一応その残滓っぽいのはあるけどそれを多分コメディが塗りつぶすことになる気がする……
その前に一つ自論を語らせてくれ。
もしも。この世界に運命の出会いがあるのなら。
それはいつもの日常に紛れて突然遭遇する物だと自分は信じたい。
だって、その方が面白いと思わないかい?
通学途中のちょっとしたトラブルや、授業中に急遽襲来したハプニング、放課後の一時に起きるアクシデント等――なんか厄介事ばかり想定しているな、自分。でも、そんな感じで運命の出会いが訪れると考えたら……物語を読むのが好きな自分からしてみると、すごく面白いことなんだよ。
実際のところ、自分が遭遇した運命の出会いはそういう出来事だったからね。
さて、まずは軽い自己紹介から始めよう。自分は見滝原に住んでいる中学生で、趣味は読書で部活は一応文芸部……もっとも部員不足で活動停止しているから実態は帰宅部だけどね。
見滝原は日本の地方都市なんだけど、近年都市開発が活発に進んでいることもあって街に並ぶ建物のほとんどが日本離れした海外の建築物じみていることがウリの一つ。自分はこの町を物語の舞台となる街と内心呼んでいる。明らかにぶっとんだ構造やデザインの建築物も多いし。
ただ、そんな街で普通の中学生として生きることは正直言って退屈だった。
こんなマンガやアニメみたいな町なのに自分が過ごしているのは平凡かつ平和で退屈な日常。アタリマエじゃない街なのに、そこに流れている時間がアタリマエということに不満があった。
中二病の類でも患ってるんじゃないか、なんて笑いたいなら笑ってくれ。例えるなら……ほら、夢の国とか言う遊園地にずーっと住んでいるのに、パレードとかアトラクションが全くなくて、普通に遊園地を清掃するだけの日々が続いたらつまらないだろう?え、例えが下手?ごめんね。
とにかく。自分はこのアタリマエの日々に変化が欲しいといつも願っていた。
だからスーパーヒーローやファンタジーの世界を描く本を読むことに夢中になったのだろう。今日も放課後に書店を訪れて色々な本を物色しようとしていたら――運命の出会いを果たした。
いつも通り。普段通り。好みの本を手に取ってレジへ向かっていると。
「そこのあなた、ちょっといいかしら。何を買うつもりなの?」
突然呼び止められて振りむく。そこにいたのは同級生か年下くらいの黒髪の少女だった。少女が身に纏っているのは他校である見滝原中学校の制服で、恐らく初対面のはずだったが、妙に馴れ馴れしい。自分が忘れているだけでどこかで会ったことがあるのだろうか、と考えていると。
「それが買う予定の本ね。見せなさい」
少女は有無を言わせずに自分が抱えていた購入予定の本を勝手に奪って本のタイトルや帯などを確認すると、彼女は奇妙な反応を見せた。
「……っ、日常物ラブコメ。最悪のパターンじゃない」
本のジャンルを見るとなぜか落胆される一連までの奇妙な出来事。これが自分にとって彼女との運命の出会いだった。少なくとも、今ここにいる自分にとってはそうだと考えてる。
落胆した少女が立ち去ろうとするのを慌てて引き止める。君はいったい何者だ、自分が日常物ラブコメを買ったら何か君に不都合でもあるのか。あ、もしかしたらこれ読みたいの?とか。色んな言葉をかけて彼女を呼び止めると、彼女はため息を吐いた後にこう言った。
「6、4、5、1、2、6、3、2、1、5」
突然10個の数字を述べたことに首をかしげていると、メモを取ったかと問われたので慌てて携帯にメモした。その後彼女はこういったのだ。
「それ、あなたの学校で明日ある予定の小テストの回答よ。これが何を意味するのか分かったら今日と同じ時間に隣の喫茶店に来て答えを聞かせて。待ってるから」
言いたいことだけを言うと、こちらが質問する前に少女は人ごみに紛れてあっという間に見えなくなってしまった。まるで魔法でも使ったかのように一瞬で姿が消えているのだ。レジの店員の咳払いに気が付くまで、自分はどこかにいってしまった少女の姿を探していた。
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翌日。小テストの回答を少女に言われた通り回答すると、見事に10点満点だった。いつも6~8点くらいなのに珍しいこともあるものだ、などと隣の席のクラスメイトには言われたが。
これで少女の正体に確信を持った。
放課後になると急いで昨日の書店に併設される形で営業している喫茶店を訪れた。一番隅の方にある二人用の席に少女はいた。自分を見つけた少女はティーカップを掲げてニヤリと微笑む。
「それで。ここに来たということは私の正体がわかったのかしら、探偵さん?」
探偵なんて大それたものではない、と前置きした上で彼女のからかい言葉にこう返した。
君と比べたら探偵なんて小洒落た称号は消し飛ぶさ、
「ふふっ……どこのあなたも最初はそういうのね。その答えは50点よ」
50点。半分は正解。その上で考慮すべきは――『どこのあなた』。この言葉だ。
テストの回答を知っていたことから恐らくは未来預言者か時間旅行者のどちらかと思っていたが、後者で50点ということは時間に関連しているのは確実。つまり、この少女の正体は。
「わかったみたいね。それじゃ、自己紹介と行きましょうか」
ちょうど通りかかった店員に少女は追加の紅茶と自分へのコーヒーを注文する。少女が注文したコーヒーは自分が何度もこの喫茶店で注文していたお気に入りで、彼女の正体への確信を強めた。少女はコトリとテーブルの上にあるモノを置いた。違う世界から飛び出してきたようなモノ。
それは紫色の卵型の宝石に装飾を施した、不思議な雰囲気を感じさせるモノ。宝石の表面をクルリと指でなぞると、自分を指さしながら少女は自らの正体を明かした。
「私は
予想通り。未来のことを知っており、自分と比較できるほどにどこかのあなたと出会っている存在となれば……何度も同じ時間を繰り返している時間跳躍者だろうと考えていた。
「依頼の内容はこうよ。今から約一か月後にこの町を大きな嵐が襲う。その当日か、あるいはそれ以前に必ず私の親友が命を落とす。その未来を変えるために何度も逆行して時間跳躍している」
「今のところその突破口は見えないけれど、ループごとに人間関係や能力など細かい部分に違いがあることに過去のあなたが気付いた。これに親友を救うヒントがあるはずだと私は考えている。その上であなたに依頼することは――推理よ」
「ループごとに生じている違い、違いが起きるきっかけあるいは違いが起きた判断に使える事象、それらを踏まえて今回のループで果たすべき目的。そして、失敗するとしても次回以降の行動などなどなど。私と一緒に未来を変える第一歩について考える協力をしてほしい」
代金はこの店のコーヒーとケーキでいかがかしら、と笑みを浮かべる彼女にゾクりとしたものを感じた。物語の中にしかないはずの存在が目の前にあることに好奇心を覚えながら。
自分は少女が提示した奇妙な依頼を引き受けた。この出会いが、運命の出会いであると確信しながら。
「OK。短い間だけど、仲良くやりましょう。探偵さん」
依頼を引き受ける選択を聞いた少女は小さな微笑みを返した。
これから君が見るのは二人が繰り広げる奇妙な物語。
探偵さんと呼ばれるごくごく普通の世界に生きる中学生である自分と、
時間跳躍者兼魔法少女というファンタジーな世界に生きる女子中学生暁美ほむら、
生きる世界が異なる二人が見つけ出した時間跳躍に伴う法則の物語――そして、その果て。
どうか最後までご覧あれ。退屈はさせないことを約束しよう。
「ちなみにあなたは毎回この出会いを運命の出会いと呼んでいるわ」
……なんでそんなことまで分かるんだ。
「このループが多分320回目くらいだから。もう少し多いと思うけど詳しい数はメモを見ないとわからないし、詳しいことは後で話すわ」
ループ数が予想以上にエグイんだが。てっきり多くて20回前後かと。
今更ですけども、この作品はAAを使用します。
特にギミックがあるわけでもなく、ただの挿絵感覚で使っているだけですのでお気になさらず読んでいただければ幸いです。
・探偵さん
本当にごく普通の中学生であることはほとんどのループで確定している。職業が探偵ではなく、家族が探偵ということもない。実は極道とか忍者で魔女と戦えるとかそういうことはない。
・暁美ほむら
皆ご存じほむほむ。親友であるまどかを救うために何度も時間跳躍=タイムリープを繰り返しているが、今のところ成功したことはない。過去のループで探偵さんと協力関係にあった。
後、本来のほむらが経験したループ回数は10回前後がいい線とのことから恐らく多くても20回前後と思われる。そのため今作の約320回というループ回数は明らかにおかしい数値……ということに気付いた方もいるかと。
今作は膨大なループを積み重ねた結果原作から遠くかけ離れたIFの世界ということでご理解していただければ。
まどマギで例えるなら、まどマギポータブルのアイドルマミさんとか出てくるほむほむが吹っ切れた番外編ルート的な。
他の作品で例えるなら、シュタゲの比翼恋理のだーりん。大雑把に言うとループ繰り返しすぎてシリアス吹っ飛んだコメディ時空に突っ込んだ作品。
つまり?深いことは考えるな!!