うん。じゃあもういっかい。 作:tty
「はぁ・・・何で僕がこんな大物を・・・」
僕は依頼を受け廃村の入り口に来ていた。
大事なのはこれが事務的に受注された依頼ではなくお偉いさんから直接承った依頼だって事だ。
「嫌な予感はしてたんだよなぁ・・・あの日から逃げ足が鈍っちゃったかなぁ。」
本日受け(させられ)た依頼はなんと、あの忌々しくも世界を変えた村にいる土着神系の呪霊を祓うことだ。
実はあの後あの村は村民が不可解な連続死を遂げ、見事な廃村となったらしい。
「お偉いさんの話によれば、調査に入った呪術師もひとり犠牲になったんだっけ?」
一歩も違えば自分もそうなっていた事を思い出すと犠牲になった彼、あるいは彼女に同情の念しか沸いてこない。
「さて・・・と。入る前の確認だ。」
対象は、村民の信仰を一手に集めた仏像が呪霊化したもの。
腕がいっぱいあるタイプみたいだね。
術式は不明。物理的な力に関しては一級の中でも上位の力を持っているらしい。
「たぶんこいつがあいつを産んだんだよね・・・あーやだなぁ。」
あいつは呪力を盗むような事をしてきたけど、あれが術式だったなら似たような術式だよね、多分。
「逃げたい・・・けど行くしかないよね。お偉いさんからなに言われるかわかったもんじゃないし。」
村に足を踏み入れる・・・瞬間何かが変わった。
「あー・・・そういえばあの村長・・・村に足を踏み入れた時点でとか何とか・・・。」
村の奥、旧村長宅の横にあるお寺の本堂から強烈な敵意が滲み出る。
やばい・・・なんでかは知らないけどすごい怒ってる。
「行くかぁ…」
昔来たときには緑が生い茂っていたこの道も今は枯れた葉の名残だけが残っている。
昼だというのに夜と錯覚してしまうほど暗く重い重圧が身を蝕む。
警戒をしつつ敵意の元凶の前まで足を進める。
「これは・・・」
多少は立派だったお寺は見る影もないほど荒廃している。
破れた障子の隙間から本堂の様子が見える。
そこには3,4mはありそうな巨大な仏像のようなものが胡座を組んで座っていた。
3つある顔はすべて憤怒に染まり、6つある腕はすべて拳を握りしめ、振り下ろす場所を求めている。
【子、子、我が子】【死に、消えた、我が子】【忘れもしない、この呪力】
あ・・・これ完全に僕のことわかってる感じか。
そりゃ怒りもするか。
「あ、目があっ!!」
強襲。
目が合うや否やその巨体からは考えられない速度で寺を破壊しながら突進してくる仏像。いや、異形。
圧倒的な高さから振り下ろされる腕をするりと受け流す。もちろん術式を使ってね。
だが、一級上位の力というのは嘘じゃないらしい。
完璧な動きを再演してなお体に響くこの衝撃。
「さて・・・どうやって組み立てようか。」
1回、2回、3回と降り下ろしを受け流しながら考えていると横殴りの激しい一撃。これを異形の拳に手を添え相手の力を利用して飛ぶように距離をとる。
「かろうじて人型なのが救いかな。」
しばらくは動きを見ないとどうしようもないのは変わらないんだけどね。
「っと!!それはまずい!」
再び距離を詰めてきた異形は勢いのままつかみかかってくる。
掴まれると平凡な僕には為すすべがない。そのまま握りつぶされるだろう。
だから急いで体を横に投げ出す動きを再演する。
何とか避けたその先にはまたもや掴み。それを体を投げ出す勢いのまま地面に手を突き思いっきり上に跳ねる事で回避し理想のタイミングで着地する。
「うん。だいたいわかった。」
着地してすぐ地面をえぐりながら迫ってくる腕の薙ぎ払いを肘のほうへと走り股下に回避しながら、動きを組み立てる。
3つの腕で同時に行われた圧力を伴った降り下ろしを異形の足を蹴る反動で回避した後に続いた掴みを予想していた僕は思わず笑いが漏れる。
掴もうと迫る手のひらに対して僕は足を止め右腕を素人のように構える。
「ちょっと不格好だけど許してね。これが再演しやすいんだ。」
「うん。じゃあまずいっかい。」
右腕をいつものように再演する。異形の手は僕のすぐ近くまで迫り僕の腰の入ってないパンチとぶつかる。
瞬間、黒い火花が散った。
世界が青く染まっていく。
あぁ。思考が冴え渡る。この世界で僕は自由だ。
弾け飛び、肘まで吹き飛んだ異形の腕。しかし、一級の呪霊はその程度では止まらない。
残る腕で波状攻撃は続く。振り払いを障害物を飛び越えるように完璧に避けるがその一瞬浮いた隙を狙い右から拳、左から手のひら。異形の拳に空中で足を引っかけ思いっきり振り上げる反動で地面へと回避するがその先に振り下ろされる二つの拳。地に着いた腕で思い切り体を跳ね起こし一つを避けさらにもう一つを受け流す。
一息をつこうとしたところに壊したはずの腕が掴みにくるもこれを最小限のスウェーで回避しながら距離をとる。
「なるほどね。フィジカル全振りで術式は体をあるべき姿に戻す・・・再演術式といっても良いんじゃないかな。似てるね僕ら。っと・・・おしゃべりは嫌いみたいだね。」
続く波状攻撃。
全身を使いその手数で、その力強さで僕を圧殺しようとしてくる。
僕はそれを避け、受け流しながら機を伺う。
「ここ。」
連撃がゆるんだ瞬間に体勢を整え地面にひざをついている異形の右足を蹴る。黒い火花が散った。
世界はさらに青く染まっていく。
わかる、わかる、わかる。
次は薙ぎ払いだろう。分かっている。
避けた先に降り下ろしと踏みつけ。それも分かっている。
じゃあ次は踏み降ろした足を起点に回し蹴り。分かっているから、迎え撃とう。またもや黒い火花。
「しぶといね・・・ちょっと時間があればすぐに元通りだ。」
けどそれも時間次第だ。
打てば打つほど僕の思考は加速する。
右足で地面を蹴るように術式で再演しつつ、迫る足裏に対処するために左手を空を掻く用に動かす。
僕の手は振り下ろされる異形の脚にちょうどぶつかりその反動で踏みつけを避けつつ万全な体勢に。
「もういっかい。」
火花が散る。
右足が潰れ体勢を崩した異形は倒れるまま体全体を使って押しつぶそうとしてくる。
「そうくるよね。」
股を抜け相手の背後に回り振り返りざまに呪力を込め左足を打ち、当然のように散る火花。
「おっと、今のはアドリブ。」
打つたびに濃さを増す世界。
ここまで深く潜るのは初めてかもしれない。
あぁ遅い、遅すぎる。飛び散る石片が、舞い落ちる枯れ葉が、異形の動きさえもがなにもかもが遅すぎる。
左手に、右腕に、右踵に、腰に、ありとあらゆる全身の部位に術式をとめどなくかけ続ける。
身体能力が変わらなくても、キレだけでここまで動きが変わる。
だから僕より早い薙ぎ払いも、降り下ろしも、回し蹴りも、踏みつけも全部が遅い。
十度に一度が次第に八度に一度、五度に一度、三度に一度と密度を増していく。
出先を潰し、返しを潰し、相手の動く先を常にとり続け異形よりも圧倒的に遅い僕の連撃が異形の暴風雨を押しつぶしていく。
圧縮された世界で気づけば異形の再生速度さえも超え始めそして。
「うん。じゃあもういっかい。」
放たれた最後の一撃は黒い火花とともに呆気なく異形の命を刈り取った。
「あー・・・相性良くて良かった。」
「す、すげぇ・・・!最後のほう一方的じゃん・・・!」
「てな感じで、これがけっこう前にあった一級君の戦いね~。まぁ参考にはなるんじゃない?僕なら吹き飛ばして終わりだけど。」
改変とか何でもしていいのでだれか本編書いてくださいお願いします。