暁美ほむらの依頼/時間跳躍の法則   作:あおい安室

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試験的要素が多く色々とミスが多かったのを非常に悔やんでおります。
もう少しうまくやれていたら、と言いたくもありますが……
でも、書いてよかったかな、と思える作品にはなりました。

ここまで読んでくださってありがとうございました。
まどマギ杯主催者の方にもこの場を借りてお礼を申し上げます。


……え?何か違う感じの話を見た?ナンノコトデスカネー(遠い目)

最後の最後に投稿する話を没版と間違えたとか、言えません言えません……


法則9:愛読書を閉じてカーテンコール

 そっと目を閉じる……そして、開いた。

 

 

 廃工場の姿はそこにはなく、視界に広がっているのは見慣れた喫茶店だった。ショッピングモールの書店横にある小さなチェーンの喫茶店。なぜこんなところにいるのかはわからなかったが、不思議と自分が不思議と落ち着いていることに気付いた。そばにいたはずのキュゥべえの姿はない。

 付け加えると店員の姿もないが、どの席にも老若男女様々な客が座っていた。皆何かの本を読んでいるが、それを横から覗き見ても書かれている内容は全く解読できなかった。

 

「その文字は魔女の言葉――らしいよ。僕にもよくわからないけどね」

 

 奥の方の席から声が聞こえてきた。三人席のテーブルで一つだけ空きがあるそこに声の主と、もう一人。この状況を作り出したであろう魔女の姿があった。彼女もまた、何かの本を読んでいた。

 

 

「ようこそ、黒の魔法少女さん。ここが物語の終着点。後書き、というよりは本を閉じた後の世界になるのかな。役目を終えた役者たちが休憩する場所、なんてね。控室って言った方がいいか」

 

 ……なら。ここにいる私も役者の一人と言いたいのかしら?

 

「少し違うね。まだ時間はあるんだ……ネタバラシの時間と行こうじゃないか、探偵さん?」

 

 その呼び方はよしてちょうだい。確かに最後は推理みたいなものを披露したけれどあれは全部まともに証拠がないから、彼女が怪しい証拠をかき集めて無理やりたたきつけたようなものだから。

 

「魔女裁判だったね。なるほど、言いえて妙だ。本当に魔女を殺すための裁判だからねぇ」

 

 なら、あなたは判決人に異議を唱える弁護士なのかしら?生憎だけど私は彼女を殺すつもりよ。

 

「構わないよ。殺したいのならどうぞご自由に。ただ……最後に一人の魔法少女の話を聞いてほしいだけさ」

 

 背後からコツコツと足音が聞こえた。うつろな表情の店員がテーブルにコーヒー1つにアイスティー1つ、ロールケーキ2つを配膳した。声の主は私に腰掛けるように促す。

 

 座りなよ。いつもみたいにケーキとドリンクセットを奢るよ――なんて。いつものように探偵さんは言った。私のよく知っている男の子の探偵さんの言葉に従って、私はティータイムを過ごすことにする。きっと、彼と過ごす最後のティータイムになるであろうことはわかっていた。

 

 

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 魔法少女のルールでは、○○の魔女、という呼び方が流行っているらしいね。ならボクはこの事件の犯人である彼女を脚本家の魔女と呼ぶことにしようかな。

 

 彼女が魔女少女だった頃から使える魔法は夢を見せる魔法らしい。対象が一番見たい夢を見せる魔法で、なんらかの欲望を抱く魔女に欲望を満たす夢を見せて確実に封じ込められるという意味では最強クラスだったとか。ボクは魔女のことをよく知らないから何とも言えないけど。

 魔法少女が闇堕ちしてしまった存在が、魔女、でいいのかな?

 

「魔女のことを知らないの?……探偵さん、あなたはどこまで魔法少女について知ってるの?」

 

 突然どこかから教えられた真実だけだよ、黒の魔法少女さん。犯人からキミに説明する役割を任されただけのただの男子中学生で、キミの名前とかボクは知らないんだよ。多分ここにいるボクはどこかのループで生き残った探偵さんで、それがここに呼ばれたんだと思う。話を進めるよ。

 

 えーっと、彼女が使える魔法の話だったね。実は彼女のデメリットが非常に大きくて、自分の魂を対象の精神に寄生させて発動する仕組みだから、発動中は肉体から意識は失われて無防備になるそうだ。発動させるためにはソウルジェムを相手の肉体に触れさせる必要があるとか。

 

「ソウルジェムが魔法少女の魂の器であるから、精神に寄生させると考えたらそんな手段になるのでしょうけどデメリットが尋常じゃないわね……ソウルジェムを砕かれたら魔法少女は死ぬのに」

 

 マジか。こんな魔法で最強クラスとかあの魔女は自分の魔法にうぬぼれてるんじゃないんだろうな……まあいいか。

 

 それで、黒の魔法少女さん。君は彼女の魔法を前のループでかけられたらしい。だから、君の魂には魔女の魂が寄生している状態だとか。

 

「……なんですって?」

 

 ボクは魔法について詳しくないからわからないんだけど……その上で、何回目かのループで魔女に覚醒して、魔女の世界に引きずり込んだとか。これ、本当だと思う?

 

「ちょっと待ちなさい、考えてみるわ。私のループは肉体の負傷などは引き継いでいないから、心を……魂だけを過去に送り込んでいる形式かしら。脚本家の魔女が使っている魔法は精神に魂を寄生させる……なら、私のループで過去に飛んだ魂に彼女の魂が付着していたのなら、ありえる……?」

 

 そうなると結構ヤバいよね。黒の魔法少女さんが経験したループがどこかのタイミングで脚本家の魔女が見せていた夢に切り替わってたってことだし。

 どのループから夢なのか気になるかい?ボクにもわからないよ。可能性としてはボク、もとい探偵さんと遭遇したループから夢じゃないかと思うけれど。脚本家の魔女とやらは女だった場合の探偵さんを名乗ってたらしいし。女探偵さんを名乗るのなら、男探偵さんも必要になるよね。

 

「偽物を名乗るには本物が存在する必要があるってことね……だけど。そうなると私が経験したループのうち500回くらいが夢の中の出来事になるんだけど……」

 

 相変わらずループ回数がエグイね、黒の魔法少女さん。一回のループがボクが黒の魔法少女さんに本屋さんで出会った日からで最後の記憶である大嵐が襲来した日までとカウントするなら約一か月、それを500回積み上げれば40年くらいか。おめでとう黒の魔法少女(50代)さん。

 

「気にしたくなかったことを言わないで……!!」

 

 大丈夫大丈夫。世の中には大人になって子供が主人公になったのに魔法少女○○○みたいな感じのタイトルの漫画とかもあるから。まだまだやれるよ、うん。

 

 

 無言でショットガンを取りなさないでください。人間ザクロにはなりたくねぇ……!!

 

「ロケットランチャーの方が良かったかしら」

 

 火力が足りないとかそういう問題じゃない。

 

 

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 ●

 

 

 ●

 

 

「あ、もう土下座はいい?じゃあ……次は脚本家の魔女が持つ詳しい能力について話していこうか。ボクは魔女とか魔法とか全然わからないのに、いきなり答えだけ渡されても説明しづらいんだけどなぁ……」

 

 ボヤきながらも彼はロールケーキにザクザクとフォークを突き刺しながら説明を始める。白いロールケーキに赤いクリームがどこかキュゥべえみたいだな、と思ったのは内緒だ。

 

「一番見たい夢を見せる魔法って言ったけれど、いきなりそういう夢を見せるわけじゃない。最初は対象の一番見たい夢に近いけれど現実よりの夢を見せるらしい」

 

 何故そんなことをするのだろうか、と考えたが。魔法少女はもちろん魔女も上位のモノになるにつれて理性らしき物があることを思い出した。いくらなんでもいきなり目的が叶うことはないことはバケモノとなった魔女もわかっているから、いきなり望みが叶った夢を見せられても受け入れられないのだろう。

 だから、少しだけ望みに近づいた現実の夢を見せる。これくらいならあり得るかと思えるレベルの夢を。それなら理性も現実であると受け止めるのかもしれない。

 

「そうそう、そういうことだよ。流石黒の魔法少女さんだ」

 

 お世辞はいいわよ。話を続けてちょうだい。

 

「了解。何度も何度も何度も、少しずつ少しずつ少しずつ、望みに近づいていく夢を見せていつかは望みが叶う夢を見せる。その頃には心は幸福な未来におぼれて思考を停止、精神が死ぬ、っていうのが魔法の全容なんだけど。改めて聞いたことを考え直したらこの魔法は微妙なんだよね」

 

 エグい魔法であると思ったけれど、なぜ微妙だというのか。確かに発動条件はソウルジェムを触れさせることとかなり難しいことであるとは思ったが。

 

「どうも相手に見せる夢は全部自分で作る必要があるみたいなんだ。つまり、脚本を書く必要があるというわけ。当然脚本が下手なら「これは夢だ!」って気づいて魔法は失敗するってこと」

 

 ……ああ、それは微妙だ。あれだけのシナリオを自分で用意するのはかなりの手間だろう。で、脚本が下手だと夢であることに気付く、ということは。 ついさっきまでの推理に至る過程が杜撰だったのはそういう事なの?

 

「脚本を書く能力が劣化している可能性はあると思う。だけど、それよりもどうも脚本家の魔女はキミが謎を解くことに失敗することに賭けていた節があるとボクは推理した」

 

「いまいち証拠になりそうなモノを脚本家の魔女は提示していないのが気になるんだよね。まるで謎を解かせようとしてない意地悪な探偵モノの脚本を見ている感じだった。まあ、黒の魔法少女さんは彼女が怪しいからとりあえず殺す!みたいな感じで追い込んだけど」

 

 魔女を追い詰めるためには証拠不十分でも処刑できる魔女裁判、なんてね。あそこで失敗したらどうなったことかと思ったけれど、賭けがうまく行って良かったわ。

 

「それすらも彼女の脚本だった可能性もあるらしいんだけどね……」

 

 探偵さんが席を立つと、ぴょん、っとジャンプした。降り立った衝撃で周囲の床が抜けた。いや、違う。周囲を残して全ての風景が崩れ落ちていく。外に見える本屋も、電灯も、客も、テーブルも、何もかもがひび割れて崩れて――暗闇の中にポツンと浮かぶテーブル一式だけが残った。

 不思議と周囲は明るくて探偵さんやまだ本を読んでいる脚本家の魔女の姿はしっかりと見えた。

 

「どうやら。初期に比べると脚本はどんどん劣化しているらしい」

 

 探偵さん曰く。私の夢に寄生した脚本家の魔女――この時点では魔法少女であったため、脚本家の魔法少女と呼称し直す。最初に脚本家の魔法少女は、私の夢の中に非常に精巧な見滝原の脚本を作り上げたらしい。魔法少女仲間はもちろん、キュゥべえや魔女と言った人外の存在の脚本もつくり、細かいところでは見滝原中学の同級生や行きつけの店の店員の脚本を作った。

 

 こうして私の夢の中には、目覚めてからワルプルギルスの夜が襲来するまでの1ヶ月の見滝原が生まれた。私はずっとこの見滝原を現実と思い込んで何度も何度もループを繰り返していた、が。

 

 突然脚本家の魔女が読んでいた本のページが飛び散った。慌てて散らばったページをかき集める彼女の姿はどこか可哀そうで――これからの探偵さんの話に重なる部分があった。

 

 私の魔法は脚本家の魔法少女と相性が悪すぎた。夢の世界はループして使い回せるようになっていなかったから、ループした瞬間脚本が崩壊する。世界が消滅してしまう。だから、何度も脚本を作り直す必要があった。

 終盤、というか魔女裁判をする直前の段階では脚本の劣化はかなり酷く、行動が明らかにおかしい人については彼女も無理矢理修正をかけていたとか。そのせいで本来の脚本に描かれていた行動からズレて妙な行動に出ている人物が何人かいたらしい。

 その代表格の一人こそ、キュゥべえである。魔法少女の引退話なんてありもしないことを言い出していたあたりがそうらしい。故にキュゥべえは騙されていた、などと言っていたらしい。キュゥべえにしては話がうますぎると思ったら、あの話は脚本家の魔女が作ったものだったのか。

 

「本当はソウルジェムを差し出させることで、黒の魔法少女さんから魔法少女の力――もとい、ループの能力を取り上げることが目的だったらしい」

 

 ゾッとした。もしも渡していれば、私は夢の世界で抵抗する手段を失っていたという事か。

 

「あくまでもボクが与えられた情報だから鵜呑みにするかどうかは任せるけれど、どうやら次のループを始めた場合は完全に夢の世界が崩壊するレベルで脚本はボロボロらしい。その証拠に――ああ、ちょうどいいところだ。見てみなよ、この魔女さん」

 

 先ほどから会話に混ざることなく本を読み続けている彼女の姿を見つめる。パラパラ、パラパラと本を読んで――そして。また、ページを最初に戻していることに気が付いた。

 

 

「……もう。脚本を書き直す力がないみたいだ。今思い返してみれば、ボクは何度かウキウキと本に文字を書き込み続ける女の子を見た記憶がある。こんな明らかな大人の女性の姿よりもずっと若い、メガネをかけた女の子だったと思う」

 

 恐らく。その姿こそ脚本家の魔女が魔法少女であった頃の姿なのだろう。その姿を役者である探偵さんは今いる控室と評した世界で無意識に見たことを思い出したのではないか、と思われるが。考えるべき事項はそれではない。

 脚本家の魔女は同じ本を何度も、何度も読みなおしている様子だった。既に書き上げた脚本を何度も、何度も読みなおすことしかできない。魔法少女から魔女へと――皮肉だが、成長したことで脚本を執筆する力が失われてしまったのだろう。出来ることは過去の作品を読みなおすだけ。

 

「黒の魔法少女さんが気付いていた法則で確か、ワルプルギスの夜が脆くなっている法則と……あと、親友が契約するタイミングが早くなる法則があるって言っていたよね?それは彼女曰く書ける範囲をどんどん減らさないといけなくなった弊害らしい」

 

 だから、決戦あるいはループの終わりが早まるような状況だったということか。だけど今回のループはそれどころか普通にワルプルギルスの夜を倒せているのだが。

 

「その頃には……もう、魔女になっていて薄れゆく意識の中ではまともに脚本を書けなかったらしい。残すべき伏線や証拠も書けない状況で、キュゥべえとやらに干渉もされてどうしようにもなかったとか」

 

 ……キュゥべえにお礼を言うべきなのだろうか。そういえばあいつどこに行った。

 

「一時的に追い出したらしい。多分もう少ししたら帰って来ると思うけれど……その辺どうなのかな?」

 

 探偵さんは脚本家の魔女に尋ねる。彼女は何も返さない。ただ、本を読み続けているだけだった。

 

「ダメだったか。ついさっきボクをこの店に呼び出して黒の魔法少女さんに伝えてほしい情報だけを言うと、それ以降黙ってずっとこの状態なんだよ。こんな状況で夢の世界のループを始めたら……」

 

 次に迎える世界は、二度と書き直されることのない白紙の脚本の世界。そこに放り出された私は見滝原どころか人も物も空気もなく、時間すらもない空間を永遠にさまようことになる、かしら?

 

「恐らくだけどね。ループの条件となる時間という概念すら存在しない世界に放り込まれたら黒の魔法少女さんは何もできずに終わりを迎えることになるだろう」

 

 ――脱出方法は?

 

「簡単さ。ここで本を読んでいる彼女を殺せばいい。魔女を殺せば魔女結界は消滅する……はずだよね?元々この世界は魔法少女の魔法で産み出された夢の世界だったけど、今は魔女結界に変化しているはずだから……いけるよね?」

 

 自信がないんでしょうけど、私に聞かないでくれる?……と言いたいところなんだけど。あなたは自分でもよくわかってないんだったか。

 

「そういうこと。悪いね、最後まで役立たずで」

 

 いいえ、そんなことはないもの。これまでのループで探偵さんに何度も私を助けてくれたから。

 

「ぜーんぶ、この脚本家の指示みたいなものだけど?」

 

 そうだとしても、よ。私はあなたと過ごしたこれまでの夢のループは退屈しなかったもの。いい経験になったわ……って言っていいのかしらね?あなたはどうなの?

 

「当然、退屈はしなかったよ。だってボク、本を読むの好きだし?黒の魔法少女さんの話はボクからしてみれば本当に小説やマンガの物語みたいなものだったから面白かったよ」

 

 あら、そう。ねえ、まだ時間はあるのかしら?いくつか話したいことがあるのだけど。

 

「まだいける、とは思うよ。ボクも最後に話したいことがあるからね」

 

 コーヒーとケーキ、追加注文するとしようか。指をパチンとはじくとテーブルの上に新しいコーヒーとケーキが現れた。もはやこの世界ではなんでもありなことについては何も言うつもりはないけれど……私、紅茶派なんだけど。忘れてたのかしら?

 

 

 ――崩壊寸前の世界の住人に無茶を言うな?はいはい、そうね。探偵さんはわがままね――

 

 

 

 

 それから、数十分後。ティータイムの終わりを告げる銃声が響いた。

 

 


 

 

・探偵さん(男)

 脚本家の魔法少女がループ初期から懸念していた市外の状況変化による物語の変化の指標――として作成されたキャラクター。その為必要最低限の役割と能力に抑えるため普通の男子中学生の役割を担っていた。

 

 また、推理という形で暁美ほむらの行動を誘導して物語のボロに気づかせないための立ち回りや、現実だと無理やりにでも思い込ませることも役割の一つだったが、彼もそのことは知らなかった。ちなみに暁美ほむらの名前を知ったり、魔法少女に絡もうとしたら脚本家の魔法少女が殺したのは、一応理由がある。

 

「主人公と相棒が恋愛関係になりそうな展開は解釈違いです。私が介錯します」

 

 ……たったそれだけの行動で恋愛に発展すると考えるあたり、元々アレだった可能性はある。

 

・探偵さん(女)/脚本家の魔法少女⇒脚本家の魔女

 過去のループでとある事情からほむらに魔法を使った魔法少女、そしてその成れの果て。夢の中でのループが自分の魔法と相性が悪すぎたどころか、暁美ほむらが眠っている状況で寝ぼけて偶然本当にループを起こしたため魔法を解除する暇もなく彼女の肉体に魂が閉じ込められてしまった。

 それから夢の中でほむらが何度も何度もループを繰り返した結果、度重なる脚本修正に魔力と精神力を使い果たし魔女化した。

 

 幸い魔女化して間もない状態であったことと精神世界に存在する魔女という特殊な性質もあってか、比較的おとなしい状態で最期を迎えることとなった。

 

・キュゥべえ

 とある魔法少女の願いで、ループが始まっても病院で眠り続けているほむらを救出するために精神だけを送りこんだら、「面白いことやってるなぁ……利用できるかもしれないね?」となったらしい。なお、最終的にその中で起きたことの記憶を失ってしまった。

 どうやら脚本家の魔女が最後にキュゥべえの項目に「ここで見聞きしたことを現実に持ち帰れない」と書き込んでいたらしい。

 結果的にキュゥべえがしたことといえば、外部からの観測者による犯人の指摘というエネルギ―を用いて夢の世界を訪れてほむらにそれを伝えただけである。踏んだり蹴ったり。

 

 

・暁美ほむら

 皆ご存じほむほむ。親友であるまどかを救うために何度も時間跳躍=タイムリープを繰り返しているが、今のところ成功したことはない。

 

 脚本家の魔女討伐後、病院で目覚める。三日遅れで次のループを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 これで私が記憶している限りの物語は終わり、幕引きのカーテンコールよ。読みづらかったでしょうね、私はこういう文章を書くのは初めてだから……ごめんなさい。

 

 でも。あなたはここまでの話が嘘だと思うかしら?きっと思わないでしょうね。

 

 もしも嘘だと思うのなら、彼女の病室に行ってみなさい。彼女の病室にある棚の中には彼女の私物として卵型の装飾された宝石――彼女のソウルジェムが入っている。もしもひび割れていたとしたら、瀕死状態のモノだから触らないことね。それが砕けたら彼女は永遠の眠りにつくことになるのだから。

 大丈夫よ。ひび割れたソウルジェムすら治療できる魔法少女がもうすぐ見滝原に来てくれるから、きっと彼女は目覚めるわ。確か――環いろは、って子だったかしら?ただの余談ね。

 

 あなたの友人はすごく物好きみたい。たまたま隣の病室にいてたまたま同い年だった女の子を助けるためだけに、今後のループで何が起きるのかを夢の中でシミュレートできる魔法を手に入れて――私のミスで命を落とすことすら許容して、進んで魔女となる道を選ぶ女だったわ。

 しかも、それで生まれたグリーフシード、魔法少女の間で流通する貨幣、みたいなものかしらね。それを用いたループ攻略方法まで考えていたみたい。おかげで初期から魔法少女を一人味方に引き込めたことで、少しずつ夢で経験したループと比べると運命がかなり変わってきている。

 きっとこの手紙があなたの元へ届くころには目的を果たしているはず。

 

 そして――後二人。二人の親友を救いたい。

 

 一人は眠り続ける私を救うために、極悪なマスコットにそそのかされて魔法の性質を調べるだけでなく魔法少女の代償である願いさえも使った彼女……例の病室で眠り続けているあの子。

 まさか、今回のループでも私のために行動を起こすとはね……後でキュゥべえはハチの巣に

 

 関係ない話だったわ。忘れなさい。

 

 一人はそんな少女を毎日お見舞いしに来る同じ部活動の少年――そう、あなたよ。あなた、彼女が作り上げた夢の世界で結構重要な役割を担っていたのだからそれなりに意識はされてるみたい。私が会ったこともいないあなたと親友になりたいと思えるくらいにね。

 

 

 さて、そんなあなたに依頼がある。

 

 

 魔法少女に魔女と一流の役者を、終盤魔女が書いたせいでボロボロの二流の脚本で躍らせた三流の物語を……ちゃんと読める物語として、書き上げてくれないかしら?彼女が目覚めた時に、どんな話があったのかを伝えるためにはこれが一番だと思うのよ。

 

 あなた、こっちの世界でも文芸部やってるみたいだしね。最後に迎えるは大円団の物語を期待してる。

 

 それじゃ、明日細かい打ち合わせをしましょう――ショッピングモールの本屋横にある喫茶店で待ってるから。こっちで合う日を楽しみにしているわ。初対面の探偵さん。

 

 

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