仮面ライダートゥルーク   作:くるみゼロ

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episode9『聖女のユーウツ2』

 アニーは戸惑うノゾミの手を掴むと、引きずるようにして店の奥に足を踏み入れた。先には小さな部屋があり、そこは店の休憩室と見られた。

 部屋には他にも色違いのチャイナドレスを着た女性たちが談笑していたが、2人の姿を見ると驚いた様子で立ち上がり壁際に寄った。

 

「これ犯罪じゃないですか!!」

 

「騒ぐなと言ったのに......まあ仕方ありません、客は他にいませんし」

 

 アニーはデビルガンライザーで店員の1人に発砲する。すると倒れた店員は姿を変えて立ち上がり、他の店員たちも同じように化けの皮を剥いだ。

 

「あら、般若がたくさん」

 

「何故分かった?」

 

「異界の食べ物は強烈な中毒症状を引き起こしますからね。まあこれでも聖職者なんで効きませんでしたが」

 

「だからあの時──」

 

 ノゾミの言葉を遮るように再びデビルガンライザーの弾丸が放たれる。今度は彼女たちの足元の床に当たり、大きくひび割れる。

 

「ヌゥ......力のない怪異が生き残るにはどんな手も使うしかないんだ!」

 

「だからといって営業許可は出さないと。まあ怪異に戸籍もクソもありませんが」

 

「ウルサイ! 邪魔するなら始末してやる!」

 

 ハンニャ怪異たちはナイフを持って戦闘態勢に入る。ノゾミはベルトを取り出すが、アニーに手を横に伸ばして制する。

 アニーは銃を上腿にあるホルスターにしまうと、黒と白の2枚のコインを取り出す。そして同じ色のガンライザーにある持ち手の投入口に装填した。

 

『デカラビア!』

 

『ミカエル!』

 

 その瞬間、部屋中に黒と白の羽根が舞い散る。アニーはホルスターからガンライザーを取り出してそれぞれ構えると、正面にいたハンニャ怪異たちに狙いを定めた。

 

「変身」

 

『『怪異解放!』』

 

 トリガーを引くと、銃口から眩い光と真っ暗な闇が放たれる。光と闇がぶつかり合い衝撃波が生まれると、ノゾミとハンニャ怪異たちは大きく後方に吹き飛ばされた。

 

「あれは......!」

 

 そこに立っていたのは黒と白のボディースーツに身を包んだ、新たな仮面ライダーだった。

 

『悪魔の翼! デーモンウイング! 仮面ライダーデーモン!!』

『天使の翼! エンゼルウイング! 仮面ライダーエンゼル!!』

 

 黒い悪魔のような右半身は、まさしくダークヒーローと呼ぶに相応しい姿だ。所々に五芒星図の奇妙な刻印があり、その中心にある目はじっとハンニャ怪異を見つめている。

 一方の白い天使のような左半身は聖女のような風貌であった。白いベールに身を包まれて、腕には天使の翼を模したカッターが生成されている。

 

「仮面ライダーデーゼル。悪魔の力と天使の力、両方を持ってデーゼル」

 

 アニー改めてデーゼルは両手に握った2つの銃を構える。それを見てハンニャ怪異の1人が叫びながら向かってくる。デーゼルは左手に持ったエンジェルガンライザーでそれを受け止め、右手に持ったデビルガンライザーを相手の腹に推し当ててトリガーを引いた。銃口からエネルギー弾が発射され、ハンニャ怪異の腹部に穴が開いて爆発を起こす。

 

「グアエッ!!」

 

 ハンニャ怪異の断末魔が上がる。デーゼルはすかさず銃口を別のハンニャ怪異に向けて発砲した。その直後、息を潜んでいた他のハンニャ怪異が彼女の影から飛び出した。

 

「この目は飾りではありません」

 

 デーゼルは左腕のカッターでハンニャ怪異を真っ二つにする。そして振り向きざまに2体のハンニャ怪異をデビルガンライザーで撃ち抜いた。

 

「2、4、6、8......少し面倒ですね」

 

 するとデーゼルはノゾミの元に行き彼女のコインケースを強引に奪い取った。

 

「少しだけ借りますよ」

 

 中から赤色のコインを取り出すと、デビルガンライザーに装填して引き金を引いた。

 

「怪異武装」

 

『強化契約! もたらす災厄! デーモンサーチ!』

 

 デーゼルの右目に多機能カメラレンズが装備される。レンズの力でハンニャ怪異たちにターゲットロックすると、デーゼルは2丁の銃を使って部屋が崩れかけるほどの弾幕を張った。

 煙が晴れると、瓦礫の下から1人のハンニャ怪異がふらつきながら立ち上がる。

 

「残りはあなただけのようですね」

 

「くっ......」

 

 デーゼルが銃口を向けたその時、突然天井が崩れ落ちて巨体の怪物が現れた。エプロンと中華帽を身にまとった豚の怪物、ブタ怪異がデーゼルの前に立ちふさがる。

 

「ブヒィッ!! 従業員を傷つけるのは許さーーん!!」

 

 その隙をつき、生き残りのハンニャ怪異は弾幕で開いた壁の穴をすり抜けていく。追いかけようとするが、ブタ怪異はデーゼルに飛びかかるとお玉と中華鍋を取り出して殴り付けた。

 

「よくもオイラ達の貴重な住みかを......お客さんは明日のコースの食材にしてやる!!」

 

 劣勢に追いやられるデーゼル。蚊帳の外にいたノゾミはそれを見て再びベルトを取り出すと、トゥルークコインを投げ入れてレバーを引いた。

 

「変身!」

 

『邪神解放! フングー! ムグルー! トゥルーク!』

 

 仮面ライダートゥルークに変身したノゾミは、ブタ怪異の背中目掛けて強烈な蹴りを放つ。しかしブタ怪異の厚い脂肪に吸収されると、身震いした衝撃で返り討ちにあってしまう。

 何とか着地したトゥルークはその後も打撃を加えるが、ブタ怪異の体には傷1つつかない。

 

「全然効かない!?」

 

「正攻法で駄目なら搦め手を使いなさい......馬鹿みたいに何度も殴らないで」

 

「すみません。それなら......これだ!」

 

 デーゼルの助言を受けて、トゥルークはコインを入れ換え邪神武装をした。

 

『ニュル・ゼロツー! ニュル・スピーカー!』

 

 トゥルークの両腕に付けられたスピーカーから超音波が流れると、ブタ怪異は耳元を押さえて力を弱めてしまう。デーゼルは至近距離からブタ怪異の腹に2つのガンライザーで攻撃し、続けて頭突きを食らわせて無理やり引き剥がした。

 

「上出来です。ここは私に任せて、あなたは逃げた怪異を追いなさい」

 

「分かりました! ここはお願いします」

 

 トゥルークはピシッと敬礼すると、駆けつけたマシンオボグルマーに乗り込んだ。するとデーゼルから先ほど使ったサーチコインに加え、お礼と称して豹が描かれたコインを渡した。

 エンジンを吹かせ走り去るトゥルークを見送ると、デーゼルは立ち上がったブタ怪異にデビルガンライザーを向けた。

 

 

 

 

 トゥルークはマシンオボグルマーのコインパーキング投入口にサーチコインを装填する。するとマシンの走る道に矢印で案内が表示され、ハンニャ怪異との距離がメートル単位で確認することができた。

 

「あの角を曲がれば!」

 

 トゥルークがT字路に差し掛かった時だった。突然前の塀が砕け散り、中から巨大な影が現れる。

 トゥルークの前に現れたのは10メートル級に巨大化したハンニャ怪異だった。店で見たチャイナドレス姿とは打って変わって、熊のように強靭な肉体に野獣の尻尾が生えている。面影は顔にある般若のお面にしか残されていなかった。

 トゥルークは慌てて急ブレーキをかけると、マシンに豹のコインを投入してみる。

 

『フラウロス!』

 

マシンのマフラーが向きを変えて巨大ハンニャ怪異を見ると、そこから火炎弾を何発も発射した。しかしあまり通用しなかったのか、怪異は彼女を掴むと地面に叩きつけた。必死にもがくトゥルークの頭を握りしめると、ゆっくりと力を加えていく。

 

「くっ......放せ!!」

 

「コロスッ!! シメコロス!!」

 

 トゥルークの仮面に小さなひびが入ると、やがてそれは大きな亀裂を生む。右目部分が砕かれると、額から血を流して苦しむノゾミの目が露わになった。

 仮面が崩れかけたその時、巨大ハンニャ怪異の首を何かがかっ切った。怪異は思わず手からトゥルークを放してしまい、落下したトゥルークは受け身を取って距離を取る。

 

「平気、やなさそうやな」

 

 トゥルークの危機を救ったのはデファンスだった。すぐさま彼が投擲したチュパカブライザーが右腕に戻り、相棒と共にトゥルークに右手を差し出す。

 

「ありがとうございます! 助かりました!」

 

「お、おう。これでまた貸しが出来たな」

 

『相棒、仲間同士手を取り合うのは当然の行為だ。見返りを求めるなど言語道断──』

 

「うるさいな、せっかくええ雰囲気やったのにお前は~」

 

 デファンスはチュパカブライザーをコツンと叩くと、黒いコインを取り出して装填する。トゥルークもそれを見て同じくコインを使用した。

 

『モスマン!』

 

『チェーンソー!』

 

 トゥルークはレバーを引き、デファンスはライザーのグリップにあるボタンを押して怪異の力を解放した。

 

「邪神武装!」

 

「怪異武装!」

 

 トゥルークの目の前に魔方陣が出現し、彼女の右腕に銀色の人魂が纏わり付く。人魂はチェーンソーに変化して彼女の武装となった。

 

『ニュル・ゼロスリー! ニュル・チェーンソー!』

 

 続いてデファンスの肩甲骨辺りの部分がモゾモゾとうごめきだすと、皮膚を突き破って大きな翼が生えた。

 

『テイク・ザ・ウェポン! デファンスウイング!』

 

 2人はそれぞれの武器を構えると、巨大ハンニャ怪異に向かって飛び立った。まずはトゥルークが怪異の脇腹目掛けて斬りかかる。しかし刃が届く前に怪異はとっさにそれを避けてしまう。

 がら空きになったトゥルークの守りに、怪異は大振りな回し蹴りを放った。トゥルークはすぐさま腕を交差させて防御しようとするが、風圧に耐えきれず大きく吹き飛ばされてしまった。

 

「うわぁ!?」

 

「ノゾミちゃん!」

 

 デファンスはトゥルークを抱き抱えて受け止めると、下に降ろして再び飛び立った。月光を浴びて輝く翼をはためかせ天に昇ると、急降下して巨大ハンニャ怪異の顔に爪を突き立てる。しかし怪異は首を傾けるだけでそれを交わすと、デファンスは頭から地面に墜落してしまった。

 

「痛っ......つー、バリ痛いって!」

 

『相棒、怪我はないか!?』

 

「あるけど平気。さてと......そこや!」

 

 デファンスは振り向き様に上を向いてニヤリと笑うと、翼を収納してライザーからレーザー光線を撃った。それを華麗に避けて怒りの矛先をデファンスに向けるが、直後怪異の上空からマシンオボグルマーが落ちて頭部に命中した。

 

「狙い通りや!」

 

「よくやった正義!」

 

 マシンの運転手はジンリューだった。彼はマシンから降りると、ハリオンナコインを使ってニードルガンを装備する。

 

「長かった謹慎処分......その鬱憤、ここで晴らす」

 

 鋭い針が銃口から4発発射されると、それぞれ2本ずつ巨大ハンニャ怪異の眼に命中した。失明とまではいかないものの、目を押さえて苦しむ怪異に大きな隙が生まれた。

 

「涼宮流斬撃波!」

 

『クローバースト!!』

 

 三日月型の衝撃波がチュパカブライザーから放たれ、目を押さえていた怪異の左腕を切り落とす。続けて駆け出したトゥルークがエネルギーを溜め続けたチェーンソーを怪異の右足を切り落とし、巨大ハンニャ怪異は地面に突っ伏す形になった。

 

「皆さん、とどめを決めちゃいましょう!」

 

 トゥルークとジンリューは元のコインに戻し、デファンスはまたモスマンコインを使って翼を生やした。それぞれの必殺技を発動する動作を行うと、右足にエネルギーが集束していく。

 

「龍神破天撃!」

 

涼宮流蹴撃波(すずみやりゅうしゅうげきは)!」

 

「えっ、じゃあ私は......キックエンド!」

 

 初めに駆け出したジンリューは青龍のオーラをその身に纏うと、ハンニャ怪異の顔目掛けて低空キックを食らわせる。

 

『セイリュウ! カイイバースト!』

 

 続けてデファンスはチュパカブライザーを投げ捨てると、トゥルークと共に空に飛び立った。2人は大きな的である怪異の背中に堕天し、強烈な必殺キックを放つ。

 

『イア! イア! ライダーパワー!』

 

『カイイ・アシスト!』

 

 3人の必殺技が炸裂し、巨大ハンニャ怪異は爆散して跡形もなく消滅した。

 

「よっしゃい、決まったぃ!!」

 

「ああ......やったな」

 

「やりましたね皆さん!!」

 

 3人がその場に集まるとトゥルークは右手を上げる。きょとんとしていた2人だったが、仮面越しの笑みに気づくとそれぞれハイタッチを交わした。

 

『なっ、私も中々活躍したぞ! 私も混ぜてくれ!』

 

 困惑するチュパカブライザーを拾って額にタッチしていくと、変身を解いた彼女らはいつの間にか揃っていたマシンに搭乗して丸鏡に突入するのだった。

 

 

 

 

「はあっ!」

 

 デーゼルは倒れていたブタ怪異を蹴り飛ばして壁に叩きつける。満身創痍のブタ怪異に2丁の銃を掲げると、首をかしげながらブタ怪異に問いかけた。

 

「悪魔の力で地獄に送られるか、天使の力で塵1つ残さず消え去るか。どっちがいいですか?」

 

「ヒィッ!? オ、オイラ達は親分の言う通り慎ましやかに生きて──」

 

「その言いつけが駄目なんだよ。時間切れ」

 

 デーゼルはそれぞれのガンライザーのスライドを勢いよく後方に操作してとどめの一撃を繰り出そうとした。

 

『『ラストバレット!』』

 

 ハープの音色とエレキギターの音色が組み合わさり周囲に雑音が響き渡る中、デーゼルの背中からエネルギーが溢れだしてそれぞれの銃口に集まっていく。ブタ怪異は壁をよじ登って避けようと必死になるが、膝から血が流れて動く度に激痛が走り悶絶してしまう。

 

「ダフルファイナルバスター」

 

『ダークショット!』

 

『シャインショット!』

 

 黒と白、2つの色の光線が二重螺旋状に組み合わさってブタ怪異に向かっていく。見事に光線が土手っ腹に直撃すると、ブタ怪異は青い炎を上げて意識を失う。そのまま怪異の体は灰となり、そして静かに消滅した。

 

「全く、クソ愚かな豚ですこと」

 

「お前にだけは言われたくないだろうな......」

 

 呆れ果てるデーゼルの隣には、ワープしてバイクに背を預けている涼真がいた。

 

「まぁ、クソ真面目君が何のようです?」

 

「お前が逃がした怪異を倒した。その帰りだ」

 

 デーゼルはそれぞれのガンライザーのコインを抜き取ってスライドを引くと、変身を解除してその場を立ち去る。涼真もその後に続き、2人は何事もなかったかのように裏路地を並んで歩き出す。

 涼真はノゾミから預かっていたフラウロスコインをアニーに投げ返すと、アニーは物珍しげにコインをしまいながら言う。

 

「あらまあ。あげると言ったのに」

 

「お前1人でも出来た仕事だ。なのに何故、神戸ノゾミを連れていった?」

 

「あなたには関係ないことでしょう?」

 

「そうか......彼女の様子は少しマシになっていた」

 

「なら良かった......それより、先程から視線を感じるのですけど、何かご存じありませんこと?」

 

 2人が振り返ると、涼真たちを観察していた気配は既に消えていた。警戒していた2人だったが、アニーが財布を見つつ涼真を食事に誘ったのでその場でお流れとなった。

 しかし2人を観察していた人物は、建物の屋上に移動して好奇の目を視界から消えるまで向けていた。

 観察者の男は、右手にオオカミが描かれたコインを左手に装着したグローブに装填する。そして左の手の平に拳をぶつけると、怪異の力を自身に宿した。

 

『バイディング・ウルフマン』

 

 満月に照らされたその姿はまさに狼男そのものだった。上半身は緋色の体毛に包まれており、下半身はマネキンのように白く無機質な素体を露にしている。そして何より、左手に装着したグローブ『ロストマンチェンジャー』が目を引く。

 狼の力を持った怪異『ウルフマン』は静かに笑みを浮かべた。

 

「いいねぇ。面白くなってきたんじゃないの?」

 

 ウルフマンはノイズがかった声で嬉しさを表すと、夜の闇に溶け込むように姿を消した。

 

 

 

 

「うーん、おいしい~」

 

 時刻は夜の11時を回った頃、ノゾミは食堂で醤油ラーメンを堪能していた。麺を啜ってもスープを飲んでも幸せそうに笑顔になる彼女に、向かいに座っていた正義は積み上げられた丼を見比べて苦笑する。

 

「よく食えるな。もう6杯目やで?」

 

「べ、別にいいじゃないですか! 美味しいものはいくら食べても飽きないんです。それに今日は頑張りましたし」

 

「せやなー。やっぱ若いってええわ」

 

 正義は懐の崩れた煙草の箱から1本取り出そうとすると、すかさず机に置かれたチュパカブライザーから注意が入る。

 

『相棒、今日で10本目だぞ! いい加減に減煙しないか!』

 

「ええやん、俺も頑張ったんやし~」

 

『ダメだ! 食欲減退も煙草が原因の1つ、今すぐ仕舞え!』

 

「無理! これは俺の魂や!」

 

『人の魂というのは脳細胞が作り出した幻想──』

 

 正義とチュパカブライザーが言い合いになり、食事に集中していたノゾミはライザーを手に取ると遠くに向かって放り投げてしまった。

 

「あーうるさい! ちょっと黙っててください!」

 

『なああああ!? 何故私がこんな目にぃぃぃぃぃ!!』




怪異対策局 怪異アーカイブ
No.EX-01『サーチ』
開発部が作り上げた人工怪異第1号。
約400倍のズームが可能なサーモカメラと赤外線カメラを持ち、またロック機能により遠距離での攻撃をサポートすることが可能。
No.978『一つ目小僧』の協力により完成。
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