日本トレーニングセンター学園、通称トレセン学園は日本国内の至る所からから有望なウマ娘たちが門を叩く日本最高峰のウマ娘レースの選手育成機関である。
思春期のウマ娘たちが日夜競い合う、選手育成機関と教育機関を足し合わせたその学園は東京都府中市に存在する、全寮制にして2000人以上が在籍する中高一貫の巨大な専門校だ。
その日、トレセン学園に異色の経歴を持つトレーナーが入ってきた。
その者はとある官庁において国家公務員第一種試験に合格しキャリア官僚として歩いていくはずだったが、ウマ娘のレースに眼を焼かれてキャリア官僚の道をぶん投げて中央のトレーナーに職種変更した奇人である。
彼の名前を
そんな彼のお目々焼かれ具合に太鼓判を押しトレセン学園のトレーナーとして採用を決定したのは他でもない秋川やよい理事長である。
そんなやよい理事長の目の前には、翠緑の服と帽子を身に纏った自身の秘書と、一年前に採用し研修を終えていよいよスカウトを始めたばかりのはずのすばるトレーナーであった。
「担当ウマ娘の申請書です、御確認をお願いします」
その書類には、元官僚らしくきちっととした様式に従いウマ娘との担当契約書が書かれていた。
様式の上方には担当するトレーナーの本名が書かれ、中央には担当するウマ娘の名がトレーナーの本名に書かれている名前の字とは一段綺麗な直筆で書かれていた。
様式に書かれていたウマ娘の名は・・・・・・
これは、B70さんの走りに目を焼かれたとある平凡な*1トレーナーの話である。
唐突ながら私は転生者だ。死因は分からないが、最後の記憶がうまぴょい伝説をイヤホンで聞きながら歩いているところで止まっているので、おおよそ後ろから車にはねられたか刺されたかしたんだろう。
とまぁそんな事より、せっかくの転生なのだから好き勝手やっていこうと思ったのはいつの日だったか。そんな決意も、親の圧力で薄れ地元の国立大になんとか合格し国家公務員試験総合職にとりあえず合格、口下手な口を何とか動かしとある官庁に入庁した。
新入公務員としての研修を終え。様々な地方局に転勤しながら業務を必死に覚えていた時の事だった。
地方……北海道は札幌に出張した時の事である。札幌の街を先輩(一般職で入庁したが一応上司)と歩いていた時の事。どこかの画面で見たことがあるようなウマのミミとしっぽを付けた女性が街の中を歩いているのを見かけたのだ。
その時、忘れかけていた記憶が疼いた。
そして確信した。ここは『ウマ娘プリティーダービー』の世界なのだ……と。
思い返してみれば、スポーツ欄に有馬記念とでかでかと会った見出しの近くにウマ娘っぽい写真がモノクロで乗ってあった気がしたが、気のせいだと思い込んでいた。私もウマ娘のアプリ版はそれなりにやりこんでおり、何とか評価A+まではこぎつけた中堅ユーザーだった。
そんな私の思い入れのあるキャラはサイレンススズカである。何しろ最初に引いたキャラガチャで一番最初に来た★3キャラであり、その事もあってか何かと機会があれば『サイレンススズカ』マイル・中距離最強論まで唱えていたほどである。
サイレンススズカほどではないにしても、ウマ娘のキャラには引かれていたし一度レースを見て見ようか。そう思い立ったが吉日、地方だが札幌レース場においてop戦があった為見に行ってみた。
感動した。まさかアプリ版で見ていた光景が自身の目で直接見れるとは思いもしなかった。その日から自身の目に色が宿った気がした。
はやくも私はウマ娘のレース関連の仕事を調べ始めた。ウマ娘専用のスポーツ用品を売る会社からレース場関係の仕事まで調べた。そして、一つの職にたどり着いた。
記憶にもあるウマ娘世界の独自の職種。それが、『トレーナー』であった。
ウマ娘のトレーニングの監督を行い、成長させメンタルケアなども行いウマ娘がレースを行う上で必要なサポートを全面的に行う職種である。
調べてみたところ、慢性的な人手不足にあり、特に中央といわれるトレセン学園所属のトレーナーはウマ娘の人数に比して圧倒的に少ない。福利厚生は少なくとも国家公務員より良い条件で募集されていた。
募集必須事項に中央トレーナーライセンスという物が必須となっていたが。
これは三大国家試験*2と同程度かそれ以上に難関とされる資格であり、極めて合格率も低いとされている。聞いた話によると合格率がおおよそ5~10%ほどらしい。
だが、私にはそんなことは関係なかった。ウマ娘トレーナーの夜学を何とか見つけ出し一発で入校、キャリアの仕事をつづけながら必死に勉強オブ勉強をつづけた。こんなに必死に勉強したのは大学受験くらいである。
数年後。中央トレーナーライセンスを有休をとりながらも取得し、中央トレセン学園のトレーナーとして社会人採用された。上司にかれこれあって辞めると言い辞表を提出した。
辞表を提出し次の月には研修が始まった。ベテラントレーナにトレーナーとはどういう事をしていくのかを学んでいく時期である。
私がお世話になったのはチームリギルの女性トレーナーだった。彼女のもとでおよそ一か月ほど研修を受け、サブトレーナーとしてトレーナー業を徐々に慣れさせていただいた。また、サブトレーナーとして経験を積んでいた時、自分の転生特典のような物に気が付いた。
ウマ娘の現在のステータスが大まかに分かるのである。おおよその脚質特性、体力、そして現在のメインステータスのような数字。何もかもがアプリ版そっくりのように脳裏に浮かんできた。
ちなみにその特典的な物は三女神に呼びかけられていると感じて三女神の元に行った直後の事である。
正直急な事なのでびっくりしたが、意識的に相当に長い時間そのウマ娘を眺めていないとステータス的なのは見えない為、自身が担当するウマ娘以外は極力覗かないようにしていた。
なんか個人情報を盗み見ているような気がしたからである。だが、自身の愛バならまぁ担当だし、ケガや適切でないトレーニングをさせるつもりは毛頭ない。なら使えるものは何でも使おう。
そして、彼女と出会った。彼女と出会ったのは3月、新入生が入学する直前の事である。
学園の中で一悶着あったようで自身に所用を言い渡され、その帰りで歩いていた時の事。
ものすごいスピードで公道を走っていったウマ娘を見た。緑のイヤーカバーをつけ、鹿毛で……ともなれば一人しか思い浮かばなかった。
サイレンススズカ。異次元の逃亡者と呼ばれ史実では天皇賞秋出走時に骨折安楽タヒ処置がとられた馬を元ネタとしたウマ娘であり、そして。アプリ版で最も思い入れのあるキャラだった。
それが分かった瞬間彼女を思わず追いかけた。後から考えると無謀なことをしたというか、なぜあんなことができたのか分からないが。
あふれ出る衝動に身を任せ湧き上がる根性で彼女に追いすがり何とか捕まえた*3
それで、何やら驚愕したようなウマ娘の顔を見ながら、トレーナーバッチを掲げて必死にスカウトしていた……らしい。
正直覚えていないのだ、誠に済まない。
だが、自分のぽんぽんがペインな最中で駆けた言葉のどれかが彼女の琴線に触れたらしい。
其の後で行われた模擬レースで彼女は見事な大逃げをかました。
其の後に2度目のスカウトを実施し、何とかスカウトにこぎつけたのである。