夢のサイレンススズカ産駒 ウマ娘世界でターフを駆ける。 作:うどんそば
それから数日、ひたすら走りまくった私はというと、
「2枠3番クワイエットゴア!」
「はぁーーーっ…楽しみ!」
選抜レースに出走していた。
あくまでトレーナーさん向けの説明用とは言え、実況がつくのは緊張するなぁ。
でも、めっちゃくちゃ楽しみ。ていうか、私たちの友達の中では私が一番最初だから勢いつけなくっちゃ。
ゲートに続々と出走者が入っていく。私はというと、どくどくと脈打つ血潮に思い巡らせ、自身がどれだけこのレースが楽しみであるのかを再確認した。
全員が入った。いつこれが開くのだろう。ゲートを見つめる。
ゲートがほんの少し開いたのとともに飛び出す。
さあ走ろう。私が楽しいと思うように。
「おおっと!3番!クワイエットゴア勢いよく飛び出して逃げの構えです!
特に大きな出遅れはありませんがやはり3番が他置き去りにするようなスタートを決めました。」
思ったよりも落ち着いているな。もっと自分のことだけしかわからなくなると思っていた。
さあ行こう。あと1000mと少し。
流れゆく芝、反射する光、そして自分だけの景色と言えるような、前に誰もいない視界。後ろの音は遥か後方。ドドドっと、地を鳴らすような音が近づいてくる気配はない。
足を前に出す。逆の足で蹴る。ただそれだけ。でも、これ以上楽しいことはない。実際、私の顔はこれ以上ないほど笑っているような気がする。
「クワイエットゴア先頭!クワイエットゴア先頭です!後続を大きく、およそ12〜3馬身くらいつけて、不敵な笑みで大逃げの体制!これは最後まで待つのでしょうか!?」
あれ?それだけしか離れてないの?…まあいいや。もっと、私だけの景色を。
さらに加速する。
「ここでクワイエットゴアさらに加速!かかっているのか!それとも戦略か?後方とはもう20馬身近くの差がついています!後続は間に合うのか!そして、これから二度目のカーブに入っていきます!」
ああ、少し落とさなきゃ。息を入れなきゃ苦しいもんね。それに、後ろも私の影くらい、踏みたいでしょ?
「おおっと!?ここで少しペースが下がりました!クワイエットゴア!ここで終わりか?後続が続々と殺到しますが…しかし!!どういっても!影すら踏めません!クワイエットゴア!ここでもう一度ペースを上げた!?」
…まあ簡単には踏ませてあげないけどね?
コーナーの出口が見えてくる。さあ、どうしたらより楽しい走りができるのかな?
「コーナーから出て、おおっとここで!先程ペースを再び上げた3番!クワイエットゴアがスパート!大逃げからのスパートです!」
さあ。足を前へ。前へ。前へ。もっと前へ。
もっと蹴れ。蹴れ。蹴れ。
視界の中に見える景色。太陽のもと続く道。原っぱ。その道を駆ける三人のウマ娘。こっちに来いと手を振っている。
「ははっ!」
そこの景色。私も見ていいの?
「…!?とてつもないスピードだ!後続集団を完全に突き放しにかかっている!追いつけない!誰も追いつけない!どこまで差を広げるのか!さらに突き放す!」
さあ!誰も見ることのできない景色へ!
後ろへ流れる景色!踏み込む芝の感触!肌を刺すとてつもないほどの空気抵抗!全てが私の大好きな!大好きな景色!
「3番クワイエットゴア!!大逃げ逃げ切ってゴールイン!圧倒的大差!後続を15馬身くらいちぎっての勝利です!」
「あーあ。もう終わっちゃった。…でも、楽しかったなぁ。」
私が余韻に浸っていると、
ガヤガヤ!
ドドドドド
「へ?」
レース中より、よっぽど大きい音が響き、
「なあ!クワイエットゴア!僕とクラシック三冠を目指そう!」
「私と目指しましょ?」
「俺が先に声かけただろ!」
「何ですって!」
とんでもないほどの人が来て、喧嘩し始めた。えぇ…?
「とりあえず!今日はまだトレーナーさんは決めませーん!」
私がそう呼びかけ続けて、1時間後くらいにやっとみんなが帰った。
「そんなことある?」
私の呟きは空に溶け、あとすら残りませんでした。
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その日の夜ご飯。
「ほんっとすごかった!」
「そんな!私はただ楽しく走っただけだよ?」
「でも、選抜レースのレコード大幅更新だよ!?」
「ふふっ!過度な謙遜は今日他に走った人は失礼になっちゃいますよ〜。」
「…そうだね。本当に勝ててよかった!」
明日選抜レースでまだ練習中ののスカイちゃんを除いたみんなに祝われていた。
「本当にめでたいわ!今度キングと並走する権利をあげるわ!」
「それ自分がしたいだけデース!」
「楽しいならいいよ?」
ははは…
他愛のない話を続けて、ご飯を食べ終わったくらいの時に、
「ちょっといいかしら?」
と、さんざんレースやテレビで聴き慣れた声が響いた。
「スズカさん!」
とスペちゃんが反応する。ということは…
私はゆっくり後ろを向いた。
スズカさんだ。目があった瞬間、
抱きしめられた。
へっ?
そのまま担がれて、どこかに連れて行かれた。
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「ここどこ?」
とりあえず聞いた。
スズカさんが後ろを指差すと、
めっちゃ疲れた顔したスズカさんのトレーナーさん。
「あー…君、今日大逃げで勝っただろ?」
「は、はい。」
「まあ大逃げってそうそういないわけだし、君もいいデータだと思って撮ってたわけよ。んで、さっきその映像を見せたんだが…」
「はあ。」
「スズカが、君の姿を見た瞬間走って誘拐してきた。」
ははっ!思わず笑っちゃう!…は?
スズカさんはなんかニッコニコで僕の後ろからハグしてる。
とにかく!私からしたらもっと大切なことがあるじゃん!
「スズカさん!サインください!」
「いいわ。ゴアちゃんだったかしら?」
スズカさんはサイン用にと、部屋にようにされていた色紙を取り出し、サラサラとサインを書いた。
そして、ゴアちゃんへ。と宛名も書いてくれた。
やばい。心臓爆発しそう。
「一生大切にします!」
「嬉しいわ。ゴアちゃん。でもゴアちゃんならいつでも大丈夫よ?。」
本当に嬉しい!会えただけでも嬉しいのに、サインにさらにこんなことまで言ってもらえるなんて!
その後、折角誘拐されたのに何もしないのは…と、いろいろ話している中、スズカさんがなぜ私を突然さらったのかの話になった。
スズカさんは、
「なんかわからないのだけれど連れて帰りたくなっちゃって…」
…よくわからない。どゆこと?
「あの…部屋に持って帰っていいですか?」
「ダメです。」
流石にダメです!!
ちなみにこのトレーナーさんと私の間の話題は…
「これもしかしてタ○・ホイヤーのカレラの、それもトゥールビヨン!?」
「はい!私が一番好きな時計なので!ずっと欲しかったんですよ〜!」
「いいな…俺はブライトリングのアビエイターなんだ!気に入ってるんだぜ?」
「いいですね!私もブライトリングと迷ったんですよね〜!」
意外なことに、時計や車といった趣味で話が盛り上がった。
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そろそろ大人同伴での門限が迫った頃、私は話しを切り上げて、帰ろうとした。しかしそこで、トレーナーさんから呼び止められました。
「ごほん!俺とスズカは君にこのチームに入ってほしいと思っている。俺なら君の大逃げを生かすことのできる指導ができる。どうする?君の返答次第では、明日からでもいい。」
「それって入部ってことですか?」
「ああ。決まったらすぐにきてもらって構わない。よく考えてから決めてもいい。俺たちはいつでもいるからな。」
気配りの言葉を下さるトレーナーさん。
「あの、明日から、お願いします。」
私の返答は決まっていた。もともと、スズカさんに憧れて入ったトレセン学園。もちろん、このトレーナーさんにできれば担当していただきたいと思っていた。
「え?今?本当に大丈夫?決めちゃったらもう変えられないよ?」
「ようこそゴアちゃん!」
違う反応を示すトレーナーさんとスズカさん。
「大体ここに入りたくてこの学園に入ったんです。」
トレーナーさんに署名を書いた入部届を渡します。
「そ、そうか。」
トレーナーさんはちょっと恥ずかしそうな声でそれを受け取り、ハンコを押し、
「よし、みんなで書類出しに行くぞ!」
と、理事長室へ、チーム設立に関する書類と、入部届を出しに行った。
理事長に、もう一度意思の確認をされ、
「はい!」
と、力強く肯定すると、
「うむ!了承!君たちの活躍を願っている!」
と、初めて入った時と同じように、激励の言葉を頂いた。
寮に帰ると、もう門限が過ぎていたので、ビクビクしながら帰ったのに、寮長は、トレーナーさんからチーム決定に際して時間がかかってしまった旨伝えられると、笑顔で祝福してくれた。
胸が温かくなると同時に、期待してくれる人に応えたいという気持ちが、私の中にできた。
【挿絵表示】
セルフファンアートです()ブーケちゃんが初めて見る商品に目を輝かせる様子。
絵を初めて描きましたが、難しいですね,。拙い絵申し訳ありません。
ブーケアンブーアちゃんの顔のイメージです。耳含めて、光の当たり具合によって、髪色の見え方が変わる感じ。まあ基本鹿毛です。
耳飾りに関しては、左耳にひまわりをかたどった耳飾りです。