あれから半月後。
オレたちは『何者か』によって半壊された街と賊を討伐し、『教祖の遺体を守る番人』を名乗る怪物を倒して張角、張宝、張梁の死体を回収。
それぞれ多少交流をして面識を得たりした後、不完全燃焼な状態で帰路についていた。
「で、本物の教祖たちは何処にいるのかしら?」
実は拡張可能だったりする荷台の中。
しれっと公孫賛のところからオレのところに戻ってきたシノンが問いかけてくる。
「みんなも見たあの死体だろ。『そうじゃないならオレはもう知らない』かな」
「……」
ジト目を向ける一同。
「また同じようなこと起こったらどうするの?」
一夏の問いかけにオレは肩をすくめる。
「原因はこれだからな。もしあの死体が偽物でも、これがないなら同じ規模の乱は起こせない。県1つの混乱を起こすのが精々になるだろうな」
そういいながら『大平道妖術の書』を取り出して見せる。
まあ封印の鎖で縛ってるから、見た目が禍々しい、ちょっと黒歴史感じる本にしか見えないが。
「……まあ、お兄ちゃんが勝手したお陰で、私たちも予定より早く合流できましたし、結果オーライってことで」
リーファが助け船を出してくれた。
そんな会話をしてると、分身から炎蓮が来たことを告げられ、まもなく入り口から彼女が入ってきた。
「やっと終わったぜ。疲れた」
どうやらあいさつ回りが面倒だから主要な家臣や縁のある豪族に当てた手紙を代わりとして書いていたらしい。
かなりの量だったようだが、彼女はこの短期間でやりきったようだ。
……強くない?
「お疲れ様、炎蓮」
「そう思うなら不満解消に付き合え。具体的にはヤらせろ」
「その流れはおかしくないか?」
オレの言葉に発情期の獣のような返事をする炎蓮。
そしてそれにドン引きするキズメル。
「これがオレなりのキリトへの愛情表現なんだよ」
「完全に獣の愛情表現ですよね……」
「なんかいったか?」
「何でもないです」
慌てて首をふるシリカ。
「……ん、どうやら上庸の太守に厳岳が推挙されてたが、その厳岳が桃香が戻り次第、太守の座を譲るって宣言したようだな」
オレは頭に入ってきた情報を確認しながらそうこぼす。
「上庸に戻ったら忙しくなるんだね……」
「これで我々も流浪の一団ではなく、根を張った一勢力の主と家臣団になるんですね」
「鈴々はお兄ちゃんが戦闘で頼ってくれるように鍛練するのだ」
「はわわ、内政の勉強が活かせる時が来たんですね」
「お兄さんのお仕事減らせるよう、頑張らないと」
桃香、愛紗、鈴々、朱里、雛里が想いをこぼす。
「オレは、政務処理の補佐しつつ、各組織の監査辺りか?」
オレがそういうと、炎蓮が続く。
「なら、オレは桃香がアホしないか見ながら、周辺の豪族とかとツテ作る方を担当するかねぇ。規模が変わらないなら最初さえなんとかすりゃあとは大手を振って暇作れそうだし」
「そうすると、平時は治安維持の部隊の管理で有事は武官として切り込み隊長かなぁ。ユイちゃんには、キリト君の監査方面の補佐してもらえばいいし」
「パパのお手伝いも、ママのお手伝いもがんばります!」
アスナはかつての経験から、治安維持組織の管理、ユイはオレの補佐を考えているようだ。
「アタシは……武器整備しながら、シリカやキズメル、鈴とインフラ整備の補佐で、有事は後方支援ってところかしら?」
「んー、私はリズさんが言ったことと内政のお手伝いって感じですかね」
「リズやシリカの補佐か。特に異存はない。それと余力があれば他のところを手伝うつもりだ」
リズ、シリカ、キズメルは地固めの方面を担ってくれるようだ。
「え、これ私もいわないとダメ?」
「単なる希望だから必須じゃないけど、どこら辺できるか考えておいた方が無難だとはおもう。鈴の適正的にアスナさんの補佐が丸いかな。……っと、私はリーファや姉さんと一緒に兵の調練や賊討伐、治安維持とかの仕事かなぁ」
「一夏。私に調練ができると……?……まあ、割り振られたなら、相応の仕事はするが」
鈴が目を丸くする隣で、一夏が宥め、千冬が微妙そうな顔を見せる。
「私は一夏さんと同じかなぁ。内政で頭使うより、身体動かしたいし……」
「私はリーファと逆で戦闘そこまで得意じゃないから内政の仕事かしらね」
「私とティアはどれもある程度できるとおもうので、固定の仕事よりは、キリトの補佐の立場が安定しそうですね」
「しれっと良いところに滑り混むわね……まあ私はプレミアの案が妥当だから同調するけど」
リーファ、シノン、プレミア、ティアも要望を出していく。
「つまり桃香を一番上として、内政希望が朱里、雛里、リズ、シリカにキズメル、シノン。豪族窓口に炎蓮。武官として愛紗、鈴々、一夏、千冬さん、リーファ。どちらも兼任って感じで他の面々ってところか」
「もうちっと外交とかオレのところに人割り当てた方が良い気がするが、それ以外は大方アリだとおもうぜ」
オレのまとめを聞いた炎蓮から、大方悪くないと評価された。
「豪族の窓口は炎蓮殿だけで足りるのでは?」
愛紗が首をかしげると、他の面々も頷く。
「太守の規模ならオレだけでしばらくは事足りるだろうが、桃香が州牧になったらオレが過労で死ぬ。部下増やせばある程度なんとかなるのは否定しねえが、限度有るからな」
「なるほど」
「外交の適任は?」
シノンが純粋な興味の色を瞳に宿して問いかける。
「喧嘩腰になるから場面を選ぶがオレ。経験積んで腹芸の1つや2つ軽く出来るようになるのを見越して朱里か雛里。ちと煽りのやり方が悪いと掛かりそうなところさえ目をつぶればアスナあたりか?あと中央の老獪とやりあえるキリトだな。キリトに仕事押し付けすぎになるから、基本最後の手にしたいところだが」
炎蓮の割りと説得力ある回答に納得するオレ。
「お兄ちゃん。万能素材感あるよね」
「素直に喜べないなぁ」
リーファの言葉に肩をすくめる。
「うーん……」
「どうしたの、桃香さん」
悩む素振りを見せた桃香に、アスナが問いかける。
「やっぱり、中央にお兄さんの分身がいた方が良いのかなぁって」
「あ」
「おい、 キリト。お前みんなに伝え忘れたのか?」
炎蓮がオレにあきれた顔をする。
「……ツテ作るため、炎蓮の紹介状持たせて、中央に分身派遣してました。伝え忘れててスミマセン」
「もう、報告、連絡、相談はちゃんとしてね」
「面目ない……」
子供を優しく窘めるように叱る桃香。
素直に謝ると「次から気をつけてね」とまとめて締めくくる。
「とりあえずはこんなところ? あ、あとはお兄さんの人探しかな」
「噂も入ってこないクラインさんやエギルさん、ユージオさんの行方も探さないとですしね」
桃香の言葉にシリカが捕捉をする。
「……自由人してそうなユウキや放って置くとなにするか不安なアリスにアンダーワールドの人もいるみたいだしね。整合騎士の多くはここの世界では役目に縛られてないし、キリトと切り合う方が楽しいとか言って敵対する可能性あるの厄介ね」
悩みの種多いわね……とリズがしかめっ面する。
「まあ、頼れるところはみんなに可能な限り頼らせてもらうよ。オレにも限度有るからな」
「よーし、みんなでがんばるぞー」
「「「「おおーっ!」」」」
――馬超視点
「しっかし、一晩で敵が半壊して、教祖とその兄弟が死ぬって一体何が起きたんだ……?」
なんか締まらない終わり方で解散し、帰路についてるアタシたち。
「……キリト」
「ん? どういうことだ、呂布」
近くで馬に揺られてた呂布が独り言のようにアタシの言葉に反応した。
「……キリトが、1人で、戦った」
「一晩で虐殺したっていうのか?」
「……ん」
頷く呂布。
「あの優しそうなお兄さんが? ……蒲公英にはちょっと信じられないなぁ……」
しれっと割り込んできた蒲公英にため息をはいてると、呂布がまたこぼす。
「2回目のキリト、血のにおいがした。優しいけど、必要なら戦うことは躊躇わない」
「恋殿、あんな黒ずくめの怪しいのなどさっさと忘れてしまった方が良いですぞ。ああいう、顔の良い男は乙女を誑かす下衆と相場が決まってるのです」
陳宮が呂布のそばに来て窘めるように告げると、呂布は困った顔をする。
「……キリト、下衆じゃない。たぶん、女難……?なだけ」
「尚悪いのです!」
「大変です!」
のんきに会話していたら、斥候が現れる。
「どうした?」
「それが――」
斥候の言葉にアタシとそばにいた面々は驚愕する。
「蒲公英。鶸と蒼呼んでこい」
「う、うん!」
「ねね」
「分かってるのです!」
アタシの言葉に蒲公英が、呂布の言葉に陳宮が反応して、慌てて去っていく。
「涼州でなにがおきてやがるんだ……?」
アタシの疑問に答えるヤツがいるわけでもなく、声は空に溶けていった。