恋姫†無双 黒の剣士(偽)と聖杯戦争   作:月神サチ

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第14話 黒の剣士(偽)と英雄集結 後編

「では軍議を行う!」

 

天幕に集められた諸侯。

 

司会進行は蹇碩がやるようだ。

 

……傲慢、強欲、嫉妬の罪の化身みたいな奴らしいが、この軍議まともに進むのだろうか?

 

「先ずは各々の軍勢の長よ、連れてきた側近及び護衛を含めて紹介せよ。……そちらの席の者から順にな」

 

蹇碩の一声で示された側の、蹇碩に一番近いところにいた袁紹から、同行させた3人についての紹介が始まる。

 

袁紹、公孫賛の紹介が終わると、ライトブラウンのポニーテールをした4人の娘の、一番背丈が高い娘が口を開く。

 

「あたしは馬超。こっちが妹の馬休と馬鉄に従妹の馬岱だ」

 

慣れるまで服の色と顔つき、あと発育具合で判別になりそうだから、遠目で間違えて怒られそう()

 

次はすみれ色の髪の少女が、深緑の髪の娘、赤毛で日焼けした肌と刺青が特徴的な娘と若草色の髪の少女を順に示す。

 

「私は董卓と申します。こちらは臣下の賈駆、呂布、陳宮です」

 

3人は軽く会釈する。

 

「次は私ね。姓を曹、名を操。字を孟徳よ。そして部下の夏侯惇に夏侯淵、そして荀彧ね」

 

ツインドリルの彼女はどうやら曹操だったようだ。

 

その後、孫策、袁術と続き、禁軍の統括者とその軍監の紹介となる。

 

「私は蹇碩。こちらは車騎将軍の皇甫嵩殿と、前将軍の盧植殿だ」

 

どうやら赤みかかったブラウンの髪と紫縁メガネのどこかキャリアウーマン風の女性が皇甫嵩で、物腰柔らかなパールホワイトの髪の女性が盧植らしい。

 

「では、現在の状況を」

 

そういって蹇碩は傍にいた兵士たちに地図をもってこさせ、真ん中の机に広げる。

 

「周辺の地形は地図のとおり。そして賊は現在、ここより北東10里ほどの位置にいる。元々は廃棄された邑だったようだが、賊の癖に頭を使ったか増築と改修をしてそれなりの城壁を持つ中規模以上の都市の様相を呈している。……忌々しい」

 

ぽつぽつと零れる言葉に軽蔑と嫌悪感が滲んでいる。

 

が、必要事項はちゃんと提示しており、オレが裏で集めた情報と照らし合わせても『聞かれなかったから言わなかった』とか『その程度誤差』とか『騙して悪いが』の類いがないので、そこは評価に値するだろう。

 

蹇碩が皇甫嵩を見て、皇甫嵩が口を開く。

 

どうやらここから蹇碩は高みの見物のようだ。

 

「現在、こちらの総動員兵力は12万であり、敵の総兵力は30万といったところだ。さて、私たちが選べるのは『力攻めの攻城戦』か『釣りだして野戦に持ち込む』か『何らかの方法で内部に侵入して市街地戦にもちこむ』辺りになるだろう。……どれが良いか、またはより良い案があるか……意見あるものは居るか?」

 

皇甫嵩がオレたちに目を向ける。

 

すると公孫賛と馬超が申し訳なさそうに手を上げる。

 

「公孫賛、なにか意見か?」

 

「えっと、申し訳ないのですが、私の舞台は騎馬兵がほとんどのため、攻城戦、市街地戦となると十全な成果を発揮できません」

 

「こっちも主力が西涼騎馬隊で公孫賛と同じだ」

 

「それぞれ1万ほどだったな。これで野戦以外では実質兵力は10万しかないと考えねばならん」

 

失望の声色で蹇碩がわざとらしくため息をつく。

 

「……他に意見があるものは?」

 

蹇碩を横目にやや苦虫を噛み潰したような顔になりつつも、軍議を続ける皇甫嵩。

 

すると田豊が手を挙げる

 

「田豊だったな? 発言を許す」

 

「はっ。……案としては陽動部隊と遊撃部隊、潜伏部隊に分けてそれぞれに敵の誘引、誘引した的の強襲、撤退する敵兵に紛れて都市内部に潜入を担当してもらいます。具体的には陽動部隊に敵を誘引して貰い、野戦に入り、遊撃部隊が強襲し、撃退します。その敗走した敵に紛れ、都市に潜伏し、陽動部隊、遊撃部隊の攻城戦に合わせ、内部で撹乱をしてもらいます」

 

そういってから一同を見る田豊。

 

「潜伏部隊には、内部から門を開かせる、可能なら破壊して城壁の存在価値を破棄させるってことね?」

 

盧植が助け舟を出す。

 

「前将軍のおっしゃるとおりです。それと、可能であれば、都市の各地や食料庫に火を付けてさらなる混乱を誘発、首魁である張角らの討伐ができれば最上ですが、内部からの門を開くのが目的です。最悪どれか1箇所で構いません。兵が少ない門が空いた場合は騎馬隊に突入してもらい、市街地を縦横無尽に駆け巡ってもらい、その間に残りの門を制圧しますし、他の門ならそのまま陽動をしていた部隊に制圧してもらう方向で行けば良いかと」

 

すると蹇碩が口を開く。

 

「案としては悪くない……が、理想論だ。作戦を聞く限り、潜伏部隊は一騎当千の猛者を主軸にした少数精鋭。遊撃部隊は先の騎馬主体の軍団2つ、陽動部隊は残る軍となるだろう」

 

「そのつもりです」

 

「……その潜伏部隊、私には役目を果たせるとは到底思えん」

 

「え?」

 

蹇碩の言葉に田豊が動揺する。

 

「では逆に聞こう」

 

蹇碩は指を折り、数えながら問う。

 

「――1つ、生存率が圧倒的に低いところに、己の腹心を、自らの精鋭を送り込めるか? 一騎当千の猛者だろうと死ぬ時は死ぬし、作戦に失敗し、虜囚になった者の末路は悲惨だろう」

 

わざとらしく間を空ける蹇碩。

 

「……2つ、裏を返せば主に命じられ、送り込まれる者は『どんな状況下でも絶対に生きて帰る確証がある部下』か『死んでも構わぬ捨て駒』と主に見られてることになる。前者と自ら思い込めるほど頭が足りてぬなら、作戦を最後まで覚えていられるか危ういだろうし、後者と思われるなら悲嘆して特攻して散ることもあるだろう」

 

それを聞いて顔色悪くなる数名。

 

「3つ、選べぬなら、部下に、兵士に志願させるとしよう。……『他の方法なら必要ない犠牲者』として、自ら命を投げ捨てられる者がどれだけいるかね?2つ目にいささか被るが、余程の狂信者でなければ命を投げ出すのは出来ぬであろう」

 

人がよすぎる者が思い悩む表情を見せる。

 

「そして最後。敵はある程度減らした前提として……20万ほどか。防衛戦にそのうちの多くの目が向いたとしても、残る目を掻い潜り目的を達することができる数が集まるかね?」

 

「……ッ!」

 

歯噛みする田豊。

 

「……? キリトと言ったな。なにか言いたいことが有るのか?」

 

オレの挙手に気がつき、問いかける皇甫嵩。

 

彼女の言葉で、オレに一同の視線が集まる。

 

「潜伏部隊。誰もやらないなら、オレが引き受ける」

 

「!?」

 

「正気?」

 

動揺する一同。

 

「気でも狂ってるのか? 自殺志願は他所でやって貰いたいものだな」

 

蹇碩がそう吐き捨てる。

 

「そのつもりはなかったが……失礼した」

 

オレはそういって下がりながら、相互マーキングを使った飛雷神によるスイッチを行い、その場から離脱した。

 

 


 

 

――分身視点

 

オリジナルと入れ替わり、ダンスダンスする軍議を横目にボーッとしてると、いつの間にか桃香がオレの隣に来ていた。

 

「(お兄さん分身だよね?)」

 

小声で目線以外こちらを向かないようにしながら彼女が問いかけてきたので軽く頷く。

 

「(お兄さんは何処に行ったか分かる?)」

 

オリジナルがオレの目を通じて認識してるためか、即座に「伏せとけ」と通知される。

 

「(開示できない)」

 

「(うーん、単独行動しないでほしいんだけどなぁ……)」

 

本体の視界に広がる惨劇を見ながら、既に手遅れと言いたかったが、本体から再度釘を刺されたので沈黙する。

 

「……敵は斥候などを出していないことからしばらく猶予がある。明日改めて軍議を行うので、各自案を用意すること。解散!」

 

かなり時間浪費したのを空を見て確認した皇甫嵩が解散を宣言する。

 

するとそそくさと蹇碩は去っていき、皇甫嵩と盧植がオレたちのところにやってくる。

 

どうやら盧植が先に公孫賛にも何かの合図をしてたのか、それにつられたように公孫賛たちもこちらにやってきた。

 

「桃香ちゃん、白蓮ちゃん。お久しぶりね」

 

「先生、お久しぶりです」

 

「中央に仕官していたと聞きましたが、まさか前将軍になってるとは思いませんでした」

 

3人が会話し始めていたのを見てると、こほん、とそばで咳払いの声。

 

そちらを向くと皇甫嵩がオレを何か品定めするような目で見ていた。

 

「……皇甫車騎将軍、如何しました?」

 

今初めて気がついた風を装い、問いかける。

 

「少し話がしたいの。……私の天幕に来てくれるかしら?」

 

「「「!!!!」」」

公孫賛についてきてたリーファたちが目を見開く(なお、シノンはジト目)。

 

「……」

 

「あ、お兄さんを『共有』したい場合は他の人に相談が必要です。詳しくはお兄さんから聞いてくださいね」

 

オレのアイコンタクトに対してややズレた回答を繰り出す桃香。

 

「……どういう意味か半分以上わからないけど、とりあえず彼を借りていいってことは分かったわ」

 

皇甫嵩が困惑しながら、分かった部分をピックアップしてうなずく。

 

「それはそれとして、リーファさんたちは、アスナさんたちに会うよね? 私が袁術さんの客症になってて、お兄さんが私の家臣だから、袁術さんの天幕にいるんだけど」

 

「アスナさんたちとも話をしたかったので、ぜひとも」

 

なんか桃香がリーファたちに話し始めるので、皇甫嵩はオレについてくるよう合図してから天幕を後にする。

 

オレもそれに続き、去ろうとしたが、どこからか熱い視線が気になったので振り返る。

 

その視線のもとには曹操がおり、オレをじっと見ていた。

 

「……」

 

気に入った、と口元が動いた気がしたが、オレはそれを見なかったふりをして、皇甫嵩の後に続くこととした……。

 

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