と鬼では、体力にも差がありすぎる。何れ、炭治郎は限界を迎えてしまう。
まだ数日しか経っていないのに、すでに珠世の言葉が身に染みているようだ。
珠世の協力があるとはいえ、基本一人で行動している炭治郎は常に気を張っていなければならない。身を休められるのは、太陽が上っている時間のみだ。
どの組織にも決して属さないという飛天御剣流の掟もあり仕方ないが、場合によってはその掟を破る必要もあるかもしれない……炭治郎は、もしもの場合も視野に入れている。
だがやはり、掟を破ることだけは炭治郎も避けたいはずだ。都合良く、鬼殺隊に加わらなくても旅を問題なく継続できる方法がないものかと思案する。
「珠世さんみたいに…仲間と言えるような存在がいたら少しは心強いんだけど、鬼殺隊にそんな剣士いるかな?」
禰豆子に対して何も言わず、炭治郎に協力してくれる存在。あまりにも都合が良すぎる存在がいないかと……炭治郎は珍しく、そのようなことを考えていた。
普通に考えて、都合良くそんな存在が現れるわけもない。
しかし、日頃の行いがあまりにも良すぎる炭治郎の場合、都合良く事が運ぶ場合がある。これも、炭治郎の人徳あってのものだろう。
「頼むよ!お願いだから!
明日死ぬかもしれないんだ!だから俺と結婚してくれ!!」
一見、あまりにも見苦しいが、炭治郎にとって
「俺のこと好きなんでしょ!?だから結婚してくれ!!」
ただ一つ……炭治郎には、道端で泣き叫びながら女の子にしがみつく
☆☆☆☆☆
耳障りな奇声が響き渡る。
「い、いやァァァ!
ひ、ひ、
鬼殺隊に入隊したばかりの少年──我妻善逸。
黄色い羽織に、黄色い髪といった派手な見た目の少年は、その見た目以上に煩く、傍迷惑な存在だ。
「俺は人斬りじゃない」
「な、ならどうして刀なんて持ってるんだよ!?
鬼殺隊じゃないのに刀持ってるなんておかしいだろ!!」
その声はまさに騒音。
「頼む…少し黙ってくれないか?
(耳が痛い。こんな煩い声初めてだ)」
「ぎゃあァァァァァ!
俺を黙らせるって言った!それって殺すって意味だよね!?」
炭治郎は、少し前の己の考えを訂正する。
鬼殺隊の中で、誰か仲間になってくれる存在がいないかと考えていた炭治郎は、それは決して叶うことがない願いなのだろうと諦めた。
「…それじゃあ…さようなら」
「人斬りにまで見放された!?
た、頼むから俺を一人にしないでくれェェェ!!」
「俺は人斬りじゃない!
竈門炭治郎だ!!」
ただ、炭治郎は知らない。
一見、別の生き物のようにすら見えてしまうこの少年が、実はほんの少しだけ頼りになることを…。
そして、炭治郎にとって友と言える存在になることを…。
響凱ってさ、完全に鳴女の下位互換だよね…。
お待たせしましたぁ。
執筆捗るので色好い感想とご評価ぜひぜひよろしくです!!