ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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Rside.01 『みだれひっかきでサヨウナラしない』

 12歳 δ月η日 『なんぞこれ? ロケット団side』

 

 それは、いつものようにムサシ、コジロウ、ニャースが、ニューサトシのポケモンをどうやって奪おうと考えていた時のことだった。

 ニャースがたまたま檻の中に捕まっている大量のアーボを見つけたのである。どうしてそんな状況になったのか、ニャースに通訳を頼むと、どうやら密猟者に捕まって酷い目に合わされたらしい。おまけに、檻には電流が流れる仕組みになっていて、逃げるに逃げられないという状況だった。

 

 密猟者――ポケモンハンターと聞いて、三人の脳内に小生意気な子供の声が蘇る。

 

「お前ら、ホウエンでポケモンハンターを見つけたら警戒しておけ。確か、バンギラスを使ってきたはずだ。そこそこ強いっぽいから、舐めてると返り討ちに合うぞ」

 

 その時は、何を言っているかわからず、適当に返事をしていたが、今の状況になってあの時の言葉はこのことだったのだと理解した。

 

 だが、今現在その密猟者の姿はない。

 

 罠を放置して出かけるなど二流と判断し、そのままアーボ達は自分達の手柄にしようと三人は考えた。しかし、ムサシのパートナーであるアーボックは、同胞を手柄にすることに否定的である。

 手柄にするということは、このアーボ達を売るということだ。ロケット団もこの密猟者と同じ穴の狢。このまま手柄にすれば、このアーボ達の未来はどうなるかわからない。

 

 しかし、ムサシはしっかり相棒の気持ちを考えていた。ただ売るのではなく、カントーやジョウトの時のように、ポケモンをロケット団で使って貰えるように頼むのである。

 アーボなら潜入捜査にも使えるので、ロケット団員となれば酷い目にも合わないだろう。アーボックもそれなら文句はないということで、同胞を助けることに協力的になった。

 

 だが、アーボックの『ようかいえき』やマタドガスの『ヘドロこうげき』でも、檻は欠片も溶けなかった。どうやら、アーボ対策に毒に強い特殊な金属を使っているようだ。

 チッ――と、ムサシが舌打ちするのと同時に、空からオニドリルが強襲してくる。どうやら敵に自分達の存在がバレたらしい。ムサシの「散開!」という掛け声で、三人は距離を取った。

 

 オニドリルが旋回するように来た道を戻っていくと、そこにはトレーナーらしき男の姿が見える。

 おそらく、こいつが密猟者だろう。おまけに、どこから捕まえてきたのかドガースの群までもが檻に入れられている。同胞の無残な姿に、コジロウのマタドガスが悲しそうな声を上げた。

 

 リョウと名乗ったこの密猟者は、どうやらクライアントの命令でどくポケモンを集めているらしい。

 ホウエンならアーボやドガースよりも、ハブネークやロゼリアの方が主流のように思えるが、ここいらにはたまたまアーボとドガースの群れがいたのだろう。

 

 ロケット団がアーボックとマタドガスを連れているのを見たリョウは、進化系を捕まえればさらに報酬が増えると考えたようで、二体を残して消えるなら見逃してやると声をかけてきた。

 あまりの上から目線に、三人の怒りのメーターがはち切れる。長い間、自分達と苦楽を共にしてきた大切なパートナーを売れと言ってきたのだ。怒らない人間の方がおかしい。

 

 ムサシとコジロウが戦闘態勢に入ると、リョウも新たにサナギラスを出してきた。ニューサトシの情報からはバンギラスと聞いていたが、相手が弱いのは有難いことである。

 

 ムサシはオニドリルを出してオニドリルの相手をすることにした。コジロウはひこうタイプのポケモンをギャラドスくらいしか持っていない。大空を飛ぶオニドリルの相手は難しいと判断したのだ。

 コジロウもまたギャラドスでサナギラスに攻撃を仕掛けていく。オニドリルの相手はムサシがすると信じて、自分はサナギラスの弱点を突いていくことにしたのである。

 

 ここまでに会話はない。長い間組んでいた相棒だからこそ出来るパーフェクトコンビネーションで、リョウを攻め立てていく。

 おまけに、この二人は個別に戦うよりも、二人で力を合わせた時に本来の実力を発揮するタイプだった。普段はムサシの勢いにコジロウがついて行くという感じで、実力が出し切れずにやなかんじーにされるが、今回のように本気になると別次元の動きになる。

 

 もし、今のロケット団をニューサトシが相手にしたら、かなりの苦戦をさせられるだろう。

 そんな二人を、そこそこ強い程度の密猟者で相手どれるはずがなく、戦況はすぐに不利になって行った。

 

 オニドリル同士の戦いはレベル的に互角だったが、ムサシの誘導によって低空飛行させられた所を、ギャラドスの『れいとうビーム』で叩き落されている。

 舌打ちをしながら、リョウがオニドリルをボールに戻していく。また、戦況を有利にしようとサナギラスが『すなあらし』を起こしたが、ギャラドスの『あまごい』で即座に上書きし、ムサシのオニドリルによる『ドリルライナー』で弱点攻撃を仕掛けられていた。

 

 このままではまずいと、リョウが焦りを見せる。しかし、その瞬間、サナギラスはバンギラスへと進化した。

 

 形勢逆転とばかりに、「フフフ、そろそろ進化する頃だと思っていたんだ……」とドヤ顔するリョウだが、残念ながらムサシとコジロウはそれ以上に強いバンギラスを相手にしたことがある。

 バンギラスの特性である『すなおこし』で再びフィールドが砂嵐状態になるが、再びコジロウのギャラドスが『あまごい』で天候を雨に変えていく。

 

 バンギラスのようないわポケモンは、砂嵐状態の時に特防が強くなる。だからこそ、天候は即座に変えなくてはいけない。ポケモンリーグに参加していたムサシのためにコジロウが身に付けた知識の一つだ。

 また、バンギラスに進化したことで、いわ・あくタイプとなり、かくとうタイプの攻撃が四倍になっている。

 

 それを聞いたムサシは、新たにサワムラーを出した。これは正式なポケモンバトルではないので、オニドリルは戻さない。むしろ、下手なことをされないように、見張りとして置いておく必要があった。

 リョウはバンギラスの『はかいこうせん』で、一気にこちらを倒そうとしてくる。だが、ムサシやコジロウからすれば二流の攻撃だった。

 

「バンギラスが強いからって、強い技使わせればいいってもんじゃないのよ!」

「タイプ不一致の技で攻撃するとか素人だな。一流の戦い方を教えてやるぜ!」

 

 コジロウは新たにフシギダネを出し、『まもる』で『はかいこうせん』を防がせる。どんなに強い技でも、『まもる』で防いでしまえば効果はない。

 おまけに、相手は『はかいこうせん』の反動で動けなくなるのだ。コジロウもかつてはギャラドスで『はかいこうせん』を撃ってニューサトシに同じことをやられた経験があるが故に、対処は呼吸をするようにスムーズに行われた。

 

 相手の動きが止まったのを確認すると、ムサシがとどめの『とびひざげり』を指示してバンギラスにとどめを刺しに行く。

 普段であれば、『こころのめ』を併用する所だが、身動きが出来ないバンギラス相手ならば必要ない。いくらバンギラスとはいえ、四倍弱点であるタイプ一致のかくとうタイプ130の物理技に耐えられるはずがなく、一撃で戦闘不能に持って行かれた。

 

 当然とばかりにハイタッチする二人。

 

 ムサシもそうだが、コジロウもまたムサシに引き上げられる形で実力を伸ばしていた。

 ただ、まだ自分自身で自覚していないこともあり、こうして二人で戦わないとその実力を出せずにいるが、今は素直に勝てたことを喜んでいいだろう。

 

 自慢のバンギラスまでもが倒され、リョウが「そんな、バカな……」と言いながら後ずさっていく。

 しかし、逃げ道はなかった。チャリンという音と同時に、後ろにあったドガースの檻が開き、中からドガースの群が出て来る。見れば、アーボの群も既に自由になっていた。

 

「全く、何でにゃあがこんな目にあってまで、自慢の爪でピッキングしないといけないのにゃ」

 

 そう、今までずっと姿を隠していたニャースがアーボ達の檻の鍵を開けていたのだ。

 その姿は見るも無残な黒焦げ状態である。檻に触ると電流が流れる仕組みになっていたせいで、それに耐えながらピッキングで鍵を開けていたのである。

 

「やるじゃないニャース」

「見直したぞー」

「まぁ、こんな電撃、ピカチュウの『10まんボルト』に比べればにゃんてことにゃいにゃん」

 

 戦えるポケモンは既になく、一人になったリョウはアーボ、ドガースの群に囲まれる。

 助けを求めるも、そんな助けに応える奴がこの場にいるはずもなく、アーボとドガースの無慈悲な攻撃にさらされていた。これで一件落着である。

 

 ある程度仕返しさせて、アーボとドガースの群を満足させると、リョウとバンギラスを簀巻きにして『私はポケモンを密漁しようとしました』という看板をぶら下げておく。

 これで、こいつらを見つけた誰かが警察に届けてくれるだろう。正義の味方の真似など、悪のロケット団がするべきことではないということで、後始末は割と適当にやっている。

 

 残る仕事は勧誘だけだ。アーボとドガースの群を、改めてロケット団に誘っていく。ここで群が嫌がるようなら、このまま逃がしてやってもいいとムサシとコジロウは考えていた。

 しかし、自分達を助けてくれた恩を返したいということで、アーボとドガースの群れはロケット団入りを快諾する。三人はすぐに本部に連絡を入れ、運搬用の飛行船を手配して貰うことにした。

 

 しかし、このまま本部の人間が来るのをゆっくり待っている訳にもいかない。ニューサトシ達はもうすぐそこまで来ているのだ。奴等はこちらの都合などお構いなしに先に行ってしまうので、このままずっと待ち続ける訳にもいかないのである。

 

 と、いうことで、アーボックとマタドガスにはしばらく群の管理を任せることにした。本部宛の手紙を預け、迎えが来たら一緒に本部へ行くように指示する。

 

 これには手持ち事情も関係していた、今現在ムサシの手持ちはアーボック、サワムラー、オニドリル、ソーナンス、リングマで、そろそろ枠が厳しい。

 コジロウも手持ちがマタドガス、ギャラドス、ウツボット、フシギダネ、ニューラで、手持ちが増えれば誰かを本部に送ることになってしまうのだ。

 

 ならば、先んじてアーボックとマタドガスを本部に送り、これから送るアーボとドガースの群の管理を任せる。

 預けたアーボとドガースの群が使えれば使えるほど自分達の評価も上がるし、アーボックとマタドガスは仲間達の心配をしなくて済むという一石二鳥の名案だった。

 

 とはいえ、ムサシもコジロウも、アーボックとマタドガスの力が必要になったらすぐに呼び戻すつもりではいる。

 アーボックとマタドガスは少し寂しそうにしているが、これが最後の別れという訳ではないのだ。とある世界線では最後の別れになってしまったが、この世界ではニューサトシというイレギュラーによって結末が変更されてしまったのである。

 

 その後、アーボックとマタドガスを置いて先に進んだ三人の前に、たまたまサボネアが現れ、コジロウがクッキーを上げたのに感動して仲間になったり、ムサシもハブネークをゲットしたりすることになるのだが、それはまた別のお話。

 

 

 




 いずれ番外編で出そうと思っていましたが、想像以上に望む声が多かったので急遽仕上げました。
 ポケモンハンターとのバトルはかなり一方的なものになっています。ぶっちゃけ、バンギラスに真正面から『はかいこうせん』撃たせるレベルの相手に苦戦しようがありません。

 また、アーボとドガースの群は、ロケット団本部に送られました。これについては、あとがきで書き忘れていたので書き直しておきます。


【挿絵表示】


 2023年4月29日(土)オカタヌキ様より、ファンアートを頂きました。素晴らしい絵をありがとうございます。


 ムサシ  ポケモン一覧

 アーボック Lv.49
 サワムラー Lv.46
 オニドリル Lv.44
 ソーナンス Lv.42
 リングマ  Lv.41
 ハブネーク Lv.6


 コジロウ ポケモン一覧

 マタドガス Lv.49
 ギャラドス Lv.47
 ウツボット Lv.45
 フシギダネ Lv.42
 ニューラ  Lv.41
 サボネア  Lv.7


 ホウエン初期時点の大体のレベルです。ニャースは秘密。そういえば、改めて書いていてニューラをコジロウがゲットしていたくだりを書き忘れてたのを思い出しました。まぁ、本編にあんまし関係ないからいいか!


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