机の上に置いたお菓子をついばむ。時折雑談をしつつ、私は問題集を解き進め、美紀さんは図書館で借りてきたのであろう難しそうな本を読み進める。
・・・今夜は美紀さん家でのお泊り会なのだが、ぶっちゃけやってることは前の勉強会と同じである。再放送とか言うなよ。
(・・・4√5÷2ってどう計算するんだっけ・・・やばいど忘れした・・・。)
完全に集中力が切れてきたようだ。気分転換にCDでも聞こうとポーチに手を伸ばしたが、あいにく中にCDプレイヤーの姿はなかった。・・・家に置いてきたんだっけか。使わないと思ったから。
(4√5・・・4√5だからな・・・。うわぁ思い出せない・・・。)
そんなことを思っていると、なにやらアラームのようなものが鳴る。
「・・・あっ、お風呂湧いたみたいだね」
「だったら、私待ってますから、先入って・・・」
「え~?・・・一緒に入らないの?」
「え?」
「・・・?」
「――――っ!?」
あやうく手に持っていたシャーペンを落としそうになる。・・・危ない危ない、これ友達から貰ったやつなんだよな。まぁ小学校の頃に転校していった友達で、今は全然連絡とってないけど・・・。
(・・・まぁ転校ってそういうものだよね・・・)
きっとそうに違いない、うん。
「・・・・・。」
なんだろう。何が起こってるんだろう。ただひとつだけ理解できることがあるとすれば、ここが美紀さんの家で、美紀さんと一緒の湯船に私は浸かっているという事だけだった。
(・・・でも、なんかお風呂って結構リラックスするよね・・・気分転換にはちょうどよかったのかも・・・。
・・・ってゆか、っていうかさ、)
視線を感じて振り返る。・・・美紀さんがじっとこちらを見ていた。ナズェミテルンディス!!
「なんで見てるんですかっ!?」
「え~?・・・別にみてもよくない?減るものじゃないし。」
「私のプライドとかが減ります!!」
口ではそう反論しつつも、心なしかこの状況を喜んでいる自分がいる。・・・不思議だ。
「ふ~ん・・・じゃぁいいや・・・。」
美紀さんはそう言うと、別に残念がる様子もなくふいっと目を背けてしまった。あっちょっ・・・それは・・・
そんな状況に我慢できなくなって、彼女の腕を引っ張る。・・・何も言わない。それはプライドの高い私の、暗黙の返事みたいなものだ。
彼女もそれを読み取ったのか、再び私に視線を戻す。
「美紀さんになら、別に・・・見られても、いい・・・」
「・・・それはどうも。」
待ってましたと言わんばかりに、彼女はそう言って悪戯っ子のように笑う。・・・まてよ、さてはこのひと、最初からこうなることをわかっていたのか・・・?
(このひと・・・裏切ったな!!)
別に裏切りではない。
「・・・ところで、なんでそんなにじっと見るんですか?」
「え?
・・・いや~、なんか、ちっちゃくなったな~って。」
・・・はぁっ!?
「なんですと!?」
「え?・・・あっ!!いやいや、そういう事じゃないっ!!」
「ま~、お風呂あがったら言い訳はたくさん聞きます~。」
「いや~、ほんとに違うんだって・・・」
・・・まぁ彼女の事だ。本当に違うんだろうけど。せっかくの雰囲気を口喧嘩(的な何か)で壊してしまったことに、心の中で軽く詫びる。
(・・・銭湯で戦闘、なんつって・・・。)
・・・自分で頭の中に思い浮かべときながら寒い。お風呂に浸かってるはずなのに。