記憶は摩耗した転生する前(本人視点)とキリト君時代の二つ(+聖杯がもたらしたその時代の一般常識)だけです。
そのあたり、よろしくお願いします。
それではどうぞ
「すごい」
「本当に人が現れたのだ」
「……まさか本当にこんなことが……」
目を覚ますとそこは書庫らしい場所で、目の前には3人の少女が佇んでいた。
左から艶の良い黒髪ロングヘアーの少女、ルビーレッドの髪と蒼い瞳の少女、赤毛の活発そうな少女。
そして魔力のパスがつながっているのは真ん中の少女だ。
「サーヴァント、セイバー。召喚に応じ参上した。――問おう、あんたがオレのマスターか?」
すると問いかけた少女がハッとして口を開く。
「は、はい! 私、劉備、字は玄徳。 貴方を呼びました!」
「……確かにパスは繋がってるな。さて、口振りから多少知ってるようだが……」
左右の2人を見てから
「2人の名前とかも聞かせて欲しい。代わりに可能な限り、オレについてや聖杯戦争についておしえるから」
オレは冷静に現在の状況などを得ることにした。
「にゃ? 鈴々たちの名前? 鈴々は名を張飛、字は翼徳なのだ」
「私は関羽。字は雲長だ」
「……セイバーと名乗ったが、それはクラス名で、真名はキリトで通っている。キリトと呼んでくれ」
オレがそういうと、三人は目を丸くする。
「え、サーヴァントの真名って、ほかのサーヴァントに知られたら、逸話とか弱点が分かるから、クラス名で呼ぶのが普通なんじゃないの?」
劉備の問いかけにうなずく。
「確かにそうだ。……だが、真名をしられて露呈する能力や情報は氷山の一角……むしろ油断してくれるから露見した方が良いまである」
「なら、私のことも桃香って呼んで欲しいかな。真名を預けてくれてるのに、私も預けないのは不平等かなーって」
「……良いのか?」
「うん!」
何故か彼女の笑顔に
「ならお兄ちゃんのことをキリトお兄ちゃんって呼ぶから、鈴々のことも鈴々って呼んで欲しいのだ」
ふたりがかりでうるうるした目をしてきて根負けする。
「……分かった。桃香、鈴々」
「なあに?キリトお兄さん」
「キリトお兄ちゃん」
オレの呼び掛けに2人ともニコニコしながら答える。
「「チラッ」」
そして2人が関羽の方を見て、それにたじろぐ関羽。
「えっ、私も……?」
「お兄さん、真名を預けてくれたよ?」
「鈴々たち、桃園で姉妹の誓いしたのだ。愛紗だけ仲間外れにするつもりないのだ」
2人に勝てるわけがないみたいで、たじたじになってる関羽がかわいそうになってきた。
「お二人さん、真名を預けるかは本人の意思だから同調圧力かけるのはやめておくべきだ」
そっと助け船をだすが――
「いや、2人のいう通りだ。敵対してるわけではないし、私だけ仲間外れはその……寂しいから、な。愛紗と呼んでもらえれば」
まさかの助け船が火計で燃やされて戻ってきたでござる。
「お、おう……愛紗」
「はいっ」
やべえ、すごい煌めいてる笑顔だ。
犬のしっぽが幻視されたが気のせいのはず……。
アスナが黒パンにクリーム塗ったアレをこっそり食べて懐かしんでたアレや一夏のエプロン姿褒めたときのデレデレといい勝負だなぁと思いつつ、話を戻すことにした。
「それで……まあとりあえず、聖杯戦争とかについて説明してくか……」
オレはアイテムからホワイトボードと筆記具一式だして3人には学校とかで使う机と椅子のセットを出して座らせた。
「はい、まず聖杯戦争について。聖杯戦争とは、願いを叶える奇跡の道具『聖杯』を巡って戦う特殊な戦争です。そしてそれを手に入れるには召喚される七騎のサーヴァントのうち、六騎が脱落する必要があります」
「お兄ちゃん、絵が上手なのだ」
説明しながら、ざっくり絵を描いていく。
「ちなみに、本来の用途を使うには、七騎全部脱落してもらう必要があるけど、コレは魔術の極めた先に見えてくる目的を達成する為の要素だから今回は横におきます」
「せんせー! それだとせんせーも脱落する可能性ないですか? この本くれた人は『聖杯は早い者勝ち、叶えたらおしまい』っていってました」
桃香が元気よく手を上げて質問してきた。
「それは詐欺です。オレを含め、ほとんどのサーヴァントは聖杯の仕組みとかに干渉できないので、願いを叶えるためには6騎以上の脱落が必須になります。ちなみに聖杯は不良品な可能性もあって、その場合は願いをかなえてくれなかったり、方法がろくでもないなどの致命的な欠陥抱えてることがあるのでその場合は破壊します」
「そ、そんな……」
3人とも(*´・ω・)とする。
「まあ、オレの場合、桃香の手の甲にある令呪全部といくつか道具使って裏技使えば脱落した扱いになる代わりに、現世に残れるけどな」
「本当?」
「なら早速やるのだ」
「……キリト殿が乗り気ではないあたり、何かあるのでは?」
オレの言葉に反応してすぐに行動に移ろうとした桃香と鈴々。
しかし愛紗がオレの態度から察して水を向けてくれた。
「令呪3つともオレの受肉のために使うことになるし、結果として脱落になるから聖杯を得るのは難しくなる」
「私は悪い人の手にその聖杯?が渡ってほしくないだけで、マトモな人が使ったり、ダメな聖杯破壊するのに抵抗ないけど……」
さらっと答える桃香。
「んー……今黄巾党と呼ばれる賊が蔓延ってるが、それを何とかしたいとかの願いもかなえられると思うぞ? まともな聖杯なら」
「たしかに、そうだと思うけど……そこは、私たちがどうにかするべきことだと思うし、立ち直れるって私は信じたいから。あ、もしかして、お兄さんが叶えたい願いがあるからためらってる……?」
ハッとした様子でオレを見る桃香。
「いや、オレとしても脱落するより、生き残ってやるべきことを果たす方が望ましい。……ただ、この方法で受肉してしまえば、オレを従える強制命令権である3画の令呪を失うし、受肉したから、マスターとのパスはなくても存在することができる。つまり、今こうして大人しくしてるが牙を剥くかもしれない。オレを信じるのは時期尚早じゃないか?」
「うーん、私はお兄さんがお人好し過ぎて注意してるだけに見えるけど、2人はどう思う?」
「桃香様と同じ意見です」
「お兄ちゃん、悪い子ぶってるけど、ものすごくいいお兄ちゃんなのだ」
「……」
悪役みたいなロールを何度かしたが、どうもダメらしい。
「それで、お兄さん、どうしたらいい?」
「……『令呪を以て命じる、セイバー受肉せよ』。これで1画消えるから続けて2回『令呪を重ねて命じる、セイバー受肉せよ』でいいはずだ」
「令呪を以て命じます。――お兄さん、受肉してください」
間髪入れずに令呪を発動して、一画目の令呪が消える。
「――令呪を2画重ね命じます。――お兄さん、受肉して」
あれ?なんか胃痛がしたが気のせいだろうか。
胃痛が引くとともに肉体が実体を得たのを実感する。
「……まだ、お兄さんとのつながりを感じる。良かった」
何だろうなぁ、浮気(一夏の勘違い)を咎められたときと同じ圧を桃香から感じる。
いや、オレまだ彼女に好かれるようなことしてないんだけど!?
「とりあえずあとは」
いつの間にか取得していた影分身を使い、分身にそこそこ離れた場所に移動してもらって、対象未指定で外道・輪廻天生の術を発動してもらい*1、そのまま昇天してもらう。
すると聖杯からセイバー脱落の情報が入ってくる。
……使える術者が限られるし、
「ところでお兄さん」
「……どうした?」
「お兄さんって生前女の子に好かれたの? 私の目にお兄さんの能力とか見えたんだけど、スキル?ってのに『女難:
「「……ふーん?」」
アスナ、一夏、みんな……。
オレ、志半ばで果てるかもしれないや……。
「……? セイバーが脱落? 戦闘があったという聖杯からの報告はない……マスターと仲たがいして自滅した……というわけでもないはずだが……聖杯を騙すなんて芸当がセイバークラスに出来るとは思えない……。ルーラ―として何故私が呼ばれたか分かりませんが、とりあえず、課せられた使命を全うするためにも、調査に移りましょう」
食べかけの焼売を口に放り込み、お代を置いて、その場を後にする少女。
――ルーラ―が召喚されている時点で、穏やかな戦争とはいかないようだ。