あれから更に数日後。
オレは塩漬けにされた無念の顔してる劉璋の頸を横目に、使者のたわわなアレをみていた。
「……と言うことなので、逆賊劉璋はこの通り、頸だけとなりました。しかし劉表様は手柄などは欲しません。ただ同じ皇室として手を貸しただけに過ぎないとのことで……。……あの、大丈夫ですか?」
「ああ、申し訳ない。ここ数日仕事で寝る時間が確保できなかっただけだ。劉璋を招き入れ、荊州牧簒奪を目論んだそちらの腐敗していた県令を処断する口実にもなったということも、即物的な対価は不要ということもな。黄漢升殿」
オレの言葉に少し動揺の色を見せたがすぐに落ち着く黄忠。
「キリト殿の慧眼に驚くばかりでございます」
「経験と可能性の模索の積み重ねが人より少し多かっただけにすぎない。……それはさておき、成都に我が主がいるから、そちらまで経路で足止めをなるべくされないよう、自分の文を認めておきましょう。今宵文を認めるのと、もてなしも無く使者を送り出したら主に怒られるので、今日はここの城で御付きの者たちと共に休まれては如何かな?」
「お言葉に甘えさせていただきます」
オレの提案に頷く黄忠。
色々揺れて大変そうである()
(パパ……使者さんのおっぱいガン見してたのをママたちには伝えたので、三徹目、頑張ってください)
(ユイ……とうとう直接脳内に通知するように……)
案内役を買ってでた狂三に誘われ、退出する彼女たちを見送ったあと、そばにいたイオンにジト目を向けられていた。
「……えっと……」
「やっぱりあなたっておっぱい好きなんだね。あの世界*1で私にしょっちゅうセクハラしてたし、ねりこさん来たときとかもそっちに視線いってたし……」
「セクハラ云々は別途謝罪する。それはそれとして、あんなもの見せられたら目が行くのは過半の男のサガなんだ……本能に完全に打ち勝てた訳じゃない……」
真面目に答えると、少し考える素振りを見せるイオン。
「……まあ私は、許すよ。嫉妬ちょっとあるけど、私のこと蔑ろにしないって信じてるし」
「本当に?」
「うん。でも――娘のユイちゃん煩わせてるのは、ダメだと思うなぁ」
「ごもっとも」
イオンとの再会は嬉しいが、怒られる頻度が雪だるまのように追加されてることについては、素直に喜べなかった……。
オレは使者がいなくなり次第人払いし、緊急招集をした。
ビデオ通話状態になる中空。
開口一番にオレは謝罪する。
「すまん、しくじった」
『アンタらしくもない。何があったの?』
シノンが目を丸くして問いかける。
「劉璋が荊州に逃げて、逃げた先の県令がそれ使って反乱企てたってことで、劉璋共々処断された。桃香のところへ半月以内に劉璋の頸持った黄忠がたどり着くはずだ」
『えぇ……まあ、私が見たほうがいいのか……』
『? 劉璋の頸を撥ねる手間が減っただけでは?』
桃香の言葉に続き、焔那が疑問を投げ掛けた。
間髪置かずに焔耶が誰か(たぶん桔梗)に殴られる。
『馬鹿弟子で申し訳ない……』
『えっと……経緯や理由はどうであれ、《桃香様様が討伐するはずだった劉璋》を《劉表が討伐した》ってことになって、これが公になれば桃香様は《勅を果たせなかった不忠義者》といわれても反論出来なります』
『しかし、劉表はこちらに頸を渡す意志があるようです。……ただ、対価無く渡して来ても、何らかの対価を求めても《不忠義者と言われる不名誉》を払拭するほど……あるいはそれ以上の対価を吹っ掛けることができてしまうんです』
雛里の言葉に朱里が補足する。
『……対価の吹っ掛けは理不尽だし、そもそもそこの色情狂がそこ*2見落としてたのが原因だと思うが。責任とって腹を切るべきでは?』
「その意見については、(半分意図的に)やらかしたとしか言えないな」
『お兄さんの場合は、腹を切っても死なないから、別の罰用意しないとね。……それより、劉表が頸と引き換えに何を要求してくるかと、それに対して最初にこっち提示する対価、最終的な妥協点を考えとこうか』
『『『賛成!』』』
桃香の一声でとりあえず最悪は回避できたのだった……。
更に数日後。
永安が勢力的空白地帯になったので、兵士を集め、色塗り(制圧ともいう)を開始する。
「各部隊長は指定された地域に赴き、村や町の長たちにオレが夜なべして用意した勅の写しを提示して、州牧変更に納得させること。そして反乱分子がいたら確保すること。以上、行動開始」
「「「はっ!」」」
散開していく部隊長クラスを見送るオレ(となんかついてきたイオンと狂三)
「……さて、オレは手勢二千でやってくぞ」
「「おー」」
そのまま永安に進み、街に近づくと馬に乗った使者が数騎、やってくる。
「もう少しお待ちを!呉懿様が参りますので!」
「……一刻まで待つ」
オレがそういうと血相を変える使者たち。
1人残して慌てて戻っていった。
そしてまもなく戻ってくる使者2人とそれについてきた1人の人物。
肩にかからないくらいの長さに揃えたブロンドヘアーと冷静さを感じさせる蒼い瞳、やや茶色が入った黒い服を着こなすキャリアウーマンのような雰囲気を持つ女性だった。
「遅くなり申し訳ありません。私は永安太守の……え? イオン?」
「レナルル……さん?」
呉懿とイオンが互いを見つめて呆然とする。
「……あー、呉懿さん。うちの人と話すのは開城交渉終わってからでお願いします」
オレがそう告げるとはっとした様子で我に返る。
「改めて……永安太守の呉懿と申します。そちらの要求をまずお伺いします」
「とりあえず要求は『将兵の武装解除』と『劉玄徳益州牧の統治の承認』、あとは『それに抵抗する人物の拘束の承認』だな。将兵と文官の扱いについては『臣従、引き続き雇用を希望する場合は今後軍規や法に従う』ことと『異動命令が発生に従う』ことが必須だ」
オレの言葉に頷く呉懿。
「いずれも問題ありません。……永安郡の各県に兵士を派遣済みのようですし、私からの説得は永安の都市の将兵と文官、民だけで良さそうですね」
「話が早くて助かる」
オレの言葉に頷いたあと、彼女は冷静に告げた。
「では――各員に通達。将兵に武装解除、文官と民に統治者の交代を通知。同時に城門の解放を行いなさい」
「「「はっ!!!」」」
散開する使者。
それを見たあと、こちらを見て何かいいたげな顔をする。
「……ああ、イオンと話したいのか。構わないが、同席はさせてもらうぞ」
「分かりました」
オレ(とずっと傍に控えてた狂三)は有言実行でプライベートな時間を示すように人払いを命じ、イオンから少し離れる。
「……イオン、久しぶりね」
「レナルルさん!」
呉懿に抱きつくイオン。
「イオン、元気そうでよかったわ。一応、ここでは呉懿って名前で、真名がレナルルだから、私が真名を許してない人にはちゃんと呉懿って紹介してね?」
「うん。……あ、レナルルさんに紹介するね。この人がキリト。……アーシェスやデルタを通じて私たちを助けてくれた人だよ」
イオンはそういってわざわざオレのところにきて、腕に抱きついた。
「! 貴方のお陰で多くの人が救われたわ。本当にありがとう」
そういって頭を下げるレナルル*3。
「オレはイオンのためにできることをしてただけだ」
それ以上は無粋なので切り上げる。
「それで、こっちは時崎狂三ちゃん。私の……友達?」
後半疑問符な説明をするイオン。
それに反応してスカートの端をつまんで軽く礼をする狂三。
「ご紹介に預かりました時崎狂三ですわ。イオンさんの
「……最後が私の聞き間違えなら良いのだけれど、なんていったのかしら?」
「竿姉妹ですわね」
「誰と誰か……誰の竿姉妹?」
周囲の温度が下がっていく気がしたオレ。
しかし、狂三は意に介さずに答えた。
「私と、イオンさんが、キリトさんの竿姉妹、ですわね」
「私はキリトと一緒のベッドで寝たりはしたけど、そういうことまだしてないから……!」
オレを助けるつもりで回避不可の袋小路に追い込んでいくイオン。
「……キリト殿」
「はい」
「イオンを大切にすると言い、イオンのジェノメトリクスで婚姻まで行ったというのに、他の女性に現を抜かすとは――」
「ちなみに劉備軍の主要な女性の将と文官と彼は肉体関係ありますし、なんなら私、イオンさん、法正さん、厳顔さん、魏延さん、廬植さん、あと建寧の人妻の方を除けば全員竿姉妹ですわね」
「……!?」
レナルルが頭を抱えたまま倒れそうになったので慌てて支える。
「あの、大丈夫です?」
「……複数の女性と関係を持つ例は歴史にもありますが、イオンの大切な人がそれと聞いて、眩暈がしただけです」
「まあ、貴女も既にイオンさんを通じてキリトさんというウイルスに触れてしまってるので、
「狂三、オレをウイルス扱いしないでくれる???」
「……私が同衾するときは必ずイオンも交えて」
「話し聞いてる???」
暴走してる狂三とレナルルにオレは頭を抱えるのであった……。
「ということで永安郡は占領完了。統治は呉懿……レナルルにしばらく任せます」
『紹介に預かりました、呉懿です。真名をレナルルと申します。劉備軍の末席に加わり、微力ながら力を尽くします』
『そやつ、イオンの前世で宰相として辣腕振るっておったから、統率力と処理能力を評価して文官系の重臣として抜擢するべきじゃな』
レナルルの言葉にねりこが待ったをかける。
『……何故それを知っているのか知りませんが、下ったばかりの私には過ぎたものかと。……そもそも、永安太守のままの時点で過剰な気がしますが』
『故事の隗より始めよ……ではないが、《劉備軍に下った者で才能あるものはしかと評価される》という風評の実例作りじゃな。ユージオや桔梗も同じ例になるかのう。同時に《ただし、素行も加味される》例として我が実例になれば言うことなしじゃろ?』
『貴女は意図的に手を抜きすぎてますのでしっかり働いてください』
傍観者決め込んでたアリスが突っ込む。
『それでは意味なかろうに』
『……すみません、話を遮りました。続けて下さい』
アリスが根負けして続きを促す。
「永安の統治が軌道に乗り次第、イオン、狂三と共にオレの直轄に組み込見たいが構わないか、桃香」
『代わりは誰の予定?』
桃香の問いかけにオレは直ぐ答える。
「蜜璃と補佐にリーファ、雪泉だ。できれば仕事が一段落したら直ぐにこっちに向かってくれ。
これであとは劉璋の頸の交渉次第になるだろうな。
オレはそう思いながら、甘えてくるイオンを撫でて一息つくのであった……。