もしも竈門炭治郎のもとを訪れたのが比古清十郎だったら   作:紅涙

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飛天御剣流でも、双龍閃だけは使えないような…。双龍閃・雷の方ならまだしも。鞘でブン殴っても…。いや、飛天御剣流と呼吸合わされば鞘の攻撃も効くかな?



三兄妹を守る飛天

 

 

 浅草から南南東。

 

「ここか…!

(血の匂いがする。

 まさかもう殺されて…しかも複数の匂い…それに、血は血でも今まで()()()()()()()()()の匂いもする)」

 

 炭治郎は鬼が住む屋敷に到着した。

 

 ただ、炭治郎の優れた嗅覚がすでに犠牲者が出てしまっているのを察知してしまう。

 

「とりあえず、早く行こう…必ず助けないと。

(()()()()()()()()()()()()()きたけど…本当に大丈夫だろうか…。

 今は信じるしかないな。一見かなり頼りないけど、善逸からは思いやりのある優しい匂いがしたし…大丈夫だ…多分…きっと…)」

 

 それでも、まだどうにか生きていることを願いながら、炭治郎は屋敷へと足を踏み入れる。

 

 ちなみに、道中で遭遇した情けない鬼殺隊の隊士──我妻善逸は途中に置き去り……というよりも、炭治郎の移動速度についてくることができずに、炭治郎が気付いた時にはまだ遥か後方を走っていたようで、()()()をとっているようだ。

 

 この屋敷にやって来る途中で鬼に遭遇した兄妹を炭治郎が発見し、一番上の兄を連れ去られたことを聞かされたのだが、連れ去られた方角からして炭治郎が情報提供された場所と同じ……つまり、炭治郎が向かおうとしていた場所に一番上の兄は連れ去られた可能性が高かったのである。

 

 しかし、すぐに救出に向かおうにも夜道にまだ幼い兄妹達を残すわけにもいかず、かといってわざわざ連れていくわけにもいかず、炭治郎は善逸が追いつくのを致し方なく待ち、善逸が到着後に事情を説明してその兄妹を託し、炭治郎は全速力でここまでやって来たようだ。

 

 もしかしたら……いや、もしかしなくても、炭治郎のそばにいる方が何よりも安全だっただろうが、我妻善逸は曲がりなりにも鬼殺隊の隊士だ。

 

 炭治郎の前ではあまりにも情けない姿を晒していたが、己よりも幼い子供の前ではさすがに情けない姿を見せることはないだろう。託した兄妹は善逸が必ず守り抜いてくれることを願うばかりである。

 

『お、おおお、お前がいなくなったら、誰が俺のことを守ってくれるんだよォォォ!!』

 

 出発する直前の善逸の様子を思い出し、人選を間違えたかもしれないと、炭治郎は一抹の不安を感じていた。

 

「せめて禰豆子だけでも残しておくべきだったかな?

 いや、それは絶対に駄目だ。

(とにかく俺は、ここにいる鬼を早く倒して助け出そう。そして、善逸達のもとに戻ろう)」

 

 炭治郎は己がこれから鬼が住まう屋敷へと足を踏み入れようとしていることに何一つ不安はない。だが、不安はまったく別のところにあるようだ。

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 屋敷へと足を踏み入れた炭治郎は、血の匂いを頼りに迅速に屋敷内を駆け回った。

 

 しかし、時すでに遅く……炭治郎が目にしたのは幾つもの屍。己がもう少し早く到着していればと悔やまずにはいられない。だが、炭治郎が如何に強かろうとも人なのだ。救い出せない命も必ずある。

 

 唯一の救いは、道中で出会った子供達の兄の屍がなかったことだ。

 

 炭治郎はすぐに気持ちを切り替え、最後に残された()()()()()()()()の方へと急いで向かう。

 

「頼む、間に合ってくれ」

 

 禰豆子を鬼にされ、他の弟妹達を惨殺されてしまった炭治郎は、この三兄妹が誰一人欠けることなく無事であることを心から願う……いや、願うのではなく、炭治郎は今度こそ己の手で必ず守り抜くのだ。

 

「髄分と活きのいい人間だな…こりゃあ美味そうだ」

 

「ぐひひ、舌触りも良さそうじゃねえか」

 

 だが、このような状況に限って必ず邪魔な存在が現れるのは世の常というもの。もっとも、邪魔な存在の末路は決まっているが…。

 

 決して、翔ける龍の前に立ち塞がってはならない。翔ける龍の勢いを止められるはずもない。

 

 

 

──日天御剣流・双龍紅鏡──

 

 

 

 神速抜刀術からの左右対称の二連撃にて二体の鬼の頚を瞬く間に斬り落とし、炭治郎は駆け抜ける。

 

 そしてそのまま、匂いを頼りに一直線に進んだ炭治郎は目の前の襖を斬り裂き、探し人を見つけ出した。

 

「見つけた!

(間に合った!)」

 

 炭治郎の瞳に映った光景は、体に幾つもの鼓を埋め込んだ鬼が少年を喰らおうと襲いかかる寸前だったが、まだ生きているのであれば、炭治郎にとって何一つ問題ない。

 

 誰も助けにやって来ないと、生きることを諦めていた少年は炭治郎に驚愕の眼差しを向けている。

 

 その視線から、少年の心の声を読み取った炭治郎は柔らかく、お日様のように温かい笑みを浮かべて少年を安心させる。

 

「あ…あ…。

(助けに…来てくれた…神様…ありがとう…)」

 

 少年は炭治郎の笑みを見ただけで救われていた。心の底から、もう大丈夫だと不思議と思えていた。

 

「稀血を逃してなるものか!」

 

 ただ、その少年が()()()()の持ち主であったこともあり、鼓の鬼は炭治郎よりも少年を優先する。それが悪手だとは気付かず…。もし、この鼓の鬼が少年よりも炭治郎に関心を向けていたら……いや、気付いていたとしても結果は変わらなかったかもしれない。

 

 

 

──日天御剣流・龍巣陽炎(りゅうそうようえん)──

 

 

 

 繰り出された神速の無数の斬撃は刃先が陽炎の如く揺らぎ…。

 

「!?

(は、速い!()()をッ──何だと!?

 退避を!!)」

 

 炭治郎の斬撃を回避しようと背中の鼓を叩こうとするも、間合いの目測を誤認させる無数の斬撃を躱すことは不可能で、鼓の鬼は背中の鼓を斬り伏せられた上に、深い痛手を負わされてしまう。

 

 辛うじて、()()()()()()()を叩くことで炭治郎から逃れるも、苦悶と困惑に満ちた表情を浮かべている。

 

「ぐうう!

(背中の鼓を斬られた…いや、それよりも斬られた部分が()()()()()()()()!しかも、再生できない!い、いったい何が起きた!?)」

 

 今まで味わったことのない痛みに苦しみ、驚愕し、かつてない恐怖に襲われいる。

 

「!

 そ、その耳飾りと額の痣!そうかッ──貴様が!!」

 

 だが、その瞳にようやく炭治郎の姿をしっかりと捉え、己がどのような状況に置かれているのかを悟ったようだ。

 

 今、己の目の前にいるのが鬼舞辻無惨が下弦の鬼達に抹殺するように命じた唯一の鬼狩り。

 

 稀な血を持つ少年も、炭治郎と比べたら取るに足らない存在だ。

 

「無事でよかった。

 遅くなってごめん…君が清だね?」

 

「は、はい…あ、あなたはいったい…」

 

 何としても討つべき人間。

 

「君の弟と妹…正一とてる子に君が拐われたことを聞いて助けに来た。

 俺は竈門炭治郎…鬼を狩る流浪人(るろうに)だよ」

 

 鬼の天敵……今ここに龍が舞い降りた。

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 鼓が鳴り響くと同時に、目まぐるしく景色が変わる。

 

 右肩の鼓を叩くと右回転。左肩の鼓を叩くと左回転。右脚は前回転で、左脚は後ろ回転。

 腹の鼓は鋭利な爪のようなもので斬り裂く斬撃を飛ばし、胸の真ん中にある鼓は己自身を転移させる。

 

 鼓の音が鳴り響くと同時に部屋が回転し、畳が側面にあったり、天井と畳が上下逆になったりと、方向感覚を狂わされる厄介な血鬼術。

 

 この血鬼術は体に幾つもの鼓を埋め込んだ鬼──"下弦の肆"響凱のものだ。

 

 一度は、鬼舞辻無惨に下弦の地位を剥奪されるも忠誠心と向上心の高さを評価され、下弦の肆に返り咲いた"十二鬼月"内でも稀有な鬼である。

 

「貴様が倒した下弦の肆よりも…小生は遥かに強い!!

(無惨様、必ずやこの小僧の頚をあなた様にお届け致します!!)」

 

 その強さは、炭治郎が浅草で倒した前任の下弦の肆を遥かに上回っているほどだ。

 

 鬼舞辻無惨が下弦の鬼達の強化を図ったことを、まだ炭治郎は知らない。無論、鬼殺隊も知っているはずがない。

 

 しかもその要因が炭治郎を抹殺する為だとは思うまい。

 

 だが、この戦いを優位に進めているのは炭治郎だ。

 

 一見、怪我を負った少年を片手抱きしながら戦っている炭治郎の方が圧倒的に不利に見えるだろう。しかし、炭治郎はそのような状況でも汗一つ流すことなく、平然とした様子で戦っている。

 

 これも、比古清十郎による厳しい(鬼畜)修行の恩恵だ。

 

 重さ十貫の肩当てが仕込まれた外套を羽織った比古清十郎を背に乗せた状態で腕立て伏せを強いられた炭治郎にとって、少年を抱えて戦うなど朝飯前。

 

 それと、早いうちに響凱の背中の鼓を斬り伏せておいたのは大きいだろう。胸の真ん中の鼓と対を為していたそれは、他者を部屋から別の部屋へと転移させるもの。もし、炭治郎が背中の鼓を先に斬っておらず、少年を抱えながら戦っていなければ分断されてしまい危なかったはずだ。

 

「清…少しだけ我慢しててくれ」

 

「え?」

 

 

 

──日天御剣流・碧羅の飛龍──

 

 

 

 炭治郎は日輪刀を納刀すると、全身を回転させながら納刀した日輪刀を、親指で鍔を弾いて刀を矢のように弾き飛ばす。

 

 すると、 弾き飛ばされた日輪刀が響凱の胸の真ん中にある鼓へと一直線に向かい、日輪刀の柄尻によって鼓が粉々に破壊されてしまう。これで、響凱は己自身を転移させることもできなくなった。

 

 完全に虚を突かれてしまった響凱は為す術なく、炭治郎が眼前に迫っていることにもまったく気付いていない。

 

「お前の血鬼術は厄介だった。

 けど…これで終わりだ」

 

「…!」

 

 鼓を破壊し落ち行く日輪刀を片手で掴み、腰を回す要領で円を描くように振るい響凱の頚を一閃……下弦の肆の頚が宙を舞う。

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 脅威は去った。

 

 この屋敷の主──響凱を失った屋敷ではもう鼓の音が聴こえるはずもなく、物静かで、炭治郎と清の声だけが響いていた。

 

「正一とてる子のもとに戻ろうか…」

 

「は、はい」

 

 下弦の肆を討ち取った炭治郎は怪我を負った少年を手当てし、これから善逸達のもとに向かう。清、正一、てる子……兄妹三人が誰一人欠けることなく再会できることに、炭治郎も嬉しそうにしており、早く三人を引き合わせたいだろう。

 

「!」

 

 しかし、炭治郎と清以外に存在しないはずの屋敷に()()()()の匂いが漂い、炭治郎は視線を鋭くする。

 

()()()の気配がするぜ…それに、鬼とは別にとてつもなく強い何かがいやが…ん?」

 

 その獰猛な獣の匂いを漂わせるのは鬼ではない。猪の頭皮を被った野性味溢れる()()()()()()だ。

 

「…人間?」

 

 謎の多き存在に目を丸くする炭治郎だが、こればかりは仕方ないだろう。上半身裸の猪頭が現れたのだ。これが鬼だったならば、まだすぐに受け入れることができただろう。だが、相手は人間。声からして炭治郎と同年代の少年か…。

 

「ぐはははは!

 強い気配がビンビン伝わってきやがるぜ!

 それに、テメエが背負ってるその箱から鬼の気配がしやがる!俺と戦いやがれ!」

 

 しかも、野性味溢れるだけあり気配にとてつもなく敏感で、問答無用で炭治郎に斬りかかってきた。

 

 炭治郎は冷静に、猪頭の少年の斬撃を日輪刀を抜き防ぐ。

 

「…!

(刃こぼれが酷い…それに、この刀は日輪刀。

 まさか鬼殺隊の隊士か?けど、隊服を着ていない。もしかして、俺以外にも鬼殺隊に属すことなく鬼を狩る者がいたのか?)」

 

 いったい、この野性味溢れる少年は何者なのか…。

 

「猪突猛進!猪突猛進!

 ハッハッハ!お前らはこの嘴平伊之助様がより強くなる為の踏み台にしてやるぜ!!」

 

「参ったな…人の話を聞かなさそうだ」

 

 炭治郎はこの少年が面倒な性格をしていることを悟る。

 

 

 






双龍閃よりも、使えない御剣流…土龍閃と飛龍閃だな。

日天御剣流・双龍紅鏡
抜刀術からの烈日紅鏡。もちろん速さと威力は烈日紅鏡よりも上。原作で善逸と伊之助に殺られた鬼は呆気なく…。

日天御剣流・龍巣陽炎(りゅうそうようえん)
連撃で放たれる飛輪陽炎。ようえんと読んでるけど、意味は一緒。かげろうのままがいいかな?
響凱は背中の鼓をこれで破壊され、曙色の日輪刀の()()()を味わい、炭治郎がどうして無惨に警戒されているのかを身に染みて理解した。

日天御剣流・碧羅の飛龍。
飛龍閃で虚を突き、日輪刀を飛ばしたと同時に距離も詰め、敵に当たって地に落ちる日輪刀を掴みそのまま碧羅の天を繰り出す。
ネーミングがなぁ。飛龍碧羅の方がいいか?


さてさて、無惨様から血を与えられ、己自身を任意の場所に転移させられる鼓まで得て下弦の肆に返り咲いた響凱だけども、己のようになってほしくないと強く思う飛天御剣流の使い手には敵わず…。

原作では、鼓屋敷編は昼間の出来事ですが、ここでは炭治郎の移動速度が速すぎて、清(お兄ちゃん)が響凱が拉致された直後になっております。
伊之助は、三日?くらい屋敷を迷走してたのとことですか、ここでは終結後に到着。
そしたら、炭治郎と箱に入った禰豆子に遭遇。

執筆捗るので色好い感想とご評価ぜひぜひよろしくです!!
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