進路。受験。面接練習。自己PR作文提出。学校内では、そんな言葉が満ち満ちている。
多くの中3たちは、これらの言葉に追われ、残り短い中学生活を終えるのだろう。それはきっと、私も同じだ。
・・・友人や教師たちと、たいして面白くもない進路の話をして、帰宅。その後塾に行き、帰ってきて予習と復習。それが私・祠堂圭の日常であり、これは中3としての生活が終わるまで、ずっと続くのだ。昨日と今日がそうだったように、明日もまた、今日とよく似た代り映えのない一日がはじまる。・・・はじまるのだと、そう思っていた。
「・・・あっ・・・。」
学校からの帰宅路にて、いつもと違う人物とすれ違う。・・・綺麗なシャンパンゴールドの髪が、視界に飛び込んでくる。その髪の持ち主である彼女は、私の事など気づいていないかのように缶コーヒーを飲んでいた。・・・そんな彼女の青い瞳には、ちらっと寂しさが見えたような気がした。
―――理屈とか理論とかタイミングとか、そういうの関係ない。・・・可愛い。
大学生くらい?いやもっと年上・・・?もしそうだとしても、今の私に、話しかける以外の選択肢はない。
「あっ・・・あのっ!!」
そう言って彼女の腕をがしっとつかむ。・・・私の目の前からいなくならないように。
「私、圭っ・・・祠堂圭って言いますっ!!」
私はそう言って、まっすぐ彼女の瞳を見つめる。・・・彼女は目の前の状況を信じられないように見えた。
その瞬間、はっと冷静になる。・・・いや待て、もう引き返せない。・・・こうなりゃやけくそというものだ。
「私、ひとめぼれしました!!
確かに、私はあなたのことを何も知らない・・・知らない、けどっ!!」
彼女の腕をもっと強くつかむ。・・・自分でもこんなことができるんだなと、空気を読まずにそう思った。
「私と、恋人になってくださいっ!!」
・・・一瞬、言ってから後悔した。強引じゃなかったかなとか、初対面のひとにいきなりこう言われたらどう思うかなとか。
・・・引いてたりしないだろうか。たぶんしてるよなぁ・・・。
そんなネガティブなことを思ったその直後、私の体になにか暖かい感触が触れる。
・・・目の前では、シャンパンゴールドの髪が揺れている。
「ふぁっ・・・。」
間違いない。私・・・抱きしめられてる?・・・彼女に?
「・・・ありがと。」
彼女はそう言って、にこっと笑った。・・・そのブルーの瞳に、先ほどまでの寂しさは無いように見えた。
「いいよ。・・・恋人、なってあげる。」
・・・今度は、私が目の前の状況を信じられなくなる番だった。・・・でも、私が言うべき返答は、たったひとつだけだ。
「はいっ!!」