とりあえず孫家のオリキャラについてちょっとだけ触れてます。
それではどうぞ。
ここ数日雨がふり続いている。
まあ、土砂降りではなく、小雨なので洪水などの心配はないのだが……。
「やっぱり気が滅入るわね……」
「雨は楽しいし、泥まみれは嫌いじゃないけど、お兄ちゃんに抱きつけないのは困るのだ……」
屋敷の共有スペース(リビング兼ダイニングみたいな感じ)にて暇をもて余してるのはリズと鈴々という、赤寄りの髪のコンビ(当然非番)だ。
これでたぶんまだ寝てる桃香や手料理振る舞ってやると息巻いてた炎蓮が来ればカルテットになるんだが……。
「おはよー……」
噂をすれば影とは言ったもので、寝ぼけ眼の桃香がやってきた。
「あれ? 今日は休み?」
「そうだよー。急ぎかそれに類することならお兄さんの分身がなんとかするし、違うなら明日に対応するから、少し長めに寝れたんだー」
「キリトー、オレが丹精込めた料理できたぞ」
桃香から少し遅れ、炎蓮がカートにいくつもの料理をのせてやってきた。
「時間かかってたから予想してたとはいえ……多くない?」
「キリトなら食えるだろ。……半分本音だが、たぶん桃香とか鈴々も食うと思って多めに作ったんだよ」
「アタシは食べると思わなかったんですかー?」
リズがふてくされぎみに問いかけると、思い出す仕草しながら炎蓮が告げる。
「最近食いすぎて太ったから食事制限して痩せないととかいってなかったか? 別に食うのは構わねえけど……」
「ぐぬぬ」
「わたしこの炒飯と干焼蝦仁(エビチリ)もらおうかなー」
「鈴々はこの丼と叉焼と羹貰うのだ」
桃香と鈴々は2人のやりとりを横目に欲しいのをチョイスして、自分のところに取り寄せた。
「桃香も体重とか気にしてたし、1人より2人のほうがいいと思うぜ? あと真面目にメシは食っとけ。食べねえと落ちねえ身体になるわ、そういう生活に合わねえ体質なら遠くねえうちに破綻するからな」
「……! 分かったわよ! この天津飯貰うから!」
そういいながらカートから天津飯略奪していくリズ。
それをからからと笑いながら見守る炎蓮。
「若いやつはたくさん食って、たくさん動きゃ大体どうにかなるもんだ。食事制限するよりはよっぽど健康に良いしな」
「……さすが3児の母と言うべきか?」
「褒めてるつもりか? ほら、お前もさっさと食えよ」
そう言いながら料理を押し付けてくる炎蓮。
「炎蓮も食べようぜ」
「オレは味見で散々摘んだからぶっちゃけいらな」
言い終わる前になる腹の音。
「あらー、炎蓮さんー? 江東の虎と呼ばれた貴女が食事制限ですかー?」
ニヤニヤしながらリズが炎蓮を煽っている。
「ぶっころ」
「はいはい、どうどう」
暴走するまえに炎蓮を取り押さえる。
「炎蓮は気にし過ぎなのだ。たくさん食べてしっかり動けば、太ったりしないのだ」
「ぐはっ」
鈴々の言葉にリズ、桃香がダメージを受ける。
「なんだこの地獄絵図……」
「……まあいいや。キリトの奥の手を使えばそのへんどうにでもなるみたいだし」
なんか吹っ切れたのか、適当な料理を食べ始める炎蓮。
「しっかし、雨かぁ……」
しかし炎蓮の手はすぐに止まり、何処か遠いところを見てるような目になる。
「なんか思い出でもあるんですか?」
いつの間にかリカバリーしてご飯を再び始めていた桃香が問いかける。
「妹と仲違いして、夕方になっても帰ってこないもんだから、暗くなるってのに雨の中探し回ったのを思い出しただけだ」
「炎蓮の妹……全然想像できないのだ」
食べ終えて皿の上に蓮華を置きながら告げる鈴々。
「確かに……姉と同じで血気盛んだったり?」
リズがちょっと意地の悪そうな顔で問いかけると、炎蓮は首を横に振る。
「オレの妹か怪しいくらい、普段はおとなしいやつでなぁ。戦はからっきしだが、礼儀作法から、どっから拾ってきたのかわからんが、地味に役に立つ知識まで、幅広くいろんな分野の知識に精通してるんだ。雷火たち……ウチの文官の張昭と張紘が来るまでは、オレの代わりに外交や内政をしてくれてたし、雪蓮がトチ狂ってなけりゃ今でも文官たちの取りまとめをしてるはずだ」
「姉妹って大体似るって聞いてますが……そうでもないんですね」
ほえーと驚く桃香。
「いや、束と箒、千冬と一夏、プレミアとティアとか見てみろよ。性格、趣味嗜好に得意分野とか全然違うだろ?キリト好きなのは共通してるけど」
「「「たしかに」」」
炎蓮の言葉に桃香、リズ、鈴々がうなずく。
「……あ、ちなみにオレとあいつ……妹の共通点あるな。――どっちも旦那に先立たれて未亡人だし、どっちも子持ちってところ。あっちは2人で、こっちは3人ってのと、オレは今、実質旦那がいるから元未亡人ってのが正しいか。……キリト、未亡人とか好きそうだからなぁ。アイツに会ったら手篭めにしそう」
「いきなり横っ面ぶん殴るような風評被害と提案止めてくれない??」
困惑しながら突っ込むが
「お兄ちゃんならありえるのだ」
「こればっかりは」
「炎蓮さんのほうが正しいかも……」
女性3名からも攻撃が飛んできた。
ワケガワカラナイヨ。
「……って、それはそれとして。妹さんって話聞いてる限りじゃ、夕方になっても帰ってこないような人に聞こえないんだけど」
「………………くだらねえ理由だから言わねぇ」
「あ、コレ絶対、炎蓮側がアホみたいなことして、更にしらばっくれたから話がこじれて、妹さん爆発したんじゃな」
「リズ、最後の言葉はそれでいいか?」
立ち上がって鬼のような形相をしていた炎蓮を捕まえて座らせ、膝枕する。
「キリトォ……オレがこんなことでオレを辱めたリズを許すと」
「今夜にそういう時間用意するから、追いかけっこは禁止です」
オレがそう言いながら頭をなでていると、割とスグにおとなしくなる。
「炎蓮だけずるいのだ!」
「私達も対応してほしいな―」
「あ、アタシも……」
「3人共別にいいけど……」
食べ終わった3人にも順番で対応する。
「――そういえば炎蓮さんの妹さんって子供いるんだよね? どんな人?」
桃香が膝枕堪能してから思い出すように問いかける。
「あん? 姉のほうは五斗米道だったか……そこで少し齧った程度の婆さんから色々教えてもらって、けが人の手当をする金瘡医してたりするな。妹の方は母親の護衛をしてて、何考えてるのかわかんねえやつだが、無手だとオレでも負けることがあるくらい強いぞ」
「ほえー」
「孫家だけでもかなり幅広いことに対応できるのね……」
「孫策とも戦ってみたいけど、その炎蓮の妹の次女の方とも戦ってみたいのだ」
三者三様の反応をみせる彼女たち。
「いつしかそういう日が来るかもしれねえな」
そういってから続ける。
「オレだけ言うのはなんか不公平じゃねえか?」
「たしかに?」
「そういわれるとそうねぇ」
「そう……かも?」
炎蓮の言葉に3人はうなずく。
「ならオレもちっとばかし話したし、お前らも教えろよ」
その言葉をきっかけに、3人も家族について話し出す。
リズは鍛冶職人の家で生まれ育ったこと。
水鏡女学院に行くのをきっかけに親から独り立ちしたけど今でも手紙はやり取りしてることを。
桃香は父親を知らないが、母親に育てられ、割と高い頻度で説教と罰という理由で河に放り込まれたこと。
母が亡くなってからは母を支援してくれていた厳岳*1さんに世話になっていたことを。
鈴々は物心ついたときから村一番の腕っぷしがあったから、力仕事をしてたこと。
山で寝てたら人さらいに捕まって、逃げたはいいが、帰れなくなり、3年ほど放浪していたら愛紗と出会ったことを。
「人に歴史ありだなぁ」
「まったくだぜ、オレよりも若いってのに、大変だったなぁ。鈴々に至っては言葉が足りてないが、聞いてる限り波乱万丈だしよ。……お、雨が止んだか?」
そう炎蓮の言葉に、一同が外を見る。
そこまで長い時間は経っていないはずだが、いつの間にか雨は止み、光が差し込んで、雨粒に光が反射して輝いている。
「そんじゃ、晴れたし洗濯して干すとするか。――4人共手伝ってくれるよな?」
「もちろん」
「ええ、当然よ」
「頑張るのだ」
「晴れたんだしな、今やらなきゃいつやるってんだ」
4人共オレの問いかけには良い返事を返してくれた。
前に進むのも大切だが、たまには振り返ることも良いかもしれない。
そう思わされる一日だった。