ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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#010 『ポケモンリーグの放送を楽しみにしてな!』

 10歳 ε月μ日 『訴えてやる!!』

 

 サントアンヌ号の事件に巻き込まれた被害者達の総意で船長が訴えられた。

 

 まぁ、当然だな。客を見捨てて逃げるし、逃げた後の対応も杜撰だしで、庇うような要素は何一つとしてない。俺も清き一票を投じておこう。

 

 

 

 10歳 ε月ο日 『アオプルコ? 知らないリゾートですね』

 

 サントアンヌ号の事件から約一週間。俺達は今、ナナシマに向かっている。

 クチバに戻った後、サントアンヌ号の事件に巻き込まれた詫びとして、ナナシマに行くためのチケットと、トライパスをもらったのだ。

 

 もはや、完全にアニメルートから外れてしまったが、バイバイバタフリーするフラグも消えたと考えれば悪いことではないだろう。

 と、いう訳で、久しぶりにバタフリーを手持ちに加え、クラブをオーキド研究所に送った。あいつぁ、強くなりすぎちまったよ。

 

 貰ったトライパスでは3の島までしか行けないので、4の島にいるであろうラプラスは捕まえられないが、ここらでまた新しいポケモンを捕まえたい所だ。

 

 船であるシーギャロップ号はサントアンヌ号ほど豪華な船では無かったが、船長もしっかりした人で沈没する心配は無さそうだった。ちなみに船内でのバトルは全勝したったぜ。

 

 

 

 10歳 ε月π日 『ナナシマ 1の島 カモネギ十兵衛』

 

 1の島に着いた。別にカントーが寒いというわけではないが、この島は随分暖かいな。

 北の方には火山も見えるし、温泉もあるらしい。

 ぶっちゃけ、ゲームのナナシマってカンナの住んでいる4の島の印象が強くて、他の島についてはよく覚えてなかったが、こうして観光する分にはなかなか良い島のようだ。

 

 ともしび温泉とかいう温泉がとても体に良いということで入りに行くことにしたのだが、その途中でカモネギの群れが争いをしているのを発見した。

 

 ポケモン図鑑で確認すると、カモネギは良質な茎を巡ってカモネギ同士で争うことがあるらしい。その中で俺の目を引いたのは、一匹のカモネギだ。

 片目に縦長の切り傷が付いていて、他のカモネギに比べて持っている茎の大きさが小さい。そのせいか思うように攻めきれないようで、他のカモネギにボコボコに叩かれていた。

 

 傷のついたカモネギがダウンしても茎を奪われていない所を見ると、他のカモネギから見ても、あまり魅力的な茎ではないようだ。

 

 不甲斐ない自分が許せないのか、小さな茎を握りしめて悔しがっている。見ていた限り、実力で負けているという感じではないので、本当に茎の問題なのだろう。

 

 こういう頑張っている奴を見ると、放っておけないのがニューサトシの性である。

 

 怪我をしているカモネギに傷薬をかけながら、試しに新しい茎を持ってみるように言ってみたが首を横に振っていた。どうやら今持っている茎で勝たなければ意味が無いらしい。

 

 気持ちはわからなくないので、別の方法を考えることにした。別の茎が駄目なら、得物にあった戦い方を覚えるしかないだろう。

 その茎の長さは刀でいう小太刀のようなものだ。つまり普通に戦ってもリーチの差で有利が取れない。防御という面では有利だが、攻めきれないのが欠点な以上、足りない攻撃力を補う何かが必要だ。

 

 そこで考えたのが防御主体の待ち戦法である。耐えて耐えて耐え抜いて、相手の隙を突いて一撃で仕留めるという戦法なら、小太刀茎の性能も生かすことが出来るだろう。

 

 だが、結局は素人の浅知恵だったらしい。

 

 防御で耐えるまでは問題なかったのだが、やはり茎の長さがネックになってしまったようで、攻撃に転じてもとどめを刺しきれなかったのだ。攻撃力が無い以上、相手を倒すには急所に当てるしかないのだが、それにも技術がいるし一朝一夕で身につくものではない――と、そこで思い出したのが、カモネギ専用の持ち物であるながねぎの存在だった。

 

 あれは確か、急所率を上げるアイテムだったはずである。

 

 第二世代の説明文は、『ふつうのながねぎ やすくうれる』というものだった。後半の世代では『とても長くて固い茎』となっていたが、第二世代を信じるなら特別なながねぎではないということだ。

 

 藁にも縋る思いで、タケシが持っていたながねぎをカモネギに持たせてみた。右に小太刀茎、左にながねぎの疑似二刀流である。

 半分はギャグのつもりだったのだが、これが思った以上にこのカモネギに合うスタイルだったようで、嘘のように先程まで負けていた他のカモネギをなぎ倒していく。

 

 どうやら二刀流になったことで、短い茎の利点も出てきたようだ。長さの短い茎は取り回ししやすいのか、長い茎を振り回すよりも返しが早く、手数を増やす結果となっている。使っているのは主に『れんぞくぎり』だが、この技は当てる度に威力も上がるので攻撃力不足を解消するのもピッタリだった。

 

 おまけに、ながねぎの急所率アップも手数が増えれば効果が出やすくなるようで、最終的には攻撃力アップに繋がっている。さらに面白いことに、このカモネギはタマゴ技であるはずの『つじぎり』まで覚えているようで、とどめの急所攻撃に一役買っていた。

 

 連戦連勝で、最後は群れのリーダーに勝つのみとなったのだが、見ると相手のリーダーもながねぎを持っている。これは簡単にはいかないだろう。

 

 しかし、勢いはこちらのカモネギの方があった。手数の多さで、徐々にリーダーを追い詰めていく。この調子でいけば勝てる――そう思っていると、それがフラグになってしまったのか、戦いの最中でタケシのながねぎが折れてしまった。

 

 そういえば、こっちのはスーパーで安く買ったながねぎだったんだ。すまんカモネギ。

 

 一刀流に戻ったカモネギは、前までのように防御一辺倒になってしまったが、これまでの訓練は無駄ではなかったらしい。最後の最後、相手がとどめを刺そうとした瞬間、攻撃の隙を突いて、カウンターで『いあいぎり』を急所に決めていた。

 

 素晴らしいバトルに俺氏思わず拍手喝采。カスミさんとタケシも、力を貸したカモネギの勝利を喜んでくれている。

 カモネギ達も、落ちこぼれだったカモネギの勝利を驚いていたが、群れのリーダーは「負けたぜ」とばかりの笑みを浮かべ、持っていた自分のながねぎをカモネギに渡していた。

 

 カモネギおめでとう。良いバトルだったぜ!

 

 

 

10歳 ε月ρ日 『ナナシマ 1の島 伝説のポケモンってあんまり……』

 

 ともしび山に伝説のポケモンであるファイヤーが来ているというニュースが入り、山にトレーナーの大群が押し寄せていた。

 そういえば、FRとLGでもチャンピオンロードからともしび山に移動していた気がする。

 

 正直、伝説のポケモンってゲットすると問題になりそうだから、あまり捕まえる気にならないのだが、カスミさんは意外と興味があるらしく、「行ってみましょうよ」ということだったので、ともしび山に向かうことになった。

 

 端的に言おう。ファイヤーには会った。

 

 つか、ファイヤーさん伝ポケのくせに隠れる気ゼロだったようで、頂上に普通に鎮座していた。仕掛けてくるトレーナーを自慢の炎でボコボコにし、不意に投げられたモンスターボールもことごとく焼き尽くしている。

 

 こんなん勝てる訳ないのは一目見てわかったのだが、簡単な力の差もわからないトレーナー達のあまりの鬱陶しさにファイヤーさんもキレてしまったようで、特大の『ほのおのうず』で周囲のトレーナー達を蹴散らすのに巻き込まれてしまった。

 

 あーあ、と思いながら周りを見ると、まともに動けそうな奴は俺達しか残っていない。

 

 ぶっちゃけこちらに戦う気は欠片もないのだが、逃げようにも炎の壁が邪魔で逃げられなかった。白旗を上げてみたが、ファイヤーさんはこちらを逃がすつもりはないようで、お得意の『にらみつける』でプレッシャーをかけてくる。

 

 もう戦うしかないのかもしれないが、俺やカスミさんのポケモンのレベルでは勝てないのは見るだけで分かった。タケシもフルメンバーでない以上、それは同じだろう。

 

 どうするか悩んでいると、どこからともなく昨日のカモネギが現れ、ファイヤーと何やら話をしてこの場を取りなしてくれた。

 

 ファイヤーさんがその炎の羽を大きく羽ばたかせてどこかに飛んでいく。

 

 とりあえず、命の危機を救ってくれたカモネギにお礼をしながら、どうしてこんな所にいるのか聞いてみると、どうやら俺と一緒に来るつもりらしい。カモネギはガラルの姿しか育てたことはなかったが、一緒に来たいというのなら拒否する理由はなかった。

 

 カモネギ、ゲットだぜ!

 

 

 

 10歳 ε月σ日 『ナナシマ 2の島 究極技を教えてくれ 前編』

 

 2の島で観光をしていると、ひょんなことからキワメという婆さんと仲良くなった。

 名前を聞いて、もしかしてと思ったが、ゲームでもお馴染みの究極技を教えてくれる婆さんのようだ。

 

 キワメ婆さんの家に行くと、フシギバナが草の究極技であるハードプラントを、リザードンが炎の究極技であるブラストバーンを、カメックスが水の究極技であるハイドロカノンを披露してくれた。本来、御三家の最終進化形態しか覚えられないものだが、うちの御三家達はその究極技に興味津々である。

 

 キワメ婆さんも、「流石にお前さん達にはまだ無理じゃのう」と苦笑いしていたが、誰に似たのか、誰一人として諦めようとしなかった。

 

「どう見たってアンタの影響でしょ」

「サトシの頑固さが移った以上、諦めるのは無理だろうな……」

 

 と、言うわけで、婆さんに究極技を教えて貰えないかお願いしてみた。

 最初は困っていた婆さんだが、俺達が本気だとわかると、「やるからには途中で投げ出すことは許さんぞ」とやる気になっている。

 

 そこからはまず理論の時間になった。

 婆さん曰く、ポケモンの技は基本的にはレベルで覚えるが、技マシンや技レコードを使わずとも覚えさせることが出来るらしい。ゲームで言う教え技というやつだな。

 

 だが、技を教えると言っても、漠然とこういう技だからやってみろと言って出来るはずがない。

 まずは、教えたい技と似た技から使用感を伝え、そこから変化させていくのが普通らしい。

 例えば、ギャラドスに『こおりのキバ』を覚えさせようとすると、まずは同じ噛むタイプの技である『かみつく』をベースにして訓練するようだ。

 

 しかし、究極技だけは話が別だと言う。

 他の教え技と違い、御三家にしか覚えられない特別な技である以上、別の技をベースにするという基本は取れない。ならばどうするかと言うと、実際に技を受けて感覚を掴み、再現するしかないようだった。

 最終進化形しか覚えられないというのは、レベル的な意味合いもあるのだろうが、最終進化形じゃ無いと技をくらうにしろ技を出すにしろ、その威力に耐えられないかららしい。

 

 確かに同じレベルでも、進化前と進化後では種族値にも体の大きさにも差がある。

 おまけにうちの御三家はまだレベル30にもなっていない。普通に考えればまず無理だろう。だが、そんな正論で諦めるようなら、そもそも最初から挑戦などする必要がなかった。

 

 それしか方法がないならチャレンジ有るのみだぜ。

 と、言うわけで、キワメ婆さんに頼んでうちの御三家達に究極技をおみまいして貰う。

 当然のように全員ダウンしてしまったが、技の感覚を掴むためであれば仕方なかった。起きては技をくらい、起きては技をくらいを何度も繰り返すが、なかなか技の感覚は掴めない。

 

 結局、何だかんだ夜になってしまい、今日は婆さんの家に泊めて貰うことになった。

 

 

 

10歳 ε月τ日 『ナナシマ 2の島 究極技を教えてくれ 中編』

 

 二日目。やはり進化しないと効率が良くないようで、今日も技をくらってはダウンを繰り返している。カスミさんは意外と優しい性格をしているので、倒れる御三家を見て悲しそうな顔をしていたが、御三家達の気持ちを考えると止められないようだ。

 

 タケシは倒れたうちの御三家達を治療してくれている。アニメでは将来、ポケモンドクターに夢が変わっていたし、今のうちに経験を積んで貰おう。

 

 残る俺ことニューサトシだが、当然遊んでいる訳では無く、婆さんからとある技の修行を課されていた。

 

「そうじゃ、そのまま技を発射する状態をキープするんじゃ」

 

 その名も『ボルテッカー』――ピカチュウの技で、本来ゲームではタマゴ技でしか覚えられない技だが、アニメではAG編で覚えていた以上、覚えられるのではないかと婆さんに聞いてみたら何故か修行が始まった。

 

 技の感覚を掴む段階の御三家と違って、『10まんボルト』を発射状態でキープし、そのまま『でんこうせっか』で突撃するというアニメのような行程を踏んでいるので、トレーナーのサポートが必須ということらしい。

 

 最初は技を発射しないでキープするのが難しく、『10まんボルト』を暴発させていたピカ様だが、数回の失敗の後は何とかキープに成功している。やはり才能があるようだ。婆さんもピカ様の習得速度は異常だとビックリしていた。

 

 それを見た御三家達が自分達もと奮起している。

 しかし、今日も大きな進歩はなく終わり、そのまま婆さんの家にお世話になった。

 

 

 

 10歳 ε月υ日 『ナナシマ 2の島から3の島へ 究極技を教えてくれ 後編』

 

 三日目。今日は3の島へ移動日である。

 この二日間、究極技をくらいまくっていた成果はあったらしく、御三家達はしっかり究極技の感覚を掴めたようだ。

 

 時間もあまり残っていないので、今は修行の二段階である技の再現に移っている。御三家達が精神を集中させながら技を発動させようとしている横で、ピカ様も『ボルテッカー』の訓練をしていた。こっちはもう大体感覚が掴めたようで、後は回数を重ねて威力を上げるだけでマスターできそうである。

 

 しかし、ピカ様も流石に御三家達が心配なのか、途中で『ボルテッカー』の訓練を中断して様子を見に行っていた。俺も同様で、三体に声をかける。

 

 マサラ式肉体言語術の一つであるボディランゲージで様子を聞いてみると、どうやらフシギダネは技の具体的な出し方が完全にイメージしきれないらしい。ヒトカゲは技の威力が凄すぎて制御する自信がないようで、ゼニガメに至っては自分にはキャノンがないからそもそも技が完成しないことに悩んでいた。

 

 待てゼニガメ。お前は悩むポイントが少しおかしい。

 

 とりあえず、悩むより先にやってみろの精神で究極技を撃たせてみると、フシギダネは少し強力すぎる『つるのむち』、ヒトカゲは少し強力な『かえんほうしゃ』、ゼニガメは少し強力すぎる『みずでっぽう』というような感じだった。確かに究極技と呼ぶには少しお粗末だな。

 

「まだレベルが低いというのもあるんじゃろう。一応形にはなっておるから、後はひたすら練習あるのみじゃな」

 

 元々、最終進化形になるだけのレベルを求められる技なのだ。三日で完成させろと言う方が酷だろう。御三家達には、「これから練習していこう」と声をかけてボールに戻した。

 

 この三日お世話になった婆さんにお礼を言い、3の島へと移動する。婆さんには「お前さん達が究極技を完成させるのを楽しみにしておるぞ」と言われたので、「ポケモンリーグの放送を楽しみにしてな!」と捨て台詞を吐いておいた。残りバッジは五個もある。それを集めるまでに完成できれば御の字だろう。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・ナナシマへ行った。
 サントアンヌ号を脱出したため、16話~21話の話が全てカットされることになった。よって、カスミさんがタッツーをゲットせず、バイバイバタフリーもしなくなった。

・カモネギをゲットした。
 隻眼のカモネギ。二刀流は格好いいだろうと思って書いた話だが、ひこうタイプが多くなって作者が困っている。

・ファイヤーにあった。
 サイドストーリーのヒロシとファイヤーの話を見ていないので適当に書いた。今度見る予定なので、もしかしたら少し修正するかもしれない。

・究極技を習う。
 ポケスペを参考にした伝授方法。飛天御剣流の覚え方と一緒。ちなみに現在の熟練度は一割、威力にすると95。進化前だと最大威力が140に落ちるというオリジナル設定にしているのだが、それでも充分強い。

・マサラ式肉体言語術、ボディランゲージ
 ポケモンと意思疎通する技、使用者との関係性で理解度や理解するまでにかかる時間が変わる。


 現在ゲットしたポケモン。

 ピカチュウ Lv.30→31

 ピジョン  Lv.25→26

 バタフリー Lv.24→26

 サイホーン Lv.27→28

 フシギダネ Lv.26→28

 ヒトカゲ  Lv.24→26

 ゼニガメ  Lv.23→25

 クラブ   Lv.28→29

 カモネギ  Lv.22 NEW!





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