・・・ふと、窓の外を見た。
公園では、小学生くらいだと思われる少年たちがサッカーで盛り上がっている。そこには【あいつら】の姿も、荒廃していた世界のひとかけらも確認できない。・・・当たり前か。わたしがもともといた時代から、数年も前なんだから。
「・・・間違いなく、あの変な鏡のせい・・・。」
わたしの住んでいる町から、電車を乗り換え小1時間。あの鏡の事を調べるため、わたしはかなり大きめの図書館へやってきていた。・・・ちなみに5階建てらしい。びっくりだったほんとに。
「・・・でも、特にめぼしい情報はなしか・・・。」
第一科学的根拠や現実味が重要視される今の時代に、【過去へさかのぼる力を持ったなにか】なんて非科学的なものが本にしっかり記述されてる方がおかしいというものだ。
「・・・あの骨董屋を捕まえて問い詰めるか・・・?
いや、でも大した情報は得られなそう・・・」
そもそもどこにいるのかも謎だし。
持ってきていた本をすべて本棚に返し終わると、わたしはなんとなくフロア内をうろうろする。・・・ここでは収穫は見込めないだろう。圭の好きそうな小説でも借りて帰るか。
そんな諦めムードを漂わせていると、ふと、一冊の本が手に留まる。
「・・・うん?」
・・・それは、かつてダムに沈む予定だった村に伝わる伝承をまとめたものだった。・・・おそらく、村がダムに沈んで消滅する前に、【本】という形で未来まで残しておきたかったのだろう。
その本をテーブルに運んで、とりあえずページを開く。・・・その村の神様がどうたらこうたらと書かれたページをぱらぱらとめくっていると、一枚の写真が目に留まった。
「・・・これって・・・」
神社の中に大事に保管されていた、その神とやらの【御神体】らしい3つの物体。いずれもターコイズの宝石を用いた装飾が入っており、当時では多分珍しい方なんだろうカラー写真でその姿が捕らえられていた。その中のひとつが・・・
「これ、あの鏡にそっくり・・・?」
細部の装飾やディティールなど細かい部分がいくらか違っているが、ぱっと見の印象は完全に同じである。・・・複製品か、それとも経年劣化か・・・。
ページを閉じ、その本を抱えて貸出カウンターへと向かう。・・・あとでゆっくり読もう。
貸し出し手続きを済ませ、図書館を出る。・・・寒っ。
(・・・図書館の暖房ききすぎてたからすっかり忘れてたけど、今日の最高気温一桁じゃなかったっけ・・・)
吐く息が白い。公園の時計塔の盤面を見上げる。圭との待ち合わせの時間まで、残りおよそ2時間半。・・・結構ぎりぎりになっちゃったな。まぁ大丈夫だろう・・・きっと。
(お泊り会って、なに準備すればいんだろ・・・部屋に掃除機かけて、暖房付けて・・・お菓子とか用意しといたほうがいいかな・・・。)
そんなことを思いつつ、わたしは家路を急いだ。