ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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#023 『君、思ったよりセンスあるんじゃね?』

 10歳 ι月ν日 『メガシンカってずるやん』

 

 まさかのメガシンカだった。

 結局、あの後もう一日泊めて貰い、ナツメからメガシンカについて詳しい話を聞いたのだが、どうやらナツメはポケモンリーグ協会からカロス地方で研究中のメガシンカのテスターに選ばれたらしい。

 確かに、ナツメは心を閉ざしていた時代から、カントー地方のジムリーダーの中でもトップクラスの実力者である。そんな話が来てもおかしくはなかった。

 特に家族にすら心を開いていなかったナツメにとって、ポケモンは家族も当然だ。メガシンカに必要な絆も十分に足りているだろう。

 

 しかし、それでもまさかあそこまで一方的にやられるとは思わなかった。ゲンガーはサイコキネシスでワンキルされ、バタフリーも同様である。

 最後に出したリザードンはサイキネで動きを封じられた中、何とか気合いで『ブラストバーン』を打って一矢報いようとしたが、結局はすぐに倒された。

 

 ぐぅの音も出ない完敗である。

 

 しかし、あの時、リザードンの肌が一瞬赤くなったような気がしたんだが、あれは気のせいだったのだろうか?

 

 

 

 10歳 ι月ο日 『ハナダジムってジムの仕事してんの?』

 

 ナツメにボコボコにされて(別のメンバーで再挑戦してまた負けた)から数日。修行ということでナツメのテレポートではなく、歩いてトキワを目指すことにした。

 その途中でハナダシティのジムに寄ったんだが、聞く所によると最近はショーの人気がないらしい。

 お前らジムリーダーじゃねーのかよとも思ったが、何だかんだ家族に優しいカスミさんがショーに協力することになった。打開策として水中バレエショーをするということで、カスミさんも一生懸命練習しているようだ。

 

 対する俺は暇なので、対サカキ様のトレーニングをさせつつ、そろそろトゲ様にバトルの練習をさせてみることにした。とはいえ、本格的なバトルはまだ無理だと思うので、あくまでも練習である。

 

 試しに何を覚えているのか図鑑で確認してみたのだが、レベル技である『はたく』と『なきごえ』は当然として、何故か教えた覚えのない『わるだくみ』と、タマゴ技と思わしき『じんつうりき』を覚えていた。後ろ二つはアニメではなかった技だな。

 

 本当に使えるのか確認する意味も兼ねて、兄貴分であるピカ様にお願いして相手役をして貰うことにする。アニメではカスミさんが甘えに甘えさせているので、無印編ではずっと赤ちゃんのままだが、俺は優しくしつつも時には厳しくしているのでやるときはやるトゲ様なのだ。

 

 模擬バトルをスタートすると、やる気十分とばかりにトゲ様がピカ様に『はたく』を出す。ピカ様が余裕の表情で受けようとするが、思ったよりも威力があったのか体が流れていた。その隙を突いて、トゲ様が『じんつうりき』でピカ様をぶっ飛ばしている。

 おまけに、ピカ様がぶっ飛んだ隙に『わるだくみ』まで積み始めた。ちなみに、ここまでで俺が指示したのは、最初の『はたく』のみである。

 

 あれ? 君、思ったよりセンスあるんじゃね?

 

 ピカ様もまさかまだ赤ちゃんであるトゲ様にここまでやられると思っていなかったのか、かなり驚いた表情をしていた。

 だが、一番驚いているのは俺である。何せ、トゲ様がやって見せた一連のバトルの動きは、どこからどう見ても俺の戦い方そのものだった。

 

 どうやら、今までのバトルをしっかり見て覚えていたらしい。ぶっちゃけ、俺は今まで赤ちゃんということもあって、バトル面ではトゲ様にあまり構っていなかったので、本当に自分で学習したようである。

 ポケモンは育て方一つで変わるものだが、まさかトレーナーが俺に変わっただけでここまで変化するとは思わなかった。予想外の拾いものだ(タマゴを拾っただけに)。

 

 

 

 10歳 ι月π日 『何でや! コダックさん可愛いやろ!』

 

 ショーの最中、いつも通りロケット団が乱入してきた。飛び入りでショーに乱入してロケット団をやなかんじーにしたのだが、観客達には良い具合にショーのイベントだと思わせることが出来たようである。また、このバトルで、ジムのパウワウがジュゴンに、カスミさんのタッツーがシードラに進化していた。

 

 途中、ハプニングはあったものの、何とかショーも成功を収めている。ただ、カスミさんが行くとショーのポケモンが足りないということで、ヒトデマンとアズマオウの二体を預けていた。カスミさんはコダックも預けようとしたが、泳げないコダックはいらないと突っ返されている。可哀想なコダックさんであった。

 

 

 

 10歳 ι月ρ日 『ピッピが宇宙船作ってるんだけど』

 

 野生のピッピが宇宙船を作っている。

 これを読んだ人間は、俺が何を書いているのかわからないだろうが、実際に俺も何を書いているのか良くわかっていなかった。

 ガラクタとか、玩具の宇宙船だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてない。冗談抜きでUFOのような宇宙船を作っていたのだ。

 

 どうやら人間の道具を盗んで材料にしているらしい。街の中は、ピッピ達に物を盗まれて大パニックである。

 俺達も荷物を盗まれたのでピッピ達の後を追ったのだが、その途中で何故かプリンさんと合流した。

 聞くと、プリンさんもマイク(マジックペン)を取られたようでとても怒っている。

 そのまま宇宙船の中に乗り込むと、プリンさんがピッピ達を『おうふくビンタ』でボコボコにしていた。今にしてみれば、一体くらいゲットしておけば良かったと思っている。

 

 その後、何だかんだ荷物は取り返したのだが、何か凄いことに巻き込まれた一日だった。

 

 

 

 10歳 ι月υ日 『強くなってはいる。いるはずだ』

 

 ニビシティに着いたので、今日はタケシの家で一泊させて貰うことになった。当然のようにジムのバトルフィールドを借りて、対サカキ様の特訓もそろそろ仕上げ段階に移行する。

 実は、ヤマブキを出た段階で、既に使うポケモンは決めていた。万が一、フルバトルになった時のために6体フルで育成中である。ただ、それでもレベルはまだ50になっていない。

 この世界はアニメと違って、明確にレベルの概念があるのだが、だからこそポケモンをある一定のレベル以上にあげるのはとても大変だったりするのだ。

 

 特にレベル40以上になると経験値効率がかなり悪くなってくる。50以上になるとそれ以上と言っていいだろう。だからこそ、レベル50以上で進化するポケモンを進化させられるのは、それだけの実力を持ったトレーナーという証でもあった。

 

 アニメでサトシ君とシゲル以外のマサラトレーナーがバッジを8個手に入れられなかったのも、その辺が関係しているのかも知れないな。レベル40以上になる6個目のバッジからは入手がとても難しくなってくる。

 

 一応、俺の手持ちは今の所順調にレベルが上がっているし、多少のレベル差なら引っくり返せる自信はあった。しかし、それでもサカキ様が本気で来たら勝てるかどうか怪しい所である。

 普通ならバッジ7個の俺はレベル上限が最大50に固定されるのだが、俺に恨みのあるサカキ様ならベストメンバーで臨んで来てもおかしくはない。ジムリーダーの本気ポケモンなんてレベル50は余裕で超えているだろう。ナツメのフーディンも56レベルだった。

 

 せめて俺の適性がみずタイプならまだ自信も持てるんだが、水系の呪いは伊達ではないようで、レベルはもう十分のはずのゼニガメは『ハイドロポンプ』を覚えていないし、今現在俺が持っているみずタイプのポケモンは全員進化前である。

 

 何より、俺の頭を悩ませているのはミュウツーの存在だ。サカキ様のことだ、ピンチになれば間違いなく投入してくるだろう。メガフーディンにすら勝てない今の俺のポケモン達じゃ逆立ちしたって勝てるはずがなかった。

 

 

 

 10歳 κ月β日 『トキワシティ ジム戦 VSサカキ 前編』

 

 結局、答えが出ないままトキワシティに着いた。

 アニメではシゲルが登場していたが、あいつはまだヤマブキにいるはずなので、原作のようにバトルを先に取られる心配はない。だが、だからこそミュウツーが俺に襲い掛かってくるのはまず間違いなかった。

 

 ポケモンセンターで手持ちの回復を終えると、すぐにトキワジムへ向かう。まだ対ミュウツーの作戦は何も思いついていないが、ここまで来たらもう行くしかない。

 タケシとカスミさんも、俺が今までにないくらい緊張しているのを見て不安そうにしている。そのままトキワジムの前に行ったのだが、ジムの前で何やら赤いマントを付けた見覚えのあるイケメン――四天王のワタルが仁王立ちでトキワジムを睨んでいた。

 

「ワタルさん?」

「ん? おぉ、サトシ君じゃないか。久しぶりだね。シゲル君もそうだが、君も大きくなったな」

「最後にあってから一年くらいしか経っていませんけどね」

「子供の一年は大きい物さ。ここにいるということは、君もトキワジムに?」

 

 イエスと頷くと、ワタルは難しい顔をして何かを考えている。そういえば、シゲルが言っていたな。ワタルはグレン、ヤマブキの他にトキワをロケット団の拠点として睨んでいると。つまり、ここまでたどり着いたと言うことか。

 

 一応、シゲルにヤマブキであって、ある程度の話を聞いていることをワタルに話す。すると、話が早いと言わんばかりに、ワタルが周囲を見渡し、こちらに顔を近づけてきた。

 

「俺の調査では、トキワジムがロケット団に関係している可能性が高い。だから、今から調査しようと思っているんだが、そうなるともしクロだった場合、しばらくの間トキワジムは運営停止状態になるかもしれないんだ」

「それは困りますね。ちなみにワタルさんはどのくらいクロと思ってるんですか?」

「七割と言った所だな。クロ寄りだ」

 

 実際クロなので、まず間違いなくトキワジムのリーダーはサカキ様から変わるだろう。そうなると、俺は別の街にバッジを取りに行かなきゃ行けなくなる。

 ぶっちゃけ、ゲーム以外の街の情報など全く知らないので、最悪ポケモンリーグに間に合わない可能性すらあった。つまり、何としてでも、俺はここでバッジを取らないと行けないということである。

 

「ワタルさん、こうしませんか? 俺がジム戦をしてジムリーダーの注意を引きつけます。その間に調査して下さい。ただし三十分は様子見でお願いします。その間にジム戦を終わらせますから」

 

 結局、サカキ様も俺に正体がバレたら逃げるだろうし、元々チャンスは一回しかないのだ。ならばそれを有効に使おう。ワタルもそれが調査に有効なら嫌とは言わないはずだ。

 

「……わかった。バッジを集めている君にはバトルをする権利があるからね」

 

 悩んだようだが、そういって許可をくれた。

 そういう訳で一度きりのトキワジムチャレンジ開始である。ジムを守る門番に「マサラタウンのサトシだ。トキワジムに挑戦しに来た」と言って中に入れて貰う。

 堂々と名乗ったので、中のサカキ様にも伝わるはずだ。これでもう逃げ場はない。まぁ、元々逃げる気などないが。

 

 中に入ると、ベーシックなフィールドが広がっていた。ジムリーダーであるサカキ様は、二階に座っており、見下ろすようにこちらを見ている。

 ジムのライトの角度もあって上手く顔が見えないが、シルエットと隣のペルシアンで大体誰なのかはわかったのだろう。カスミさんとタケシが驚いたように声を出していた。

 

「まさか本当にロケット団が関係していたなんて!」

「いや、関係しているなんてもんじゃない。ジムリーダーがロケット団のボスなんだ!」

 

 サカキ様もそれを聞くと、バレては仕方ないとばかりに笑って顔を見せてくる。だが、今ここに至ってはジムリーダーがロケット団だろうと関係なかった。

 

 俺はジム戦をしに来たのだ。

 7個のバッジを見せ、公式戦を申し込む。

 

 サカキ様も逃げる気はないようで、「次は本気で相手をすると言ったな。フルバトル6対6、レベル制限はなしだ」と、無情な宣告をしてくれた。

 それを聞いたタケシとカスミさんが抗議するも、「嫌ならジム戦はなしだ」と言われて黙っている。大丈夫だ、こうなることは予想していた。問題ないと伝え、ボールを構える。

 サカキ様もコンソールを操作し、ボールを6個用意していた。やはりペルシアンはペット枠なのだろう。フルメンバーには入っていないようだった。

 

 サカキ様の一体目はダグトリオ、俺はゼニガメである。やはり、何だかんだタイプ相性と言うのは大事だ。

 バトルが開始されると、ゼニガメに『みずのはどう』を指示し、混乱を狙っていく。しかし、ダグトリオの動きは速く、『みずのはどう』を避けるように『あなをほる』を使って、ゼニガメを攻撃しようとしていた。『てっぺき』を指示して防御を二段階上昇させるが、レベル差のせいもあり結構な衝撃を受けているようで、ゼニガメが顔をしかめている。

 

 続けてダクトリオに『すなじごく』を指示して動きを封じようとしてきたので、『こうそくスピン』を指示して砂から脱出させた。そのまま『みずのはどう』を指示し、カスミさんが使ってきたユナイトコンボを擬似的に再現してダグトリオにダメージを与える。

 運のいいことに混乱も与えられたようで、サカキ様が『じしん』を指示しているが反応できていない。トドメの『ハイドロカノン(未完成)』を指示すると、ダグトリオを戦闘不能まで持って行った。

 

 混乱のおかげで何とか有利なバトルが出来た。「やはり、やるな……」と笑うと、サカキ様が次のガラガラを出してくる。

 そのまま『かたきうち』を指示し、ゼニガメを攻撃してきた。『てっぺき』で防御が二段階上がっているとはいえ、『かたきうち』は直前に味方が倒れているとダメージが二倍になる技である。倒れはしなかったが、それでもゼニガメもダメージが大きいのか、膝をついていた。ここは一旦ゼニガメをボールに戻す。まだゼニガメの力は必要だ。

 

 次にフシギダネを出し、『やどりぎのたね』を指示した。これでフシギダネは毎ターン体力が回復していくので有利に戦えるだろう。

 対するサカキ様は『れいとうビーム』を指示。まさかの弱点攻撃を受け、フシギダネがダメージを受ける。おまけに氷状態になったようで、フシギダネの足が止まった。

 それを見逃すサカキ様ではなく、『あばれる』と『ボーンラッシュ』を組み合わせた高火力のアニポケ殺法を仕掛けてくる。動けないフシギダネに避けるすべはなく、そのまま一気に戦闘不能まで持って行かれた。

 

 今回は逆に俺の運がなかったか。だが、落ち込んでいる場合ではない。ピカ様を出して一気に攻め込む。

 じめんタイプにでんきタイプを出してきた俺を笑うように、ガラガラが前回から続く連続攻撃を仕掛けてきたが、『なみのり』を指示して動きを封じた。

 不一致とはいえ、みずタイプの攻撃を受けてガラガラが正気に戻る。そのまま技の反動で混乱すると、サカキ様がガラガラをボールに戻した。まさかピカチュウが『なみのり』を打ってくるとは思わなかったようで、少し驚いたような顔をしている。

 

 こちらもピカ様を戻して勝負は仕切り直しになった。これで互いに一体を失い、一体は大ダメージを受けている。残りのポケモンは4体。果たして、ミュウツーが出てくるのかどうか。本当の勝負は、ここからだった。

 

 

 




 原作との変化点。

・ナツメがメガシンカのテスターになっていた。
 なので、全てのジムリーダーがメガシンカを使える訳ではない。

・第61話『ハナダジム! 水中の戦い!』より、トゲ様の模擬バトルをした。
 何故か悪巧みと神通力を覚えていた。おまけにニューサトシのバトルをしっかり覚えている。ニューサトシはもっと先を見据えていたが、もしかしたら悪魔が登場するのはそう先の話ではないのかもしれない。

・カスミさんのタッツーが進化した。
 アニメと個体が違うので普通に進化した。

・ジムに置いて行くポケモンが違った。
 本来、タッツーとスターミーを預けていくが、前回のロケット団とのバトルのように力が必要になると思い、ヒトデマンとアズマオウに変更した。

・第62話『ピッピVSプリン』より、荷物を取り返した後普通に脱出した。
 アニメではプリンさんの歌で眠ってしまったせいで宇宙船が飛んでいたが、ニューサトシは耳栓で対策しながらカスミさんを抱えて飛ぶ前に脱出した。

・第63話『トキワジム! 最後のバッジ』より、ワタルがトキワジムの調査に来た。
 ばれたらサカキ様が雲隠れするので、失敗は許されなくなった。

・サカキ様の本気メンバーとフルバトルをすることになった。
 レベル差は5~7はある。ニューサトシのバトルセンスで互角に持ち込ませている。

・この世界ではレベル50以上にするのはかなり大変。
 四天王のポケモンでもエースが60くらい。それだけ経験値効率が悪くなる。ここまで来ると、レベルよりも戦術が重要になってくる。


 現在ゲットしたポケモン。

 ピカチュウ Lv.45→49

 ピジョット Lv.42→43

 バタフリー Lv.41→42

 ドサイドン Lv.45→49

 フシギダネ Lv.42→46

 リザードン Lv.46→50

 ゼニガメ  Lv.42→46

 クラブ   Lv.41→42

 カモネギ  Lv.41→42

 エビワラー Lv.44→45

 ゲンガー  Lv.43→47

 オコリザル Lv.42→43

 イーブイ  Lv.25

 ベトベトン Lv.39→40

 ジバコイル Lv.41→42

 ケンタロス Lv.40→41

 ヤドン   Lv.40→41

 ストライク Lv.40→41

 トゲピー  Lv.1→2

 プテラ   Lv.40→41

 ラプラス  Lv.35→36


 

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