このキリトくんの前世ではサージュ・コンチェルトの2作品をクリア済み
そして今回は益州攻略……では無かったりする。
それではどうぞ
半月後……オレは江州と永安の中間地点にある臨江という都市の城に滞在していた。
そしてそこの大広間にてビデオ通話状態で各地の面々と会話をしていた。
主要都市の玉座の間と主だった将に通信端末を渡していた
「それじゃ、第一回、益州の定例報告やるぞー。臨江だが……特に劉璋の動きはナシ。細作とかの姿も一切ない。至って平和な状態だ」
『こちら上庸。厳岳じゃ。こっちも至って平和。強いて言えば留守組の者たちがキリトの帰りはいつなのかと煩いくらいかのう。あと上庸―漢中間の街道整備も順調だ』
「分身経由で通達してんのになぁ」
オレは遠い目をした後、頭を振ってから
「……とりあえずあとで対応しておくわ。次、ペコリーヌ頼む」
と次へと話を振る。
『はいはーい。漢中は現在有り余ってる蔵の米の3割を開放して成都と江州に輸送してます。また政教分離で『
「街道整備、食事をしっかり出しておいてくれ。上手くやれば建築部隊候補になるからな。」
『もちろんです!』
ペコリーヌの言葉にうなずいてからキズメルをみる。
「次はキズメル、頼む」
『ああ。――梓潼についてだが、平和そのものだ。あと漢中からの米の輸送も順調だ。ただ、改めて調べたところ、税率周りが少々高いから調整したい、その辺りは朱里に裁量権任せてるのか?』
「裁量については一応通知してるが、税率周りは代行と補佐2人からこっちに上げてくれ。そうしたら精査して判断下すから」
『む、すまない。そこ以外は問題ない』
キズメルの言葉にうなずいてから桃香の方を向く。
「次は桃香、報告頼む」
『はーい。成都はねりこさんのおかげで滞りなく政務とか回ってて、私のすること無い気が……ハッ、私の存在意義が問われてる!? お兄さん! 私捨てないよね?』
「オレが受肉してるとはいえ、オレのマスターだし、勢力の長だし、皇帝の縁者だし、人を惹きつける人望のおかげで色々助かってるから。存在意義とか考えなくていいからな?」
『ならいいんだけどぉ……あ、あと梓潼から米がたくさん届いたけど私の就任祝いって名目でご飯振る舞うってことでよかったっけ?』
「むしろそのために漢中から輸送してもらったから。ただしねりこに聞いて、全部炊いて振る舞うんじゃなくて、俵のまま配る分と炊いて配る分、城の有事用の兵糧にする分を決めてくれ」
『はーい』
「その勢いで愛紗、報告よろしく」
愛紗に話をふると、わたわたしながら報告を始めた。
『えとえと、江州も統治は順調です。反発的な人は桔梗殿が説得してくださってましたし、東はキリト殿が目を光らせてくださってるので内乱の芽がないかの確認だけで済んでいてとてもありがたいです。あ、あと漢中からの米が届きました。建寧分は随時輸送を始めています』
「困ったこと有ったら雛里やプレミアに相談して、それでも無理ならオレとか端末経由で誰かに質問投げてくれ」
『はい、がんばります!』
良い返事をする愛紗にうなずいてから、アスナに視線を移す。
「それじゃ、アスナ、建寧の状態報告よろしく」
『建寧とその周辺の街レベルは大体抑えたけど、邑にまだ統治者が代わったことの浸透ができてないから、行商人とかも使って根付かせてく予定。南蛮の略奪についてはユージオ君とシノのんにお願いして対処してるわ。防衛部隊ができたら、部隊長をアリスちゃんにして、シノのんと交代になる予定。あとまだこっちには米が届いてないから、できれば米の配布は足並み揃えたいかなーと』
「なら米の配布はアスナのところの準備ができ次第やるという方針で。――他に連絡は……なさそうだな。引き続き、よろしく」
『『『了解』』』
そういって通信が切れた。
「お疲れさまです、パパ」
とてとてとやってきて、玉座に座ったオレの膝に座るユイ。
艶のあるきれいな黒髪を手ぐしで透きながら「ありがとな」と返す。
「これで益州はほぼ掌握しましたし、劉表がどう動くか……ですよね」
「問題はないと思うがな……」
「ところでどうしてパパは私以外……ママさえ置いて単独行動同然のことをしてるんです?」
痛いところを突いてきた娘の言葉に、手が止まった。
「……なんか厄介事が起きるらしくて、被害を回避するためにサーヴァントのスキルの啓示って奴の言うとおりにしたらこうなった。なんでこうするべきかちょっと自分でもわかってない」
「パパ……大丈夫です。また女の子が増えそうになったら、ママにノータイムで通報しますから」
「なんで浮気ってことになるかなぁ????」
オレがジト目で髪の毛わしゃわしゃすると彼女は照れながらも笑顔を見せる。
「冗談です。最近のパパはおとなしいですし」
「変なこといわないの」
ほっぺふにふにの刑を始める。
「ふぁふぁ、ひゃへへふははひ~」
――などと遊んでいたら、兵士がやってきた。
「申し訳ありません! 客人がいらっしゃってます」
「「客人?」」
オレとユイは思わず互いの顔をみる。
どちらにも心当たりがないと分かったので、とりあえず会って確かめることに。
「……あー、通してくれる?」
「はっ!」
兵士が踵を返すと同時にユイを膝から下ろす。
「念の為柱の陰に隠れてて」
「はい。いつでも通報準備は大丈夫です」
「それはいらないからね????」
オレは頭を抱えたくなったが、気を取り直すことにした。
「貴方が聖杯戦争を一抜けしたセイバーさん?」
現れたのは片目が隠れる黒髪と紅い瞳をした黒い服の美少女と
「あ、アーチャー、喧嘩腰はダメだよ」
――背まであるライトブラウンのロングヘアーに、蒼い瞳をした娘であった。
「……もしオレが
オレは後者に色々確認したいことがあったが、先に相手の要件を聞くことを選ぶ。
「……アーチャーも、聖杯戦争から抜ける方法を教えてほしい。もし補助とかが必要なら、手伝ってもらいたいです」
と答える娘。
「……確かにオレの知る裏技を使えばそれは叶うだろう。もっともそれをするための前提条件がいくつか在る。そのうちオレが眼を貸せば解決できることだから省略するし、ぶっちゃけ五体満足な時点で条件は2つになる。……まずアーチャーは分身、あるいはそれに準ずる自分の分体を作れるか?」
「……できますが……眼を貸す?」
首を傾げ、マスターと顔を見合わせる。
「次にマスター側は令呪いくつ残ってる? 3画あるのが一番ラクだが」
「あ……一つ、使ってるから……2画しかないです」
見てるこっちが悪人に見えてくるレベルの落ち込み具合を見せる娘。
「……マスターとしてのパスは在るんだな?」
「え? あ、はい」
「なら裏技を使える条件は満たしてるし、足りない部分は補填できる。ところで――それをオレがやったところでオレに何のメリットがあるんだ?」
「え?」
「ですよね」
オレの言葉に正反対の態度を見せる娘とアーチャー。
「――ぶっちゃけオレは聖杯戦争から手を引いてるし、そちらとの面識も誰かからの紹介もないのにいきなり相手の都合で願いを叶えて対価なし……ってのは虫が良すぎると思うんだけど……ちがうかな?」
「そ、そう言われると……そう……ですけど……」
「なら何を対価にすればよいか教えてもらえます? 大抵のもの……それこそ原典ならほぼ大抵の宝具を用意できますが」
オロオロする娘を観ていられなくなったか、アーチャーが一歩前に出て問いかけてきた。
「アーチャーからは対価をもらわない。そしてアーチャーからマスターへ何も渡さない前提で――マスターが何を差し出せるか。それ次第だ」
「え? 私、何も持ってない……服も、これしかないし……」
「……下衆な要求にしか見えませんけど?」
睨みつけてくるアーチャー。
「別に服をよこせとか奴隷になれとかそういう要求はしてない。やったら今の嫁たちに半殺しにされるしな」
「なら一体何を……記憶?」
アーチャーが近い答えを出してきた。
「――マスターからは知識提供という形で頭脳労働系の労働契約、アーチャーはオレや身内に手を出さない保険を兼ねてオレにもマスター契約を結ぶ。このへんが落とし所だと思うぞ。期間としてはしばらく……聖杯戦争終わるかほとぼり冷めるまでくらいだな。ああ、衣食住についてはちゃんと保証するさ」
「私の……知識……?」
困惑する娘に畳み掛ける
「――この世界を見て思うところがあるようだしな。『この世界の外から来た』んじゃないか?」
「え、なんでそれを――」
「ちょ、マスター!」
「決まりだな。あとは――トレインしてきた厄介なエネミー排除してから決めるか!」
オレは傾国の剣を入り口のすぐ上に投擲すると、直ぐ側の風景が剥がれて人の形になる。
「げっ、バレてたのか」
「――オレの眼は色々視えるからな」
手に傾国の剣を呼び戻しながら告げる。
「なっ!? 全く気配しませんでしたわ」
一瞬にして黒い洋服から赤と黒を基調としたドレスに変化して両手に拳銃を構えて侵入者をみるアーチャー。
「うーん、バレるのは予想していたが……何もしないと小言を言われそうだ。ちょっと小手調べだけさせてもらうか」
そういってその人?は髪の毛を抜いて息を吹きかけた。
するとその髪の毛たちが抜いた人と同じ姿を取ってそれぞれが棒を耳元から取り出してこちらに襲いかかってきた。
「――このっ!」
アーチャーが周囲から黄金の波紋とともに様々な聖剣魔剣に槍や薙刀、斧などを出現させて射出する。
過半はそれでなんとかなるが、数がまだある状態で2人に肉薄し――
「悪いが、今この2人はオレの客人だ。――手は出させない」
黒い炎を全身にまとった3対の手をもつ骸骨が敵の分身?を薙ぎ払う。
「……一筋縄じゃいかないということはよく分かった。だが、脱落したことになってるセイバーを改めて脱落させれば、1騎分になるようだし、そちらが同盟に近い状態になったという情報を手に入っただけで良しとさせてもらう」
そう言うと霊体化して逃げていった。
「……さて、さっさと終わらせようか」
須佐能乎を解除してから2人をみる。
「え、あ、はい」
「……セイバー、さん。強いんですね」
娘の言葉にオレはまだ名乗ってなかったことを思い出す。
「キリトだ。……呼ばれても特に支障はないから真名を教えておく」
「私は時崎狂三です。よろしくおねがいしますね」
アーチャー改め、狂三がそう妖艶な笑みを浮かべて告げた。
「わ、私はイオナサル・ククルル・プリシェール……イオンと呼んでください」
あわわわしながら娘が名乗る。
――まあ、イオンのことは知ってるし、思うところしかないが……。
「よろしく、二人共」
そうオレは返した。
『キリト君、また勝手に女の子囲ったのでギルティ』
『オマケにそっちのマスターは前世の一つで端末越しとはいえ、結婚してたのにそれ黙ってた? ギルティ追加で』
『あとサーヴァント襲撃を避けるためにここ数日分身を出さなかったのと、それについてもユイ以外に黙っていた……これも余罪ですね』
「はい、すみませんでした」
「「えぇ……」」
画面に並ぶアスナたちに土下座するオレとオレの罪を数える嫁'sとそれに困惑する狂三とイオン。
なお、ユイはまたか、という態度。
うーん、慣れって怖いね。
『とりあえず……そのアーチャーさんの処遇は妥当だとおもうから、お兄さんの方で対処してね。あ、無理矢理は駄目だからね? たぶん合意の上でやると思うけど』
『あとは、夜全員口寄せで呼ぶこと。もちろん、分身無しで全員満足させないとだめだからね?』
「ワカリマシタ」
『じゃ、とりあえずユイちゃん、パパの面倒お願いね』
「任せてください」
そうユイが言うと通信が切れる。
「……えっと、あなた……でいいんだよね?」
「いくつも前の人生での話だがな。……そこは積もる話になるし、先にやることを済ませたい」
「あ、うん。ごめんね」
イオンが素直に下がってくれてありがたい。
「とりあえず、イオンにはこれを」
オレの宝物庫から令呪を追加して3画に
「え? ええ?? 令呪って貴重なものじゃ……?」
「とりあえず3画使って受肉するように命じて」
「あ、うん……。『令呪を全て以て持って命じる。アーチャー、受肉せよ』」
令呪が消えるとともに狂三の存在がどこか不安定なものから実体を常に伴う状態へと変化した。
「それじゃ、やるか」
オレは自分の右目に手を添えた後、狂三の左目に添える。
「え? え? こ、これは?」
目に感じた違和感と、オレの手が離れた後の左目が見た世界に困惑してるのが手にとるようにわかる。
今オレの右目が無いから閉じてるし、左目でしか見てないけど。
「とりあえずこれで準備はもんだいなし。後は分身作って」
「あ、はい」
影から分身が出てきた。
その娘の左目が輪廻写輪眼になってるのを確認。
「今からオレの手の動きを分身は真似して」
「は、はぁ……」
オレは一つずつ印を結び、狂三の分身もちゃんとできてることを確認しながら続ける。
「これで最後な」
「わ、わかりましたわ」
最後の印を結んだ瞬間発動するのは、外道・輪廻天生。
「こ、これは……ちからが、ぬけ……」
そのまま消えるとともに、聖杯からアーチャー脱落の通知が届く。
「これでおわりですの?」
「いや、まだ終わってない。すぐ終わらせるけど」
おれはまた彼女の左目に手を当てたあと、自分の右目に手を添える。
「? 戻った? 一体何を?」
困惑する狂三に説明しようとしたが、長くなるのでとりあえず後回し。
ちゃんと戻ってきた自分の目に安堵しつつ、彼女の首と胸の間になるべく目立たないように呪印を刻む。
「何をやったかは後で図解付きで説明する。――とりあえずこれで擬似的なマスター権限とパスをつけた。無理に剥がすなよ?」
「ええ、ここまでしてもらって恩を仇で返すつもりありませんわ」
「これであの人たちから開放……されないのかな」
イオンがしょんぼりするのでオレはため息交じりに答える。
「オレのマスターと嫁たちが認めてくれてるから、ウチで二人共保護するさ。――一応分身も突けるから、こまったらそれに頼れ」
「「はーい」」
とりあえず想定していた最悪の事態は避けれたのでヨシとする。
――その分自分に舞い込んでくる不幸は見て見ぬ振りをすることにして。