ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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#094 『まさにミュウツーへの逆襲である』

 12歳 μ月φ日 『アニポケのキャラが魔改造されて襲ってくるとは思わんやん』

 

 俺の試合の後に、シゲルの準決勝があった。こちらは俺のバトルとは打って変わって、一回戦同様にポケモンを一体も戦闘不能にさせないまま勝利している。

 もし、シゲルの組み合わせが一つでも後ろになっていたら、ムサシがベスト4に来ていたかもしれない。勿論、バトルは運の要素もあるので、絶対ではないが正直ムサシの方がいいバトルをしていた。

 

 俺達はシンゴと一緒に試合を見ていたのだが、試合後のシンゴは嘘のように憑き物が落ちたような顔をしており、「ポケモンリーグが終わったら、一度家に帰るよ」と言っている。

 どうやら、俺とバトルしたことでいろいろ吹っ切れたらしい。ぶっちゃけ、このまま家で埋もれるのは惜しいので、これからも別の地方を旅することを勧めた。

 あれだけ高精度で相手の動きを推測して対策できるポケモントレーナーはそうはいないし、もしかしたら将来は四天王にだってなれるかもしれないだけの才能を感じている。

 

 と、伝えたのだが、どうもシンゴからは歯切れの悪い答えが返ってきた。

 

「実は褒めてもらえるほどのことはしてないんだ。時間がなくてね、自分じゃデータ集めくらいしかしていない。カイリューやバンギラスも借りているポケモンなんだ」

 

 聞けば、シンゴはバッジ集めを早々に諦めて、前に俺がカントーで受けたのと同じ、ポケモンリーグの検定試験を合格してきたらしい。

 まぁ、シンゴの実力なら余裕で合格するだろうし、半年でバッジを集めてたらそれだけで時間がなくなるからわからなくもない選択だ。

 

 また、ポケモンについても、相棒のハッサムを育成し直すのに時間を使いきったので、他はレンタルポケモンを使ったらしい。

 

 どうも、大金を払うことで強力なポケモンをレンタルさせてくれる裏レンタル屋なるものがあるとのことで、シンゴは自分の集めたトレーナー情報を売ることで、ポケモンを借りたようだ。

 確かに、改めて考えてみると、俺と別れてから半年ちょっとであのポケモンの練度は少しおかしい。言われてみれば、納得できる話である。

 

 人の情報を売るというのは少し思う所もあるが、この時代まだコンプライアンスやネットリテラシーという言葉もないし、こういう情報の大切さを殆どの人間がわかっていない。

 オーキド博士がシンゴを無警戒で研究所に入れたのも、まさかデータを抜かれるとは考えていなかったからだろう。前世の記憶がある俺からすれば有り得ない行為だが、この時代ではそういう考えをしないのが普通なのだ。

 

 まぁ、勿論。博士には、これを機にセキュリティを強化してもらうつもりではあるがな。

 

 それに、シンゴもルールを破っている訳ではない。俺だって多かれ少なかれ他人の情報を集めている。ニューサトシの情報を売るのはもう止めてほしいが、集めた情報をどう使うかは個人の自由だ。

 納得できない奴もいるかもしれないが、この世界、個人情報漏洩に関する法律もないし、犯罪にはならないのである。

 

 また、レンタルについても問題ない。ポケモンリーグではレンタルポケモンを使ってはいけないというルールはないのだ。

 何せ、トレーナーの中には少数精鋭方針の奴だっているし、シンゴのように育成時間が足りないという場合もある。そういう奴らがバトルでポケモンが足りないという状況を救済するためにレンタルポケモンは禁止されてはいなかった。

 

 とはいえ、普通のトレーナーはレンタルのポケモンを使うようなことはしない。

 自分の実力を超える強いポケモンを借りても使いこなせないし、いくらレンタル用に育成されているとはいえ、トレーナーとポケモンとの間に信頼関係がないといざという時に隙が出来るからだ。

 

 実際、シンゴもかなりポケモンを使いこなしてはいたが、接近戦に隙があった。

 遠距離なら指示を飛ばせるが、近距離はポケモンの判断で戦わざるを得ない。もし、今回のバトルで使ったのがシンゴが一から鍛えたポケモンだったならば、近距離の捌き方も変わっていたかも知れないな。

 

 しかし、レンタルポケモンをあれだけ使いこなせるのは、逆にシンゴのトレーナーとしての才能の高さの証明でもある。

 もう裏レンタル屋とは手を切るつもりのようだが、だとしたらシンゴにはこれから一からポケモンを育てて欲しい。いつか、本当のシンゴと戦いたいものである。

 

 と、まぁ、今だから良い話に出来るが、正直バトルの時には焦った。まさか、アニポケの一話限りっぽいキャラが魔改造されてリーグに逆襲に来るなんて、流石のニューサトシも夢にも思わなかったしな。まさにミュウツーへの逆襲である。

 おまけに、その結果がまさかのミュウツーのレフェリーストップだ。授業料としてはかなり手痛い結果だった。

 

 試合の後、ポケモン達をポケモンセンターに連れて行ったが、検査の結果、ミュウツーはセキエイ大会のリザードン同様にドクターストップがかかっている。やはり、自爆技二連からの猛攻でかなりダメージが蓄積されているらしい。

 正直、決勝も出すつもりでいたのでかなり辛い結果だ。今回の反省を生かして、ミュウツーへの甘えや遠慮を考えず大暴れさせてやりかったのだが、どうやらそれはまた別の機会になりそうである。

 

 

 

 12歳 μ月χ日 『決勝リーグ 決勝 VSシゲル 前編』

 

 決勝のポケモンをエントリーし、会場に向かう。今回エントリーしたポケモンは、ピカ様、リザードン、エビワラー、ベトベトン、ハッサム、バンギラスである。

 最初はバンギラスの代わりにミュウツーを予定していたのだが、ドクターストップがかかったのでバンギラスに代理をお願いした。本人も大舞台で暴れられることにやる気十分である。

 

 決勝戦の前に三位決定戦があったのだが、こちらはシンゴが棄権したことで名も知らぬトレーナーが勝利していた。もし、バトルをしていればシンゴが勝っていただろうが、もうレンタルポケモンを使うつもりはないようだ。

 

 決勝の舞台へ行くと、既にシゲルがスタンバイしていた。「約束の時だ。手加減はしない」と、強い視線を向けてくる。

 実際、二回戦でムサシとのバトルで出したあのニドクインを見てしまうと、それが口だけではないことは良くわかった。

セキエイ大会では俺の勝ち、マサラタウンでのタイマンでは俺の負け、一対一の五分で来ているこの勝負。勝つのは俺だ。

 

 ルーレットで先行がシゲルに決まると同時に、フィールドは草原ステージになる。

 シゲルの一体目はニドクイン、こちらはハッサムを出した。毒が通じず、じめんタイプも等倍のはがねタイプのポケモンである。

 

 開幕で、お得意の『バレットパンチ』と『ダブルアタック』を組み合わせたオラオラパンチをお見舞いしていく。

 通常、片手でしか打てないバレパンが二倍になって飛んでくるのだ。おまけに特性『テクニシャン』で強化されたタイプ一致の一撃である。いくらニドクインが強くともそう簡単には受けきれないだろう。

 

 だが、シゲルはこちらの攻撃をガードで防ぐと、『みだれひっかき』と『ほのおのパンチ』を指示して、まさかのオラオラ返しをしてきた。

 こちらも再度、『バレットパンチ』と『ダブルアタック』を指示し、互いに拳の連打が飛び交うも、向こうの方が手数が多くて押し返されていく。

 

 おまけに、こちらははがねタイプということもあり、ほのおタイプの技は効果抜群である。

 相殺しきれなかった一撃を受けて、ハッサムが勢いよく吹っ飛んできた。ギリギリで戦闘不能にはなっていないが、厳しい状況には変わりない。

 

「やはり、想像した通りだ。サトシ、君は確かにバトルのセンスは卓越しているが、ポケモンの育成に関しては今一つのようだね」

「なんだと……?」

「そのハッサム、カントーで使っていたストライクを進化させたんだろう? にしては、あまりレベルが上がっていない。君がパーティ全体の育成を優先させたせいで、全体のレベルが上がり切っていない証拠だ」

 

 確かに、オレンジ諸島組やジョウト組のレベリングを優先させたせいもあって、カントーメンバーはほぼ自主練か、たまにバトルで呼ぶくらいしか使っていない。だが、それでも強くはなっても弱くはなっていないはずだ。

 

「舐められたものだよ。サトシ、僕はこの試合に全ての照準を合わせてきた。君と戦うために六体を選び、集中して育ててきたんだ。このニドクインはその一体だ」

 

 まさか、他の五体もこのニドクインと同じレベルだというのか!?

 

「仮に、あの特殊なリザードンを相手にしたとしても、今の僕なら勝てる。それだけの育成をしたつもりだ。その分、他のメンバーは育成が足りずに、ここまでくる間は無様なバトルを見せたけどね」

 

 チッ、何が無様なバトルだ。ムサシとの試合以外、一体もポケモンを戦闘不能にしていないのは知っている。

 確かに舐めていた。まさか、そこまでガチで育成してきているとは。いや、俺も別に手を抜いていた訳ではない。単純に、シゲルの育成能力が超一流だったというだけである。

 

 シンゴのように俺へのメタを考えてきたのとはまた違う。単純に、力でねじ伏せることをシゲルは選んだのだ。

 

「君のこれまでの試合を見て、正直少しがっかりしたよ。レベルが足りてないってね。でも、手加減はしない。レベル差を覆すだけのバトルセンスが君にはあるからね」

 

 どうやら、微塵も油断はしてくれないらしい。なら、お言葉に甘えて真っ向からぶつかって行こうじゃねぇか。

 

 ハッサムに『はねやすめ』を指示して体力を回復させる。それを見て、シゲルも『ちょうはつ』を使ってきた。持久戦に持ち込ませないつもりのようだ。

 体力の回復が途中キャンセルされ、ハッサムもまだ全回復までとは言っていない。ならば、ここは一度引こう。『とんぼがえり』を指示して、ハッサムをボールに戻す。

 当然とばかりに、ピカ様がフィールドに飛び出して行った。二回戦のようにギリギリを狙ったスタートダッシュを決め、『ざぶざぶサーフ』でニドクインを攻撃していく。

 

 しかし、シゲルもまた『ドリルライナー』を指示して、無理矢理ニドクインで水を突っ切っている。準決勝で俺がドサイドンでやった動きそのものだ。

 そのままピカ様を直接狙おうとしてきたので、ジャンプからの『アイアンテール』で迎え撃つ。水を貫いたことにパワーを使いすぎていたようで、ピカ様の一撃がニドクインを地面に叩き落したが、流石にその程度で倒れるほど軟ではなさそうだった。

 

「流石はピカチュウだ。ここまでパワーのあるピカチュウはそう見ることが出来ない」

 

 そう口にすると、ニドクインが立ち上がると同時に、シゲルがニドクインをボールに戻す。技を全て使ったことで、『ざぶざぶサーフ』からの『アイアンテール』を攻略するのが難しいと判断したのだろう。

 こちらもピカ様を戻した。これからの戦いは少しのミスが勝敗を大きく左右する。出来るだけ体力は温存しておきたい。

 

 シゲルは次に、サワムラーを出してきた。ならばと、こちらもエビワラーを出していく。

 確かに育成に関して俺はシゲルに負けているかもしれない。だが、俺のエビワラーはそのくらいのハンデ楽々と覆すぞ。

 

 開幕、『こうそくいどう』でスピードを上げていく。オコリザルと違って、エビワラーは相手によって構えが変わらないのでいつもの黄金パターンである。

 対するシゲルは『ブレイズキック』を指示してきた。ハヅキのバシャーモも使っていた、一割で相手を火傷にし、急所にも当たりやすいというほのおタイプの物理技だ。こっちを火傷させて攻撃力を奪おうという狙いだろう。

 

 レベルでこちらを上回っているだけあって、動きが早くてエビワラーも回避に苦労していた。

 だが、『こうそくいどう』を積んだエビワラーのスピードはサワムラーを上回っている。素のままなら辛かっただろうが、これなら十分に超カウンターを狙えた。『ブレイズキック』をトリガーに、『カウンター』を発動し、『きあいパンチ』でKOを狙っていく。

 

 ロケット団が中途半端に模倣していたが、これが本来の使い方である。振り抜かれた拳は一筋の光となって、サワムラーの顔面へと向かっていく。

 

 しかし、シゲルはギリギリで『みきり』を指示した。直前でサワムラーがスウェーをするように体を反らしてパンチを回避している。『まもる』や『みきり』は超カウンターに対する最適解の一つだが、あの速度域で技が間に合ったのは、サワムラーのレベルが高かったのと、シゲルの的確な指示があってこそだろう。普通ならこうはいかない。

 

 仕切り直しとばかりに、エビワラーとサワムラーが距離を取る。その瞬間に、もう一度『こうそくいどう』を積んで、さらにスピードのギアを二段階上げた。

 シゲルはもうまともに攻撃を当てるのは難しいと判断したようで、『こころのめ』を指示している。次の技が必ず命中する技だ。これでもう回避は不可能になった。

 

 そのまま、『とびひざげり』を指示して、サワムラーが飛び上がる。普通の『とびひざげり』は真っすぐ相手に向かって膝を当てようとする動きだが、シゲルのサワムラーはかなりの高度まで上がり、落下のスピードを利用した上空からの『とびひざげり』だった。

 同じ技でも、こんな使い方があるとは。

 これは落下のスピードも合わさって、通常よりも威力が上がる。その分、外した時のリスクも跳ね上がるが、そこは『こころのめ』を使って上手くカバーしているのだろう。

 

 これだけの技だ。防御しても、防御の上から叩かれる。避けるのも受けるのも無理なら、迎え撃つ以外に手はない。

 超カウンターを発動して、相手の技が当たる前に一撃で決める。それ以外に勝ち目はなかった。

 エビワラーが『とびひざげり』をトリガーに、『カウンター』を発動させる。これは賭けだ。普通のカウンターと違って、ミスれば即死の、一度きりの賭けである。

 

 だが、シゲルはそんな賭けの通用するような生易しい相手ではなかった。『とびひざげり』が当たる直前、『ブレイズキック』を指示して、そのまま反対側の足で攻撃してくる。

 当然、『とびひざげり』にカウンターを合わせようとしていたエビワラーは、回し蹴りのように襲ってくる『ブレイズキック』に対応できなかった。まさか直前で技をキャンセルして、別の技に繋げてくるとは予想外の攻撃である。

 

 こうなればなりふり構っていられなかった。『みきり』を指示して、『ブレイズキック』を回避し、そのまま返しの刃で『きあいパンチ』を決める。

 これが超カウンターを使う前にずっと愛用していた俺達の最初の技、高速見切りカウンターきあパンだ!

 

 技スロットを全て使ってしまうという欠点があるものの、安定性は超カウンターを超えている。

 シゲルはエビワラーの超カウンターを見たことはあっても、高速見切りカウンターきあパンを見たことはない。何せ、カントーリーグ前にシバにボコられて、超カウンターを使うようになったのだ。リーグでは使っていない以上、シゲルに高速見切りカウンターきあパンを見る機会は存在しない。

 

 だからこそ、この場面では完全な不意打ちとして機能した。流石のシゲルもこの技には咄嗟に対応できないようで、威力540の一撃がサワムラーを戦闘不能にする。

 とはいえ、これでもうエビワラーは置物のようなものだ。シゲルも一度見た以上、こちらが全ての技を使い切ったのはわかっているだろうし、遠距離からボコられたら何も出来ずに殺されるだけである。

 

 シゲルがサワムラーを戻すと同時に、こちらもエビワラーを戻す。対応されるのが目に見えている以上、無駄死をさせたくはない。

 シゲルは再びニドクインを出してきた。

 サワムラーもかなり育成されていたが、やはりこのニドクインは別格に見える。おそらく、シゲルの手持ちの中でもトップクラスに育てているはずだ。こいつならばという信頼を感じる。

 

 こちらはベトベトンを出した。シゲルのニドクインは既に全ての技を使っている。『ドリルライナー』は弱点だが、一度掴めばその時点でいつもの必殺技に持ち込めるはずだ。

 どくタイプのニドクインはどく技を警戒する必要はないはずだが、他の変化技を嫌って、シゲルはまず『ちょうはつ』から入ってきた。

 しかし、そんなことは既に予測済みなので、ベトベトンは真っすぐニドクインに向かって動き出している。基本的に鈍足故に近接で先手は取れないが、相手が変化技を使ったのならば話は別だ。

 

 エビワラー大先生が広めている三色パンチの一つ、『れいとうパンチ』を使ってニドクインの弱点を攻めていく。

 対するニドクインも、『ほのおのパンチ』で対抗してきた。お互いの拳同士がぶつかり合うも、向こうの炎がこちらの氷を溶かしてダメージを与えてくる。

 だが、こちらの本来の狙いはパンチ合戦ではない。そのままニドクインの手をガッシリと掴み、ベトベトンがいつものお包み体勢へと移る。『のしかかり』で一気に勝負を決めてやれ!

 

「ニドクイン、『ドリルライナー』で脱出しろ!」

 

 しかし、ベトベトンがニドクインを包んだ瞬間、中で回転しているニドクインが大暴れしているようで、徐々にベトベトンの体が上へと浮かんでいく。

 だが、ベトベトンも意地でも離さんとばかりに、『かいりき』を使ってニドクインを押さえつけている。シゲルも完全脱出は無理だと判断したのか、ニドクインが『あくしゅう』で動きを止める前にベトベトンを倒すことへシフトした。

 

 そのまま、ニドクインはベトベトンの中から押すように攻撃を続け、壁まで押しやっていく。完全に密閉状態に出来ていないせいか、必殺の『あくしゅう』がそこまで機能していないようだ。壁に押し付けられたベトベトンは衝撃を逃がせずに、『ドリルライナー』の直撃を受けている。

 こちらも『かいりき』を使った『のしかかり』を継続しているはずだが、レベル差もあり、弱点の攻撃を受けているこちらの方がダメージは圧倒的にこちらの方が上のようだ。

 

 このままでは戦闘不能にされる。悔しいが一度戻すしかない――そう、判断を下して、俺がモンスターボールを出すのと同時に、ベトベトンも限界を悟ったようで、俺の指示なしで『じばく』を使った。

 

 ニューサトシは基本的に自爆技を使わない。

 

 個人的なこだわりだが、戦闘不能になった時に発動する『みちづれ』と違って、自分の命をコストに発動する技は何となく使わせなくないのだ。実際に死ぬわけではないとはいえ、気分が良くないのである。

 なので、そんな技を覚えさせるつもりもなく、ゲンガーのように『だいばくはつ』を覚えるポケモンですら自爆技は覚えていなかった。実際、ベトベトンもこの試合前には『じばく』など覚えていなかったはずである。

 

 まさか、俺を負けさせたくない一心で、今『じばく』を覚えたというのか?

 

 ベトベトンが『じばく』で戦闘不能になって倒れる。しかし、ニドクインはまだ立ち上がれるようで、ベトベトンを退かして何とか起き上がっていた。

 それでもかなりのダメージは与えている。ハッサム、ピカ様、ベトベトンが少しずつ与えたダメージは確実にニドクインの体力を減らし、ようやく肩で息をするくらいに追い詰めていた。

 

 ベトベトンをボールに戻す。全く、勝手に変な技覚えやがって。もう二度と使うんじゃねーぞ。俺も使わなくていいように、絶対に強くなるからよ。

 

 ベトベトンの心意気を無駄にしないためにも、この試合は絶対に勝つ。次のポケモンとして、再びハッサムを送り出した。

 シゲルも初っ端、『ちょうはつ』は隙を突かれると学んだようで、開幕から使うというような真似はしてこない。おそらく、こちらの『はねやすめ』に合わせて使うだけで十分だと思っているのだろう。

 

 ハッサムに再び、『バレットパンチ』と『ダブルアタック』によるオラオラコンボを指示する。

 それを見て、シゲルもまた『みだれひっかき』と『ほのおのパンチ』を合わせたオラオラコンボで対応してきた。

 

 今度は開幕からパンチの応酬である。だが、ベトベトンの与えたダメージがニドクインの動きを鈍らせ、今度はこちらのパンチがニドクインに直撃した。

 だが、ニドクインも倒れない。それがどうしたと言わんばかりに、再びオラオラコンボを仕掛けてくる。しかし、こちらも簡単に負ける訳にはいかないと、バレパンのオラオラコンボを繰り返した。

 

 最終的に互いの拳が顔面に当たり、ハッサムが倒れる。ニドクインは膝を突いたが、意地で戦闘不能にはなっていなかった。どれだけ打たれ強いんだ。まるで伝説のポケモンじゃねーか。

 

 ハッサムをボールに戻す。こちらの残りはピカ様、リザードン、エビワラー、バンギラスの四体だ。

 そのうち、ピカ様は技を二つ使っていて、エビワラーは技を全て使いきっている。だが、ニドクインは近接型だし、まだエビワラーでワンチャン倒せる可能性もあった。

 

 俺がエビワラーを出すと、シゲルはノータイムでニドクインを戻す。あれだけのダメージはちょっとの時間では回復しない。戻しても、次のバトルで必ず倒れるが故に、交換はしないと踏んでいたのだが――

 

「いけ、ムウマージ!」

 

 シゲルの三体目はムウマージだった。そして、まずい。こちらにはゴーストタイプの有効打はないが、戻そうとしてもおそらく『くろいまなざし』で交換を封じられる。実質、エビワラーはただのサンドバッグにされてしまった。

 

「このムウマージは、君のミュウツー対策でもある。準決勝でミュウツーを出したのは失敗だったね」

 

 前回のミュウツーはシンゴの罠にはまって自爆技二連から追い詰められたが、それでもゲンガーより先に『ちょうはつ』を使えるスピードと、あれだけの攻撃を受けても戦闘不能にならない耐久力、ハッサムを一撃で戦闘不能にするだけのパワーがあることはバレてしまった。

 

 それでも尚、ミュウツーの対策が出来ているということは、ミュウツーより先に『ちょうはつ』が使えるということだろうか?

 でなければ、ムウマージの変化技は全て封じられる。まぁ、今回ミュウツーはエントリーできなかったので悩む必要はないのだが、この先のバトルで同じ手が使われないとも限らない。出来ればここで全貌を暴いておきたかった。

 

 シゲルは、『くろいまなざし』で交換を防ぎ、『ちょうはつ』で変化技を封じてくる。ここまでは想定した通りだ。

 こうなると、こちらの残りの攻撃技は『カウンター』と『きあいパンチ』のみとなる。どちらも、かくとうタイプの技故にゴーストタイプのムウマージには無効だ。

 

 このまま殴り殺されるのかと思ったが、シゲルは三つ目の技にまさかの『ほろびのうた』を指示した。これで互いに三ターン後、戦闘不能になる。おそらく、最後の一つは『みちづれ』だろう。

 俺が竹中エンテイ相手にやった、必殺コンボだ。あの時は向こうがチートだったせいで失敗に終わったが、普通はこのコンボをされれば逃げることは出来ない。

 

 確信した。やはり、シゲルには何か先に『ちょうはつ』を使うすべがあるのだ。そうして、こちらの動きを封じた上で、『くろいまなざし』で逃げるのを封じ、『ほろびのうた』か『みちづれ』でミュウツーを確殺するのが狙いだろう。

 その『ちょうはつ』を通す方法まではわからないが、こういう嵌め方があるとわかっただけも収穫だ。後は、『ほろびのうた』のコンボをどうにかするだけである。

 

 しばらくして、シゲルがギリギリのタイミングでモンスターボールを出した。『ほろびのうた』の限界時間が来たのだろう。

こちらもすぐに反応してエビワラーを戻そうとしたが、『くろいまなざし』の効果はポケモンが完全にボールに入るまで続くようで、ムウマージが戻るのに合わせて戻すという作戦は使えなかった。

 

 ムウマージがボールに戻ると同時にエビワラーも倒れる。こりゃ、一度嵌められたら二度と抜け出せないな。

 

 俺のポケモンが先に三体戦闘不能になったことで、五分間のインターバルに入る。

 しかし、まだシゲルには五体のポケモンが残っており、おまけに姿を見せていないポケモンが三体も残っていた。

 こちらはリザードンとバンギラスがまだ姿を見せていないが、リザードンがいるのはまず間違いなくばれており、残り一体はミュウツーだと思われているはずだ。とはいえ、バンギラスを出せばミュウツーがいないのはおそらくバレるので、ハッタリとしてもあまり機能しないだろう。

 

 さて、どうしたものか。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・裏レンタル屋について。
 このカントー、ジョウトで、強いポケモンを高額でレンタルするだけの組織力がある裏レンタル屋。ニューサトシは気づきませんでしたが、当然彼らです。シンゴ自身も気付いていませんが、結果的に彼らに協力してしまいました。そのため、ちょっと戦犯しています。

・データについて。
 ニューサトシは軽く流しましたが、当然彼らは必要な情報を入手しました。また、地方リーグ準決勝というテレビ映像が放送される大舞台でさらなるデータを入手したことで、シンゴの役割は終えています。

・ミュウツー我ハココニ在リについて。
 実はアニメジョウト編ではミュウツー我ハココニ在リという、ミュウツーとサカキ様率いるロケット団の特別な話が三話ほどありますが、原作と内容が変わっているのでスルーしていました。しかし、ミュウツーを失った彼らがそのまま黙っているはずがなく、今は水面下で行動中です。これについてはいずれ本編で。

・シゲルとの決勝戦が始まった。
 ニドクインだけでなく他のポケモンも60レベルくらいにまで育て上げている。ただし、ムウマージだけは急遽ミュウツー対策で入れたので、若干レベルが低い。それでも50以上はある。全力でニューサトシをねじ伏せに来た。


 現在ゲットしたポケモン

 ピカチュウ Lv.56

 ピジョット Lv.52

 バタフリー Lv.52

 ドサイドン Lv.55

 フシギダネ Lv.52

 リザードン Lv.57

 ゼニガメ  Lv.52

 キングラー Lv.52

 カモネギ  Lv.52

 エビワラー Lv.52→53

 ゲンガー  Lv.53

 オコリザル Lv.53

 イーブイ  Lv.51

 ベトベトン Lv.51→52

 ジバコイル Lv.52

 ケンタロス Lv.52

 ヤドラン  Lv.51

 ハッサム  Lv.51→52

 トゲキッス Lv.47

 プテラ   Lv.52

 ラプラス  Lv.51

 ミュウツー Lv.71

 バリヤード Lv.52

 イワーク(オレンジ諸島の姿) Lv.48

 カビゴン  Lv.46

 ニョロトノ Lv.46

 ヘラクロス Lv.44

 メガニウム Lv.44

 マグマラシ Lv.43

 ラティアス Lv.30

 ヘルガー  Lv.44

 ワニノコ  Lv.43

 ヨルノズク(色違い) Lv.43

 カイロス(部分色違い) Lv.44

 ウソッキー Lv.43

 バンギラス Lv.55

 ゴマゾウ  Lv.30

 ギャラドス(色違い) Lv.34



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