ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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♯239 『力の差を見せつけてやろう』

14歳 μ月ξ日 『シンオウリーグ 一回戦 VSナオシ 後編』

 

 アーマルドが戦闘不能になったことで、ナオシがポケモンを交代するが、こちらもそれに合わせてイワークを一度戻すことにした。

 二連戦でかなり活躍してくれたし、これ以上突っ張ってもすぐにやられてしまうだけだ。もしかしたら、後でこいつの力が必要になる場面がくるかもしれないし、ここは冷静に二体目を出していく。

 

 ナオシは再びロズレイドを、こちらは今大会初登場のヒスイバクフーンを出していった。

 

 アルセウス事件で進化してからお披露目の場がなかったが、くさやむしタイプを好んで使うナオシ相手にほのおタイプのポケモンを使わないのは愚の骨頂と言って良い。

 また、この時代にヒスイ時代のポケモンはほんの僅か、それこそ先祖返りしたような個体しかいないということで、ヒスイバクフーンは大いに驚きを観客にプレゼントしていた。大変気分がいい。

 

 クリスタルのイワークに続き、初見のヒスイバクフーンの登場だが、ナオシはそれ以前にステロのダメージの方に集中していた。

 イワークとの戦いで『れいとうビーム』が掠り、今回のステロで1/8ダメージ、合わせて体力は1/4程削られたとみて良い。つまり、残り体力は約3/4だ。

 

 おまけに、相手は初見のヒスイバクフーン。

 

 当然ながら、ヒスイ種なので原種とはタイプが変わっており、ほのお単タイプからほのお・ゴーストという珍しい複合タイプに変化していた。

 ノーマル・かくとう技を無効にし、いくつかの半減も増えたが、弱点もまた増えている。その一つが、ロズレイドにも使えるゴースト技なのだが、果たして初見でヒスイバクフーンのタイプを見抜けるか?

 

 と、調子に乗っていると、ナオシが「まさか、太古のバクフーンですか……?」と、質問を飛ばしてきた。これには驚いた――どうやらナオシはヒスイ時代の知識が少しあるようで、バクフーンの姿を見てヒスイ種だと推測したらしい。

 そういや、前にハクタイで事件に巻き込まれた時も、ナオシはシンオウに古くから伝わる神話等にも精通していた。その関連で、ヒスイ時代の文献なども目を通していたのかもしれない。これだから過去の知識に造詣が深い奴は面倒なんだ。

 

 と、内心で舌打ちしていると、ナオシは探るように『シャドーボール』を指示してきた。

 既にロズレイドは技として『あまいかおり』と『はなびらのまい』、『グラスフィールド』を使っている。残りの技枠が一つしかない中で、自分の知識を信じ切るその胆力は流石と言えた。

 

 とはいえ、このまま黙って直撃を受ける訳にも行かないので、こちらも新技である『ひゃっきやこう』で、相手のシャドボを相殺していく。

 この『ひゃっきやこう』という技は、威力が60しかないゴーストの特殊技で一見弱いように見えるが、その分手数が多く操作性に長けている。また、追加効果として、三割の確率で相手を火傷にし、相手が状態異常の時に威力が二倍になるというものがあった。

 

 バクフーンの首の炎から、ゴースにも似た紫の火の玉が三発程放たれる。一発一発では、シャドボを相殺できないが、三発を断続的にぶつけると十分に相殺することが出来た。

 

 ならばと、ナオシは『はなびらのまい』と『シャドーボール』を合わせてくる。大量に舞う花弁にシャドボのゴーストエネルギーを纏わせることで、無理やり手数を増やしてきたのだ。

 

 相手が手数ならこちらも手数で対抗してやる。全体攻撃の『ふんえん』で花弁を一つ残らず燃やし尽くしてやれ。

 

 互いの攻撃がぶつかり合い、花弁が炎で燃え尽きていく。しかし、連続攻撃である向こうの攻撃は一度で止まらなかった。こちらも技の範囲を絞ることで攻撃の数を増やしてはいるが、流石に単純な連続攻撃に対抗できるほどではない。

 こちらの『ふんえん』を突破して、ヒスイバクフーンがダメージを受けた。だが、この連続攻撃の後、ロズレイドは再び混乱状態になる。ステロのダメージを考えれば、戻すかどうかは悩み所だろう。

 

 だが、ここでナオシが技を見せてきた。事前に自分に向けて『あまいかおり』を放つことで、混乱を無理やり解除してきたのだ。

 とはいえ、デメリットもあるようで、自分の匂いで正気に戻ったは良いものの、回避率が二段階下がるデバフも受けている。これで、こちらの攻撃を回避するのは難しくなったと言って良い。

 

 ならば、一気に勝負をかけていく。再び、『はなびらのまい』と『シャドーボール』の合わせ技で攻めようとするナオシに対し、こちらも『ころがる』と『かえんぐるま』の合わせ技で対抗する。

 

 相手の攻撃を躱しつつ、バクフーンが炎を纏って回転しながらフィールドを走り回っていく。相手の回避率が下がったことで、避けられるリスクも少なくなった。『ころがる』の効果で、攻撃が当たる度に技の威力が上がるので、ぶつかればぶつかるほどロズレイドはダメージを受ける。

 

 連続攻撃とはいえ、その攻撃回数や操作性には限りがあった。花弁を全て回避し、混乱した所で突撃を仕掛けていく。流石にもう混乱状態を解除するすべはないようで、今度はこちらの連続攻撃がロズレイドを襲った。

 

 一撃を受ける毎に弱点のダメージも上昇していき、体力がどんどん削られていく。

 

 しかし、四発目がぶつかる寸前、体力ギリギリでロズレイドの混乱が解けたようで、一か八かの『シャドーボール』で迎撃してくる。

 バクフーンも大ダメージを受けたが、技が中断されたことで『ころがる』の効果である外れるまで攻撃を繰り返すというデメリットも解除された。

 

 吹き飛ばされながら、『ふんえん』でとどめを刺していく。こちらの体力も半分近く削られはしたが、これでロズレイドも戦闘不能になり、ナオシのポケモンは残り一体となった。

 とはいえ、ここで油断すれば、まだ三タテも十分に有り得るので、最後まで油断せずに行く。ナオシがロズレイドを戻すのに合わせて、こちらもヒスイバクフーンを一度戻した。

 

 ナオシが最後のポケモンとしてコロトックを出してくる。同時に、ステロのダメージを受け、体力が1/4削られた。やはり、むしタイプはいわタイプが苦手な故、ステロのダメージも通常より大きく入る。

 対するこちらも、最後のポケモンとしてプテラを出した。ナオシのポケモンにとって苦手であるいわ・ひこうタイプのポケモンだ。

 

 おまけに、こいつには秘策があった。

 

 スズラン島に少し来る前に知り合ったトレジャーハンターのバクが、前回のお宝を譲った代わりに、今まで手に入れた宝の一部を分けてくれたのだ。

 その一つが、プテラをメガシンカさせるためのプテラナイトだった。他にも何体か、俺のポケモンに呼応するメガストーンを受け取っている。メガストーンは確かにレアだが、自分で使えないのでは宝の持ち腐れだと言って譲ってくれたのだ。

 

 おかげで、俺はシンオウリーグ前にいくつかの切り札を入手することが出来た。正直、メガストーンについてはいずれカロス地方で探すつもりではあったが、こういう入手法もありだろう。

 

 プテラのメガストーンが輝きを見せ、こちらもキーストーンがハマったメガリングのスイッチを押していく。

 メガシンカに必要な絆――だが、もしこの日記を読んでいる人間がいるのなら、俺とプテラがこれまでの旅で築いてきた絆が、メガシンカに不足しているかどうかなど考えるまでもないことだろう。

 

 プテラの全身が輝き、節々に真っ黒な石のようなものが浮かび上がる。通常時よりも獰猛さを増しているようだが、冷静さを失うほどではないのか、好戦的な笑みを浮かべながらも勝手な行動は控えている。

 メガプテラになったことで、特性が『かたいツメ』に変化し、直接攻撃する技の威力が1.3倍に上がった。殴り合い上等の性格をしているこいつにはピッタリの特性だ。

 

 ナオシも、まさかここでメガシンカが出てくるとは思わなかったようで苦しそうにしている。とはいえ、俺もナオシの実力を認めているが故に、手加減をするつもりはなかった。

 

 こちらが全力であるように、ナオシも当然全力を出してくる。「魂が揺さぶられるようだ……!」と、真剣な表情をしながら、コロトックに『うたう』を指示してきた。

 しかし、コロトックは歌おうとするが、すぐに困惑したように首を横に振る。声が出ないのだろう。何せ、こちらは『うたう』対策に、既に『ちょうはつ』を使っていた。

 

 メガプテラの素早種族値は脅威の150族だ。

 

 対するコロトックは素早種族値65の鈍足――仮に、コロトックが先に歌おうとしても、後出しで『ちょうはつ』が間に合ってしまうレベルの速度差がある。

 

 得意の歌まで封じられ、圧倒的に苦しいナオシだが、それでも戦うことは止めなかった。むし技は効果今一つということで、あく技をメインにプテラに挑むも、メガシンカしたメガプテラは攻撃種族値も135ある。

 タイプ一致技や変化技を封じられて、メガシンカポケモンに勝てるはずもなく、こちらの遠慮ないタイプ一致攻撃で一気にコロトックを戦闘不能まで持って行った。

 

 ナオシも、一回戦負けというのは少しショックだったようだが、すぐにいつもの余裕を取り戻したようで、「次の試合も頑張ってください」と、こちらにエールを送ってくる。

 

 当然、負けるつもりはない。

 

 ナオシも結果的には一回戦敗退となってしまったが、組み合わせ次第ではもっと上位に名を連ねてもおかしくはなかった。ニューサトシが優勝することで、クジ運が悪かっただけ――と、いうのを、周りにもわからせてやろう。

 

 

 

 14歳 μ月ο日 『シンオウリーグ 二回戦 VS ヒロシ』

 

 早くも二回戦が始まり、俺の相手は何とヒロシ君となった。思えば、野良バトルで何回か戦ったことはあっても、こうしてちゃんとした場で戦うのは、セキエイ大会以来である。

 あの時は、ヒロシ君の使っていたピカチュウ、ヒトカゲ、バタフリーの全てが、いわ・じめんタイプで圧殺できるということで、ドサイドンで大人気なく三タテしてやったんだっけか。

 

 あれから、ヒロシ君もジョウトでルギア親子を助けたり、ミュウツーを捕まえたり、ホウエンリーグでベスト8まで残ったりと少しずつ実力をつけてきている。

 正直、ヒロシ君がミュウツーⅦを使ってくるなら、俺も苦戦させられることになるだろう。しかし、俺はこの試合でヒロシ君がミュウツーⅦを使ってくることはないと確信していた。

 

 もう、あのミュウツーⅦと俺達は格付けが済んでしまっている。俺達はもう気にしていなくとも、あのミュウツーⅦの中にはサカキを通じて覚えた俺達への恐怖がしみ込んでいた。

 この旅でも、ヒロシ君は俺の前でミュウツーⅦを出そうとしていない。その恐怖を払拭させないまま伝説だからという理由でバトルに採用するほど、ヒロシ君はポケモンの心を理解していない人間ではなかった。

 

 だからこそ、この試合は俺が勝たせて貰う。今回の大会はクジ運が悪かったと思って、ヒロシ君には素直にこの二回戦で敗退してもらうつもりだった。まぁ、仮に何かの間違いでミュウツーⅦが出て来ても勝てる自信はあるしな。

 

 と、思いながら様子を見てみると、ヒロシ君は少し緊張したような、それでもバトルできるのが嬉しそうなと、正反対の感情を持て余しているように見える。

 しかし、俺が見ているとわかると、すぐに不敵な笑みを浮かべながら、「サトシ! 全力のバトルで頼むよ!!」と言われた。当然、手など抜くつもりはない。

 

 バトルが始まると、ヒロシ君はオオスバメ――こちらは、ウソッキーを出していった。

 

 ヒロシ君のポケモンは比較的ひこうタイプが多めだ。多分、俺と同じでひこうタイプに適性があるんだろう。故に、ここは弱点のいわタイプを持つウソッキーに任せることにした。

 俺のウソッキーはタケシのウソッキーと違って、踊りをバトルに組み込んで相手のリズムを崩す戦法を得意としている。現に、モンスターボールから出た時は、コンテストバトルかと思うくらいにポーズを決めていた。

 

 ヒロシ君も相性不利は察したようで、ここは素直にオオスバメを戻してくる。当然のようにこちらはウソッキーに『ステルスロック』を指示した。

 一回戦同様に、ヒロシ君のフィールドに岩が置かれ、これで次に出てくるポケモンは体力の1/8のダメージを受ける。オオスバメはひこうタイプなので、1/4だ。仮に『きりばらい』でステロを撤去しても、ダメージ1/4と技一つを使わせられるならおつりがくる。

 

 ヒロシ君はすぐにしまった――と、いう表情を浮かべた。しかし、すぐに気を取り戻したように、近くに立っていたピカチュウに、「レオン、出てくれ!」と頼んでいる。

 ピカチュウことレオンがフィールドに出たことで、ステロのダメージ1/8を受けるが、まだまだ戦えるぜ――と、バチバチ頬袋をスパークさせていた。どうやらやる気は十分らしい。

 

 こちらはこのままウソッキーを継続する。ウソッキーはいわ単タイプなので、でんき技は等倍だが、じめんタイプの技も使えるし有利に立ち回れるからな。

 とはいえ、わざわざウソッキー相手に、そこまで有利でもないピカチュウで押してきた――と、いうことを考えると、使ってくる技には大体予想が付いた。

 

 ヒロシ君が『なみのり』を指示してくる。まぁ、だろうなとは思っていた。別にピカチュウの『なみのり』は、うちのピカ様の専売特許という訳でもない。

 とはいえ、素直に技を受けるのも馬鹿らしいので、素直に『あなをほる』で地中に逃げることにした。水が侵食してこないようにUの字に穴を掘らせて攻撃を回避していく。

 

 当然ながら、ピカチュウは『じしん』や『マグニチュード』といった技は覚えない。『アイアンテール』で地面ごと割ってダメージを与える手段もあるにはあるが、あれだって地面の中からくる敵の動きを読む高等技術が必要なので、そう簡単に出来ることではなかった。

 

 地中からウソッキーが飛び出していく。しかし、ヒロシ君もただではやられなかった。攻撃を受けつつ、『リフレクター』を発動させて受けるダメージを半分にしている。

 とはいえ、ステロのダメージと合わせても1/4程削ることが出来た。ピカチュウは耐久面に優れたポケモンではないので、いくら壁を張っても防御や流しの技術がないと、うちのピカ様のように強敵と渡り合うことは出来ないのだ。

 

 だが、ヒロシ君も負けん気が強かった。付け焼刃の『なみのり』が効かないとわかると、今度は『10まんボルト』で攻めてくる。

 ならば、こちらも『ストーンエッジ』で相殺していこう。地面から岩が剣山のように飛び出しながら、相手の『10まんボルト』にぶつかっていく。最初は岩を砕いていた電撃も、すぐに威力を無くして止まってしまっていた。

 

 ヒロシ君が、「これも駄目か……!」と声を上げる。向こうの攻めが止まったなら、今度はこちらの番だ。ウソッキーが剣山の上に飛び乗り、ピカチュウに向かって真っすぐ走っていく。

 こちらが何かを狙っていると察したようで、ヒロシ君も「レオン、走り回るんだ!」と指示を飛ばした。動きを止めないのは悪くないが、まだまだ甘いぜ。

 

 剣山の上からジャンプしたウソッキーに、最後の技である『じしん』を指示する。ジャンプして飛び降りた勢いをそのまま『じしん』に転用することで、通常時よりも範囲や威力を大きくさせ、相手に避け辛くさせることが出来るのだ。

 これは、この旅の最初のガチ戦――クロガネジムのヒョウタが使っていた、『ボディプレス』の威力を『じしん』に転用するという技の応用だった。

 

 もし、これが通常の『じしん』ならヒロシ君もタイミングよくジャンプや『なみのり』を使わせて回避することだって出来ただろう。しかし、飛び降りた勢いを技の威力にプラスするなんて荒業に初見で対応しろというのは流石に無理がある。

 

 強い振動が、地面を通じてピカチュウを襲っていく。いくら『リフレクター』を使っているとはいえ、ステロのダメージ+『あなをほる』+『じしん』で体力は一気に残り1/3近くまで削られてしまっていた。

 

 それでも、ヒロシ君は負けじと突っ張ってくる。ピカチュウに最後の技である『アイアンテール』を指示して、近接戦に持ち込んできた。

 残念ながらこちらは近接で使える技がないので攻撃を躱すしかない。まるで踊り子のように舞いながらウソッキーは攻撃を回避していく。

 

 ウソッキーの好きな踊りを使ったバトルだ。おまけにグランドフェスティバルの経験を経て動きを改良したようで、ヒロシ君のピカチュウもその動きを捉え切れていない。

 

 当然だが、ウソッキーよりもピカチュウの方がスピードは上――だが、攻撃の導線を見切ることで、最小限の動きで相手の攻撃を回避しているのだ。

 どんなに鈍足なポケモンだって、相手の動きが読めれば回避は難しくない。そこに、コンテスト特有の魅せる動きをトッピングすることで、相手は攻撃のリズムを外される。今、ピカチュウは攻撃しているのではなく、攻撃させられているのだ。

 

 とはいえ、別にヒロシ君のピカチュウの動きが単調という訳ではなかった。しかし、踊っているからこそ、相手にはウソッキーの隙がはっきり見える。

 だが、それはウソッキーによって作られた架空の隙だ。そこに食いつけば、攻撃は躱されるだけ――巧妙に作られた隙は、わざとらしさを感じさせずに相手を惑わせる。

 

 一昨年のチャンピオンリーグ前に、本格的にポケモン同士で踊りを始めてからウソッキーはこの型の原型が朧げに見えていた。

 そして、約二年の歳月を使い、今回のグランドフェスティバルでその原型を形にしていったのだ。何せ、最初はピカ様ですら釣られたレベルである、そう簡単に見破れるものではない。

 

 執拗に攻撃を繰り返すピカチュウの足を払って、ウソッキーがバックステップしていく。

 

 それを見て、攻撃がくると判断したのだろう。ヒロシ君が『なみのり』を指示した。仮に、『じしん』であれ、『ストーンエッジ』であれ、『あなをほる』であれ、『なみのり』をしてしまえば攻撃を回避できる。

 だが、そんな考えは百も承知だ。相手を誰だと思っている? ピカ様と何年も一緒に戦ってきたニューサトシに、そんな単純な手が通用するはずがなかった。

 

 ウソッキーに『ストーンエッジ』を指示する。しかし、ただのエッジではない。全ての力を一つに集約させ、山と言って良い大きさの一つの岩を作り上げた。

 

 そのまま岩の頂上に立つことで波を全て受け流し、相手の攻撃後は飛び降りて再び落下の勢いを『じしん』に転用していく。

 ヒロシ君もすぐにジャンプで回避するように指示したが、威力が上がっている『じしん』の振動はジャンプのタイミングよりも早く、ピカチュウにぶつかっていった。

 

 耐えられるか――とも思ったが、どうやら『リフレクター』が切れてしまっていたようで、軽減無しの弱点攻撃を受けてピカチュウが倒れる。結局、ノーダメージでウソッキーはヒロシ君のピカチュウを圧倒した。

 野良の試合の時とは全く違う俺本来の動きにヒロシ君は翻弄されっぱなしだ。とはいえ、ウソッキーの技も全て使わされてしまったので、ここで一旦ウソッキーを戻していく。

 

 ヒロシ君もピカチュウを回収すると、再びオオスバメを出してきた。ステロで1/4のダメージを受けるのを見ながら、こちらも二番手のヤドランを出していく。

 みずタイプのヤドランが出てきたことで、ヒロシ君はステロのダメージ覚悟でピカチュウを温存しておくべきだったと悟ったのか、自らの判断を悔やむような仕草を見せる。

 

 だが、すぐに首を横に振って現状に向き直った。そのまま、『きりばらい』を指示して、まずはステロを排除していく。

 これで交換ごとのダメージはなくなってしまったが、既にステロは十分すぎる仕事をしていた。それに、今の『きりばらい』に合わせて、こちらも『ドわすれ』を積ませて貰っている。

 

 ヒロシ君のオオスバメがどういう型かは知らないが、基本的にオオスバメは特殊型が多いイメージがあった。まぁ、仮に物理型だったとしても、防御種族値110族のヤドランは物理には滅法強い。これで、そう簡単には突破できなくなった。

 

 ヒロシ君は、オオスバメに『ぼうふう』を指示してくる。どうやら予想通り特殊アタッカーのようで、こちらも続けて『ドわすれ』を積んでいく。

 攻撃を受けつつ、ヤドランがさらに特防を二段階上げる。『ぼうふう』は威力の高い技ではあるが、予め特防が二段階上がっていたこともあって余裕で受けきれた。おまけに、追加効果の混乱も、こちらの特性が『マイペース』なので無効となっている。

 

 やたらと詰み技を続けていることにヒロシ君は首を傾げているが、こちらが攻撃してこないなら――と、向こうも『きあいだめ』を使ってきた。

 

 成程、急所のダメージは防御ランクの上昇を無視してダメージを与えられる。こちらが詰み技で特防を上げても、技が急所にさえ当たれば問題ないという考えか。

 

 こちらが『ドわすれ』の三回目を積むと同時に、向こうも『きあいだめ』を使い終わる。続けて、ヒロシ君は『エアカッター』を指示してきた。

 威力は60しかないが、相手全体に攻撃が当たる急所狙いの技だ。『きあいだめ』の急所+2と合わされば、確定急所技となる。ヤドランの苦手な特殊攻撃が急所に当たり、苦しそうな声を上げる――しかし、即座に『なまける』で体力を回復させた。

 

 いくら急所に技が当たったとはいえ、元々の技の威力はそこまで高くないので回復で相殺できる。とはいえ、『なまける』は5回しか使えないので、同じことを何度も繰り返されたらじり貧になるのはこちらだった。

 

 ならば、こちらも攻撃に転じよう。

 

 ヤドランに『アシストパワー』を指示する。これは前にラティが使っていた通り、自分の能力が上がっていると威力が増す技だ。

 今、ヤドランは『ドわすれ』三回で、合計六段階ステータスが上がっている。つまり、今の『アシストパワー』は威力140の大技となっていた。

 

 ヒロシ君が慌ててオオスバメに「避けるんだローズ!」と声をかける。オオスバメも即座に回避行動に移ったが、コンテスト用の魅せ技ではない『アシストパワー』を舐めて貰っては困る。

 エスパータイプの本領と言わんばかりに、ヤドランは最後の技である『サイコキネシス』で『アシストパワー』を操作してオオスバメを追いかけていく。

 

 しかし、相手も素早125族ということで、そう簡単には捕まらない。ならば――と、ヤドランは、『アシストパワー』を四分割することで、オオスバメを囲い始めた。

 

 これも、コンテストで覚えた技の応用だ。今までは、技を操作したり、大きさを犠牲に段数を増やす程度しかしてこなかったが、ポケモンの技には無数の可能性がある。

 今回は単純に一つの技を分裂させただけだが、同じ技でも工夫次第でいろいろなことが出来るというのは、コンテストを経験しなければ気付けなかっただろう。間違いなく、これまでの経験がオレたちを強くしてくれていた。

 

 攻撃が一方向ならば逃げるのは容易いが、囲まれてしまっては逃げ場がなくなる。仕方なく、『ぼうふう』を壁として使うことで防御しようとしてくるが、ヤドランはここで四つに分離していた技を一つに集約させてきた。

 

 分裂させたが元に戻らないとは言っていない。再び一つとなった『アシストパワー』が『ぼうふう』の壁を突破してダメージを与える。

 

 暴風を突き抜けたことで多少は威力が下がったが、それでもタイプ一致の高火力技ということで、オオスバメもダメージを受けて落下してきた。

 だが、ヒロシ君もすぐに声をかけてオオスバメに体勢を立て直させる。お互いに全て技を使ってしまっているとはいえ、耐久できるこちらは圧倒的に有利だった。

 

 ワンチャンの急所を狙って、ヒロシ君が再び『ぼうふう』を使ってくる。しかし、こちらもそう簡単に技を受けてやるほど優しくはなかった。『サイコキネシス』で、『ぼうふう』の矛先をずらして技を外させる。

 元々、『ぼうふう』は命中率に難のある技だ。こちらで狙いを少しずらせばすぐに技は外れてしまう。とはいえ、『エアカッター』では決め手にならなかった。

 

 再び、『アシストパワー』がオオスバメを追いかけていく。回避しようと逃げるオオスバメだが、先程のダメージが効いているようで動きに精彩がなかった。

 ヒロシ君もオオスバメの動きがおかしいことに気付いてすぐに戻そうとボールを出すが、その前に威力140の追撃がオオスバメを戦闘不能に持って行ってしまう。もし、ステロの1/4ダメージがなければまだ耐えられたかもしれないが、そこは対応できなかった相手が悪い。

 

 連続でポケモンを失い、ヒロシ君も後がなくなった。オオスバメを戻すのに合わせて、こちらもヤドランをボールに戻していく。おそらくだが、ヒロシ君の最後の一体はあいつだろう。

 

「頼むぞ、ジッポ!」

 

 出てきたのはリザードンだった。前に、リザードン同士でバトルをしようと約束したが、あの時はアルセウスの事件のせいで、何だかんだお預けになってしまったんだっけか。

 

 なら、あの時の約束を今果たそう。

 

 こちらも最後の一体であるリザードンを出していく。本来であれば、もっと後まで温存しておくつもりであったが、ヒロシ君が相手であれば悔いはない。

 

 ヒロシ君も追い詰められているというのに、俺がリザードンを出してきたことで笑みを浮かべた。あの時のバトルが出来る、これを待っていた、そんな感じの感情が溢れている。

 

 本来であれば、ウソッキーやヤドランだけでも十分にヒロシ君のリザードンを倒せる力があった。それはヒロシ君も理解しているだろう。

 既に勝ち目がない状況――にもかかわらず、俺はヒロシ君の望む展開を演出した。当然ながら、手加減でもなんてもない。約束を果たすと同時に、力の差を見せつけてやろうと思っただけだ。

 

 もし、ヒロシ君がこの先もチャンピオンリーグを目指すのならば、今の力では足りない。仮に俺が出ていなかったとしても優勝はまず不可能だっただろう。

 だからこそ、ここで一度――ヒロシ君には肌で俺の力を、もっと上のレベルを味わってもらう。それで倒れずに向かってこられるのであれば、ヒロシ君はいずれこの高みに登ってくる。

 

 ヒロシ君が『りゅうのはどう』を指示してきたので、こちらは『ドラゴンクロー』で反撃していく。

 相手の攻撃を紙一重で躱しつつ、攻撃態勢に移行――無駄を省き、一気に距離を詰めて、驚きの表情を浮かべる相手のリザードンの顎を跳ね上げた。

 

 続けて、『かみなりパンチ』でボディを叩く。ヒロシ君もすぐに『エアスラッシュ』で反撃を指示してきたが、バックステップで距離を取る前に『かいりき』で体を掴んで動けなくさせた。

 

 そのまま相手のリザードンを地面に叩きつける。しかし、ヒロシ君も負けじと、『きりさく』で反撃を指示した。

 だが、その攻撃が届く前に、こちらは倒れたリザードンの腹に足を乗せて、ゼロ距離『じわれ』でとどめを刺していく。本来、ゲームであればひこうタイプを持つリザードンにじめんタイプの技は効かない。

 

 しかし、『はねやすめ』が地面に足を付くことで、ひこうタイプのじめん無効耐性を奪うように、地面と完全に接触している状況であれば、ひこうタイプのポケモンにもじめん技を当てることが可能だった。

 相手のリザードン越しに、『じわれ』の振動が伝わり、一撃必殺の効果で戦闘不能となる。ヒロシ君のイメージでは、もう少しまともなバトルになると思っていたのだろうが、残念ながらこれが今の俺とヒロシ君の力の差だ。

 

 失礼な言い方をすれば、きずな現象を使うまでもないということでもある。だが、ヒロシ君は挫けなかった。「今度はもっと強くなって、君に挑戦するよ」と、宣言してくる。

 

 これで、俺も二回戦を突破した。

 

 明日は三回戦――知り合いで二回戦を突破しているのは、シンジ、罰金野郎、ミツル君にムサシ、そしてかつてダブルバトルの大会やスクールで見た、眼鏡をかけたコウヘイというトレーナーだった。

 

 いつもヒカリの後ろから現れて驚かせてくるあいつも、気が付けば二回戦を突破しているのか――と、思っていると、三回戦の組み合わせが決まった。

 噂をすれば影ではないが、俺の相手は何と件のコウヘイである。スクールで散々いびったせいか、俺とは目を合わせてくれなくなってしまったが、観客席の方を見ると今日も今日とてヒカリの後ろから現れてどうでもいいうんちくを披露しているようだった。

 

 

 追記。コウヘイや罰金野郎が、この大会にダークライを使う実力者が参加しているという情報を伝えてきた。原作でもいたサトシ君絶対に優勝させないマンか。ニューサトシは伝説のポケモンがあまり好きではないが、しっかり手綱が握られているなら話は別だった。今から伝説使いの奴と戦うのが楽しみである。

 

 

 




 原作との変化点。

・第183話『開幕! ポケモンリーグ・スズラン大会!!』より、開幕から大暴れした。
 クリスタルのイワークに、ヒスイバクフーン、メガプテラと大盤振る舞いしてやった。地味にナオシをメタっており、全員がしっかりと活躍している。

・二回戦でヒロシ君と当たった。
 ウソッキーの戦い方が完全に確立し、ヤドランがエスパータイプの本領を見せ、リザードンが格の違いを見せつけるというかなり大人気ないバトルをした。しかし、それはヒロシ君を認めているからであり、彼ならもっと上に来ると信じている。

・サトシ君絶対優勝させないマンのワカメが準備運動を始めた。
 ニューサトシは自由勝手に振舞う伝説は嫌いだが、しっかり手綱が握られている伝説は大好き。なので、今から戦うのを楽しみにしている。



 現在ゲットしたポケモン

 ピカチュウ Lv.65

 ピジョット Lv.60

 バタフリー Lv.60

 ドサイドン Lv.63

 フシギバナ Lv.60

 リザードン Lv.65

 カメックス Lv.60

 キングラー Lv.60

 カモネギ  Lv.60

 エビワラー Lv.60

 ゲンガー  Lv.62

 コノヨザル Lv.60

 イーブイ  Lv.60

 ベトベトン Lv.60

 ジバコイル Lv.60

 ケンタロス Lv.60

 ヤドラン  Lv.60

 ハッサム  Lv.60

 トゲキッス Lv.60

 プテラ   Lv.60

 ラプラス  Lv.60

 ミュウツー Lv.76

 バリヤード Lv.60

 イワーク(オレンジ諸島の姿) Lv.59

 カビゴン  Lv.60

 ニョロトノ Lv.59

 ヘラクロス Lv.57

 メガニウム Lv.58

 バクフーン(ヒスイの姿) Lv.58

 ラティアス Lv.54

 ヘルガー  Lv.57

 ワニノコ  Lv.57

 ヨルノズク(色違い) Lv.56

 カイロス(部分色違い) Lv.56

 ウソッキー Lv.56→57

 バンギラス Lv.61

 ドンファン Lv.56

 ギャラドス(色違い) Lv.56

 ミロカロス Lv.51

 ラグラージ Lv.52

 オオスバメ Lv.51

 ジュカイン Lv.52

 ヘイガニ  Lv.51

 フライゴン Lv.57

 コータス  Lv.50

 サーナイト(色違い) Lv.45

 オニゴーリ Lv.49

 ワカシャモ Lv.47

 メタグロス(色違い) Lv.45

 エテボース Lv.43

 ムクホーク Lv.42

 ナエトル  Lv.42

 ブイゼル  Lv.43

 ムウマージ Lv.46

 カバルドン LV.41

 ミカルゲ  Lv.56

 グライオン Lv.40

 ロトム   Lv.42

 ユキカブリ Lv.38

 フカマル  Lv.28

 タマゴ   何が生まれてくるのかな? 生まれるまでまだまだ時間がかかりそう


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