「つーわけで、オレの娘や部下孕ませたら返すから、それまで貸してくれねえか?もちろんオレも種もらうが」
「それは困るかなぁ……」
「正妻の片割れとして、断固拒否します」
オレは今――青空の元、簀巻きにされ、逆さで木に吊るされている。
孫堅の爆弾発言のあと、彼女から顎に良い一撃をくらい、行動不能にされ、簀巻きにされてドナドナ(たぶん孫堅の本拠地へ)されそうになった。
しかし、アスナや桃香がみんなと連携してそれを阻止。
オレは孫堅に木に逆さに吊るされ、孫堅による『オレを餌に迎撃』などあったが割愛。
とりあえず、武器を収めて何故あんな暴挙に出たのか、問いただし、冒頭に至る。
――などとあのあとの流れを振り返り、思考を現実に戻す。
天地逆転したオレの視界には孫堅と桃香とアスナが揉めてるのが見える。
……さすがにそろそろ、意識が……キツく……。
なってきたので身代わりを使い脱出。
アスナの隣に出現すると、ユイがオレを捕まえ、頬擦りしてくる。
……ユイ、慰めてくれて……
「『今回は』パパに悪いところはありません。あと、パパは絶倫ですけど、種馬ではありませんからね!」
「基本的にオレが折檻食らう原因、9割くらいオレ以外だから、『今回は』って強調されると悲しい」
慰めてくれたはずなのに悲しみのほうが大きく感じるのはなんでだろうなぁ……?
「キリト君」
アスナに呼ばれ、そちらを向く。
「キリト君は……どうするつもり?」
「……」
オレが答えに窮すると、ユイとプレミア以外の女性陣がジト目をする。
「……キリトは傷心から私たちの会話を聞き逃していたみたいですね」
「プレミアちゃん。分かってるわよ? ……まあやらかした後なんだから、もうしばらくはしっかりしてほしいかなーと思っただけで」
後半仕方ないなーって顔をするアスナ。
すると桃香が口を挟む。
「えっと、孫堅さんのところにお世話になるかは、お兄さんのが決定するってことになって、私とアスナさん……というか孫堅さん以外は『断固反対』で一致してるけど……」
「なんならウチで囲ってもいいぜ? 女を毎日とっかえひっかえして、あとは好きにしてくれりゃいいからな」
孫堅の言葉に肩を竦める。
「……悪いが、仕官するつもりも、召し抱えられるつもりも、ましてや囲われるつもりも、ない。オレはオレの目的のために動く。未来は不確定だが、膝を屈する必要が来ない限り、アンタのところに繋がれて種馬とかになるつもりはない」
オレが彼女の眼を見ながら断言すると、からからと彼女は笑いだす。
「雷火以上の頑固だな、キリト。ま、それならそれで構わねぇ。英雄色を好むとは良く言うが、色に惚けて堕落するようじゃダメだしな」
ただし、と続ける孫堅。
「征伐軍の指揮権はオレにある。そして軍師や武将を使いこなすにゃ、そいつのことを理解しておかねえとダメだ。あと食い合わせと同じで武将間の相性とかも確認する必要があるから、ウチの連中と手合わせしたり、軍議とかで意見出したりについての拒否権は認めねえ。そこは譲れなねえぞ?」
「……交流と称した宴とかで酔い潰せば同意は誤魔化せるとか、相性確認と称して閨に引きずり込むとかは通用しないしさせないからそのあたりよろしく」
オレがチラッと簀巻きになってる身代わり(丸太)を見ると孫堅もそれを見て舌打ちした。
「妖術の類が使えるから逃げるのも容易いってか?……の割にはオレが連れていこうとした時はやらなかったよな? ……まあいい。オレの勘は絶対じゃねえしな」
首を傾げたりしたが頭を振ってこちらに向く。
「とりあえずしばらくはよろしくな、キリト」
「ああ。よろしく。オレを籠絡しようとする思考はともかく、武将としての能力、この上ない頼もしさと思ってる。大船に乗ったつもりでいて構わないな?」
オレが手を差し出すと、獰猛な笑みを見せた。
「誰に言ってやがる。オレは江東の虎、孫文台だぞ?オレの有り様を後ろで見ててもいいからな?」
それから数日後。
「……壮観だな」
城壁の下に並ぶ兵士たちと、それの傍に待機してる荷駄隊を見つつ、オレはそう零した。
「兵2万に3万の兵が6ヶ月活動できるだけの備蓄も持たせてあります」
「どうじゃ、キリト。名門汝南袁家の当主であるわらわにかかればこの程度たやすいことじゃぞ。じゃからわらわのところに仕官して、名を挙げて、それから正式に……でもよいのじゃぞ?」
張勲と袁術の言葉にたいして反応に困りながら苦笑する。
「感謝してるよ。仕官は丁重にお断りするけど」
「ぐぬぬ……」
「キリト―! 出立するぞ」
城壁の下にいた炎蓮(真名を押し付けられた挙げ句、そう呼ばないと反応しなくなった。コレでアスナと桃香がへそを曲げて慰めることに。解せぬ)に言われたので城壁から飛び降り、着地する。
そこにはアスナたちもおり、馬車もスタンバイされていた。
「寿春で雪蓮たち……ああ、オレの娘の孫策のことな。そいつらと合流する。――野郎ども!出立だぁ!!!!」
「「「「応!!!」」」」
進軍とともにオレは馬車の御者台に乗り、馬にムチを打つ。
「おっと、オレを忘れるなよ」
しれっとオレの隣に座る炎蓮。
「えぇ……どうして?」
「いいじゃねぇか。減るもんじゃねえだろ」
そういいながら四つん這いで荷台に潜り込む彼女。
「何だこりゃ!? どうなってやがる!?」
壁尻っぽい状態で叫ぶ彼女。
「みんな、よろしく」
オレは鋼の意志で放置を選択。
そのまま中に引きずり込まれる炎蓮。
「……ところでお兄さん」
代わりにでてきたのは桃香、愛紗、鈴々、そして朱里と雛里だ。
「……なんだ?」
オレは反射的に逃げようとしたが、両腕を愛紗と鈴々にロックされた。
コレでは印が結べない!
「アスナさんやプレミアちゃんには手を出してるのに……私達には手を出さないのなんで?」
笑顔だったはずなのに、開いた瞳は総てを飲み込むような深淵の如き黒に染まっていた桃香。
愛紗と鈴々はハイライトこそ消えていないものの、自分を女と見られていないと感じて憤慨とアスナたちのようにされたいという嫉妬の炎を見せている。
朱里と雛里はどっちかというと、仲間はずれにされると思ったからのアクションで、生まれたての子鹿みたいに涙目になっている。
「アスナたちは前世からの関係者! あとアスナは一応正妻!」
「『前世の』正妻だよね? なら今はまだ誰とも結婚してないって理論が通じると思うんだけど……」
オレの膝の上に乗って、胸を押し付けながらこちらを覗き込む桃香。
理論的には正しい。
だが、ここでそれを肯定すると、待っているのは惨劇である。
オレの理性も本能もオマケに啓示も告げてきているのだから間違いない。
「だが今生でも添い遂げるつもりでは在るぞ!?オレには結婚指輪もあるし」
「ならリズさんとか、ティアさんとか、鈴さん、プレミアちゃんについてはどうなのかな? プレミアちゃんは愛人って言ってるけど、そのあたり、どうなの?」
「……」
愛人である→さっきと言ってること、矛盾してない?なら私達がお手つきされてもおかしくないと思うよ?
愛人ではない→なら私達も彼女たちみたいにしてほしいなー。
詰 ん だ ☆
「お に い さ ん」
オレの唇に柔らかいものが触れ、甘い香りがオレを包む。
目の前には桃香の求めている、蕩けた顔があった。
「……えへへ、ごめんね。アスナさんにはお願いたくさんして、折れてもらったから。さ、馬車の番はプレミアちゃんとティアさんがしてくれるから、中でたのしもうね」
妖艶な笑みを浮かぶ彼女がそう言って先導すると、愛紗、鈴々に掴まれて中に引きずり込まれるのであった……。