夢のサイレンススズカ産駒 ウマ娘世界でターフを駆ける。 作:うどんそば
メイクデビューからしばらく経ち、そろそろ東スポ杯というところ。
実は、京成杯としていた目標レースは回避することになり、東スポ杯を目指すことになった。
あの五人は、メイクデビューをしっかりと勝ち上がり、さっそく始動し始めているのは、キングちゃんに、グラスちゃん、そして、ブーケちゃんである。
以外の三人は、ゆっくり仕上げて、来年に向けてしっかり準備してからデビューするので来年からになるとのことだ。
さて、私が京成杯を回避した理由だが…
「上がりがちょっとなぁ…」
短距離ではスピードが乗り切らず、いつもの走りができないのだ。
「しょうがない。目標レースは東スポだな。」
というわけでしょうがないことだ。
決してなんかグラスちゃんが怖かったからではない。
「私、ゴアちゃんと戦うために京成杯にしたんですよ〜?」
…はい。怖かったからです。でも、グラスちゃんに報告したら怒られちゃった。
ゴゴゴって聞こえるよ?怖いよ?
さて、東スポ杯について。
東スポ杯には、キングちゃんが出走します。というわけで報告しに行くと…
「えっ!?ゴアさんも出走するの?絶対に負けないわ!お互いに頑張りましょう!」
…いい子だなぁ。キングちゃん大好き。
あの栗毛の子とは違っ…「ゴアちゃーん?」
…あっ
「グラスさん!どうしたの?」
「この子、もらっていきますね〜」
圧がすごいよ?グラスちゃん。
グラスちゃんはとんでもないほどの青いオーラを纏って、とんでもない気迫で私を肩に一瞬で乗せた。
…えっ?私、グラスちゃんより背、高いんだけど?どうやって担いだ?
「え、ええ。大丈夫よ。」
困惑しつつ了承するキングちゃん。
…できれば止めてほしかったなあ。
…私はこの先を思い出すことができない。しかし、グラスちゃんの笑顔がしばらく怖くて見れなかった。とだけ残しておく。
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京成杯。私が出走する予定だったレース。
グラスちゃんは圧勝した。
後ろからの末脚はとてもジュニア級とは思えず、しっかりと足を残せているし、仕掛けどころもとても良い。グラスちゃんは中長距離向きだと思っていたから、全距離行けるとあり、素直に尊敬した。
「どうでしたか〜?」
学園に戻ってきたグラスちゃんが問う。
「普通によかったと思うけど…特に仕掛けどころとペース配分が。」
「そうではなく…あなただったら、私に勝てましたか?」
ああ。そういうこと?そんなの、
「勝てたに決まってるじゃん。」
と、簡単に答えると、グラスちゃんは満足そうに頷き、
「そうですか。では、クラシックでやりましょうね。」
笑っていたグラスちゃんの目には闘志が宿っており、否が応でも姿勢が正される。
私が、
「うん。」
と、一言返すと、それ以上はもう何も必要ない。と、微笑み手を合わせた。
「さあ。せっかく二人きりです。たまにはのんびり野点でも。」
私たちはそこから河川敷まで出向き、二人きりで小さなお茶会を開いた。
私たちはライバルであるが、その前に友人である。久々の友人と過ごすゆったりとした時間を楽しんだ。
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東スポ杯も目前に迫り、トレーニングもそれを意識したものになってきた子も多い中、私達は、いつもと全く同じトレーニングを延々と続けていた。
なぜなら、トレーニング強度は常に最高だし、私たち大逃げ差しというのは、正直レース展開覚えさせるだけ無駄とトレーナーさんも割り切っているのと、
私たちは、自らの持つ最強のスピードと、走りからスタミナを鍛えて、対応する距離を走って、どこで息入れるのか、スパートするのはどこがいいかを考えておけば、後ろを気にせず走り切ることができるからだ。
…走ることに関しては、正直これ以上ない仕上がりだ。これなら余力を残せる。と判断するくらいには。でも相手はキングちゃんを始め、ジュニア級でもう名をあげた猛者もいると聞く。
だから、少しの油断もできないのだ。だから走ることに注力した。
でも、そのせいで疎かになってしまっていた部分がある。
「私、ウイニングライブの振り付けわかんないや。」
「うそでしょ…?」
うん。ウイニングライブの振り付けがわからない。1着だけわかるとか、そういう感じでもなく、練習してなかった。うん。
入着さえしなかったとしても、バックダンサーとして踊らなければいけない。それなのにどのポジションの踊りも覚えていないんじゃまずい。
と、いうわけで、私はダンスがきっとできるだろう知り合いのところへ向かった。
「…と言うわけで!ファル子先輩!ダンス教えてください!」
「もちろん!後輩に教えるのが先輩の役目だもん!というわけで…今日からゴアちゃんも逃げシス加入ね!」
「へ?」
「嘘でしょ?」
「エラー発生…あまりの唐突な思考に脳が追いついていません。」
「だってー、ゴアちゃん、大逃げでしょ?私、この前のメイクデビュー見て、本当にすごいと思ったんだから!だ・か・ら!ウマドルとしてもやっていけるんじゃないかなって!」
「えぇ…?」
私が困惑の声を漏らすと、ファル子先輩は私の耳元で、魅力的ことを囁いた。
「逃げシスに入れば、恥ずかしがるスズカちゃんも、意外とノリノリのスズカちゃんも見られるよ?」
「入ります。」
「うそでしょ…?」
私は即答した。スズカさん可愛いもんね!仕方ないね!
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ウマドルとしての修行はめっちゃきつかった。
正直練習の何倍も。
でも、今や私も、
「ここでっ!ターン!」
「おおっ!いいね!ゴアちゃん!明日、デビューライブだからね!」
そう。正式デビューの日がやってきた。この逃げ切りシスターズの活動は、学園側から許可された立派な広報活動の一種だから、授業を抜けてライブ行かなければならないことも。
それが明日のデビュー。
何と、甲子園に行く学校みたいなノリで、クラスで応援に来てくれるらしい。嬉しい。
逃げシス自体がかなり人気のウマドルグループということで、大きい会場、詳しく言えば、東京レース場のステージでやるとのこと。ウイニングライブより前に府中のステージに立つことになるとは…
正直私は緊張していた。
「今日、私うまくできますかね?」
「きっと大丈夫よ。ゴアちゃん。」
私は、控室でスズカさんにずっと同じことを繰り返すめんどくさいムーブをかましていた。
自分でもわかってるんだけど、スズカさんに大丈夫って言ってもらえると、本当に安心するからなぁ。
「さあ!いよいよだよ!」
控え室のドアが開かれ、ファル子先輩が顔を出す。後ろにはブルボン先輩も。
控室を出ると、ここまで聞こえてくる喧騒。
「みんな、私たちのために来てくれてるんだよ?」
ファル子先輩は真面目な声でそういう。
その言葉で、なんだか安心できた。
「スズカさん。最後に私に絶対大丈夫って、言ってください。」
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ドン!という音と共に入場する私たち。
ワー!となる歓声。
「どうもー!逃げ切りシスターズです!」
ファル子先輩が挨拶する。
すらすらと言っているが、挨拶も相当な長さ。ファルコ先輩が必死に覚えていたのを私は知っている。
それを隠して、ファンにこんなパフォーマンスをしている。
きっと観客もそれに気づいている。
でも、それが嬉しいとか、それへの感謝とか、そう言う気持ちを含めて、『推し』って言う感情を抱いてくれてるんだろうな。
そう思うと、とっても安心できた。きっと、この人たちなら私を受け入れてくれるんだろう。
「みんなー!今日から新メンバーがいるのー!」
「どうもー!新メンバーのクワイエットゴアです!よろしくねー!」
ワーっと一際大きい歓声が会場を包み、私は胸に温かいものが満ちていく感覚に襲われた。
私、ファンのためにも頑張りたい。そう思った私は、今やファンのためのライブの練習を疎かにすることはなくなった。
その代わりに、ファンという大切なものを手に入れた私は、応援してくれるみんなのためにも頑張りたいな。という気持ちに溢れたのだった。
ちなみに帰ったあとは普通にトレーニングがあり、流石に次の日きつかったというのは余談である。