導入だから短め
第17話 涼州の異変
「涼州で反乱……?」
大広間に集合した一同。
一同に召集をかけた朱里が告げた言葉を、桃香が鸚鵡返しする。
「はい、細作部隊と商人の情報から、黄巾賊征伐に西涼軍閥の半数と涼州東側の戦力がいないうちに反乱が発生。馬超さんたちが戻った時点で州全域が制圧され、州境で戦闘が発生。馬超さんたちは撃退され、長安にて敵の動向を探ってるとのことです」
「……西涼の錦馬超や対羌族の要とも言われた董卓が負けた……? 反乱軍は西涼軍閥の二大巨頭の馬騰、韓遂でも動いたか……? いや、それならなんで……」
厳岳の爺さんが珍しく?ぶつぶつと言葉をこぼしている。
「爺さん、涼州について知ってることを教えてくれると助かる」
オレが話を振るとビクッとしてから話し始めた。
すかさず周辺地図とそれをのせる机を出して配置。
「あー……まず、涼州は主な都市が3つある。一つが長安の北西方面にある『安定』。長安との距離やこれから話す西涼軍閥とかの関係で、涼州の牧が居るのも大体ここだ。たしか今の涼州牧は董卓でここに駐屯してる」
安定を指差しながら告げ、西にある『天水』に指を動かした。
「次は『天水』。ここと北の『武威』が纏めて『西涼』と呼ばれてる。オレの知る通りなら、ここは軍閥を作っててそいつらは西涼軍閥とよばれてる。……で、天水にはその西涼二大巨頭の片割れ、馬騰及びその一族がいて、太守をしてる。羌族とか、それより西の地域と交易してる地域でもある」
トントンと指でたたく。
「馬超は馬騰配下兼後継者筆頭だから、基本ここにいるんだ。だからきいた話から、引っ掛かるのだが……まあそれはそれとして」
少し手に迷いがあったが、『武威』に手を動かす。
「最後が武威。西涼軍閥二大巨頭の片割れである韓遂が治めてる」
1度言葉を切ってから告げた。
「西涼は漢の北西の端にあり、天水と共に北と西にいる蛮族へ睨み効かせてるって意味じゃ心強い防人に見えるし、実際のところ大体間違ってない。……ただ、中央始め、大陸の連中は西涼を『蛮族の血も混じってるし蛮族』って認識して、扱いが粗雑なことも多い。それの扱いに限界きたら反乱が起きたりするんだが……」
「今回は毛色が違うってことだな?」
オレの言葉に爺さんが頷く。
「儂として不可解なのは『馬超も攻撃された』ことだ。涼州で反乱なら西涼軍閥の反乱のはずで、馬超が攻撃されることはあり得ぬ。寝返ったとか相応の原因なしで自分の身内を攻撃するなど、普通ではあり得んからな」
「たしかに?」
桃香がふむ、と頷き、他面々も同意する。
「だから、『西涼の反乱は西涼軍閥の全員が起こしてる』って前提が怪しくなる。『今回の反乱に馬騰が加担していない』、『そもそも反乱したのは西涼の軍閥じゃない』のどちらか臭いが……」
「判断材料が足りないって事ですね」
朱里が言葉を引き継ぐと、厳岳の爺さんは頷く。
「そういうことだ。……何が起きてるのか、後で占ってみるしかあるまい。ひとまずは静観じゃな」
「……何事も無ければ良いけど」
アスナの言葉に一同が頷く。
「……オレたちもなにやらゴタゴタに巻き込まれるかもしれんな」
オレは近づく気配を探知して、そう告げた。
「漢中太守の張魯様より、使者とのこと! 如何いたしますか!?」
「……ここに通して下さい」
「はっ!」
急いで駆けていく兵士。
「……張魯の祖父から張魯に至る親子三代を知っているが、手紙ではなく、使者を寄越すとは……。余程火急の要件かもしれぬな」
険しい顔をする厳岳の爺さん。
間もなく現れたのは、青地に白の模様をした着物……それを肩がはだけて見えてるというヤバい服装をした、水色の瞳の少女だった。
「張魯漢中太守配下の閻圃殿ですな」
厳岳の言葉に頷いた。
「ご紹介に預かりました閻圃です。用件ですが、単刀直入に言います。劉玄徳太守様に援軍の要請を依頼しに参りました」
「援軍?」
閻圃の言葉に桃香が首を傾げた。
「はい。今、漢中は涼州からの侵攻してきている異形の軍団と、益州牧の劉璋の侵攻軍……2つの軍勢が漢中を目指し、進軍中なのです。」
「「「「!???」」」」
「2つの軍勢の動きは偶発的なのかそれとも意図したものなのか……それは分かっておるのか?」
爺さんの問いかけに閻圃がうなずく。
「使者などのやり取りは行われていません。そのため完全に偶発的なものと思われます」
それを聞いたオレは決める。
「桃香、先行して異形の軍団とやらの足止めにオレは向かう。分身を置いておくがリソースが足りなくなったら留守組の誰か魔力供給頼む」
「あ、お兄さん!?」
「キリト、そこなら儂が『運べる』から、少し待て」
飛び出そうとしたオレは踏みとどまり、振り返る。
「あとお主だけ行っても現地で話がこじれる未来しか見えん。閻圃に同行してもらうべきじゃ」
「ぐぬぬ」
オレの歯ぎしりをよそに、桃香が指示を飛ばしていく。
「と、とりあえず私達は、軍の編成、誰が残るか、兵をどれだけ残すかの確認を!」
「豪族たちに目を光らしておきたいからオレは残る。ついでに警備隊の引き締めはやっとくぞ」
「はわわ、兵糧は半年動けるだけのものにするとして……桃香様、決裁おねがいしましゅ!」
炎蓮が適宜フォローしたり、朱里が雛里たちとともに計算を弾き、決裁を求めたりする。
――オレが居なくてもちゃんと回るようになってて、なんかみんなの成長を感じた気がした。
なんか感傷に浸っていたら、爺さんが準備できたことを告げる。
「よし、キリト、準備できた」
そしていつの間にかオレの隣にきていた閻圃の方を向き、冷静に告げる。
「今から儂の術で漢中に送り届ける。そやつだけで北の抑えは問題ないから、南の攻勢は援軍くるまでそっちで耐えてほしいとも伝えてくれ」
「はい、わかりました」
「妙に話がすんなり通る……あ、この人もアンタのこと――」
言い終わる前にオレと閻圃は光りに包まれ、気がついたら見慣れぬ城の前に立っていた。
「……では行きましょうか」
「色々納得できないが、そうするしか無いよな!」
オレはそう自分に言い聞かせ、先にすすむ閻圃を追いかけるのであった。