初めて会った時のことを、こいつはきっと覚えていない。いや、仮に俺があいつの立場だったとしても覚えていないだろう。
俺がこいつに初めて会ったのは二年前、ジョウトリーグシロガネ大会だった。会ったといっても、たまたま道ですれ違っただけだ。俺は予選リーグで一勝二敗して勝ち抜け出来なかったし、対するこいつは決勝までノンストップで勝ち抜いていった。
最初は意識もしていなかった。
俺は性格的に終わったことを気にするタイプではないし、俺の意識は既に次のリーグへ向けられており、誰が勝とうが負けようが関係なかったからだ。
だが兄貴から、ジョウトリーグの決勝で戦うサトシとシゲルというトレーナーは、俺と同い年だと言われて、少しだけ見てみるかと気まぐれを起こした。
――そして、打ちのめされた。
ポケモンの強さ、トレーナーとしての実力、その全てにおいて上を行っていた。兄貴とは違う。理想の姿がそこにはあった。
特殊なリザードンを駆使するサトシと、圧倒的な強さを持つシゲルのカメックス。両者は引き分けとなり、リーグ初の同時優勝を見せた。その後のエキシビションでは、サトシがカントーチャンピオンのレッドを相手に、一矢報いるバトルを見せている。
けど、認めたくなかった。
サトシは兄貴と同じことを言っていたからだ。
ポケモンを仲間だの、信じるだの、弱い奴の戯言だ――兄貴はそれで負けたんだ。しかし、サトシは俺が負けたジョウトリーグに優勝し、チャンピオンリーグでも結果を出している。
じゃあ、それ以下の俺は何なんだ?
そこで俺は改めて、俺自身のバトルについて深く考えるようになった。自分のバトルを完成させられずに引退した兄貴のようになりたくなくて、強くなることばかりを考えてきた。
けど、俺は何のために強くなろうとしているのか、その理由――いや、目指すべき頂きをずっと想像できていなかったことに気付かされたんだ。
気づけば、俺はサトシを追っていた。
チャンピオンリーグを見て勝ち抜くあいつの姿を見て、子供のように自分もあんな風になりたいと思った。
現カロスチャンピオンであるカルネには負けたが、そのバトルだってどちらが勝ってもおかしくないものだった。
俺は奴の強さのルーツが知りたくて、次の旅をカントーに決めた。マサラタウンのオーキド研究所を訪れた時は、サトシのポケモン達の自主トレを見て驚いたものだ。
トレーナーなしとは思えない濃密なトレーニング――仮に、俺が今こいつらに喧嘩を売ったとしても、トレーナーなしでも返り討ちに合うであろうことはすぐにわかった。
改めてオーキド博士にサトシについて話を聞くと(何故か、ここだけの話にしてくれと念を押されたが)、幼い頃はやんちゃな子供だったらしい。だが、旅に出る一年前くらいから急に学が深くなり、ポケモンのことをいろいろと学ぶようになったのだという。
そして、一年でカントーリーグセキエイ大会準優勝という実績を出し、その後すぐにオレンジリーグの名誉トレーナーとなっている。
二年目でジョウトリーグシロガネ大会優勝、チャンピオンリーグベスト10、たった二年でどうすればそれだけ成長することが出来るんだ?
聞けば、サトシのポケモンは捕まえた時点では決して強くないらしい。だが、育成で強くしているのだという。ならば、先に個体値の高いポケモンを捕まえれば、奴に追いつくのもそう難しい話ではないはずだ。
後はポケモンの育て方やあいつのバトルへの取り組み方を参考に、俺独自のスタイルを少しずつ作り上げていく。やはり、俺には兄貴やサトシのように、ポケモンを仲間だの、信じるだのと精神論を信じることが出来ない。
だが、俺は俺なりにポケモン達に歩み寄った。
結果、カントーリーグセキエイ大会では準優勝で終わったが、それでも手応えは感じられている。そして、今年は地元であるシンオウを旅しようと戻ってきたら――サトシが俺の前に現れた。
正直、内心の驚きを隠し切れなかった。チャンピオンリーグを辞退したと聞いてずっと疑問に思っていたことを聞いてみると、バトルフロンティアに挑戦していたという。
兄貴が負けたバトルフロンティアに挑戦した――結果は聞けなかったが、話をしているとバトルをしないかと誘われる。
今の俺とこいつの差を感じるチャンスだった。だが、結果は惨敗。今はまだこいつと俺とは差が有り過ぎる。
それでも、埋められない差ではない。
地元に戻って捕まえたこのヒコザルの『もうか』なら、サトシのエースであるリザードンにも負けないポケモンに成長するはずだ。
その後も、旅をする間に何度もサトシと会った。やはり、会話のレベルが高いから話していて苦にならない。また、いろいろ俺の知らない話を聞けてとても有意義だった。
タッグバトルの大会では、方向性の違いから揉めることもあったが、結局こいつのおかげでヒコザルはモウカザルへと進化し、『もうか』を発現するに至っている。
だが、モウカザルは『もうか』をコントロールしきれずに暴走させてしまった。やはり、進化しないと制御は難しいのかもしれない。そう考えていると、またサトシが現れてモウカザルについてアドバイスをくれる。
やはり、進化をさせた方がいいということと、メンタル面の修行をした方がいいというアドバイスを貰った。
メンタル――まさに盲点だったが、思えばポケモンも生きている以上、心がある。俺も、バトル中は冷静さを心掛けるようにはしているが、あくまで心がけに過ぎない。
もし、こいつのいうメンタル面の修行で、俺のポケモン達がさらに先に行けるのであれば、今年のシンオウリーグでサトシを倒すことも夢ではなくなるかもしれない。
そして、モウカザルはゴウカザルへと進化し――エイチ湖の湖畔で行ったフルバトルで、確実な手応えを感じることが出来た。
今はまだ、ポケモンのレベルが完全に追いついていない。けど、ここから追い込みをかけて、戦えるだけのレベルに到達できたなら、サトシに勝つことは決して不可能ではない。
◇◆
14歳 μ月ρ日 『シンオウリーグ 準々決勝 VSシンジ 中編』
互いに一体ずつポケモンが戦闘不能になり、俺も新しいポケモンを繰り出していく。こちらの三体目はケンタロスだ。特性の『いかく』でトリトドンの攻撃を一段階下げていく。
シンジはトリトドンを継続させるつもりのようでこのままでいる。既にトリトドンは、『れいとうビーム』、『じこさいせい』、『のりかかり』、『じしん』で技を全て使っており、体力は約2/3という感じだ。
おまけに、れいビのカウンターシールドや、氷の土台の応用、衝撃を応用する技術も全て見せてしまっている。流石のニューサトシも、同じ手を二度も受けるつもりはないぞ?
と、考えていると、シンジは『じしん』を指示してきた。ならば、こちらも『じしん』で返す。
互いの振動がぶつかり合って相殺し、地面は大きな揺れでトレーナーゾーンにいるシンジも壁に手を付かないと立っていられないくらいに衝撃が大きい。
だが、お互いにノーダメージだった。
トリトドンはタイプ一致技ではあるが、『いかく』を入れている。また、ケンタロスの方が攻撃が高いこともあって、結果的に完全相殺されたのだろう。
シンジはそれを見て、『じしん』は通じないと判断したようで、即座に『れいとうビーム』にシフトしてくる。同時にケンタロスも走り出した。
相手の『れいとうビーム』を『かえんほうしゃ』で相殺していく。ケンタロスは特攻が高くないが、上手く相手のビームを逸らすように炎を当てて攻撃を相殺していた。
ケンタロスも、かつては物理技しか覚えていないという弱点があったが、この一年でその弱点も改善してきている。
そのまま、トリトドンの目の前まで駆け抜けていくと、新技の『レイジングブル』でトリトドンを吹き飛ばした。これは威力90のノーマル物理技で、『かわらわり』のように相手の壁系の技を壊す効果を持っている。
パルデアのケンタロスのように、フォルムチェンジでタイプが変わる場合は、それに合わせて技のタイプがノーマルから、かくとう・ほのお・みずに変化するという面白い特性も持っているが、うちのケンタロスはパルデア種ではないのでノーマルのままだ。
しかし、高火力の一撃であることに変わりはなく、トリトドンが吹き飛ばされた。
上手く受け身を取ったようで、ダメージはそこまでではないが、それでも半分近く体力が削られている。
普通なら『じこさいせい』に走りたい場面だが、ここで回復技を使えば、俺も『じしん』で追撃してくる――結局、ダメージを受けることに変わりはないので、隙を作るまでは回復技は使えない。
だが、『いかく』で攻撃が下がっている今、俺のケンタロスと近接戦をするのは無謀――と、いうことで、シンジは素直にトリトドンを下げてきた。
本来であれば、ここでステロの一つでも撒いてやりたい所ではあるが、流石にケンタロスは『ステルスロック』を覚えないので、ここは見送る他ない。
続けて、シンジは三体目として、ヤミラミを出してきた。こいつは前回のバトルでも出てきた特性『いたずらごころ』個体のヤミラミだろう。
ヤミラミはあく・ゴーストタイプでもあるが故に、ノーマルタイプの技が効かない。こちらの最大火力を封じられたと言って良い――と、考えていると、シンジは即座に『アンコール』を指示してきた。
これで、しばらくの間、ケンタロスは最後に使った技である『レイジングブル』しか使えなくなる。流石にそれはまずいので、ここで一旦ケンタロスをボールに戻した。
とはいえ、相手がゴーストタイプである以上、既に全ての技を使い切っているエビワラーもほぼ置物のようなものなので、こちらは必然的に四体目を見せる必要がある。
と、いうことで、四体目としてキングラーを送り出した。久しぶりの登場ということで格好よくポーズを決めるが、シンジはキングラーを見た瞬間にヤミラミをボールに戻した。
続けて、シンジがドラピオンを出してくる。
俺の薄れているアニポケの記憶が、このドラピオンが強敵だった――と、いう警戒音を鳴らす。ドラピオンはこう見えてどく・あくタイプだ。弱点はじめんだけという優秀な耐性を持っている。シンジがヤミラミでケンタロスを戻させたのは『じしん』を警戒してのことだろう。
しかし、キングラーだって別に相性が悪い訳ではない。それを証明するかのように、先手必勝とキングラーが、『クラブハンマー』で突撃していく。対するドラピオンは『クロスポイズン』で対抗してきた。
どちらも急所に当たりやすいという追加効果を持つ攻撃――だが、技の威力だけ言えば『クラブハンマー』は100、『クロスポイズン』は70でこちらが有利だ。
しかし、技は相打ちとなり、キングラーが後ずさるように体勢を立て直す。攻撃種族値的にキングラーは130、ドラピオンは90と、こちらが有利なはずだが、向こうのドラピオンはかなり攻撃的に育てられているらしい。
ならば、攻撃力を上げようと、素直に『つるぎのまい』を指示する。キングラーが踊りながら攻撃のランクを二段階上げていく。対するシンジはこの隙に『どくびし』を撒いてきた。
この『どくびし』という技はステロと同じく、ポケモンが交代される度に出したポケモンが毒状態になる。ただし、どく・はがね・ひこうタイプを持つポケモンや、特性『ふゆう』で地に足が付かないポケモンなんかは効果を受けない。
二度使うと猛毒になるのでそこそこ強いが、ニューサトシ的には総合的な効果としても、やはり『ステルスロック』の方が評価が高かった。
とはいえ、二度まかれては厄介なので、ここで一気に攻撃に移る。再び、『クラブハンマー』でキングラーが突撃していく。
だが、ここで予想外の出来事が起きた。
本来であれば、ポケモン交代時にしか効果を発揮しないはずの『どくびし』によって、キングラーが毒状態にさせられたのだ。
どうやら、シンジは技を改良してきたようで、この『どくびし』は踏んだら効果を発揮するらしい。
毒に驚いて足を止めた一瞬で、ドラピオンは『クロスポイズン』で反撃してきた。キングラーは予想外の出来事に動揺して技をキャンセルしてしまっている。ここは回避するしかない。
キングラーが前転するように攻撃を回避しつつ、ドラピオンの後ろに回っていく。しかし、その瞬間、シンジが笑みを浮かべた。同時に、ドラピオンの尻尾がアームのように伸びてキングラーが捕まってしまう。
そう言えば、ドラピオンは頭の横に両腕を持っていることで有名だが、尻尾も腕と同じ形状をしているんだった。いわば、三つ目の腕があるのと同じ――回避したつもりが、相手の前に追い込まれていたって訳か。
首を180度回転させながら、死角などないと言わんばかりにドラピオンが『クロスポイズン』をお見舞いしてくる。キングラーも脱出しようともがいているが、ドラピオンの爪が上手く体に嵌ってしまって動けないようだ。
流石に『クロスポイズン』の一、二発で倒れるほどキングラーも軟ではないが、毒状態な上、身動きが取れないのであればなぶり殺しにされるだけである。
ボールに戻そうとするが、ドラピオンが上手く首でキングラーとボールの光を遮断してくるせいで交代を阻止されてしまった。クソ、無駄に有効な技術使いやがって。
続けて、また『クロスポイズン』が放たれる。どうやら今度は急所に当たったようで、キングラーの体力が一気に1/4以下まで削られていった。クッ、急所の倍率が高い。こいつの特性は急所のダメージを1.5倍ではなく2.25倍にする『スナイパー』か。
このままではまずい。
こうなれば一か八か、相手の苦手なじめん技の『10まんばりき』を指示する。自慢のハサミをぶつけながら、キングラーが暴れて拘束から脱出しようとダメージを与えていく。『つるぎのまい』で攻撃が二段階上がっていることもあり、流石のドラピオンもこれには耐えきれなかったようでキングラーを尻尾から逃していた。
続けて、『10まんばりき』をもう一発ボディに押し付けていく。高火力の二連打で、ドラピオンの体力も一気に1/3程まで削られていた。
しかし、シンジもされるがままではないようで、『とどめばり』でトドメを狙ってくる。この『とどめばり』は、この技で相手を倒すと自分の攻撃を三段階上昇させるという、威力60のむしタイプ物理技だ。
今の体力なら十分にキングラーを倒しきれると踏んだのだろう。実際、倒されても不思議はないが、そうそう思い通りにさせるつもりはなかった。最後の技である『まもる』で攻撃を弾いていく。
だが、毒の継続ダメージでキングラーも限界だった。最後の最後、相手の攻撃を上げることは防いだが、そのままキングラーが毒で戦闘不能になる。
これは俺のミスだ。ドラピオンの尻尾のことが完全に頭から抜けていた。あそこで捕まらなければまだキングラーは活躍できただろうに。
とはいえ、今は悔やんでいる場合じゃない。ここは素直に弱点の突けるケンタロスで反撃に出る。『どくびし』の効果で毒にさせられたが、逆に怒れる闘志に火をつけただけだった。
しかし、シンジはこちらがケンタロスを出すと、ドラピオンをボールに戻していく。攻撃を上げられなかった以上、ここは温存という考えのようだ。
続けて、五体目のエレキブルを出してくる。
エレキブルはシンジの手持ちの切り札の一体――と、すると、最後のポケモンはおそらくゴウカザルだろう。ドラピオン、エレキブル、ゴウカザルはじめん攻撃の弱点が一貫している。ケンタロスはかなり有利に立ち回れそうだ。
なら、ここは下手にケンタロスを傷つけない方がいいとケンタロスをボールに戻す。
続けて、エビワラーを出していった。ボスゴドラとの激闘で技も全て使ってかなりダメージも受けているが、出来ればここでエレキブルを倒しておきたい。
エビワラーは『どくびし』で毒状態になったが、何も言わずにいつものように『こうそくいどう』を使った。そのまま、『マッハパンチ』で殴り掛かっていく。
シンジも、このままエレキブルを居座らせるつもりのようで、『かみなり』で反撃してきた。流石に放電している最中は殴れないので、エビワラーもステップで雷を避ける。
今のエビワラーはまともな攻撃技が『マッハパンチ』と『カウンター』しかない。だが、相手の攻撃を受ける体力の余裕がない今、実質『マッハパンチ』一択だ。
おまけに、『カウンター』は相手の物理攻撃に反応するが、特殊攻撃には反応しない。それがわかっているが故に、シンジも特殊技で攻めようという狙いだろう。
だからこそ、エビワラーはエレキブルを挑発した。逃げるのか? と、目で訴えながら、エレキブルの暴走を誘う。
しかし、流石にシンジのポケモンだけあって、そう簡単に乗ってこない。これが、シンジから離れた場所でのことならエレキブルも乗ってきたかもしれないが、後ろにシンジがいる今、挑発はほぼ無意味だ。
と、すると、隙を突いて小さく殴る以外にないな。エビワラーが『マッハパンチ』でエレキブルを殴り、『かみなり』に巻き込まれる前に即離脱していく。
確かに『かみなり』は強い攻撃だが、それ相応に隙も大きい。『こうそくいどう』でスピードを上げているエビワラーなら、殴ってから発動前に逃げるくらい朝飯前だ。
ジェスチャーでの挑発は流せても、細かくペチペチ殴られるのは効くだろう?
だが、シンジはここで『でんげきは』を指示した。必中で当たる技なら関係ないという考えか――ミスったな。シンジは『みきり』の存在を忘れている。
こちらが『でんげきは』を『みきり』で躱すと、あからさまにしまったという表情を浮かべた。そのまま、エビワラーが『マッハパンチ』を決めていく。
さて、シンジ? このままでいいのか? エビワラーの『マッハパンチ』はタイプ一致と、特性『てつのこぶし』で威力が72まで上がっている。
エレキブルだって、特に物理防御が固い訳じゃないんだろう。今の二撃だけでも、既に体力は1/4近く削れている。このままペチペチ体力を削られていいのか?
しかし、シンジは一貫してエビワラーと殴り合いはしてこなかった。そのままダメージを重ねることになるとわかっても物理技は使わないと、エレキブルに防御の構えを取らせる。
乗ってこないか。まぁ、そうだよな。
こちらには毒のタイムリミットがある。先程まで休んで体力は1/3ちょっとくらいまで回復しただろうが、毎ターン1/8のダメージを受けている今、体力はもうあまり残っていない。
シンジからすれば、ワンチャン大ダメージの超カウンターを受けるより、守りを重ねた方が得策だ。仮にエレキブルでなかったとしても、シンジは物理攻撃をさせなかっただろう。
こういう時、『きあいパンチ』のように一撃の重い技があると、相手の防御を崩すのが楽なんだが――今回は『きあいパンチ』を使う余裕がなかったからな。
しっかし、『どくびし』が思ったよりも効いている。一度撒かれただけでも、結構面倒くさい。相手の編成に依存するから敬遠してたけど、ゲームと違って交換時以外に効果を発揮するのであれば採用も割と有りだ。
――と、考えながら、結局この後、意地で二発の『マッハパンチ』を叩きこんで、エビワラーは毒で戦闘不能になった。俺が先に三体のポケモンが戦闘不能になったことで、五分間のインターバルとなり、互いにポケモンを戻して少しの休憩となる。
強い。おそらくシンジは、俺に勝つために全てを集約してきた。仮にここで俺に勝ったとしても、次の試合のシンジは今日ほど強くない。全ての調子を、今日をピークにするために整えて来たんだ。
ポケモンのレベルは俺の方が上。トレーナーとしての戦術はほぼ五分――しかし、勢いはシンジの方がある。その勢いに押されているのは認めざるを得ない。
しかし、こちらはまだケンタロスを始め、残りの二体もノーダメージで残っている。
対するシンジは、ポケモンの数こそ上回ってはいるが、トリトドン、ドラピオン、エレキブルはかなり消耗していた。ノーダメージなのはヤミラミとゴウカザル(推測)くらいだ。
勝負はまだまだこれから――シンジだって、そう考えているだろう。実際、勝っているはずなのに、シンジの表情に余裕はない。向こうも限界まで頭を使っているんだ。
五分のインターバルを終えると、再びお互いにポケモンを繰り出していく。
こちらは当然のようにケンタロス、シンジはエレキブルを再び出してきた。
エビワラーの細かい拳の連打で、既にエレキブルは体力が半分近く削られている。この五分のインターバルでは体力もそこまで回復しきれていないだろう。おまけに、ケンタロスの特性である『いかく』によって、攻撃は一段階下がっている。
にもかかわらず、出してきた。
何かしらの狙いがあるのはまず間違いない。とりあえずは様子見を兼ねて、『じしん』を指示する。同時に、エレキブルが地面から飛び上がった。空中に離脱することで、『じしん』の振動を回避し、そのまま『かみなり』でダメージを与えに来る。
ここは素直に受けよう。
体力が一気に1/3近く削られるが、空中から着地したエレキブルに、『レイジングブル』をお見舞いしに行く。
ここで、面白いものを見せてやる。
コンテストで覚えた技の変化――『かえんほうしゃ』を鬣に纏わせ、『レイジングブル』と合わせて使うことで、パルデアのほのおタイプのケンタロスしか出来ない、炎の『レイジングブル』を再現してやった。とはいえ、あくまで技はノーマルのままなので完全再現ではないがな。
シンジも咄嗟に『かわらわり』を指示し、炎を纏ったケンタロスがエレキブルとぶつかり合っていく。
ここで嬉しい誤算が発生した。『かえんほうしゃ』の追加効果である、一割の火傷を引いたようでエレキブルの力が抜けていったのだ。
押し切られるように、エレキブルが吹っ飛ばされていく。しかし、負けるのは考慮の上だったようで、吹き飛ばされながら最後の技である『きあいだま』で即座に反撃してくる。
こちらも慣れない合わせ技の技後硬直で回避が遅れた。弱点の『きあいだま』を食らって、ケンタロスもダメージを受ける。毒の蓄積ダメージと合わせて、体力は1/3以下まで削られてしまった。
だが、エレキブルも今の『レイジングブル』で一気に体力が1/4以下になっている。火傷の毎ターン1/16ダメージを考えれば、もう長くは戦えない。
シンジは最後の技として、『かみなり』と『でんげきは』の合わせ技を指示してきた。多少威力は落ちても、確実にダメージを稼ごうという狙いだろう。
普通に『かみなり』を指示して来れば、回避してからの反撃でとどめを刺しに行ったのだが、これにはこちらも受けながら『じしん』を返すしかない。
結果、こちらは毒込みで体力が1/8以下まで減らされた。次の毒で倒れる以上、ケンタロスはもう戦闘不能も同じだ。しかし、エレキブルは確実に戦闘不能に持って行った。
エレキブルを戻し、シンジが再びトリトドンを出してくる。こちらはもうこの技が最後――全てをかけた『ギガインパクト』でとどめを刺しに行った。
トリトドンも、『れいとうビーム』のカウンターシールドでこちらを近づけさせないようにしてくるが、『かえんほうしゃ』で道を作っていく。そのまま、『ギガインパクト』を決めてケンタロスは力尽きた。
だが、トリトドンは倒れない。どうやら直撃の瞬間に『じこさいせい』を使ったようで、上手くダメージを帳消しにしていた。
これでこちらのポケモンは残り二体――ケンタロスを戻し、五体目としてピカ様を送り出していく。『どくびし』の効果で毒になるピカ様を見て、シンジは「舐められたものだ」と呟いた。
おそらく、俺がこのバトルにミュウツーを登録していないということがわかったのだろう。実際、俺の最後の一体のポケモンはリザードンだ。
舐めていると言われれば否定はできない。
俺は、ここでミュウツーを消耗させたくなかったからこそ敢えて温存した。いくらミュウツーとはいえ、今のシンジなら突破してくる可能性はある。シンジを認めているからこそ、次の試合に後遺症が出るようなバトルをさせたくなかった。
このままいけば、次の準決勝ではダークライ遣いの伝説厨と当たる。そうなった時、ミュウツーが使えません――は、面白くなかった。
シンジからすれば、ミュウツーを使わなくても勝てると思われて納得がいかないかもしれない。しかし、俺からすれば、ここでミュウツーなしで勝てないようなら、所詮そこまでと腹をくくっているだけだ。
辛い試合はこの先いくつもある。
その全てにミュウツーを使えば、いずれ疲労で倒れてしまうだろう。それに、全てがミュウツーを頼りにしなければいけないほど、俺のポケモンは弱くない。むしろ、俺に言わせれば、俺のポケモン達を舐めるなと言いたかった――ってか、言った。
「お前こそ、俺のポケモン達を舐めんな。ミュウツー出してほしかったら、まずは俺に勝ってから言え」
実際、シンジは俺とバトルして勝ったことがない。そんな奴に切り札を出すほど、俺は実力のないトレーナーじゃなかった。甘くみられるのが嫌なら実力を見せろ。
昔は俺もそうだった。
たまに四天王などの格上とバトルする機会があっても、相手が本気じゃないことが多かった。でも、それは当然なのだ。こちらに本気を出させるだけの実力がないのが悪い。ハッキリ言えば、舐められる方が悪いのである。
と、いうことで、『くさむすび』で四倍弱点を突きながらトリトドンを拘束してやった。
本来 『くさむすび』は結んだ草で相手を引っ掻けて、ダメージを与える技だが、コンテストで培った応用で草自体を操ってトリトドンをそのまま拘束したのだ。
不意を突かれ、シンジも一瞬判断が遅れる。その間にピカ様は追撃をかけた。
絡み付く草にもがき苦しむトリトドンに、シンジが指示を出す前に『アイアンテール』で回復より先にトリトドンを戦闘不能に持っていく。
まさかの速攻劇に、流石のシンジも呆然とするしかないようだった。
しかし、すぐに気を引き締め直したようで、倒れたトリトドンをボールに戻すと、ヤミラミを出してきた。
そのまま、『アンコール』で『くさむすび』を縛ろうとしてきたので『ばちばちアクセル』を決めていく。
確かに、『いたずらごころ』は変化技を先制技として出せる強力な特性だが、優先度は+1だ。対する『ばちばちアクセル』は優先度+2の技――当然、こちらが先に決まり、技は『ばちばちアクセル』で固定させる。
おまけに『ばちばちアクセル』は確定で急所に当たる鬼効果を持っており、連続で食らいたければどうぞという性能をしているのだ。
しかし、シンジもやられたままではない。二度目の『ばちばちアクセル』を受けて体力がミリになった瞬間、『いたみわけ』で体力を同じにしにきた。
おそらく、これがシンジのミュウツー対策だろう。
変化技の『ちょうはつ』で変化技を封じ、『アンコール』で技を固定し、『いたみわけ』で体力を減らして、『ふいうち』でトドメを差す。実際、嵌ればポケモンを交代する以外に対処法はない。
だが、『ばちばちアクセル』の前には全てが無力――結果、『いたみわけ』と毒込みでピカ様の体力は1/4程にさせられてしまったが、『ばちばちアクセル』だけでヤミラミを殴り倒した。
これで、シンジと俺のポケモンの数は並んだ。
シンジはドラピオンを出してくる。ピカ様も毒のリミットがあるので時間がない。
ドラピオンの残り少ない体力を削り切るためにも、『ばちばちアクセル』からの『10まんボルト』で一気に決めきる――と、先制技の一撃を叩きこんだ瞬間、シンジも最後の技として『あなをほる』を使ってきた。
このまま、地面の中で毒の効果でピカ様が倒れるのを狙っているのだろう。とはいえ、こちらもただで倒れる気などさらさらない。
今回の旅の中で習得した、『アイアンテール』で地面を叩き割って無理やりダメージを与えるサトシ君のアニポケ殺法で、地中にいるドラピオンを一気に戦闘不能まで持っていく。
流石のシンジも、この情報は持っていなかったようで驚いた様子を見せた。ピカチュウは『じしん』や『マグニチュード』なんかの技を覚えないから地中なら安全だと思ったか?
とはいえ、ここでピカ様にも毒の限界が来た。ドラピオンが倒れると同時にピカ様も倒れる。しかし、ピカ様一体で、シンジのポケモン三体を倒す獅子奮迅の働きを見せてくれた。
そのまま倒れているピカ様を回収して、トレーナーゾーンに横たえてやる――良くやってくれたな。後は任せろ。
「確かに、甘く見ていたのはこっちだったか……」
「さぁ、これでお互いにラスト一体だ。悔いのないようにしようぜ」
無意識に、帽子のつばを掴んで半回転させる――普段はあまりしないアニメのサトシ君の癖がここに来て出てきた。過去にも、この癖が出たことは数えるほどしかない。
シンジも、最後のボールをギュッと掴んだ。
互いに最後の一体をフィールドに送り出す。
「ゴウカザル、バトルスタンバイ!!」
「リザードン、君に決めた!!」
――前回と同じ、互いのエース同士の対決が再び幕を開けた。
原作との変化点。
・第187話『激闘フルバトル! サトシ対シンジ!!』より、シンジが覚醒しつつある。
ポケモンのレベル差は多少あるが、勢いと対策で上手く立ち回っている。もし、このシンジがタクトとぶち当たっていたら結果はどうなるかわからないレベルだった。
・どくびしについて。
アニメ仕様。ジュンとの試合でこの改良に気付いた。ぶっつけ本番だが、これで完全に流れをつかんでいる。
現在ゲットしたポケモン
ピカチュウ Lv.65
ピジョット Lv.60
バタフリー Lv.60
ドサイドン Lv.63
フシギバナ Lv.60
リザードン Lv.65
カメックス Lv.60
キングラー Lv.60
カモネギ Lv.60
エビワラー Lv.60
ゲンガー Lv.62
コノヨザル Lv.60
イーブイ Lv.60
ベトベトン Lv.60
ジバコイル Lv.60
ケンタロス Lv.60
ヤドラン Lv.60
ハッサム Lv.60
トゲキッス Lv.60
プテラ Lv.60
ラプラス Lv.60
ミュウツー Lv.76
バリヤード Lv.60
イワーク(オレンジ諸島の姿) Lv.59
カビゴン Lv.60
ニョロトノ Lv.59
ヘラクロス Lv.58
メガニウム Lv.58
バクフーン(ヒスイの姿) Lv.58
ラティアス Lv.54
ヘルガー Lv.57
ワニノコ Lv.57
ヨルノズク(色違い) Lv.56
カイロス(部分色違い) Lv.56
ウソッキー Lv.57
バンギラス Lv.61
ドンファン Lv.57
ギャラドス(色違い) Lv.56
ミロカロス Lv.51
ラグラージ Lv.52
オオスバメ Lv.52
ジュカイン Lv.52
ヘイガニ Lv.51
フライゴン Lv.57
コータス Lv.50
サーナイト(色違い) Lv.45
オニゴーリ Lv.49
ワカシャモ Lv.47
メタグロス(色違い) Lv.45
エテボース Lv.43
ムクホーク Lv.42
ナエトル Lv.42
ブイゼル Lv.43
ムウマージ Lv.46
カバルドン LV.41
ミカルゲ Lv.56
グライオン Lv.40
ロトム Lv.42
ユキカブリ Lv.38
フカマル Lv.28
タマゴ 何が生まれてくるのかな? 生まれるまでまだまだ時間がかかりそう