ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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#026 『どうにか勝たせてやりたい』

 10歳 κ月η日 『ライバル対決 オーキド研究所 後編』

 

 シゲルとバトルをすることになった。

 まずは1対1のバトルということで、俺のイーブイが気合いを入れてフィールドに飛び出していく。

 このバトルはイーブイのためのバトルということでレベル25くらいのポケモンでバトルすることになっている。俺のイーブイがフィールドに出るのをみると、シゲルもモンスターボールをフィールドに投げてきた。

 

「ブイ!」

 

 どうやら向こうもイーブイのようだ。そういえば、アニメでシゲルと最初にバトルした時はイーブイを使っていたな。

 思わぬイーブイ対決になったということで、俺のイーブイも負けるもんかと意気込んでいた。

 

 とはいえ、変に空回りしても良くないので、まずは様子見と行こう。イーブイに『でんこうせっか』を指示すると、シゲルも『でんこうせっか』を指示している。お互いのイーブイが体をぶつけ合うと、俺のイーブイが弾き飛ばされた。

 

 こりゃ向こうの特性は『てきおうりょく』だな。

 

 オーキド博士曰く、俺のイーブイは通常のイーブイとは違う特性を持っていて、そのおかげで進化の石やなつきの条件なしで進化したり戻ったり出来るらしい。ポケスペでは人工的な機械による進化だったが、この世界ではそういう特性のようだ。

 

 ただ特性とはいえ、進化して戻るというのはかなりのパワーを使うから、頻繁に行うと捕まえた時のように心も体も傷ついてしまうのであまり使うなと言われている。

 俺もイーブイをいたずらに傷つけたい訳じゃないので使うつもりはないが、特性が死んでいるのは不利だ。まともにぶつかっては勝てないので、何とか隙を作りたい。

 

 まだまだ元気なイーブイに『すなかけ』を指示し、命中率を下げさせる。しかし、シゲルは読んでいたとばかりに『スピードスター』を打ってきた。絶対に命中する技か、おまけに『てきおうりょく』で火力も上がっている。

 どうするか。レベルが低いこともあってお互いに技が少ない上、こちらは特性の差でパワー負けしている。このままじゃ圧倒的に不利だ。

 

 こうなればひるみを狙うしかない。『かみつく』で無理にでも、状況を立て直そうとすると、シゲルのイーブイは『なきごえ』で、こちらの攻撃力を下げてきた。くそ、ただでさえ『かみつく』はタイプ不一致技なのに、これじゃダメージはほぼ入らんぞ。

 

 どうにか勝たせてやりたい。

 

 そんな俺の気持ちが伝わったのか、シゲルのイーブイに向かっていく俺のイーブイの体が光り、ブラッキーへと進化した。

 シゲルは「夜じゃないのに!?」と驚いている。そりゃそうだ、こちらの特性を知らなきゃ不思議に思うよな。

 

 進化させてしまったことに若干の心苦しさはあったが、逆に言えばあいつもそれだけ勝ちたかったということだ。こうなれば、もう進化したブラッキーの能力を十全に使ってやるのが、トレーナーとして唯一俺があいつに出来ることだろう。

 

 そのままブラッキーが『かみつく』でイーブイにダメージを与えると、『ダメおし』を指示してさらに追加攻撃する。『ダメおし』は直前で相手がダメージを受けている時、ダメージが二倍になるというあくタイプの技だ。

 

 ブラッキーに進化した今、タイプ一致の大技であり、イーブイが大ダメージを受ける。

 シゲルは驚きで指示が一瞬遅れていた。

 すぐに逃げるように言っているが、ここまで来れば逃がすつもりはない。『でんこうせっか』で再び距離を詰めさせ、『ダメおし』で再び追撃した。

 

 進化でパワーも上がった『ダメおし』を、二倍効果ありで二度も受けて立てるはずもなく、シゲルのイーブイが戦闘不能になる。

 若干ずるをした気分だが、それでも勝ったことに変わりはなく、ブラッキーがイーブイに戻って嬉しそうにこちらへ走ってきた。

 

 それを見てシゲルがまたもや驚いていたが、オーキド博士が「そういう特性じゃよ」と説明している。初見殺しのような真似になってしまったが、体に悪いからあまり乱用出来る特性ではないので許してくれ。

 

 まぁ、今は勝ったイーブイを目一杯褒めてやることにした。こいつもこの勝利で、自分に自信が持てただろう。

 よしよし、これからは体に障らない程度に、少しずつバトルに参加していこうな。

 

 さて、気を取り直して、バトルを継続しようか。

 ぶっちゃけ、今の試合はエキシビションマッチのようなものなので本番はここからだ。実質2対2のバトルがこれから始まる。

 シゲルが次に出してきたのは、『ウインディ』、俺は『ベトベトン』にした。ウインディの特性は『いかく』なのか、ベトベトンの攻撃力が下がる。これは痛い。ベトベトンは基本的に物理タイプのポケモンだ。

 当然、俺のベトベトンも、何故か教え技である『のしかかり』を覚えているくらいのバチバチの物理アタッカーである。

 

 どう動くか考えていると、シゲルがウインディに『かたきうち』を指示してきた。

 きったねぇ、こいつイーブイの負け根に持ってやがる。とはいえ、焦ることはない。俺のベトベトンはレベルが40しかないが、何故か『とける』を使えるので防御が二段階上がる。 

 おまけに、アニメのように『とける』で柔らかくなったボディは衝撃を吸収してくれるので意外と物理技を受けることが出来るのだ。

 

 しかし、ダメージが入ったことに変わりはない。

 反撃とばかりに『ダストシュート』を指示するが、向こうも『だいもんじ』で相殺してくる。一度捕まえてしまえばこちらのものなのだ。ベトベトンにウインディへ『のしかかり』を指示し、近接戦を仕掛けていく。

 向こうも『しんそく』で応戦してきたが、それを待っていたんだ。『しんそく』が直撃した瞬間、ベトベトンにウインディを掴ませ、そのまま『のしかかり』でウインディを包み込む。

 

 俺のベトベトンの特性は『あくしゅう』だ。

 なつき度が上がった(博士への)ことでむやみやたらに匂いを放つことはなくなったが、それは匂いが消えた訳ではなく、内部にため込んでいると言うことでもある。

 もがいていたウインディだが、あまりの匂いに怯んだのか動きが段々鈍くなっていく。おまけに『のしかかり』中ということもあり、麻痺も入ったのか、動きが完全に止まった。

 

 ベトベトンが退くと、ウインディが擬似的な混乱状態なのか、目を回して倒れている。だが、戦闘不能という訳ではないので、『ダストシュート』で追撃しようとすると、シゲルが「戻れ」と言って、ウインディをボールに戻して攻撃を回避した。良い判断である。

 

「まさか、ベトベトンの『あくしゅう』があそこまで酷い物とはね……」

「ひるみは狙い通りだが、混乱まではこっちも予想外だった」

 

 とはいえ、シゲルもこのまま負けるつもりはないようだ。最後に出してきたのはエレブーだった。カメックスだと思っていたので少し驚いたが、これは模擬戦のようなものだし、切り札は見せないということなのだろう。

 

 開幕で『10まんボルト』を打ってくるが、俺のベトベトンは発電所に住んでいたということもあって電気に強い。何せ、ピカ様の『10まんボルト』ですらダメージが入らなかったくらいだ。

 こいつのボディにでんき技を通そうと思ったら、特攻を数段階上げないと無理だろう。シゲルもまさかでんき技が効かないと思わなかったのか、一瞬驚いた顔をして、「君のポケモンは常識が通じないな」と言って笑っている。

 

 しかし、まだどうにかする手段を持っているようで『サイコキネシス』を指示してきた。

 どうやら切り札のつもりだったのか、あまり使いたくなかったようだが、近接攻撃はウインディの二の舞になるので仕方なく使ったのだろう。効果抜群のエスパー技な上、ウインディとのバトルでダメージを受けていたこともあって、ベトベトンが戦闘不能になる。

 だが、ベトベトンは十分戦ってくれた。これからしっかりレベリングしていこうな。

 

 最後はピカ様の番である。最近は臆病さもなりを潜め、気合い十分とばかりにフィールドに飛び出して行った。

 でんきタイプが出てきたということで、シゲルが『サイコキネシス』の指示を出してくるが、ピカ様もエスパータイプの技との戦闘経験は割と豊富である。『かげぶんしん』で的を絞らせないように動き、『でんこうせっか』でさらに相手を攪乱していく。

 

 サイキネのような強力なエスパー技は、エスパータイプでも打つには集中が必要な技だ。

 当然、でんきタイプのエレブーが打つにはかなり技の制御に集中する必要があり、先制技で殴られたり、分身で困惑させられたりしては簡単に当てることなど出来ないだろう。

 

 シゲルもサイキネは諦めたのか、『10まんボルト』で『かげぶんしん』をかき消してきた。

 しかし、そう来るのは読めているので、こちらの最大火力である『ボルテッカー』で背後から強襲していく。

 エレブーはでんきタイプなので受けるダメージは半減するが、それでも今ピカ様が持っている技では一番ダメージが出るので、『ボルテッカー』一択しかなかった。

 

 戦い慣れているピカ様にペースを握られ、シゲルが若干焦っている。だが、エレブーはピカチュウよりも技を多く覚えられるので器用に戦えるのが強みだ。ピカ様が再び『でんこうせっか』で近寄ると、『かわらわり』で反撃してくる。

 ピカ様はピカチュウなので当然体が軽い。『でんこうせっか』でダメージを受けても、エレブーくらいの体格があれば踏ん張れるだろう。返しの『かわらわり』を『たたきつける』で迎撃する。

 これでこっちは全部技を使ったが、ここで『たたきつける』を使っていなかったら、大ダメージを受けていただろうし仕方なかった。

 

「これも防ぐとは、とてもピカチュウとは思えないパワーだ」

「伊達にファーストパートナーじゃないぜ?」

「僕も素直にカメックスを出せば良かったよ。舐めていたつもりはないが、さっきのベトベトンといい、やはりよく育てられている」

 

 いや、ベトベトンはこれから育てるんだけどな。あいつは天性の素質があるってだけだ。と、思わず心の中でツッコミを入れていると、ピカ様が一息つくためにエレブーから距離を取った。

 互角の勝負だが、有利を取っていることもありピカ様も笑みを浮かべている。今までは相性不利な戦いや、後続へのサポートなんかに回させていたからか、久しぶりに全力で戦えてとても楽しそうだ。

 しかし、向こうはまだ技を残しているだろうし、まだまだ勝負はこれから――と思った瞬間、空気を読まないロケット団が、いつもの口上と共にフィールドに乱入してきた。

 

 何しに来たんだと思ったが、どうやら研究所のポケモンを奪いに来たらしい。だが、ここは俺やシゲルのポケモンが全員いるホームグラウンドである。

 そんな中、たかだか数人で攻めてきた所で相手になるはずがなく、数秒後にはいつものようにやなかんじーしていた。

 

 ロケット団の思わぬ乱入があったせいもあり、バトルという空気ではなくなってしまったので勝負は中断。決着はポケモンリーグで付けるということになった。

 ピカ様が少し消化不良だったようだが、それでも良いバトルが出来てストレスも発散出来たらしい。これからは適度に全力バトルをさせてあげないといけないな。

 

 ポケモンリーグ開催まで約二ヶ月ということで、明日からは捕まえたポケモン達のレベリングや技の調整に入ろうと思う。

 やはり、技の択が増えると戦い方にもバリエーションが出来るし、大分変わってくる。イーブイのバトルで特にそれを感じたので、捕まえたばかりのラプラスやバリヤードも含めて、しっかりと仕上げていきたいと思った。

 

 

 

 10歳 κ月ι日 『リゾート地ビンヌ ヤドンをヤドランにする』

 

 最近の日課であるオーキド研究所でのトレーニング中、オーキド博士からビンヌにいるニシノモリ教授という人にヤドンの進化についての話を聞いてきて欲しいと頼まれた。そういえば、ママさん達もビンヌとかいう所に遊びに行くと行っていた気がする。

 いつもなら、「自分で行け」と断る所なのだが、ヤドンの進化という所に惹かれたので、今回は素直に博士の頼みを聞いてビンヌに行くことにした。

 

 ビンヌに着くと、すぐに浜辺で遊んでいたカスミさんとタケシを発見したので声をかける。

 二人とも、俺がトレーニングを中断して遊びに来たと思ったのか、とても驚いた顔をしていたが、博士からの頼み事だというと納得した顔をしていた。

 そういえば、朝誘われた時は、「行かない」と即答したんだったっけか。

 

 そのままニシノモリ教授の所へ行き、ヤドンの進化について話を聞いてみるが、教授も博士と全く同じ事で悩んでいた。ぶっちゃけ、俺は自分のヤドンが進化出来ればいいので、ヤドンにシェルダーが噛み付く工程などどうでもいい。

 

 適当に話を聞いていると、ニシノモリ教授がフィールドワークとして、自分のヤドンと一緒に釣りをするということだったので、俺もヤドンも出して一緒に釣りをさせることにした。

 

 万が一、シェルダーが釣れれば、ワンチャン進化も有り得る。何しろ、俺のみずタイプの呪いもあり、ヤドンはレベルを上げても一向にヤドランに進化しない。もう物理的にシェルダーをくっつけて無理矢理進化させるしかないのだ。

 最悪、おうじゃのしるしを手に入れてヤドキングにするという手もなくはないのだが、俺はヤドランの方が好きなので、出来ればヤドランに進化させたい所である。

 

 と、いう訳で、釣りを始めたのだが、俺のヤドンはヤドンにしては機敏に動く方(自称)ということもあって、ニシノモリ教授のヤドンとは気が合わないようだった。

 むしろ、カスミさんのコダックの方が仲良くなっていたくらいである。

 

 一向に獲物も釣れず、そのままのんびり過ごしていると、いつものようにロケット団が乱入してきた。おまけに、ムサシが新しくシェルダーをゲットしたらしい。

 どうやらニシノモリ教授のヤドンの尻尾に噛み付いて、進化させたヤドランを奪うつもりのようだが、それを聞いた俺の脳内に一つの悪魔的発想が浮かび上がった。

 

 それ、俺のヤドンの尻尾を噛ませればよくね?

 

 本来、トレーナー同士のヤドンとシェルダーは基本的にバトルしない。何故なら、万が一、ヤドンにシェルダーが噛み付いて進化したとしたら、そのヤドランはどちらのトレーナーのものか喧嘩になるからだ。

 だが、俺は本体であるヤドンのトレーナーこそ、ヤドランの所有権を持つと思っている。つまり、ムサシのシェルダーを使って無理やり俺のヤドンを進化させれば問題は全て解決するということだ。

 

 と、言う訳で、ムサシのシェルダーがニシノモリ教授のヤドンに飛びかかるのを『サイコキネシス』で妨害し、そのまま俺のヤドンの尻尾まで誘導した。

 シェルダーは、「ヤドンの尻尾に噛み付く」という指示を受けていたので、当然俺のヤドンの尻尾に噛み付く。尻尾にシェルダーが噛み付いたことで、俺のヤドンがついにヤドランに進化した。

 念願のヤドン進化に、俺も大変気分が良いので、進化して強くなったヤドランの『サイコキネシス』で、いつものようにロケット団をやなかんじーしてやる。ムサシが何やら怒っていたが、最近の中では一番役に立ったぞお前ら。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・第65話『ライバル対決! オーキド研究所』より、シゲルとバトルした。
 ロケット団の乱入で決着はつかなかったが、割とニューサトシ優勢のバトルだった。これの結果、シゲルは自分の力がまだ足りないことを自覚したので、ポケモンリーグではさらに強くなってくるだろう。

・第66話『ヤドンがヤドランになる時』より、ニューサトシがビンヌへ誘われていた。
 アニメではみんなに置いてきぼりにされていたサトシ君だが、ニューサトシはむしろ根を詰めすぎだったので息抜きに誘われていた。当然拒否した。

・ヤドンがヤドランに進化した。
 ムサシのシェルダーをパクった。物理的に水の呪いを対処した。


 現在ゲットしたポケモン。

 ピカチュウ Lv.50

 ピジョット Lv.43→44

 バタフリー Lv.42→43

 ドサイドン Lv.50

 フシギダネ Lv.46

 リザードン Lv.51

 ゼニガメ  Lv.46

 クラブ   Lv.42→43

 カモネギ  Lv.42→43

 エビワラー Lv.45

 ゲンガー  Lv.48

 オコリザル Lv.43→44

 イーブイ  Lv.25→26

 ベトベトン Lv.40→41

 ジバコイル Lv.42→43

 ケンタロス Lv.41→42

 ヤドン→ヤドラン Lv.41→42

 ストライク Lv.41→42

 トゲピー  Lv.2

 プテラ   Lv.41→42

 ラプラス  Lv.37→39

 ミュウツー Lv.70

 バリヤード Lv.36→38



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