14歳 μ月ε日 『シンオウ地方 グランドフェスティバル 二次審査 後編』
本当ならファイナルで会いたかったのだろうが、籤運ばかりはどうしようもないということで、セミファイナルでヒカリとノゾミがぶつかり合う。
ヒカリはポッチャマとトゲキッス、ノゾミはニャルマーとエルレイドを出してきた。どちらも相棒&初見のポケモンということで、お互いに警戒心を持っている。
もはや、ノゾミにはヒカリが今年コーディネーターになったばかりの初心者という認識はない。ここまできた以上はファイナルの座を賭けて戦うライバルとして、敵として真っ直ぐに向かい撃つつもりでいる。
改めて、この二人がガチンコでぶつかり合うのは、ヒカリや俺がシンオウで初めて参加したコトブキ大会以来だった。あの時はまだ右も左もわからなかったヒカリが、実力者となって自分の前に立っている。それが堪らなく嬉しいのか、ノゾミも笑みを浮かべていた。
だが、ヒカリは自分が挑戦者だとわかっている。だからこそ、先手は譲らなかった。
ポッチャマをトゲキッスの背中に乗せて飛翔――空中から、『はどうだん』と『バブルこうせん』の合わせ技で先制を奪おうとしてくる。
対するノゾミは、ニャルマーの『シャドークロー』とエルレイドの『サイコカッター』の合わせ技で対抗してきた。
エルレイドが『はどうだん』を叩き切り、ニャルマーが『バブルこうせん』を破裂させることで、相手の技を利用して逆に自分のポケモンを目立させている。ナオシとの対戦でも見せた、相手の技を利用する演技で、ヒカリのポイントを15削ってきた。
しかし、ヒカリも引かない。トゲキッスの華麗な空中飛行と、ポッチャマの『ハイドロポンプ』の合わせ技で反撃に出る。
だが、ノゾミはその出だしを抑えてきた。『ハイドロポンプ』を発射しようとしているポッチャマの技を封じるように、『ふいうち』で邪魔をしてくる。
ニャルマーの一撃が決まって、ポッチャマは技がキャンセルさせてしまった。さらにヒカリのポイントが15削られていく。
続けてノゾミはエルレイドに『サイケこうせん』を指示してきた。空中で踊るトゲキッスに向けて光線が放たれるが、華麗に回避して『エアスラッシュ』で反撃してくる。
エルレイドも攻撃は躱したが、トゲキッスの攻撃を躱した時の動きの美しさが評価されてノゾミのポイントが10削られた。エルレイドとトゲキッスの動きはほぼ互角だが、飛行能力を持っているトゲキッスが少しだけ有利と言う感じだ。
だが、ここでノゾミは極致を見せてきた。エルレイドの『シグナルビーム』とニャルマーの『アイアンテール』を合わせてくる。
カラフルに光る『シグナルビーム』をニャルマーの尻尾に集中させ、『アイアンテール』で反射させることで輝きを増し、効果がダメージを受けた相手の視界を奪うという効果に変化していく。
しかし、ヒカリもここで意地を見せた。何だかんだ今までは極致に至らない合わせ技で戦ってきたが、このグランドフェイスティバルで高度な技を見てきたことで、新たな領域の扉を開いたらしい。
思えば、ハルカもまた、戦いの中で次のステップに手をかけていた。ヒカリも同じように、自分の力で先の道を切り開こうとしている。
ポッチャマの『うずしお』と、トゲキッスの『はどうだん』の極致――二つの技が融合し、相手を捕まえるまで止まらない渦巻に変化していた。
ちなみに、技の性質を見抜いているのはミュウツーであってニューサトシではない。いくらニューサトシの観察眼が優れているとはいえ、合体技の効果を言い当てるような神技は習得していなかった。
なので、この試合を見ていた時はポカーンとした顔で、「すげー」としかしていない。こうして日記を書くに当たって、ミュウツーの力で技の性質を教えて貰っているだけなのだ。
ニャルマーの尻尾に集中した極致が放たれ、ヒカリの極致とぶつかり、互いに相殺していく。
技のエネルギーはまるで花火のように弾け飛び、互いのポイントを10削った。しかし、いくら凄い技とはいえ大技ばかりでは観客も飽きてくる。
それは二人もわかっているのだろう。次の相手の動きを探りがてら、ノゾミはエルレイドに『つるぎのまい』を、ヒカリはトゲキッスに『しんぴのまもり』を指示してきた。
ノゾミは純粋に攻撃力の上昇を、ヒカリは極致の技の性質変化による状態異常を警戒しての技だろう。エルレイドの神秘的な舞と、トゲキッスの空中技術を合わせた神秘的な輝きが、互いのポイントをさらに10削っていく。
だが、ここでノゾミは番外戦術を仕掛けてきた。ニャルマーに『ふいうち』を指示してトゲキッスに攻撃を仕掛けさせてくる。
当然ながらまだ攻撃していないトゲキッスに、相手が攻撃した時に発動する『ふいうち』は発動しない。とはいえ、ここでそんな素人みたいなミスをノゾミがするはずがなかった。
真っ直ぐトゲキッスに向かって走るニャルマーだが、当然何か他に狙いがあるとヒカリは読む――そのタイミングでエルレイドが動いてきた。攻撃が二段階上がった『サイコカッター』で攻撃を仕掛けてくる。
ヒカリも即対応してきた。エルレイドが動いてくるのは予想通りという表情で、ポッチャマの『うずしお』を壁にして攻撃をガードしている。
ノゾミのポイントが10削られていく。しかし、場当たり的な対処としては問題ないが、ヒカリはノゾミの動きの意図を読み切れていなかった。
ヒカリの意識がエルレイドに集中している間、ニャルマーはトゲキッスに『ふいうち』をぶつける。当然、ダメージはなく、技の効果は発動しないが、ニャルマーの狙いはトゲキッスに触れる距離まで来ることにあった。
そのまま攻撃に乗じて、ニャルマーはジャンプしてトゲキッスの背中に飛び乗っていく。トゲキッスもすぐに背中に乗られたことには気付いたが、振り落とそうと飛び回ってもニャルマーは意地で背中にしがみ付いていた。
同時に、ニャルマーが最後の技である『10まんボルト』でトゲキッスにダメージを与えてヒカリのポイントが15削られていく。
ヒカリもすぐにトゲキッスが抑えられたことには気付いたが、救援に動こうとしたポッチャマをエルレイドが通せんぼしてきた。
焦ったようにヒカリが残り時間を確認する。
残り時間は約1分――ポイントはノゾミがかなりリードしていた。このままトゲキッスが封じられたままではヒカリに勝ち目はない。ノゾミはおそらく逃げ切りも考慮に入れているのだろう。勝てると思ったのか、口元には僅かに笑みが浮かんだ。
だが、ノゾミも読み違えていた。
ヒカリはずっと逆境の中で育ってきたのだ。この程度で諦めるほど、心は弱くなかった――否、この程度で諦めるようなやつには育てていない。
「ポッチャマ! トゲキッスを助けるわよ!」
その言葉を聞いて、ポッチャマが走り出した。ノゾミはエルレイドに『サイケこうせん』を指示してポッチャマを狙ってくる。
しかし、ポッチャマは得意の回転を利用した動きで、光線を最小限の動きで回避した。そのまま、エルレイドの頭を踏みつけて高くジャンプしていく。
同時に、『ハイドロポンプ』を指示――『みずでっぽう』とは比べ物にならない水の噴射が、トゲキッスの背中にいるニャルマーを弾き飛ばした。
自由になったトゲキッスが落下するポッチャマをキャッチする。この一連の流れで、ノゾミは25ポイントのマイナスを受けた。
ポッチャマの攻撃を躱した動きから攻撃への無駄のない動きや、技の直撃、トゲキッスのポッチャマを空中で回収した動きが評価されたのだろう。
ここに来て、ノゾミが窮地に立たされる。
けど、まだ残り時間はあった。ここでノゾミはニャルマーの『10まんボルト』とエルレイドの『サイコカッター』による極致で、勝負を賭けに来る。
エルレイドがニャルマーの尻尾に飛び乗り、ダメージを受けながらも電撃のエネルギーを自身の体に取り込んで『サイコカッター』と合わせていく。
対するヒカリは、トゲキッスの『ゴッドバード』とポッチャマの『ドリルくちばし』を合わせた極致で対抗してきた。
トゲキッスの上に乗ったポッチャマが前に出てエネルギーで作った嘴を回転させ、トゲキッスもエネルギーを貯めて全身を赤く染めて突っ込んでいく。
一見、ヒカリの技はただの同時攻撃にも見える――が、突っ込んでいく間に、ゴッドバードのエネルギーがポッチャマの嘴に集約されていった。
「トゲキッス! 回って!」
ヒカリの最後の指示で、トゲキッス自身も回転してさらに威力を上げていく。エルレイドも技の準備が出来たとばかりに、ニャルマーの尻尾をバネに飛び上がり、『10まんボルト』のエネルギーを合わせた『サイコカッター』の極致で、相手を迎え撃っていた。
ノゾミの極致は、ダメージを与えた相手を硬直させるという単純な効果――対するヒカリの極致は、相手を確率で戦闘不能にするという一撃必殺と同じ効果を持っていた。
放たれるノゾミの極致をその身に受けながら、ポッチャマとトゲキッスが突っ込んでいく。相手の極致はでんきタイプも併せ持っているが故に、みずタイプとひこうタイプの二体には大ダメージとなる。
だが、二体は止まらなかった。
そのまま、エルレイドに極致を直撃させ、返しの刃でニャルマーを狙っていく。ノゾミも、『10まんボルト』で反撃をさせたが、二体は半ば落下するようにニャルマーにぶつかって行った。
同時にタイムアップとなり、ノゾミとヒカリが同時にモニターに視線を向ける。みると、ノゾミの残りポイントは10、ヒカリのポイントは15――セミファイナルはヒカリの勝利で幕を下ろした。
ノゾミが一瞬悔しそうな表情を浮かべるが、すぐに飲み込んでヒカリに拍手を送る。ヒカリも、ずっとライバルにしていたノゾミに勝つことが出来て嬉し泣きしていた。
「なんで泣くのさ。ヒカリは勝ったんだよ」
「勝ったから……勝てたから涙が出るんだよ。こんな凄い大舞台でノゾミと真剣勝負して勝てた……こんなの、泣かない方が無理だよ」
仕方ないと、ノゾミがヒカリの涙を拭う。しっかし、女同士のはずなのに、ボーイッシュなノゾミがすると王子様にしか見えないな。
と、ほんわかしている場合でもない。
ここからは俺の番だ。こう言っては失礼かもしれないが、ここまで歯応えのある相手が居なかったんだ。ムサシには悪いが、堪っている鬱憤を全てぶつけさせて貰う。
ムサシも真剣な表情でこちらを睨んできた。
だが、その程度で怯むニューサトシではない。逆に睨み返す勢いで視線を返す――が、試合が楽しみ過ぎて笑みが浮かんでしまった。
ヒカリやノゾミと入れ替わるようにステージへと移動していく。
そのまま、セミファイナル第二試合のスタートが告げられると、俺とムサシは同時にポケモンをフィールドに送り出した。
こちらはピカ様とイーブイのカントーコンビ。ムサシはアーボックとマタドガスという古参コンビだった。
ムサシは開幕から飛ばしてくるつもりのようで、アーボックの『ポイズンテール』と、マタドガスの『ヘドロばくだん』の極致でこちらに仕掛けてくる。
アーボックが尻尾のエネルギーをマタドガスへ譲渡しながらマタドガスを尻尾で蹴り飛ばし、マタドガスはそのエネルギーを『ヘドロばくだん』と掛け合わせながら、体を横に回転させて紫色に輝く謎のヘドロを撒き散らしてくる。
極致の効果は、相手全体への攻撃となり当たった相手にランダムで状態異常を付与するというもの――とてもじゃないが、まともに受けて良いことは一つもない。
向こうが極致で来るのなら、こちらも極致で返そう。ピカ様の『エレキフィールド』とイーブイの『いやしのすず』の極致により、この場を状態異常無効エリアへと書き換える。
ヘドロはエリアに入った瞬間にクリアなエネルギーに変換され、ピカ様とイーブイの魅力をより引き立ててくれた。二体がポーズを決め、ムサシのポイントが15削られていく。
相手の技を利用して自分のポケモンの魅力を引き立たせる技術――使わせて貰ったぜ。
ムサシは「小生意気な技を……」と、呟きながら、アーボックに『とぐろをまく』を指示する。アーボックが蜷局をまきながら、上半身の自分の模様を見せつけるようにアピールしてきた。これで俺のポイントが10削られる。
とはいえ、こちらも見ているままではない。
イーブイに『あまえる』を指示して、アーボックの攻撃力を二段階下げつつ、イーブイの魅力をアピールしていく。これでまたムサシのポイントが10削られた。
ムサシは俺がイーブイを『アドバンスシフト』の特性を使って進化させてこないことを不思議がっているのか、警戒するような視線を向けてくる。
しかし、今回、俺はイーブイに『アドバンスシフト』の特性を使わせるつもりはなかった。
もう二日経っているとはいえ、まだウララがイーブイを進化させた演出というのは、観客の記憶にも大きく残っている。その状況で下手にイーブイを進化させても二番煎じになるだけでポイントとしても大きなものは期待できない。
では、何故イーブイを選んだのか。
それは、イーブイが可能性の獣だからだ。こいつは他のイーブイにはない、進化して元の姿に戻れるという特性上、いろいろな技に対する造詣が深い。故に技を熟知しており、他のポケモンと比べても極致の演技に至りやすかった。
だが、それはイーブイの状態で使える技に限定される。流石のイーブイも進化先での技で極致に至るだけの変化をさせることは出来なかった。だからこそのイーブイオンリーだ。
別に舐めている訳じゃないから安心しろ。俺はイーブイの全力でお前を叩きつぶしてやるつもりだからよぉ。
と、思いながら、ピカ様に『10まんボルト』を指示する。ムサシもマタドガスに『ヘドロこうげき』と『ヘドロばくだん』の合わせ技でこちらの攻撃を相殺してきた。
大量のヘドロと電撃がぶつかって弾けていく。
単純な技の威力でも、ピカ様はロケット団のポケモンよりも優れている。ムサシもそれがわかっているからこそ、マタドガスに技を二つ使わせて対応してきたのだろう。
今の攻防は技を合わせて大きくしたマタドガスが評価されたようで俺のポイントが10削られる。
ここでムサシはアーボックに『あなをほる』を指示した。ピカ様の弱点であるじめん技で対抗しようとしているのだろう。が、地面の中にいる相手を叩き出すのはお手の物だ。
ピカ様にアーボックの動きを探るように指示する。地面の振動や音でアーボックの位置を特定し、『アイアンテール』で疑似地震を起こして地中から叩きだしてやるつもりだ。
とはいえ、それをのんびり見ているムサシではなく、マタドガスに『ねっぷう』を指示している。全体攻撃でピカ様の意識をアーボックから引き離そうという狙いだろう。
ここはイーブイで対応する。
こちらも全体攻撃である『スピードスター』で、『ねっぷう』を相殺しながらキラキラと美しい風景を演出してやった。これで、ピカ様は地中の探知に集中することができる。
だが、ムサシの狙いはピカ様ではなかった。
技を使い終えてポーズを決めるイーブイに、地中からアーボックが強襲し、『とぐろをまく』の応用でイーブイを締め付けながらステータスを上げていく。
イーブイの演技でムサシのポイントは10マイナスされたが、不意を突いたアーボックの動きでこちらもポイントが10マイナスされた。
その上、イーブイが捉えられてしまっているので、ピカ様が救出に走る――そうはさせないとマタドガスが立ちふさがって『ヘドロばくだん』を撒き散らしてくるが、ピカ様は『エレキネット』でマタドガスの動きを封じて突破していった。
ムサシのポイントがさらに10マイナスされ、このままではアーボックもやられると判断したのか、イーブイを解放して再び『あなをほる』で地中に離脱していく。そのまま、マタドガスがいる方へと合流していった。
ここまで約3分――ポイント的には俺がリードしてはいるが、まだ余裕をかませるほどの差でもない。
その証拠にムサシには焦った様子がなかった。むしろ、勝負はここからとばかりに、再び『あなをほる』でアーボックを地中に逃がしていく。しかし、今度はマタドガスもそれに続いて穴に入って行った。
それから穴を飛び出ては、新しい穴を作りと、次々とフィールドを穴だらけにしていく。
何が狙いだ――と、警戒していると、穴の数が10を超えた辺りで動きを見せてきた。
穴の中から、マタドガスの『ねっぷう』が拭き出て、フィールドを赤い蒸気が小さな竜巻を作り上げていく。同時に、こちらの意識が反れた隙を狙って、アーボックが背後から飛び出してきた。
マタドガスの『ねっぷう』をその身に纏ったまま、『ポイズンテール』でイーブイが吹き飛ばされていく。極致ではないとはいえ、美しい合わせ技の攻撃ヒットでこちらのポイントが20削られた。
また、『ポイズンテール』の追加効果で、毒状態になったようでイーブイが苦しそうな表情を見せる。が、そのための『いやしのすず』だ。鈴の音が鳴り響き、イーブイの状態異常が元に戻っていく。
ムサシのポイントがさらに10削られる。
同時に、残り時間が1分を過ぎ――ムサシも、ここで切り札を出してきた。
アーボックの『ダストシュート』と、マタドガスの『アシッドボム』の極致――去年、ハルカと戦った時に見せた初の極致から進化し、発展したその極致は猛毒とは思えない輝きを見せる。
効果はあの時のものと同じだが、確率が変わっていた。ハルカとの時に見せた極致は、確率で未知の猛毒を付与するというものだったが、この極致は確定で相手に未知の猛毒を付与するというものに変化している。
この一年――成長したが故の変化。
ならば、こちらも負けられなかった。
極致には極致――こちらは、ピカ様の『エレキボール』と、イーブイの『シャドーボール』を組み合わせて対抗していく。二つの球が一つになり、黒と黄色の光が美しいコントラストで新たなボールを生成する。
効果は単純明快、直撃した相手の動きを封じるというもの。当たれば、相手はその場に縫い付けられたように動けなくなる。この極致で、ムサシの極致を超えていく。
互いに全力の技をぶつけ合う――そこに、いつものおちゃらけたロケット団の姿はなく、真剣にコンテストバトルに向かい合うムサシの必死な姿があった。
ぶつかり合った極致は相殺され、綺麗な光の粒子となってフィールドを舞っていく。
一瞬、その美しさに見とれていたムサシがハッとしたように視線をこちらに向ける。しかし、その一瞬の隙が勝敗を分けた。『10まんボルト』のエネルギーをチャージしたピカ様が疑似ボルテッカーで突っ込んでいく。
咄嗟に『あなをほる』で逃げようとしたムサシだが、それよりも早くピカ様の攻撃がアーボックとマタドガスを吹き飛ばしていった。
同時に、タイムアップとなり、ムサシの残りポイントが15、俺が25でこちらの勝利が決定する。こちらの極致は打ち出す技だったが故に、ピカ様は一歩早く次の攻撃に動くことが出来ていた。
極致同士のぶつかり合いに全てをかけていたムサシと、その後のことを考えていた俺――その差が、こうして結果となって表れていた。
死ぬほど悔しそうな顔をしながら、「……あたし達に勝ったんだから、絶対優勝しなさいよね」と声をかけて去っていく。
これでセミファイナルは終了し、ファイナルはまさかのニューサトシVSヒカリという組み合わせになった。
ファイナルステージ――これに勝った方がグランドフェスティバルを優勝する。
見ると、観客席にヒカリのママさんが見に来ていた。どうやら我慢できずに直接応援しに来たらしい。だが、ヒカリは気付いていないようだった。変に気負わせても面白くないので、この戦いが終わるまでは黙っておくことにする。
改めてフィールドでヒカリと向かい合った。
練習では何度も戦ったことがある。だが、こうして改めてコンテストでぶつかり合うと、まるで別人にしか見えなかった。
あのおっちょこちょいで能天気だったヒカリと、グランドフェスティバルという大舞台で雌雄を決することになるとは――運命とはわからないものだ。
俺が思わず笑みを浮かべると、ヒカリもフッと笑みを浮かべた。もしかしたら、同じようなことを考えていたのかもしれない。
とはいえ、前に宣言した通り、手を抜くつもりは欠片もなかった。ファイナルステージの開始と共に、モンスターボールをフィールドに投げ込んでいく。
こちらはラティと黒いキルリアの仲良しコンビ――ヒカリはミミロルと色違いの青いポニータの組み合わせを出してきた。
てっきりポッチャマを出してくるかと思っていたが、どうやらこのコンビに余程の自信があるらしい。
当然ながらこちらは、このシンオウに来てからの鉄板コンビだ。コンテストにやる気を出した黒いキルリアと、ずっとコンテストの練習をしてきたラティのコンビは他のどのポケモン以上のコンビネーションと言って良い。
ヒカリも、練習ではずっと戦ってきた相手だ。手の内も粗方わかっている――故に怖いだろう。ここで俺がこの二体を出してきたという意味が今のヒカリにわからない訳がない。
それは、自信だ。
例え、手の内を読まれていようと、俺達は勝てるという圧倒的な自信。これまでの練習や努力は決して自分達を裏切らない――そう信じているが故のチョイス。
しかし、ヒカリは吞まれなかった。
先手必勝と、ポニータの背にミミロルを乗せて『ニトロチャージ』で素早を一段階上げながら突っ込んでくる、炎の赤と、ポニータの青い炎のコントラストが美しく、俺のポイントが10削られていく。
そのままの勢いで、背に乗ったミミロルが『とびはねる』を使ったジャンプして空中でポーズを決めながら、こちらへと攻撃を仕掛けようとしてくる。
だが、こちらも黙って見ているはずもなかった。
相手が動くのと同時に、こちらはラティに『こうそくいどう』、キルリアに『テレポート』を指示していた。ポニータの背中に乗ったミミロルを活かすには上へ跳ぶのが常道――だからこそ、そこを狙い撃つ。
ラティが超高速で宙に舞うミミロルを捕捉し、『ミストボール』を放っていく。ミミロルは身を翻して何とか攻撃を躱すが、その後ろに『テレポート』していたキルリアが『サイコキネシス』で『ミストボール』を弾き返して直撃させた。
二回戦でムサシがコジロウ相手にやった攻撃を跳弾させる演技の応用だ。流石のミミロルも急な二段攻撃に対応できずに吹き飛ばされ、ラティがキルリアを背中に回収して二人でポーズを決めていく。これで、ヒカリのポイントが15削られた。
しかし、ヒカリもやられたままではない。
落下してきたミミロルをポニータがキャッチして即座に反撃に出てくる。ポニータの『だいもんじ』をミミロルの『れいとうビーム』で凍らせるという荒業――極致の域ではないが、炎を氷で包むという高等技術でストレートに攻撃を仕掛けてきた。
ならばこちらも反撃しよう。
ラティの『ミストボール』をキルリアの『サイコキネシス』で強化して、相手の氷と炎の大文字を相殺していく。氷は粉々に砕け、炎は消え、残りの波動の光が地面に落ちる氷を美しく輝かせる。ヒカリのポイントがさらに10削られた。
自分の演技を利用されるというのは思いの外プレッシャーになる。ヒカリも、二度の対処で下手に仕掛けられないと察したのか、無理に攻撃をするのではなく自分達のアピールをすることでポイントを稼ぐ方向にシフトしだした。
ミミロルの『れいとうビーム』とポニータの『ニトロチャージ』で、疑似フレイムアイスを再現して、こちらのポイントを10削ってくる。
対処が早い。それに的確だ。
ならば、今度はこちらが魅せよう。再びラティの『ミストボール』をキルリアの『サイコキネシス』で拡散させ、ラティの身に纏うように包み込んでいく。
幻想的な輝きを纏ったラティが、ヒカリのトゲキッスにも負けない飛行技術で空中を舞う姿はとても美しく――さらに、ヒカリのポイントが10削られていった。
残り時間は約3分――だが、このまま演技対決をしても、プラスには持って行けない。それはヒカリも悟ったようで、覚悟を決めた顔をしている。
ここからだ。
ここから、ヒカリは本当の実力を発揮してくる。
と、考えていると、早速動いてきた。ミミロルに『れいとうビーム』を指示し、一次審査の時のようにそこら中に氷のアトラクションを作り出す。
しかし、今回は遊ぶためではない。
ポニータが氷の道を走るように、ラティに近づいてくる。この氷のアトラクションの真の狙いは、空中にいるラティ達との距離を詰めるための足場だった。
ポニータが『ニトロチャージ』で真っ直ぐ突っ込んでくる。しかし、足場があっても、こちらは宙を飛んでいるということもあって回避はそう難しくなかった。
軽く身を躱してポニータの突進を回避する――と、いつの間にか、地上にいたはずのミミロルが『とびはねる』で距離を詰めてきていた。まるで、開幕のお返しとばかりに、ラティとキルリアが背中から蹴飛ばされてバランスを崩す。
とはいえ、無様に落下することはない。ラティは空中で姿勢を立て直したし、キルリアも『テレポート』で地上に緊急離脱している。とはいえ、氷のアトラクションやポニータの動きを利用した不意の強襲で、こちらのポイントが15削られた。
ヒカリもこのまま強引に自分のペースに持ち込もうと攻め続けてくる。ミミロルの『てだすけ』で、ポニータの『ほのおのうず』の威力を1.5倍に上げて空中を飛び回るラティの動きを止めに来た。
炎の威力が高く、ラティでもそう簡単に突破するのは難しい。また、その間、キルリアは一対一を強いられる――こちらのポイントが10削られた上に分断までされたか。
この隙を逃さず、ミミロルはポニータの背に乗って駆けていく。氷の道を走るポニータの姿は美しく、それだけで俺のポイントがさらに10削られた。
再び、『だいもんじ』と『れいとうビーム』の合わせ技でキルリアを攻撃してくる。しかし、俺のキルリアをそう簡単に突破できると思うなよ。
ずっと隠していた新技の『チャームボイス』で反撃していく。相手全体が対象で、回避率に関わらず必中する技だが、音系の技――つまり振動が氷を砕き、合わせ技を強制解除する。
その上で、音は技を貫通してポニータとミミロルを襲った。まるで歌をうたっているかのような可憐な響きで、ヒカリのポイントが20削られていく。
キルリアの使った『チャームボイス』は威力が40しかない。技の威力だけでいえば、美しさに力を割り振っても『だいもんじ』と『れいとうビーム』の合わせ技の方が上だろう。
それでも、技の使い方一つで、相手の強力な技を撃ち消すことだって不可能ではない。ポケモンにはまだまだ俺達の知らない無限の可能性が隠れている。
――そして、時はきた。
炎に包まれて身動きが取れなかったラティが、気合の声と共に『ほのおのうず』をかき消していく。その姿は七色の光に包まれており、その美しさでヒカリのポイントが10削られた。
これは『アシストパワー』だ。
ラティは動けないと判断した時点で足掻くのを止めて『こうそくいどう』を最高まで貯めた。『アシストパワー』は、自分の能力が上がる度に威力が20上がる――6段階上げた『アシストパワー』は威力140の技となり、渦を弾き飛ばしたのだ。
分断したはずの二体に個々に演技を決められ、ヒカリがまた劣勢に晒される。残り時間は1分――だが、得点の差は僅かだ。ヒカリもここで勝負を決めに来た。
最後の切り札――ポニータの『れんごく』と『ほのおのうず』の合わせ技をミミロルの足に集約させた『にどげり』。攻撃を受けたポケモンのタイプをほのおに変え、数ターンほのおタイプ以外の技を使えなくするという凶悪な効果を持った極致。
勿論、ヒカリは自身の極致がそんな凶悪な効果を持っているとは理解していない。ただ、見た目が美しいと言うだけで作り上げたのだろう。
炎の渦がまるでミミロルの義足になるように、両足に巻き付いていく。熱を感じるようで、ミミロルも一瞬苦しい表情を見せる――が、すぐに笑顔でポーズを決めた。
ならば、こちらも奥の手を出そう。
ラティ必殺の『りゅうせいぐん』と、キルリアの『マジカルシャイン』の極致――ラティが体内で圧縮した流星を、キルリアが『マジカルシャイン』で包み込んで作った光の流星だ。
効果は、受けた相手のステータスをランダムに下げるというもの。おまけに、下がり幅もランダムで、万が一に大当たりを引けば全てのステータスが6段階下がることもあり得る博打効果だ。
当たれば勝敗が決する一撃。
発射された光の流星を、ミミロルが炎の二度蹴りで迎え撃って行く。どうもヒカリの技の完成度が高いのか、こちらの技が押されている。ミミロルの気合の蹴りが、まるでボールを蹴るようにこちらへ技を弾き返そうとしていた。
しかし、ここで奇跡が起きる。
光の流星を制御していたキルリアの体が輝き、キルリアからサーナイトへと姿を変えたのだ。同時に、技を制御する力が跳ね上がり、ミミロルを弾き飛ばして流星が天へ上り花火となる。
同時にタイムアップとなった。
結果は、俺が残り20ポイント、ヒカリが10ポイントで、今回のグランドフェスティバルは俺の優勝で幕を下ろすことになった。
正直、キルリアが進化するという奇跡が起きなければ結果は逆だったかもしれない。流星を弾き飛ばされてミミロルが演技を決めてフィニッシュという世界も十分に有り得た。
それでも、今回勝ったのは俺だ。
俺達がこの一年で積み重ねてきた努力や絆が、この結果を、優勝を勝ち取る力となった。
黒いサーナイトが嬉しそうに俺の傍に『テレポート』してくる。キルリアの時も十分に可愛かったが、サーナイトはまさに美しいの一言だった。全身、黒と青が栄え、日頃からしっかり手入れされた肌はまるで光り輝いているかのようにも見える。
ラティがのしかかるようにサーナイトに抱き着いていった。進化したことで、サーナイトは余裕でラティを受け止め、仕方ないとばかりに頭を撫でている。
――優勝だ。
ホウエンのグランドフェイスティバルでの借りを遂に返すことが出来たのだ。込み上げてくる喜びに体が震える。思えば、ジョウトリーグを優勝した時だって、こんなに嬉しいとは思わなかった。
ヒカリも悔しさをにじませながらも、素直に「おめでと」とこちらを祝福してくれる。
優勝したことで、俺はトップコーディネーターの称号と、優勝トロフィーを授与された。
ヒカリも負けてしまったが、全てを出し尽くしたようで悔いはないと言っている。また、応援に来てくれたママさんに気付いて、何かリボンのようなものを返していた。
聞けば、このリボンはヒカリが旅立つときに、お守りとしてママさんが渡してくれたママさんのコンテストリボンらしい。
けど、今はもうそのリボンがなくても、自分が頑張ってきた証や、仲間やポケモン達が支えになってくれる――だからこそ、ヒカリはリボンを返していた。
ノゾミも次のグランドフェスティバルを目指すと意気込んでおり、ナオシは俺と一緒で次はポケモンリーグに挑戦することになる。どうやらノゾミも応援に来てくれるようで、このまま一緒にリーグまで行くことになった。
ナオシはまだバッジが8個集まっていないらしく、これからナギサシティに行くらしい。どうせならナオシのバトルを見るのも面白いということで、俺達も一緒に着いていくことにした。
こうして同行者が増えた訳だが、カスミさんがノゾミのネオラントやトリトドンを見て悶絶している。今回のグランドフェスティバルでもみずタイプのポケモンはかなり活躍していたし、カスミさん的にも大満足だったようだ。
そしてタケシも、ずっと一緒に居てくれたからこそ、俺の優勝が嬉しいようで珍しく嬉し泣きしている。思えば、迷った時、くじけそうになった時は、タケシが俺を支えてくれたこともあった。
この勝利はポケモン達の外にも、タケシやカスミさん、ハルカにマサト、ヒカリが居てくれたからこそ手に入れられたものなのだと改めて思う。
今、やっとわかったような気がする。
俺の演技は、『仲間との絆を表現した演技』なんだ。それは人間に限った話ではなく、ラティを始めとしたポケモン達との絆を、演技を通して相手に伝える――俺たちの全てをぶつけるというストレートなもの。
力も、技も、その内の一つ。
いわば、心技体の全てを魅せるという基本にして奥義こそが、俺の演技の本質だった。戦っている最中は全く気付かなかったが、こうして演技を終えていろいろ振り返ったことでようやく見えてきたような気がする。
そして、これはきっとバトルにも生かせるはずだ。コンテストで学んできた全てを転用して、俺は次のシンオウリーグに臨むつもりだった。
追記。ポケモンバッカーという競技のワールドカップが、こことナギサの途中にあるクラウンシティで行われるということで、時間的な余裕もまだあるので見ていくことになった。しっかし、ポケモンバッカーってなんだ? バスケとサッカーの合わせ技か?
原作との変化点。
・第176話『セミファイナル! 決勝へ進むのは!?』より、一足先にヒカリとノゾミがぶつかりあった。
原作と違って、ヒカリが勝利している。
・ニューサトシとムサシがぶつかり合った。
ムサシは決勝でドクケイルを使うつもりだった。そのため、敗北したことでドクケイルに死ぬ程謝っている。
・第177話『決着ライバル対決! ヒカリVSノゾミ!!』より、ニューサトシとヒカリがぶつかりあった。
キルリアがサーナイトに進化し、ニューサトシが初のグランドフェスティバル優勝を決めた。
・自分の演技の本質をようやく見つけた。
戦い終わったことで、自分の演技とはどういうものかを実感した。自分の全てを曝け出して、見ている全ての人にぶつけるという単純なものだが、単純故に人はポケモンと人間の絆という本質を肌で感じられる。宇宙の心はニューサトシだったんです。
現在ゲットしたポケモン
ピカチュウ Lv.65
ピジョット Lv.60
バタフリー Lv.60
ドサイドン Lv.63
フシギバナ Lv.60
リザードン Lv.65
カメックス Lv.60
キングラー Lv.60
カモネギ Lv.60
エビワラー Lv.60
ゲンガー Lv.62
コノヨザル Lv.60
イーブイ Lv.60
ベトベトン Lv.60
ジバコイル Lv.60
ケンタロス Lv.60
ヤドラン Lv.60
ハッサム Lv.60
トゲキッス Lv.60
プテラ Lv.60
ラプラス Lv.60
ミュウツー Lv.76
バリヤード Lv.60
イワーク(オレンジ諸島の姿) Lv.58
カビゴン Lv.60
ニョロトノ Lv.59
ヘラクロス Lv.57
メガニウム Lv.58
バクフーン(ヒスイの姿) Lv.58
ラティアス Lv.54
ヘルガー Lv.57
ワニノコ Lv.57
ヨルノズク(色違い) Lv.56
カイロス(部分色違い) Lv.56
ウソッキー Lv.56
バンギラス Lv.61
ドンファン Lv.56
ギャラドス(色違い) Lv.56
ミロカロス Lv.51
ラグラージ Lv.52
オオスバメ Lv.51
ジュカイン Lv.52
ヘイガニ Lv.51
フライゴン Lv.57
コータス Lv.50
キルリア(色違い)→サーナイト(色違い) Lv.44→45 NEW!
オニゴーリ Lv.49
ワカシャモ Lv.47
メタグロス(色違い) Lv.45
エテボース Lv.43
ムクホーク Lv.42
ナエトル Lv.42
ブイゼル Lv.43
ムウマージ Lv.46
カバルドン LV.41
ミカルゲ Lv.56
グライオン Lv.40
ロトム Lv.41
ユキカブリ Lv.38
フカマル Lv.27