過去と未来、CDに記録した想い。   作:アメざいく

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#16 過去と未来、表裏一体?

「未来に、帰ることにした」

 

「わたし」がそう言うと、この時代の『わたし』はまるで何か信じられないものを見たかのように固まるのだ。目を見開いて、なにかに衝撃を受けたような顔で。

 

そしてそれからしばらくして事態の把握を完了すると、震えたような声でこう言うのだ。

 

「・・・正気ですか?」

「逆に正気じゃないと思った?」

 

どこか放心したかのような・・・または不安が奥で揺れているような瞳で、キッとこちらを睨みつけてくる。・・・『本気で言ってるのか?』なんて詰問が、今にも飛んできそうだった。

 

「・・・圭は、どうするんですか」

「もちろんこの時代に置いていくよ。わたしがもともといた時代に連れていくわけにもいかないからね~。

 

 

・・・あっ、そうそう、この事は圭には言わないでほしいんだ~。ほら、わたしは突然失踪したってことにして、いい感じに口裏合わせを―――」

「ふざけないでください!!」

 

ぴりっと張り詰めた空気が、『わたし』のそんな怒号に揺れる。

 

「なんで・・・なんであなたはこんな酷いことをぬけぬけと言えるんですか!!

あの子は・・・圭は本当に、あなたのことが好きで・・・好きなのにッ・・・!!」

 

・・・うん、知ってる。知ってるけども、さ。

 

「う~ん・・・心境の変化?ってやつかな?『祠堂圭』は、わたしの中では完全に過去のものと化したってわけ。

 

 

・・・永遠と過去にとらわれるほど、わたしは愚かな人間じゃないでしょ?」

「っ・・・。

 

 

 

 

・・・あなたは過去過去言うけども・・・わたしや圭にとっては『今』で・・・『未来』なんですよ!?第一あなたはいったいその『未来』とやらで何を見たんですか!?

圭は過去の存在?・・・ふざけないでください!!あんたはいったい何ッ・・・」

「祠堂圭は死んだ」

 

スタッカート。音符の下の黒点。短くはっきりと、ただ理由だけを告げる。

 

「なっ・・・」

「つまりはそういうこと。・・・死人に構っている暇はないの」

 

『わたし』はいまだ、空気の糸をぴんと張ったまま動かそうとしない。ぴんと張り過ぎた糸はそのうち切れる。・・・言いたいことだけ言って、糸が切れないうちにお暇としようか。

 

「・・・ま、そういうわけだから、さ。わたしの代わりに・・・わたしの代わり?・・・う~ん、うまく形容できないけど、まぁ圭をよろしくね?・・・わたしのいた未来との整合性が取れる程度に」

「ふざけないでください!!」

 

また、空気が震える。どうも冬の空気っていうのは、音をよく通すらしい。特に、『わたし』のこういう金切り声を。

 

「わたしはあなたが・・・わたしがそんなことを言うなんて信じない・・・。

これ以上そんなふざけたことを言うんなら・・・あんたはもうわたしじゃない!!」

 

・・・さぁ、それはどうかな?

 

「きっとあなただって、今のわたしと同じ状況に置かれた時にはそう選択するさ。だって・・・

わたしはあなたなんだから」

 

餞別代りの缶コーヒーを投げ渡して、『わたし』に背を向けて歩き出す。

 

「あんたは!!なにもわかってないんです・・・!!」

 

『わたし』のそんな声が、わたしの視界外から飛んでくる。・・・何もわかってない、ね。

 

・・・なにもわかってないのは、そっちだというのに。

 

 

 

―――さようなら、過去(けい)

 

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