ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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#092 『そこで待ってろ。絶対勝ってくるからよ』

 12歳 μ月φ日 『決勝リーグ 準決勝 VS“S” 前編』

 

 遂に準決勝である。俺の相手はSとかいう覆面野郎で、これに勝てば実質決勝戦の相手はシゲルだ。

 フィールドで互いに向かい合うと、それまでどんな対戦相手にも言葉を交わそうとしなかったSが、「この時を待っていたぞ」と呟いている。

 小さな声だったが、マサライヤーはその声をしっかり捉えていた。そして、どこかで聞き覚えがある声だとすぐに気づく。しかし、それが誰だかは流石に覚えていなかった。

 

「お前、どこかで会ったことがあるか?」

 

 そう聞くと、「クッ、クククク……」と笑いながら、覆面とローブを脱ぎ捨てていく。

 黒みがかった紫色の髪に、濁った瞳。風貌は大分変っていたが、それは前に俺がミュウツーでボコボコにした、データがあれば誰にも負けないと言っていたどこかのハッサム使いのクソガキだった。

 

「お前の言葉通り、ポケモンリーグに参加してやったぞ」

 

 そう笑うSはまるで壊れた人形のように、虚ろな瞳を向けてくる。まさか、あの時きまぐれにボコったクソガキが、闇落ちして再登場するとはニューサトシもビックリのとんでも展開だ。

 

「俺は間違っていなかった。データがあれば誰にだって勝てる。ただ、そのデータを活かすだけの実力が俺になかっただけだったんだ」

 

 ケタケタ笑いながらそう呟くS。本名は何て名前だったっけか、流石にもう覚えていない。

 

「お前のあの伝説のポケモンも、今の俺なら倒すことが出来る。お前はここで俺に負けるんだよ、サートシィ……」

 

 後ろにいるラティが怖さのあまりに頭を抱える。普段ならタケシかカスミさんがフォローしてくれるのだが、二人もまさかの展開に動けずにいるようだった。

 まぁ、自分達がかかわった人間がここまでおかしくなれば動揺しない方がおかしいか。

 

 とはいえ、俺は既にバトルモードなので動揺はしない。この程度で動揺していたらバトルなんて出来ないしな。

 多少思う所はない訳ではないが、ニューサトシも聖人ではないので、闇落ちしたクソガキをバトルで助けるなんて展開はない。俺に出来るのは、こいつをボコボコにすることだけである。

 

「ケッ、まだデータごっこしてんのかよ。あの時はお前が我が儘言うからミュウツーを出してやったけど、あのレベルなら別にミュウツーなんか出さなくてもお前に勝てたんだぜ?」

「だろうな。だが、今の俺はあの時とはレベルが違う」

「ハッ、面白ぇ。見せてみろよ、その違うレベルって奴を」

 

 ルーレットによって、先行は俺に決まる。同時に、フィールドは岩のフィールドになった。

 後攻を取ったSは、「運にも見放されたようだな。後攻を取った以上、俺に負けはない」などとほざいている。

 

 俺は一体目にトゲ様を出した。トゲ様は進化してからまだ一度しかバトルをしていない。データなんかろくに取れていないはずだ。

 しかし、それを見てSはカイリューを出してきた。成程な、カイリューの特性である『せいしんりょく』は、相手の技の効果で怯まなくなるというものだ。自ずと、こちらの害悪戦法を封じられるという狙いか。

 

 とはいえ、トゲ様はフェアリータイプである。相性は有利だし、得意戦法を一つ封じられたくらいで機能が停止するほどぬるくない。

 当然、タイプ一致のフェアリー技も練習させていたので、『マジカルシャイン』で弱点を突いていく。しかし、読まれていたようで、Sも「二歩下がって回避」と指示を飛ばした。カイリューも指示通りに少し下がり、軽く体を反らしただけで攻撃を回避している。

 

 反撃とばかりに、『しんそく』で距離を詰めてきたので、こちらも『しんそく』で攻撃をかわしていく。

 だが、おかしい。まるで、動く方向がわかっているかのようにカイリューはトゲ様の進行方向へ先回りしてきた。そのまま『かみなりパンチ』で弱点を突いてくる。

 弱点のでんき技だが、タイプ不一致ということもあって耐えられた。まだダメージ的には問題ないが、運が悪かったようで追加効果である一割の麻痺を引いてしまう。

 

 しかし、トゲ様には止まらず『マジカルシャイン』を連打させた。麻痺したとはいえ、火力は変わらない。このまま相性で押し切ってやる。

 ただ、麻痺によってトゲ様の動きも鈍っていた。そのせいか、カイリューも余裕の表情で攻撃を回避している。何だこの気持ち悪い感じ、まるで攻撃の方向を完全に読まれているみたいだ。

 

 チッ、真っ向勝負がダメなら搦手で行ってやる。俺のトゲ様はまひるみが全てではないのだ。『どくどく』を指示してカイリューを猛毒状態にさせる。

 だが、通じないと言わんばかりに、直前で『しんぴのまもり』を発動された。やはり完全に動きを読まれている。どうやら対策されているのはマジらしい。と、すると、ここは素直に一旦ドサイドンに交代――

 

「交代の確率78%」

 

 こちらが交換を考慮したタイミングでの発言だった。当然、ボールに伸ばそうと思っていた手は止まる。

 

「戦闘を継続して、接近戦に持ち込む確率は21%、イレギュラーな行動をする確率が1%」

 

 お前はどこかのデータテニヌ使いか。

 しかし、間違ってはいなかった。普通なら交代の場面だし、仮に交代しなかったとしても、遠距離攻撃が通じない以上は接近戦に持ち込んでダメージを与えていくしかない。だが、読まれている以上、下手に交換するのは逆に危険か? ならば、ここは――

 

「『――ここは『しんぴのまもり』が切れるまで、『はねやすめ』で持久戦をするのがベター。その間に攻略法を考えてやる』とでも考えているのだろう。甘い、カイリュー、『アイアンテール』だ」

 

 弱点のはがね技か!

 こうなると、『はねやすめ』を使っても意味がない。『はねやすめ』の効果で、回復と同時にひこうタイプが消えるから『かみなりパンチ』は凌げるが、フェアリータイプの弱点であるはがね技だけは防ぎようがないのだ。

 

「俺に選択肢を出されたことで、お前は俺の思考の上を行くために持久戦を選択しようとする。全て読めているんだ」

 

 読めているのレベルではない。もはや未来予知だ。

 攻撃のタイミングや避け方の癖、戦術や戦略などが完全に把握されている。まるで頭の中を覗かれているかのような感覚だった。

 

 咄嗟に『しんそく』で回避を指示するが、やはりどう動くかが読めているようで、『しんそく』で先回りされる。

 ダメだ。『アイアンテール』は回避できない。こうなれば、少しでもダメージを与えてやると、『じゃれつく』を指示した。相打ち覚悟でカイリューにもダメージを与えていく。いくら動きを読めたって、ここまで近けりゃ避けられまい。

 

 カイリューもようやくその余裕の表情を崩したが、即座に『アイアンテール』で反撃してきた。

 しかし、俺のトゲ様はしぶとい。このままやられてたまるかとばかりに、『じゃれつく』を継続してきた。Sも、まさか根性で耐えるとは思っていなかったようで、舌打ちをしながら即座にとどめの『アイアンテール』でトゲ様を戦闘不能にしてくる。

 

 倒れたトゲ様をボールに戻す。

 

 それを見て、Sもまたカイリューをボールに戻した。技を全て使った上、予想外のダメージも受けたので回復させようという魂胆だろう。

 ドサイドンを出すつもりだったが、対カイリューに残しておきたいので、ここはケンタロスを出すことにした。ノーマルタイプのケンタロスならば、ゴーストタイプ以外なら大抵のポケモンが相手になる。

 

 ケンタロスを見たSが次に出してきたのはバンギラスだった。特性の『すなおこし』によって、フィールドが砂で包まれていく。だが、こちらの『いかく』でバンギラスの攻撃も一段階下がった。

 いわタイプを持つバンギはノーマルタイプの技を半減するが、あくタイプも持っているのでかくとう技が四倍だ。とはいえ、俺のケンタロスはかくとう技を覚えていない。おそらく、それも読んだ上でバンギを出してきたのだろう。

 

 確かにかくとう技は覚えていないが、俺のケンタロスには得意のじめん技がある。特に初代でしか覚えない『じわれ』があるので、最悪は一撃必殺で無理矢理倒し切ることも考慮に入れていく。

 

 こちらが『じしん』を指示すると、Sは『てっぺき』を指示する。どうやら、こちらのケンタロスが物理に強いのは百も承知のようで、純粋に防御を二段階上げてきたようだ。

 いくらじめん技が得意でバンギに二倍弱点とはいえ、タイプ不一致で防御力の上がったバンギラスの突破は難しい。ならば特殊技と行きたいが、俺のケンタロスは特殊技を『はかいこうせん』くらいしか覚えていなかった。

 

 ゲームなら詰みの状況だ。

 

 まさか、これも俺のケンタロスのデータから予測したっていうのか? 俺がケンタロスを公式戦で使ったのはそう多くない。トゲ様の時といい、データで済ませるには限りがあるぞ。

 

「俺がお前のポケモンのデータを持っているのが不思議と言いたげな顔だな」

 

 表情には出していなかったはずだが?

 

「別に難しいことは何もない。マサラタウンへ行って、直に見せてもらっただけだ。オーキド博士も、こちらが悪意を持っていないのがわかるとすぐに中に入れてくれたよ」

 

 あんの、クソ爺。敵にデータ渡してどうすんだ!

 

「お前の手持ちのトレーニングを見て、ポケモンの癖は全て理解した。どんな技を使えるのか、どんな技を覚えようとしているのかも全て確認してある。トゲキッスはトゲチックの段階で特殊技を多く練習していたし、ケンタロスは物理技を練習していた。その上で、お前のトレーナーとしての能力を加えれば、動きは自然と読めてくる。後はそれに対応するだけの能力を俺が持つだけだった」

 

 俺がこいつをボコってから、半年くらいしか経っていない。たったそれだけの期間で、ここまで仕上げてきたというのか。

 

「サトシ、お前のバトルの基本は相性で有利を作り、攻撃を通してバトルの流れを掴むことだ。だから、こうして動きを止めてしまえば、普段通りには動けなくなる。予言してやろう、お前今、ケンタロスを戻そうと考えているな?」

 

 チッ、マジで読まれてる。とはいえ、特性『すなおこし』による砂の継続ダメージも重なると面倒だし、突っ張ってもいいことはないので、ここはケンタロスを戻すしかない。

 

 三体目として誰を出すか悩んだが、ここで一度流れを取り戻したかった。

 変な因縁だが、お前を出すのに丁度いい相手だ。向こうも、お前を待っているみたいだし、ここで流れを変えてくれ。

 

「行くぞ、ミュウツー」

『面白い』

 

 三体目としてミュウツーを出す。すると、会場中が一瞬沈黙した。見たこともないポケモンの登場で呆然としているようだ。

 モニターにミュウツーの画像が表示され、名前と伝説のポケモンであることが解説されると、途端に大歓声が発生する。そりゃ、伝ポケが出てきたら興奮もするわな。大変気分が良い。

 

「クッ、クハハハハハハ……ようやく出てきたな。伝説のポケモン、ミュウツー」

 

 Sも、バンギラスを戻した。待っていたとばかりに、三体目としてゲンガーを出してくる。

 相性ではバンギが勝っていたのにわざわざ交換したということは、他に何か狙いがあるということか。ゴーストタイプもエスパータイプに強いが、どくタイプを持つゲンガーもエスパータイプの技は弱点である。

 とはいえ、まずは『ちょうはつ』でゲンガーの変化技を全て封じた。『みちづれ』をされれば、いくらミュウツーでも戦闘不能になってしまうからな。

 

 しかし、その間にSはゲンガーをミュウツーの懐に飛び込ませていた。最初から変化技を使うつもりはないとばかりに、『だいばくはつ』を使ってくる。

 

 ゲンガーがゼロ距離で爆発を起こし戦闘不能になった。『ちょうはつ』をしていたミュウツーはガードが間に合わずに直撃を受けたが、流石に一撃では戦闘不能になっていない。

 

「一発じゃ、まぁ無理だろうな。なら、次だ」

 

 そう言って、次に出してきたのはマルマインだった。こりゃ、もう『だいばくはつ』を狙っているのは見え見えだ。

 ミュウツーがいくら伝説のポケモンとはいえ、『だいばくはつ』を二度もくらえば戦闘不能になるだろう。この世界の『だいばくはつ』は、前世のようなナーフが入っていない最強の自爆技なのだ。

 

 とりあえず、ミュウツーに『じこさいせい』を指示すると、Sも『ちょうはつ』を指示してきた。

 マルマインは素早種族値がミュウツーを超えていることもあってレベルが下でも動き出しがそこそこ速い。『じこさいせい』はすぐに封じられてしまった。回復まで封じてきたか。

 

 こうなれば、一度ボールに戻すか、爆発される前に倒すしかない。戻すのが普通だが、ミュウツーとしてはこのまま何もできないまま戻るのは屈辱のはずだ。

 

 こいつのパワーなら、爆発される前にマルマインを倒せる。そう信じ、『サイコキネシス』で動きを封じていく。

 しかし、Sは本当にミュウツー対策を考えていたようで、こちらのサイキネよりも先に『テレポート』でマルマインを懐に送り込んできた。

 当然、こちらはサイキネの目標を失ったことで技が不発に終わり、『マルマイン』の『だいばくはつ』がゼロ距離で炸裂する。マルマインは初代でのみ『テレポート』を覚えるが、まさかこのためだけに覚えさせてくるとは――

 

「ミュウツー!」

 

 流石にゼロ距離『だいばくはつ』二連発はまずい。仮にはがねやいわタイプの耐久ポケモンでも問答無用で戦闘不能にされる。

 

『問題ない……とは、言えないか』

 

 さっきの『じこさいせい』で少しだけ回復していたのと、伝説の意地で戦闘不能にこそなっていなかったが、それでも立っているのがやっとだった。

 

「クハッ、まだ耐えたか。だが、これで終わりだ」

 

 続けて出してきたのはハッサムだ。俺とミュウツーが前にボコったブレードとかいう名前のハッサムである。

 前のバトルでのお返しをしようということか。今のミュウツーは変化技も封じられ、『バレットパンチ』の一発で戦闘不能にされる。ここは一度、戻すしかない――

 

『待て』

 

 だが、マスターボールを出した瞬間、ミュウツーから制止がかかった。

 

『相手をよく見ろ。狙われている……』

 

 ハッと、Sを見ると、バレたかとばかりの表情を見せた。そこでハッサムは『おいうち』を覚えることを思い出す。あのまま俺がミュウツーをボールに戻せば、そこで戦闘不能にされていた。

 

「まぁ、いい。戻さないのなら殴り倒すだけだ。『バレットパンチ』」

 

 そう、即死は避けたが、まだ危機は去っていない。ハッサムの先制技を死にかけのミュウツーがスプーンを作って防いでいく。

 しかし、ダメージが大きいようで、防いで尚、衝撃でミュウツーの表情が僅かに歪んだ。ここまでダメージを受けたのは初めてのことである。

 

 とはいえ、自称最強の意地があるようで、そう易々と倒れない。バレパンを防ぎながら、何とか決定打を回避していく。

 あまりにミュウツーがしぶといので、流石にSも少し焦ってきたようだ。マルマインの使った『ちょうはつ』はそこまで長い間、変化技を封じられない。まだ砂による継続ダメージは残っているので少し不安だが、ここで決められなければミュウツーは復活する。

 

 だが、ここで焦って先制技以外の技を選択すれば、『サイコキネシス』の餌食になるだろう。

 それがわかっているが故に、Sも『バレットパンチ』でごり押しするしか手がない。本来なら、とっくに倒れてもおかしくないのだ。立っているのは偏に意地である。

 

「何でだ? 計算では、お前はもう倒れる。倒れなければおかしい!!」

 

 トレーナーの焦りはポケモンに伝わる。三度目の『バレットパンチ』がミュウツーに振りかざされるが、通常よりも少し大ぶりになっていた。

 それに合わせて、『ほのおのパンチ』をカウンターで合わせる。四倍弱点の一撃をカウンターで受けて、ハッサムが吹き飛ばされていく。想定外の一撃を受けたハッサムは戦闘不能になったようで立ち上がることはなかった。

 

「バカな……有り得ない」

 

 Sがショックで膝から崩れ落ちる。さぁ、ここからミュウツーの逆転劇だ――と、思ったが、ハッサムが倒れるのと同時に審判からミュウツーの戦闘不能が宣告された。

 

 俺もSも思わず首を傾げたが、どうやらレフェリーストップがかかったらしい。傍から見たミュウツーはもう戦えないと判断されたようだ。

 実際、ミュウツーはまだ倒れていないが、ダメージ的にはかなり大きかった。何せ、『だいばくはつ』二回に、ハッサムの猛攻を受けていたのだ。普通のポケモンなら二回は倒れていてもおかしくはない。

 

 今回のケースのように、ポケモンのダメージが大きすぎると判断された場合、立っていても戦闘不能を宣告されることはあった。もう少し時間があれば、『じこさいせい』が間に合ったのだが、結果的に向こうの粘り勝ちということか。

 

「は、はは……ビビらせやがって。ブレードを失ったのは痛手だが、これでもう俺の勝ちだ」

 

 Sがハッサムをボールに戻すと、向こうのポケモンが三体戦闘不能になったことで、一度インターバルに入る。

 こちらもミュウツーをボールに戻した。

 今回のバトルは俺の判断ミスが大きい。マルマインを相手にした時、一度ミュウツーを戻すべきだった。こいつの心情を考えて継続したが、あそこは『ちょうはつ』解除のために戻すべきだっただろう。

 

 いや、それ以前に、俺は心のどこかでミュウツーに依存していたんだ。

 

 オレンジ諸島で心の内を明かしてから、何度も力を借りて、その力があれば負けないと思ってしまった。

 トレーナーの技量で伝説のポケモンでも負けることはある。それはわかっていたはずなのに、ミュウツーならどうにでも出来ると考えていたんだ。

 

 確かに、ミュウツーは伝説のポケモンだが、何でも出来る神様じゃない。出来ないことだってあるし、ダメージが重なれば普通に倒れるんだ。

 実際、今回のバトルでも他のポケモンと同じように立ち回っていればこんなことにはならなかっただろう。俺の未熟さが、突っ張るという選択肢を取らせたのだ。

 

『謝るな』

 

 ごめん――と、口にしそうになった瞬間、ミュウツーはそうテレパシーを送ってきた。

 

『私も、お前と同じだ。負けるなどとは欠片も思っていなかった。この結果は、お前だけのせいではない』

「……お前は負けてない」

『戦えなくなったら負けだ。それが、ポケモンバトルのルールだろう?』

 

 バトルには勝ったが、試合には負けた。そういうことである。だが、実力で負けた訳ではない。こいつを負けさせたのは俺だ。

 

『今回の件はいい教訓になった。私達も、まだまだということだ』

 

 そうだ。俺も、ミュウツーも、まだまだ強くなれる。なるんだ。

 ここで足踏みしている場合じゃない。反省するのは後だ。今は前を見ろ、勝つことだけを考えろ。

 

『だが、私もこのまま敗退するのはごめんだ。だからこそ、敢えて言おう。勝て、サトシ』

「負けねーよ。誰に言ってやがる」

『フッ、それでいい』

 

 あくまでも強気、それがニューサトシだ。

 

 そのままベンチに戻ると、ラティが抱き着いてきた。どうやら、ミュウツーの戦闘不能はラティにかなりのショックを与えたようだ。

 ラティの頭を撫でていると、タケシも「まさか自爆攻撃でミュウツーを突破しようとしてくるとはな」と、感心した声を出している。

 カスミさんもまた「あれで倒れない辺りがミュウツーって感じだけどね」と苦笑いしているが、結果的にレフェリーストップにされたので向こうの思惑は成立していた。

 

「で、結構振り回されていたみたいだけど、勝算はあるのか?」

「ないこともない。あのクソガキ……そういや、あいつなんて名前だったっけ?」

「シンゴ君よ。あんた、自分がボコボコにした子の名前も忘れたの?」

 

 忘れてたさ。弱い奴に興味なかったしな。

 だが、今は違う。あのシンゴとかいうクソガキは変わった。前はミュウツーという最強を使ったということもあったが、基本的に相手の過去のデータのみを信じて動きを予測していたので、過去のデータ以上の動きをさせると対応できないという弱点があったのだ。

 

 例えるなら、あいつの頭の中にいたのはオレンジリーグを戦っていた頃の俺で、そこからジョウトへ来て成長した俺に対応が効いていなかった。

 しかし、今では過去のデータを踏まえた上で現在の動きを予測するようになっている。おまけに、その予測に対応できるようにポケモンも鍛えているので全く隙が無い。

 

 認識を改める必要があった。

 

 今、目の前にいるのは、あの時のクソガキではなく、俺に対するメタを持った最強の対戦相手だ。

 

「読まれるなら、読まれても意味のない動きをすればいいだけだ」

 

 五分経ったのでフィールドに戻る。

 ミュウツーから『私は少し眠る。後は任せた』というテレパシーが来たので、マスターボールをラティに預けた。

 

 そこで待ってろ。絶対勝ってくるからよ。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・ニューサトシがボコボコにしたクソガキが闇落ちしてやってきた。
 感想欄でも早い段階で当ててる人がいて、何でわかるんだ? と、首を傾げた。

・魔改造クソガキがデータテニヌしてきた。
 データによって動きを全て読まれているので、思うようにバトルをさせてもらえない。だが、実際に戦うのがポケモンなので接近戦に隙があり、また気合や根性で耐えるなどの精神論はデータでは読めていない。

・ミュウツーが追い詰められた。
 シンゴが持っているデータが、ボコボコにされた時のものと、イブキ戦のデータしか入手できなかったため有効な対策がなく、だいばくはつ二連で戦闘不能にする力技しか取れなかった。ゴーストタイプお得意の、ちょうはつからのハメ技はニューサトシの不意をつけないので不採用。ゲンガーで変化技を使うだろうという読みを逆手に取った不意打ちだいばくはつと、マルマインのテレポートだいばくはつの二連だからこそここまで追いつめられた。が、意地で倒れず、ハッサムを返り討ちにした。しかし、ダメージが深くレフェリーストップがかかった。



 現在ゲットしたポケモン

 ピカチュウ Lv.56

 ピジョット Lv.52

 バタフリー Lv.52

 ドサイドン Lv.54

 フシギダネ Lv.52

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 キングラー Lv.52

 カモネギ  Lv.52

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 ベトベトン Lv.51

 ジバコイル Lv.51

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 プテラ   Lv.52

 ラプラス  Lv.51

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 バリヤード Lv.52

 イワーク(オレンジ諸島の姿) Lv.48

 カビゴン  Lv.46

 ニョロトノ Lv.46

 ヘラクロス Lv.44

 メガニウム Lv.44

 マグマラシ Lv.43

 ラティアス Lv.30

 ヘルガー  Lv.44

 ワニノコ  Lv.43

 ヨルノズク(色違い) Lv.43

 カイロス(部分色違い) Lv.44

 ウソッキー Lv.43

 バンギラス Lv.55

 ゴマゾウ  Lv.30

 ギャラドス(色違い) Lv.34



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