3日ほどかけて白水関にたどり着いた一同*1。
兵士たちの殆どは険しい顔をしてるが、一部は気が緩んでいた。
……まあ、緊張も過ぎれば身体に毒だから多少は良いんだが……。
「まだ来ていないみたいね」
兵士たちをねぎらっていく蜜璃を観ながらそう零すアスナにうなずく。
「遅滞戦術が功を奏してるみたいですね」
雪泉がどこか得意げに言う。
「……なら斥候を定期的に出しつつ、関の防御を追加するか」
「アンタがその気になったら要塞になるでしょ。自重しなさい」
とシノンから軽くアクション付きでツッコミされた。
「……そのほうが私達楽になるような気がするが……」
「いや、たぶんキリトナシだとメンテ不可な代物になりそうだからシノンのツッコミが正しいと思う」
キズメルが首を傾げると、一夏が有り得そうな指摘をしてくれた。
そんな感じで気の緩みがオレたちの中にも広がる。
「……暇になったなぁ」
炎蓮がそういった後、オレにすり寄ってきた。
「炎蓮。終わるまでお預けだ」
「嘘だろ、キリト!?」
困惑する炎蓮に対し、オレは両目の目をオンにしながらみる。
「お兄さんの目が本気になってるから止めたほうが良いですよ。生殺しとかされるかもしれないし」
「……そうする」
桃香の言葉にうなずいて、そっと距離を置く炎蓮。
おれは即座に木分身を作っていく。
「アスナ、リーファ、シノン、一夏、プレミア、ティアは兵士たちの士気維持のために食事作り手伝って」
「「「は、はい!」」」
動き出した分身についていく6人。
「愛紗、鈴々、千冬さん、炎蓮は兵士の調練。4交代で構わないから」
「了解!」
「わかったのだ」
「ああ」
「了解」
慌てて4人が分身についていく。
「朱里、雛里は雪泉と一緒に兵の受け入れの対応と指揮系統の確認」
「「「はい!」」」
「桃香は蜜璃と同行して、仲が良いことを兵士たちに示してくれ」
「は、はい!」
そしてユイ以外が居なくなった。
「……パパ、私なにかやりますか?」
「……オレとしばらくここでぼーっとしてほしい」
「パパ……」
そっと顔を擦り寄せるユイ。
優しいユイの抱擁にオレは安堵するのであった……。
あれから数日後……
「ユージオォォ!!!」
「キリトォォォ!!!」
オレは白水関を背にして、眼の前にユージオと鍔迫り合いしていた。
どうしてこうなったかというと、敵が来たからいの一番で門の前に降りてユージオの名前を呼んだら本人が出てきて、お互い出鼻を挫けるということで一騎討ちが始まった(計画どおり)
それはさておき
「元気そうだなぁ! 安心したぞ」
「キリトこそ、また女の子引っ掛けてるのかい?」
軽口を叩く余裕はある。
周りの兵士たちはオレたちの攻撃の余波から避けるようにしながらも、白水関への攻撃を続けている。
「オレは引っ掛けてるつもりはないんだがな!」
「またアスナたちに怒られるよっ!」
どちらも有効打が決まらない。
さながら研ぎ澄まされた舞のように剣戟とオレたちのステップは続く。
「ユージオ、こっちに来ないか? 条件、待遇面は考慮するぞ!?」
「それ言われたら弱いんだよね! でも今僕が抜けたら迷惑書ける人もいるから困りものだ!」
青薔薇と黒い木の枝が飛び交う。
「なら――」
「これで――」
「「決着だ!」」
オレとユージオは全く同じタイミングで踏み込み、それぞれのソードスキルを繰り出した。
「……やっぱりキリトは、強いなぁ」
そういって膝をつくユージオと、駆け寄ってくる娘。
「ユージオ!」
「大丈夫、峰打ちだったから……」
駆け寄ってきたアリスにそう告げる。
ユージオの声やそばで見たときの様子が問題ないと分かって安堵するアリス。
しかし、劉璋軍兵士たちはそうは取れなかったようで――。
「あの張任将軍が負けた……?」
「嘘だろ?負け知らずのあの将軍が……?」
「いやだ、オレは死にたくない!」
誰かがそういって武器や防具を捨て逃げ出したのをきっかけに、兵士たちが逃げ始める。
「な、にげるな! 奴らを殺せ!」
慌てて劉璋と思わしき男が檄を飛ばすが誰も相手にせず。
「このまま追撃戦すれば確実にほとんどの将兵を討ち取れるが……」
絶対民に恨まれるからなぁ……
と思って兵士たちに追撃禁止を宣言する。
波が引くように逃げていく兵士たちが消えたあと、残ったのはユージオ、アリスに3人の女性。
どうやら劉璋も勝ち目無しと逃げたらしい。
「……で、そっちの3人は何で逃げない?」
オレが問いかけると、それぞれが口を開く。
最初に答えたのは、褐色肌にパールグレーの髪とバニーガール風の服に赤ずきんを合わせたような格好の美女。
……え?
「我は劉璋に見切りをつけたからそちらに降ることをきめたからじゃな」
次は薄紫の髪と豊満な身体をもて余してるらしい美女が告げる。
「儂もあの見切りをつけたがただで降るのも癪なのでな。腕利きと儂で一騎討ちを所望するぞ」
最後はどこぞの名医のような髪型と髪色をして強気そうな娘が答える。
「私も師匠と同じだ。――もっともその男以外に私を倒せる者が居ないなら、張任と師匠の次……三番手か四番手になるだろうがな」
その言葉を聞いた武闘派メンツがピクリと反応した。
「お兄ちゃーん! そっちのおばさんは鈴々が戦うのだ!」
「そっちの女は私に殺らせてください!」
「オレは構わないぞ。ただし殺すなよ?」
鈴々と愛紗の言葉に目の前の女性2人もピクリと反応し、怒気を膨らませた。
「ほう……おばさん、か……」
「そこらのやつが私を倒せると思われてるとは……」
「血の気が多い者たちはこまるのう……」
いつの間にかバニーコスの女性がとなりに来ていた。
「お主……ガションと呼ばれたことあるかの?」
「そういうあんたは雑貨屋ねりこって店経営の経験は?」
「……とうだいもりという言葉に聞き覚えありそうじゃな」
愛紗と鈴々が門から出てきて、2人と相対し、戦い始めるのを横目に会話をしていく。
「キリト、法正のことをしってるのかい?」
「オレの記憶違いじゃないならな」
アリスと共にオレを挟んだ法正?の反対側に移動しながら聞いてきた。
「まあ、我はこやつと面識はあるが、顔や声が知らぬのよなぁ。……まあ、我の知る者で間違いないが」
「とりあえず……オレはキリトだ。真名だけど気にしなくていいから。よろしく」
「ふむ……我は法正じゃ。真名はお主がよく知る『ねりこ』じゃ。……キリト、そっちに降るから身元保証たのむぞ」
「わかった」
そんな会話をしていたら決着がついたようだ。
鈴々、愛紗ともにこっちに手を振っている。
「ちなみに、劉璋軍は武官と文官で皆からも認められた者たちが悉くこちらの軍門に降ったからの、なにもせずとも空中分解すると思うぞ」
ねりこの言葉に目を丸くする。
「我、険悪な勢力の臣下同士ではあったが、閻圃と文を交わすとかしておるし、劉璋軍で仕事せぬ劉璋に代わって陳情対処など我がしておったのじゃから、この程度わかるんじゃよ」
そう話す彼女の目が、どこかの遠くをみてるようで、少しかなしくなったのであった……。
その後各自の武器を没収した上で白水関に戻る。
そして大広間にて主要メンツを集めて防衛戦の戦後処理を始めた。
自己紹介は割愛。
「では、張任さん、李厳さん、法正さん、厳顔さん、魏延さんは劉璋麾下から私の麾下に降るってことで大丈夫ですね?」
「「「「「はっ!」」」」」
「とりあえず……この紙に書いてる規則守ってね?」
そういって各自に紙を渡す。
「……大丈夫そう?」
「全く問題ないのう」
「儂も構わん。寧ろ儂もイケる口か?」
「やっぱりキリトはキリトだよね。この辺りは問題ないよ」
「なっ……劉備様にこの男は手を出して……!?」
なんか若干1名ダメそうなんだが……。
「魏延さん、無理なら隠居するか、他の人の所に行っても良いですからね?」
そう劉備が魏延の手をとりながらそういうと
「そそそ、そんなことはありません!私の忠誠は劉備様に」
顔が真っ赤になっていき、言い終わる前に鼻血出してたおれる魏延。
「馬鹿弟子の不始末と諸々はこちらで話をつけておく。ねりこ。お主は今後の動きとそれにあった情報提示たのむぞ」
「うむ、わかった」
厳顔が魏延を担いで出ていくので兵士に救護所への案内を頼んでおいた。
「さて、今後どうするつもりなのかききたいのう」
「益州全土を制圧するよ。……それと同時並行で劉璋の悪政を中央に上奏して益州牧の地位を手に入れるつもり」
「正当性の獲得は大切じゃな。……成都始め、益州は我の知人が多い。うまく内応させてみせるぞ」
「心強いです」
こうして、劉璋軍撃退だけでなく、劉璋軍の大幅な弱体化と自陣営の強化ができて一石三鳥の結果を得ることができたのであった……。