拝啓、エアシャカール様へ
秋の色合いがだんだんと濃くなり、寒さが身にしみる時期となってきました。
あなたはいかがお過ごしでしょうか。
私はこっちでも元気にやっています。
今回こうして手紙を出そうと思ったのは、いつかあなたとゲームセンターでとったぬいぐるみを見つけたからです。
このぬいぐるみを見つけたら居ても立っても居られなくなってしまいました。
あの時は楽しかったですね。
ショッピングに行ったり、ラーメンを食べに行ったり、温泉に行ったり。
あなたは私からの提案を快くとは言えませんが、いつも承諾してくれましたね。
あの日々は私の中で今も煌びやかに輝き続けています。
あれからもう3年もたつんですか。月日が流れるのは本当に早いものです。
あの時、あなたにお別れをきちんと言えなくてごめんなさい。
もしあなたとの時会っていたら、きっと、私はどうしようもなくなってしまっていただろうから。
でもこうして遠くに離れた今なら言えます。
ありがとうシャカール。
そしてさようなら。私の親友。
敬具
拝啓、ファインモーション様へ
オレはオメエみたいに季語の挨拶みたいな気の利いたことはいえねえ。
だから用件だけをここに書いて送る。
今まで連絡しなくて悪かった。
オメエのことだから挨拶しなかったことにオレが怒ってると思ってんだろ?
それは違うぜ。
オレもオメエと似たようなもんだ。
帰ってほしくなかった。
ずっとそばにいてほしかった。
3年も経った今なら言える。
ありがとなファイン。
オレと仲良くしてくれて。
そしてまたな。オレの一番の友達。
敬具
木陰に腰かけた乙女は日本からの便りを何度もよみこむ。
「シャカールも私と同じだったんだ。」
それだけでなんと嬉しいことか。
彼女は無骨な紙切れを大切にしまい込む。
「シャカールとまた…遊べる日は来るのかな…。」
そんな日が来ないことは彼女が一番よく知っている。
あの煌めいていた日々は一夜の夢にすぎない。
窮屈で、途方もないほどに退屈な現実へと浸らなければならない日がきたのだ。
だから極力昔の友と連絡を取るのも控えてきた。
それをしてしまったら、鳥籠の自分がどうしようもなく惨めに思えてしまうから。
先の親友についてもそうだ。
しかし、あのぬいぐるみを見てしまったらどうしようもなくなってしまった。
あの日々が莫大なリアリティを伴って襲来してきたのだった。
だから、どうしようもない感情のはけ口が欲しかったのだ。
でも、もう大丈夫だ。
これで明日からも現実に立ち向かっていける。
彼女は親友の真意を知り、決意を新たにする。
「よお。」
その決意はいとも簡単に切り裂かれてしまうのだった。
「ど、どうして…!?」
言いたいことはいくつもあったのにこれしか言えなかった。
ここにいるはずのない友は、かつてと変わらないしけた顔をしながら答える。
「そんなン決まってんだろ。」
「オメエとラーメンが食いたくなったんだよ。」
嫌だったか、いたずらっ子のような笑みを浮かべながら意地悪な質問をしてくる。
あの時と何も変わっていない。
そんなの決まってるでしょ、私は友からの初めての提案に強く肯定するのだった。
心優しい殿下は、友の頬が真っ赤に染まっていることには触れてあげなかった。
ありがとう、エアシャカール。私の不器用な王子様。