12歳 ε月π日 『恋はいつでもハリケーン!』
トウキの一番弟子にして最愛の恋人を名乗るシノブとかいう女がバトルを仕掛けてきた。
見た感じ、連れているアサナンのレベルはヘイガニとどっこいくらいだったし、シノブも熱くなる性格だったので、隙を突いてボコボコにしてやったのだが、勝負が着く前に彼氏であるトウキが現れて、もうすぐこの近辺にハリケーンがやってくると言ってくる。
そんなハリケーンなんていきなり発生する訳ないやろーと、思ったのだが、今の今まで何の気配もなかった方向から急に大きな風がうごめき始めていた。
ハリケーンってこんな簡単に出来るものなん? と、思ったが、このままでいる訳にもいかないので、仕方なくバトルを一時中断して近くの洞窟へ避難する。
警告しに来てくれたトウキにお礼を言っていると、どうもシノブの様子が少しおかしくなっていた。
そのままトウキと話していてわかったことなのだが、どうもシノブはかなり話を盛っていたらしい。
聞けば、シノブはトウキの恋人でもなければ一番弟子でもないというのだ。むしろ、バトルですぐ熱くなってポケモンとの連携が不十分ということで、弟子入りを却下されたという。確かに、バトルをしていて随分と短気な奴と思ったのはここだけの話である。
トウキは、シノブにもっとポケモンとの一体感を掴んで欲しいようだ。確かに、トウキはポケモンとの一体感を大切にしているしな。
シノブの負けん気も、バトルをする上で大切なことではあるが、トウキの弟子になりたいなら、もっと冷静にポケモンを見ないと駄目ということか。
追記。ハリケーンが去った次の日、再びシノブがバトルを挑んできた。勝負は俺の勝ちだったが、どうも言われたことを実践してきたようで、前よりも落ち着いていたように見える。トウキもこれなら大丈夫だということで、弟子入りを認めていた。恋はいつでもハリケーンなのである!
12歳 ε月ρ日 『ウーハー!』
今日も元気にトレーニングをしていると、海岸に上半身裸のおっさんがドヤ顔で仁王立ちしているのを見つけた。っていうか、四天王のシバだった。
思えば、会うのもジョウトリーグ以来である。こんな所まで何しに来たのか聞いてみると、どうもトウキの練習相手として呼び出されたらしい。そういえば、シバとトウキは親交があるって、どこかで聞いたことがあるような気もする。
本来であれば、四天王であるシバの下にトウキが行く所だが、シバが丁度近くにいたことと、俺とガチバトルをするのを聞いてわざわざ来てくれたようだ。
どうも、トウキはガチで俺との戦いに備えているようで、わざわざ四天王を練習相手に呼んでくれたらしい。
ただ、シバはトウキだけではなく、今の俺の実力にも興味があったので、トウキの所へ行く前にこうして会いにきてくれたとのことだ。
シバが黙ってモンスターボールを出す。それだけで全て伝わった。特に何も言わず、ニューサトシもモンスターボールを取り出していく。
いいぜ。かつての再戦と行こうではないか。
モンスターボールからエビワラーを出すと、シバもエビワラーを出してくる。一年半くらい前に苦い記憶を味わわされた因縁の相手だが、俺のエビワラーは欠片も緊張を見せなかった。
「ふっ、こうして改めて向かい合って見ると、あの時とはまるで別人だな……」
それはニューサトシに対してなのか、それとも俺のエビワラーに対してなのかはわからない。
だが、あの時は俺もエビワラーも未熟だった。今も決して熟しきった訳ではないが、それでもあの時よりは成長しているはずだ。それを今、見せる時である。
気を利かせてくれたようで、タケシが審判として名乗りを上げた。
ハルカは突然のことに置いてきぼりになっており、マサトは「サトシとシバさんのバトルなんてすごいや!」と盛り上がっている。
ラティも状況は分かっていないだろうが、とりあえずバトルをすることはわかったようで「がんばる」と、いつもの応援をしてくれていた。
互いのエビワラーが距離を詰めていく。
バトルフィールドなんてものはない。前と同じだ。この自然そのものがフィールドである。海岸線沿いではあるものの、地面はしっかりしているので、動くのに支障はなさそうだった。
ルールはあの時と同じである。一対一で、レベル制限はなし。エビワラー同士が中央で拳を合わせると、タケシの「始め!」という合図と共に距離を取った。
前回のバトルで、俺のエビワラーがカウンター型というのはバレている。おまけに、前回は力の差が有り過ぎてシバは技の指示以外は殆どをエビワラーの判断に任せていた。つまり、あのエビワラーがどういうタイプなのか、俺にだけ情報がないのである。
とはいえ、やることは基本的に変わらない。ステップを踏むエビワラーが、『こうそくいどう』で素早を二段階上げていく。
対して、シバのエビワラーは『ビルドアップ』で攻撃と防御を一段階上げてきた。素直にステータスを上げてきたか。ってことは、シバのエビワラーは打ち合いをするタイプだな。
かくとうタイプのポケモン同士の対決で、相手の攻撃と防御が上がるのを待つのは悪手である。これ以上ステータスを上げられる前に先手を打って行こう。
俺のエビワラーがシバのエビワラーとの距離を詰めていく。レベルが上がったり、トレーニングを積んだりと、今までの努力によってこちらは前よりも素早が上がっている。そのせいか、咄嗟にシバのエビワラーが牽制のジャブを打ってきた。
そのジャブを掻い潜って、『マッハパンチ』で顔面に一撃を入れる。しかし、もう片方の腕でガードされた。ならばと、足を使って外から『マッハパンチ』を打って行く。相手を釘付けにして動けなくさせてやれ。
だが、シバはガードを固めさせてきた。エビワラーが亀のように丸まっている。ならば、手を出したくなる隙を作ってやろう。『きあいパンチ』を指示して、敢えて攻撃を誘っていく。
ピクっと、一瞬動く素振りを見せたが、ガードはそのままだった。仕方ないので、ガードの上からそのままきあパンを叩きこんでいく。特性『てつのこぶし』によるタイプ一致の一撃だ。『カウンター』なしでも、かなりのダメージを相手に与えたはずである。
「相手の攻撃を待っていた頃が嘘のようだ。今では、『きあいパンチ』すら、カウンターのための囮か」
「まだまだ、こんなもんじゃないですよ」
とはいえ、シバのエビワラーもダメージは受けたはずだが、『ビルドアップ』で防御が一段階上がっていたことと、ガードを固めていたことから大ダメージにはなっていない。
嫌な感じだな。攻めているし、ダメージも取ってはいるが、シバはまだ動いていないのである。相手の型も読み切れていないし、手探り状態という感じで流れを掴み切れない。
エビワラーも同じことを思っているのか、左手を動かして相手を挑発している。動いて来いと言っているのだ。
シバは再び『ビルドアップ』を指示した。対するこちらも『マッハパンチ』を顔面に入れるが、これで攻撃と防御は二段階ずつ上がったことになる。
続けて、シバは『ほのおのパンチ』と『かみなりパンチ』を指示してきた。まさかの技チョイスである。おまけに、左手に炎、右手に雷を宿し、両腕を使って二つの技を発動させていた。
そういえば、ポケスペのシバがこんな技を使っていたっけか。成程、『ビルドアップ』はタイプ不一致技の威力をサポートするためのものという訳だ。
シバのエビワラーが一転して反撃に出てくる。相変わらず、隙の無い拳で連打を重ねてくるが、俺のエビワラーは『こうそくいどう』をもう一段階積むことで、その全てを回避していた。
おそらく、『ほのおのパンチ』は火傷、『かみなりパンチ』は麻痺を狙ってのことだろう。前者なら攻撃力が半減するし、後者ならこちらの足が止まる。なかなか嫌らしい攻め方をしてくるものだ。
とはいえ、元々物理耐久が紙な以上、一撃も貰わないのが俺のエビワラーのスタイルである。どんな攻撃だろうと、全て回避していく。
それに、そんなに攻撃を打ちまくるのも迂闊だ。いくら前回のバトルでカウンターのタイミングを見切られたとはいえ、こちらもあの時のままではない。高速見切りカウンターきあパンから、超カウンターに変わったことでカウンターの仕方自体が変わっているのだ。カウンター使いであるうちのエビワラーにリズムを覚えさせるというのが、どれだけ怖いことか教えてやる。
エビワラーにゴーサインを出す。
その瞬間、シバのエビワラーの右拳に合わせて『きあいパンチ』と『カウンター』を発動させる。相手の攻撃を避けつつ、返しの超カウンターで一気にKOに持って行ってやるぜ。
「――は?」
超カウンターは完全に決まった。
はずだった。
だが、何故か俺のエビワラーがシバのエビワラーの『かみなりパンチ』を受けて倒れている。
「えっ、えっ、何か起きたの? お姉ちゃん、見えた!?」
「ううん、早すぎて良くわからなかった」
「がんばる!」
マサトやハルカ、ラティだけではない。それこそ、審判をしているタケシも、俺も、何をされたかわからなかった。
だが、かろうじて戦闘不能は避けたようで、エビワラーが立ち上がって距離を取っていく。どうも運よく、状態異常も引かなかったらしい。とはいえ、ダメージは深刻だ。たった一撃で足が震えている。
「そんなに驚くことじゃないだろう。これは君が教えてくれたんだぞ、サトシ君」
俺が教えた? 何をだ?
「一年半前のあのバトルで、君のエビワラーは俺のエビワラーの防御を突破するために、パンチの最中に『こうそくいどう』を使って無理矢理変速を起こした。俺のエビワラーもそれをやったに過ぎない」
一年半前、俺達はまだ高速見切りカウンターきあパンの欠点に気付かないままシバに喧嘩を売った。
しかし、バトル中にシバにカウンターを攻略され、手も足も出ない状況に陥ったのである。そこで、シバの口にした通り、こちらのパンチを防御されるのを突破するために、俺達は攻撃中に『こうそくいどう』を使うことで相手の防御タイミングをずらした。
「君のエビワラーがカウンターを使った瞬間、こちらも『こうそくいどう』でパンチの速度を変えた。たったそれだけのことだよ」
確かに、言葉にすれば簡単なトリックだ。カウンター使いにとってタイミングが狂うことは失敗を意味する。
今にして思えば、あの単調な攻撃も誘いだったのだろう。俺のエビワラーはまんまとその罠に嵌り、相手のタイミングを覚えさせられた。
後はこちらがカウンターを使った瞬間、相手は『こうそくいどう』で攻撃速度を上げるだけでいい。こちらの計ったタイミングよりも早くパンチが来れば、当然カウンターは失敗する。
とはいえ、確かに言葉にすれば簡単だが、こちらがカウンターを打つタイミングを完全に読み切らなければ出来ない芸当だ。
何が、たったそれだけのことだよ。
その、たったそれだけのことが出来る人間がこの世にどれだけいる。こっちは前とカウンターの型が変わっている上、素早を四段階も上げていた。普通なら動きを追うのですら精一杯のはずだ。それをこうもアッサリと――
「では、続きと行こう。エビワラー、『ほのおのパンチ』、『かみなりパンチ』」
くっ、俺のエビワラーは今の一撃で瀕死寸前だ。
今の会話の間に、少しは回復したか?
いや、足はまだ死んでる。
仕方ない。上体だけでかわして行くしかない。
突っ込んでくるシバのエビワラーの左右二色のパンチを、上体反らしやスウェーでかわして行く。やはり、いくらシバのエビワラーが『こうそくいどう』を使ったとはいえ、二回積んでいるこちらの方がまだ速い。
シバはさらに『こうそくいどう』を指示した。同じ速度域にスピードを上げれば攻略できると考えたのだろう。
しかし、避けられないのであれば流すまでだ。回避の間に『マッハパンチ』を挟むことで、相手の攻撃自体を反らしていく。
「攻撃を受け流すセンスはこちら以上か……」
中距離からでは攻撃が当たらないと判断すると、シバは距離を詰めるように指示を出した。密着して攻撃を当てようということだろう。
流石に距離を詰められるときついので、『マッハパンチ』で牽制する。しかし、『ビルドアップ』で防御も二段階上がっているからか、多少の被弾を無視して距離を詰めてきた。
だが、この攻防の間にギリギリ足が回復したようで、向こうの攻撃が当たる直前にエビワラーがバックステップで距離を取る。
シバは「逃したか」と呟くと、そのままエビワラーに『ビルドアップ』を指示して、また攻撃と防御を上げてきた。おそらく、こちらの攻撃を誘っているのだろうが、まだ足が完全に回復しきっていない。
それに、仮に打ち合ったとしてもカウンターは仕掛けられなかった。向こうがまだ一回『こうそくいどう』を残しているのは把握しているのだ。
下手に仕掛ければ、先程と同じ返しをくらう。
つまり、カウンターは実質封じられたということである。しかし、シバがカウンターをメタってくるとは思わなかった。これで、こちらは鎖で雁字搦めにされたようなものだ。
「どうだ、サトシ君。カウンター封じの味は?」
「面倒なことこの上ないですね。まさか、こんな手で来るなんて思いもしませんでしたよ」
「相手の得意なものを敢えて潰すのもまたバトルだ。他にもいくつか手を考えたんだが、これが一番精神的なダメージを与えられそうだったんでな」
確かに、その通りだ。まさか、過去の自分に足元を掬われるとは思いもしなかった。とはいえ、これは純粋にシバが一枚上手だったというしかない。
だが、このままやられるつもりはなかった。カウンターを封じられたくらいで動揺すると思ったら大間違いである。
カウンターがダメなら足で勝負だ。向こうは変速のために、最後の『こうそくいどう』を残しておきたいはず。なら、こちらは逆に最後の『こうそくいどう』でマックスまでスピードを上げてやる。
足の調子を確かめるように、エビワラーが左右にステップを踏む。この会話の間に、足は完全に回復したようだ。
とはいえ、HP的なダメージは相変わらず限界に近い。おそらく、もう一撃まともに受ければ耐えられないだろう。
長期戦は不利だ。ここでスタミナを全部吐き出すつもりで、エビワラーにスピード勝負を仕掛けさせる。最高速度の『マッハパンチ』で、シバのエビワラーの顔面に連打を入れていく。
ただ、防御が三段階上がっているせいもあってか、相手のダメージはそこまでではなかった。しかし、小さなダメージも重ねればどうだ?
そのまま、シバのエビワラーの周りを走りながら、『マッハパンチ』でダメージを重ねていく。
シバは、左右の二色パンチで迎撃を指示してきた。だが、向こうは素早が四段階上がって尚、捨て身のこちらの速度について来られず、拳は虚しく空を切っている。
攻撃を当てるのが難しいと判断すると、シバは『ビルドアップ』を限界まで積むように指示してきた。防御力を上げて、こちらの足が止まるまで粘るつもりなのだろう。
確かに、この限界を超えた速度は長時間維持出来ない。こちらの足が止まるか、向こうが戦闘不能になるかの勝負だ。
向こうも完全防御体勢に入る。『ビルドアップ』中に、横から『マッハパンチ』を二連打していくが、もう『ビルドアップ』を何度も積んでいるからかダメージは少ない。こうなれば『きあいパンチ』しかないということで、拳に気合を貯めていく。
向こうがビルドの四段階目を積み終えると、こちらの集中を妨害するために、小さく手を出してくるが、こちらも回避しながら気合を貯めていった。
いつもカウンターをするために相手の攻撃に合わせて『きあいパンチ』を打っているのだ。攻撃を避けながら気合を貯めるくらい、今のエビワラーには朝飯前である。
これも前の敗戦で、超カウンターをものにするためにした努力の成果だ。『みきり』による完全回避ではなく、自身の技術で相手の攻撃を見切っているからこそ出来た技である。
邪魔するのは無理と判断したシバのエビワラーがガードに移ったので、その上から『きあいパンチ』を叩きこんでいく。
しかし、倒し切れない。ダメージは与えているはずだが、ガードの上からではやはり決定打にならないのだ。こうなれば、『きあいパンチ』を連打するしかない。
一か八か、左で『マッハパンチ』連打、そして右で『きあいパンチ』を使うのも考えた。
シバのエビワラーがやっている技術である。向こうに出来るならこちらにも出来るはず――と、考えた所ですぐに却下した。無理だとわかったからだ。あれは、左手で数式を解きながら、右手で英語を翻訳しているようなものである。当然、訓練もなしに出来ることではない。
もう一発、『きあいパンチ』を叩きこんでいく。
だが、その間に『ビルドアップ』の五回目を積み、二発目を受けても耐えている。相手が完全防御態勢に入っているので、少し足を休めようとしたが、その瞬間に『ほのおのパンチ』と『かみなりパンチ』の連打で反撃に出てきた。
チッ、逆に休む暇は与えないってことか。
こちらが再び、移動しながら『きあいパンチ』の貯めに入ると、向こうも最後の『ビルドアップ』を積んできた。
そのまま三度目の『きあいパンチ』を振り抜いていく。三発とも相手のガードに阻まれているが、それでもダメージはかなり与えているはずだ。
向こうが『ビルドアップ』を積み終わったことで、また二色のパンチで手を出してくる。しかし、こちらが『きあいパンチ』のモーションに入るとガードに入った。
四度目の『きあいパンチ』もガードされる。
だが、シバのエビワラーもダメージが蓄積されているようで、少しふらついた。そりゃそうだ。いくらガード越しだったとはいえ、基本威力150で特性『てつのこぶし』によって1.2倍、タイプ一致で1.5倍、合計270になっている『きあいパンチ』を何度も入れているのだ。効かない方がおかしい。
後ちょっとだ。後ちょっとで倒れる。
しかし、こちらのスタミナもそろそろ限界だった。もう次の『きあいパンチ』は間に合いそうにないので、『マッハパンチ』の連打でとどめを刺していく。
シバも、こちらが限界なのはわかったようでガードをさらに固めさせた。こちらの『マッハパンチ』が何発か当たると、予想通り俺のエビワラーが失速していく。ガス欠だ。
対するシバのエビワラーは立っている。かなりHPを削りはしたが、まだギリギリで耐えていた。もう一押しが押し切れない。おまけに、相手は攻撃と防御は最大まで強化されている。
こちらの動きが止まると、今度はこちらの番だと言わんばかりに、シバのエビワラーが攻勢に出てきた。こちらは上体反らしやスウェーで回避していくものの、足が完全に止まっている。
それを見たシバが距離を詰めさせた。こちらも『マッハパンチ』による牽制を打つが、ガードしたまま詰めてきて近距離戦を強いられる。こっちのエビワラーもガードを固めるが、その上から二色パンチの連打が襲い掛かってきた。
凄まじい猛攻だ。こうなるともう手が出せない。
このままでは倒されるのも時間の問題である。どうやらエビワラーもそれはわかっているようで、防御しながら相手の隙を伺っていた。
せめて倒れるなら、最後に一撃打ってやろうというつもりなのだろう。気持ちはわかるが、シバもそれには気付いている。カウンターを打てば、間違いなく『こうそくいどう』による変速で、こちらにとどめを刺そうとしてくるはずだ。
最初から、一か八か相手の『こうそくいどう』の変速に合わせて、こちらも『こうそくいどう』を利用した変速カウンターを打つべきだったか?
いや、流石に博打が過ぎる。
失敗すれば即戦闘不能にされるし、あの時点ではスピード勝負に持ち込んだ選択肢は間違ってなかったはずだ。その結果、シバのエビワラーは攻撃に転じられずにここまで消耗させられた。後ちょっとなんだ。こちらに残った最後の力を叩きこめば、シバのエビワラーを戦闘不能に持っていける。
考えろ。
あのカウンター封じの変速を破る方法を考えるんだ。
相手のタイミングが変わるのがわかっているのだから、それに合わせればいいなどという問題ではない。
そもそも、その変速のタイミングが読めないから合わせられないのである。ハイスピードのリズムゲーをやっていて、ボタンを押す直前でリズムが変わればミスをするのと一緒だ。何度かやれば慣れても初見で合わせるのは難しい。
いや、考え方を変えるんだ。
カウンター封じを破れないのであれば、破らなければいいだけの話だろう。
「エビワラー、『カウンター』!!」
本来の『カウンター』という技は、相手の攻撃を受けた際に、そのダメージを倍返しするものだ。俺達の場合、その攻撃を受けるのを省略して『倍返し』するという特性を利用して超カウンターを使っている。
だから、カウンターそのものを封じられれば、超カウンターは使えない。しかし、技としての『カウンター』ならどうだ?
ガードの上から叩きつけられたダメージを『倍返し』する。これなら、変速も関係ない。何せ、攻撃後に攻撃しているのだから、攻撃の速度を変えた所で意味などないのだ。
返しの刀でシバのエビワラーの顎を刈り取る。
だが、『ビルドアップ』で防御が最大になっているのと、ガード越しのダメージを反射しただけということもあって、それだけでは戦闘不能にはならなかった。
しかし、顎を強打されたことで脳が揺れている。
ポケモンも人間と一緒だ。脳の機能が麻痺すれば一時的に体が動かなくなる。その隙に気合を貯めていく。最後の『きあいパンチ』で一気に相手を戦闘不能にしてやれ!
エビワラーが渾身のきあパンを振り抜く。
だが、ギリギリで動けるようになったシバのエビワラーは『こうそくいどう』でパンチの速度を上げることで、こちらの『きあいパンチ』に『ほのおのパンチ』のカウンターを合わせてきた。
シバのエビワラーの一撃がこちらに命中し、限界だった俺のエビワラーが倒れる。まさか、ここでカウンターを返されるとは思わなかった。
確実性を取って『きあいパンチ』を選択したが、『マッハパンチ』連打の方がよかったか。いや、『マッハパンチ』の威力では耐えられた可能性だってある。どちらがよかったかなど結果論でしかない。
「サトシのエビワラー戦闘不能! よって、四天王のシバの勝利!」
タケシの判定を聞くと同時に、互いにエビワラーをボールに戻す。いいバトルだったぞ、今はゆっくり休んでくれ。
「最後はギリギリだった。もう少し回復するのが遅れていたら、やられていたのは俺の方だっただろう」
「『マッハパンチ』なら決め切れてましたかね?」
「さてな。だが、俺のエビワラーもそんなに軟ではない。俺が君の立場でも『きあいパンチ』をチョイスしただろう」
ぶっちゃけ、ポケモンの能力にそこまで大きな差はなかった。あったのはトレーナーの差だ。
シバは俺に対する対策を完全に立てて本気の勝負を仕掛けてきたが、俺はそれに対応できなかった。スピード勝負をする前に、『カウンター』によるカウンター封じ破りを思いついていればまた勝敗も変わったかもしれない。
やはり、行き当たりばったりなバトルでは限界があるな。相手の動きを読むことで、相手の動きを誘導する――それが、俺に出来ていなくて四天王やチャンピオンに出来ていること。今後の俺の課題だ。
シバは挨拶もそこそこに、ムロジムへと歩いて行く。負けてしまったが得るものもあったいいバトルだった。
マサトは一緒に付いて来てから俺が負けた所を初めてみたからか、「サトシが負けた」と、ショックを受けている。
ハルカは良くわかっていないようだが、とにかく凄いバトルだったのは理解したらしく、「いいバトルだったよ、たぶん」と苦笑いを浮かべていた。
タケシは「やはり、四天王は強いな」と声をかけてくる。一番近くで見ていたからこそ、俺とシバの差が明確に見えていたのだろう。
ラティはバトルに触発されたのか、「かうんたー!」と言いながら何やらパンチの練習をしていた。お前は特殊型だから物理で戦うことはほぼないぞ。
とりあえず、ショックを受けているマサトに、「負けることは恥じゃないさ。ただ、何で負けたのか、何が足りなかったかを考えて、自分の物にしないと意味ないけどな」と声をかける。
実際、俺だって負けなしじゃない。公式戦だとブルーやカルネにだって負けている。けど、そこで歩みを止めたら駄目だというのを学んでここまで来たんだ。
この負けを踏まえて、今度のトウキとのガチバトルには絶対勝ってやるぜ。
原作との変化点。
・第30話『バトルガールとアサナン! 荒らしの中で!』より、ニューサトシがシノブをボコボコにした。
トウキの乱入が一秒遅かったら倒し切っていた。
・四天王のシバと再会した。
男同士なら黙ってバトル!
・エビワラー対決に再び敗北した。
手も足も出なかった前回とは内容は別物だったが、まだ向こうが一歩上手だった。
・マサトがニューサトシの敗北にショックを受けた。
野良バトル含め、ホウエンで負けたのが初だった。先輩として、負けた時の心構えを話している。
現在ゲットしたポケモン
ピカチュウ Lv.60
ピジョット Lv.55
バタフリー Lv.55
ドサイドン Lv.59
フシギダネ Lv.56
リザードン Lv.61
カメックス Lv.57
キングラー Lv.55
カモネギ Lv.55
エビワラー Lv.56
ゲンガー Lv.57
オコリザル Lv.56
イーブイ Lv.55
ベトベトン Lv.55
ジバコイル Lv.55
ケンタロス Lv.55
ヤドラン Lv.54
ハッサム Lv.56
トゲキッス Lv.53
プテラ Lv.56
ラプラス Lv.54
ミュウツー Lv.72
バリヤード Lv.55
イワーク(オレンジ諸島の姿) Lv.54
カビゴン Lv.52
ニョロトノ Lv.52
ヘラクロス Lv.51
メガニウム Lv.51
マグマラシ Lv.51
ラティアス Lv.46
ヘルガー Lv.51
ワニノコ Lv.51
ヨルノズク(色違い) Lv.51
カイロス(部分色違い) Lv.51
ウソッキー Lv.51
バンギラス Lv.58
ゴマゾウ Lv.47
ギャラドス(色違い) Lv.49
ヒンバス Lv.1
ミズゴロウ Lv.28→30
スバメ Lv.25→27
ジュプトル Lv.28→30
ヘイガニ Lv.24→26