夢のサイレンススズカ産駒 ウマ娘世界でターフを駆ける。 作:うどんそば
日本ダービー。
未だに根強い人気を誇り、日本最高峰のレースとしてこのレースを挙げる人も少なくない。
このレースで一番人気を集めるのは、ここまで無敗の、クワイエットゴア……つまり、私だ。
これは自惚れなどではなく確かなことなのだ。
それだけ私が人気があることは流石に気づいている。さらに、いつの間にやら、人というのは無敗の三冠をみたがるものだ。そのような心理に私のこれまで無敗という経歴は合致した。実際こうやって考え事ををしている前日の投票状況を見る限りは私が圧倒的な一番人気に支持されている。
ウマッターを開くと、多くの人から応援のメッセージをいただいた。
私はスペースを開き、マイクを制限して、ある程度の人数が集まっているところで、
「明日、勝ってきます。」
とだけいって、切った。
別に目立ちたいからではない。
だからといって、緊張しているわけでもない。
……ただ、怖いのだ。私らしくもなく。
一生に一度のクラシックの祭典。その中でも一番権威あるレース。
そんなレースに、あれだけの人数に応援されて、あれだけの人から期待をされて、私はとても嬉しい気分になったのはもちろんのこと、一抹の不安を覚えた。
つまり、今の私はただ走りたいから走っているのではなく、みんなの思いを背負って走っているのだ。
ファンのみんな、トレーナーさん、スズカさん、学園のみんな……そして
全ては私の活力になり、枷となった。
「走るのが……楽しくない?」
数日前に気づいた違和感、これは私からすれば致命的なものである。
ああ……ダメだ。このままでは、心が折れてしまう。
だから、私は宣言することで逃げられなくしたのだ。
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当日、私はいつもの控室で鏡を見つめた。そこにはいつもの私が映っている。
「どうしたの?ゴアちゃん。体調がすぐれないみたいだけど……」
「大丈夫です。」
ウマッターをみれば、たくさんの声が。後押しされている。
「何かあったらすぐにいって。何かあってからじゃ遅いから……」
遠い目をしていうスズカさんに、ひどく胸を痛めた。
何も言えずにいると、おいで、と言われて、誘われるようにスズカさんの胸に収まる。
「何より大切なのはゴアちゃんよ。」
抱きしめられ、思わず涙がこぼれそうになる。
それでも、
「大丈夫です。必ず無事で戻ってきますから。」
私がそういうと、そっとスズカさんは私にカチューシャをつけて、ピンを付け、そして、頭を撫でた。
「頑張ってね。」
そう言って微笑んだ。
コンコン。
トレーナーさんかな?と
「いいよ。」
と返すと、
「いえ、そろそろ始まりますので」
と言われたので、びっくりした。急用だったのだろうか、トレーナーが向かいに来ないのは久しぶりのことだった。
「まあいいか。」
私は地下バ道へ向かった。驚くくらい落ち着いていたと思う。
「きたわね!今日こそは私が……っ!」
キングちゃんはいつもと明らかに違う私の様子にびっくりしている様子だった。
「ああ、頑張ろうね。」
驚くほど落ち着いてはいる。しかし激しく湧き上がる感情に闘志を隠すことはできていない。
「あなたも……?」
と、一つキングちゃんがつぶやくと、
「私も、頑張りますから。」
こちらに歩み寄り、それだけいうスペちゃん。
その背中には今までとは考えられない気迫があった。
体に圧がかかってくる。スペちゃんかと思って警戒していると、
「エルを忘れてもらっちゃ困りまーす。」
現れたのはエルちゃん。間違いなくこの圧の発生源だ。
「はじめてのみんなとの戦い、楽しみにしてたデース!」
かなり明るくいうが、私に強い圧をかけている。
遠くを見つめ、ただただ集中するスカイちゃんが遠くに見える。
なるほど、楽しくなってきた。
私は笑みを浮かべ、
「私は負ける気なんてないよ?」
とだけいって、レース場へ向かった。
彼女たちの体の仕上がりはかなりすごいものがあった。特にスペちゃんはとてつもないほどの減量を経たことが一目でわかるほどである。
返しウマの後、スカイちゃんからも宣戦布告されたが、良くも悪くも冷静すぎた。
ゲート入りになる。
エルちゃんの後に入った私は、エルちゃんの圧に覆われたゲートの圧をぶち壊して塗り替えた。
圧と言っても、エルちゃんのそれはあまりに矮小な存在だった。
さらに強大なものによって簡単に塗り替えられてしまうほどには。
ガタンとゲートが開き、一番に飛び出す。はじめて隣に立たれる。誰だ?
隣をみればキングちゃんが居り、ああ、これでキングちゃんは終わりだな。と、思った。それは彼女の強みを捨てたようなものである。
私はギアを何段階も上げて、誰も届かぬ場所へ向かった。
もう向正面。残念ながら何も聞こえてない。冷静なのか冷静ではないのかすらもわからない。さらにさらにギアを上げていく。
もう既に足音は消え去っており、幼少期の何もない原っぱが思い起こされる。
その瞬間瞬いた景色。大歓声の中佇む私、そしてそれをみる数多くの人。
トレーナーさんとスズカさんが私の手をひき、多くの観客が覆い尽くす道を一歩、また一歩進んだ。
現実に戻ってきた時、明らかに限界を超えた走りをしているということがわかった。
でも不思議と全く苦しくは無かった。なんなら清々しい気分だ。こんなに楽しいことはない。
走るのが……楽しい!
久しぶりの感覚に踏み締めるように、自分の速さの限界を広がるように、限界を超えた走りをしたとしても、それでもさらにさらに加速していく。
最終コーナーを回る。減速なんてしない。流れていきそうになる体を無理矢理内へ押し付けるように走る。体を倒しながら走るこの走り方はこの限界を超えたスピード故成立するものであると思う。
最終直線に入り、一歩踏み出した瞬間、あの原っぱが。私は先をいく3人を今まで以上に早く走り、私はいつもよりより早い地点で彼女たちを追い越した。もっと、もっと先へ!私だけの景色を!
「ゴーーールイン!!!!!圧倒的な大差です!歴史に残るレースを目の当たりにしました!!!」
という声が聞こえてきた瞬間、バギッと、なってはいけない音がした。とてつもないほどの痛みの中で、私は大歓声の中倒れていく。
意識を失う寸前、トレーナーが全速力でこちらに向かっているのがわかった。
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「んぁ……」
普通に朝起きたような感触がして起きたら足に何か刺さってた。
えぇ……と困惑しながら私をみてみると、スズカさんとトレーナーさんが私のベッドに突っ伏しながら寝ていた。
「んぁ……?………!!!ゴアちゃん!!」
私に気づいたスズカさんはこちらにぶっ飛んできて、思いっきり抱きつかれた。
「ゴア、起きたのか……?遅いぞ……」
涙目で見つめるトレーナーさん。そう。ここは病院なのだろう。
その後現れた医者によると、
私の足はウマ娘としての限界を超えたことで折れたらしい。原理は天皇賞のスズカさんで、あの時も、ウマ娘の種族としての速さの限界を超えたことでの骨折であったという。
今回何より幸運だったのは、骨折であったことで、あれだけのスピードで骨折で済んでいるのは奇跡に近いとのことだ。曰く、スズカさんどころか、世界にも、これからを含めたとしても出さないようなスピードであり、もっと粉々に砕けていた可能性もあったと聞いた。
そして、自らが選べば来年には復帰にすることができること。でも、それには苦労が伴うこと。
私はもちろん一択であった。
「私は復帰を目指します。」
まだ足には固定用の器具が刺さっているけれども、それでも、この脚が治って再び走れるなら、もちろん私はそちらを選ぶ。それは今ここにいるスズカさんも選んだことであったし、私にとっても他を考える余地のないものであった。
一応ここまでを第一章とさせていただきます。ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。
さて、この作品、これからの大まかな流れは決まっているものの、プロットができていない状況となっております。
そこで、ほぼ毎日投稿させていただいておりましたが、プロット制作の期間として、数日置かせていただきたいのです。
第一章、ありがとうございました。
追記:リアルの方で入試などがありまして、その勉強が佳境に入ってきているため、誠に勝手ながらこのシリーズ「休止せていただきます。申し訳ございません。
もちろん、入試が終わり次第書いていけたらと思っているので、それまでお待ちいただけたらと思います。