今回は第14話と第15話の繋ぎ兼舞台裏なので、読み飛ばしても大きな影響はないです。(影響ゼロとは言っていない)
それを踏まえた上で、どうぞ。
――分身視点
彼女の天幕にたどり着くが、そこで違和感を覚え、武器を構える。
「――悪いがこの眼はよく見えるからな。隠れてるつもりなら慢心したまま身体を分割するぞ?」
半分はったりだったが、そのカンは間違ってなかった。
なぜなら眼を切り替えると丸テーブルに備えられた3つある椅子の1つに座る、ゴシックな服に身を包んだ青い髪の少女がいたからだ。
「あら、ばれていたのね」
そう少女が言い、指を鳴らす。
すると皇甫嵩が糸が切れた操り人形のように体勢を崩したので慌てて支えた。
同時に少女の姿も『眼や仙人モードに頼ることなく』見えるようになる。
「心配しなくていいわ。少し眠ってるだけだから。それより、貴方と取引をしたいのよ」
「取引?」
皇甫嵩の安全の為に逃げるか、情報の為に残るかを天秤にかける。
第3の選択肢で『皇甫嵩にマーキングつけて逆口寄せできるようにしつつ、残る』があることを思い出したので少女に感知されないようにしつつ、マーキングを施す。
あと、逃げなかったのはオレが木分身でフリージアしても問題ないのもある。
情報を引き出し、本体と共有することを優先することにした。
「そう。『聖杯戦争から降りた貴方』と手を組みたいの。『サーヴァントの能力』を持ちながら、『聖杯を手に入れられず願いを叶えることができない』稀有な浮き駒となった貴方と」
オレは即座に皇甫嵩を美羽たちの天幕にいる分身に口寄せさせる。
それに眉を少し動かしたようだが、オレは無視して続ける。
「名前すら名乗らないやつに手を組めと言われてもなぁ……。相互利用を協力と言うが、最低限の自分から出せるメリットと、自分の立場を提示しないと取引相手は判断できなくて困るんだが」
オレがそういうと、彼女が幻術を使ってきたので、かかったふりしながらレジストする。
まあ、オレに幻術使っても、本体や他の分身がいる限り問題ないのだが……。
それに気がつかないのか、少女は独り言をこぼす。
「サーヴァントが2騎……片方が『サーヴァントとして参加してるプレイヤー』。……ラムダが余程のサーヴァントを出さなければ聖杯戦争で負ける可能性は潰せることになるわね」
その言葉と共に彼女の後ろに紫色の髪をしたメイドと、白銀の髪を後ろで2つに束ねた青年が現れる。
「何のようだ?」
青年が問いかけると少女が答える。
「今日から貴方のお仲間が増えたから、顔合わせしておこうと思ったのよ。ほら、挨拶しなさい?」
「? その人、契約も幻術も洗脳もないのに従うのですか?」
メイドがそうこぼしたのでオレは間髪いれずに少女に肉薄し、その首を掴む。
「!?」
「悪いが武器を捨てたらそのまま動かないでくれ。……魔女と言えど女に傷をつけたくはないからな」
オレがそういうと2人は顔を見合わせ、武器を地面に置き、こちらに蹴って寄越す。
「……私を、騙した……の……」
首を掴む手をほどこうと抵抗する少女。
しかしその力は見た目相応のものでしかない。
「先に幻術で精神を閉じ込めようとしたのはそっちだからな。……しゃべれないのはさすがに酷か」
オレは自分の腕を切り離し、そのまま切った腕を使って簡易的な見た目の牢を生成する。
「けほっ……なんのつもり?」
彼女の問いかけに、腕を再生させながら答える。
「自分がやられる側になったこと考えてなかったから、お灸を据えただけだ。ちゃんと『名前』と『オレに協力を提案した理由』と『そっちが提示できるメリット』を教えてくれたらとりあえず解放するつもりだ。ちなみにオレの名前は『キリト』で、オレが出せるメリットは『モノとカネをほぼ無制限に出せる』こと位だな」
すると少女は2人を一瞥したあと、しぶしぶと言った様子で語る。
「私は『奇跡の魔女、ベルンカステル』。協力を提案した理由は『もう1人のプレイヤーであるラムダデルタに対抗するための切り札にしたかった』ってところね。メリットとして『ラムダのことをよく知ってるから、適切な対抗策を講じることができる。聖杯戦争はともかく、この大陸の動乱の末が彼女の支援する陣営で塗りつぶされる未来を回避出来る』ってところかしらね」
嘘をいっていないので、とりあえず解放する。
「……随分と甘いのね?」
「オレにとってここは『
「そう」
ベルンカステルは短くこぼす。
それと、とオレは言葉を続ける。
「……今はまだ、聖杯戦争もサーヴァントが出揃ってないし、この時代の動乱も本格化してない。先手の優位性は否定しないが、吟味せずに食いつくのは愚かだろう?今回オレを駒にしようとしたことを水に流す代わりに貸し一にすればオレにもメリットはある」
「……いいわ。『魔女、ベルンカステルが宣言する。キリトへの非礼を対価に彼からの要望を1つ叶える。そして改めて共闘、またはそれに類することをどちらかが申し出て、それが締結されるか、所属する陣営同士が敵対するまで不干渉を維持する』。貴方は聖杯戦争から手を引いてるし、私が行く予定の陣営と手を組むことにもなりそうだから」
そういうと青年とメイドをベルンカステルは一瞥する。
すると2人はそのまま消えていく。
おそらく霊体化したのだろう。
「皇甫嵩には置き手紙をして置くわ。あとは……また会いましょう」
そういうと彼女も消え去る。
「……さて、皇甫嵩の件、どうにかしておかないとな」
オレは音を立てずにその場をあとにした……。
――本体視点
「どうなってる……?」
「張角様は何処に?」
「今の一瞬で何が起きたんだ……」
ざわめく会場。
中央にある舞台に今の今までいた人物がおらず、ついさっきまで共に熱狂を共有していた周囲の観客の過半が死んでいる。
訳の分からない状況に混乱を通り越して呆然とする生存者。
「あとは……」
直ぐそばにいる、手足を縛られ、猿轡された3人を見る。
「!」
3人が顔面蒼白にしているが殺すつもりはない。
「自分達の名前をうっかりしゃべれないようにしておかないとな」
仮面越しに3人へ『自らの名前と姉妹の名前を誤認する』よう幻術をかけ、3人を眠らせる。
「……さて、ここでの用事は済んだ。3人をつれていくとするか」
オレはそういって、その場をあとにした。
――???視点
「さて、どうしたものかしらね」
不機嫌そうな華琳が天幕にて私たちを見ながらそうこぼす。
「我々だけで敵を討ち取れば良いだけでは?」
春蘭が首をかしげながらそうこぼす。
「こっちは1万、向こうは30万。兵力の差が大きすぎるわ!」
桂花が春蘭の言葉に噛みつくが、春蘭は鼻で笑う。
「こちらが1万で敵が30万なら、1人30人倒せばいいだけだ。……計算あってるよな?秋蘭?」
妹に検算を頼む春蘭。
妹の秋蘭は笑顔で頷く。
「あってるぞ、姉者」
「――と言うことだ。それくらい簡単だろう?」
「兵士が全員アンタと同類と思うな猪武者!」
どや顔する春蘭に腹が立ったのか、桂花が机を叩きながら怒声をぶつける。
「……」
意見をまとめてるのか、沈黙を保つ他の面々。
「申し訳ありません、ご報告が」
見張りをしてる兵士の1人が入ってくる。
「? 何が起きたの?」
「賊の根城から逃げてきたという3人の娘を保護しました。如何いたしましょう」
「……連れてきなさい。話を聞くわ」
そういって華琳が立ち上がると、他の面々も作業を中断する。
「……スパイ……にしてはタイミングがおかしい。本当に逃げてきたのかしら……」
女言葉に変換されて出てきた自分の考えが正しいのか、判断がつかないので、その3人の様子を見ることで決めることにした……。