―――振り切る、ということは難しい事である。
「迷走がわたしの、ゴールだ・・・
・・・あぁ・・・。」
ダメだ・・・振り切れない。
(過去への介入が非常によろしくないものだということはわかるんだけど・・・でも、圭を助けるチャンスを泣く泣く見送るわけにも・・・)
ふたつの両立が不可能である以上、どちらか片方へと振り切れる必要がある・・・のだが、見ての通り、いまだ迷走中なのである。
(あぁダメだダメだ、こうやって永遠と平行線上をたどるようなことしてたら・・・時間が足りなくなっちゃう・・・)
タイムアウトだ・・・なんてことになりかねない。・・・それがわたしの、絶望までのタイムだ・・・
「う~むむむ・・・安定択を取るなら前者の方がいい気はするんだけど、それだと圭を見殺しにしたのと同じだし・・・」
手を伸ばせば助けられる命が、すぐそこにあったはずなのに。あの未来を守るために、わたしは・・・手を伸ばすのを諦めるのか?
(・・・あぁ、そうか・・・。
【過去】に、固執してるのか・・・)
圭と一緒にいたのも、わたしが圭を殺したのも、過去。わたしが未来未来言ってるあの未来も、・・・過去。
過去というのは既に過ぎ去ったもの。ただ記憶の中に存在しているだけの・・・あやふやな存在。自分に都合の悪い部分は消えていい部分だけが残って、そうやって【過去】は【思い出】を形成していく。
わたしは・・・そんな【思い出】に、浸りたいだけなのかもしれない。
祠堂圭は過去。思い出の中に置き去りにした器物。CD好きの彼女は、もう新しい未来を紡ごうとはしない。
完全に壊れたCDレコーダーのように、もう、なにも。
「―――最近さ~、美紀さん全然来ないよね~。」
「う~ん・・・ほら、春は出会いと別れの季節っていうし、色々ばたばたしてるんじゃないかな?」
「それだけならいいんだけど・・・」
私はそう言うと、美紀の持っていたポッキーを1本拝借して口にポイっと放り込む。・・・春休みももう半分が過ぎ、そろそろ本格的に高校に向けて準備をはじめなければならない時期に入ってきてしまった。
「高校、うまくやれるかなぁ・・・CD好きっていうの隠したほうがいいかな?ほら、変な目で見られるかもしれないし・・・」
「まぁ高校ってそういうイメージあるよね・・・。排他的って言うか、周りと違うことしてると浮くっていうか・・・わたしも学校では本読まないようにしようかな・・・」
「クラスに・・・部活、委員会、そんで成績と大学受験・・・あぁダメだ考えることが多すぎる・・・」
「後ろふたつに関しては意識し始めるの早すぎやしない?」
まぁまだ高校1年生にも満たないニートもどきがもう大学受験の話をし始めるのは、さすがに早いような気がしなくもない。・・・世の中の塾はだいたいそんな感じだろうけど。
「まず第一の懸念点はクラスだね~・・・あぁ・・・いじめとかカーストとかがないクラスがいいなぁ・・・」
「あと陽キャ陰キャで明確にラインが引かれてないクラスも」
「それいい、貰った」
クラスのメンバーが誰になるかというのは、学生にとってはかなり大きな問題な訳で。最初のクラスがどうなるのかによって、その1年、いや、高校生活3年間のすべてが決まると言っても過言ではない。
「・・・まぁ今からクラスがうんぬん言ってる暇があったら春休みの課題をしろと、わたしは思うんですけどね・・・」
「そうでした・・・」
春休みくらい遊ばせてくれよ高校。なんで課題なんて出すんだよ・・・。
「・・・高校、かぁ~・・・」
今まで喉の思い出よりも濃い、すごい体験が出来たらいいな、なんて。