ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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♯244 『真ん前からぶっ飛ばす!』

 14歳 μ月ρ日 『シンオウリーグ 準々決勝 VSシンジ 後編』

 

 準々決勝も大詰めに来た。正直、シンジが強いのはわかっていたが、それでもここまで追い込まれることになるのは予想外と言って良い。

 今回のパーティは、調子や能力などを考えた俺の手持ちのベストパーティだった。実際、この前までのシンジが相手ならもう少し余裕のあるバトルになっていただろう。

 

 しかし、今回はシンジのがむしゃらな勢いや、想定外の戦術で後手に回ってしまった。自分の全てをぶつけてきているシンジに対し、俺は多分そこまでの熱量をぶつけられていなかった――だからこそ、ここまで追い込まれている。

 

 強豪校が弱小校の勢いに飲まれて負けるアレに似ている。だが、俺は負けるつもりなどない。いや、むしろ追い込まれたことで、絶対に負けて堪るか――と、いうスイッチが入った。

 

 そして、シンジも後一歩まで俺を追い詰めている。これに勝って、一段上に行くという熱い気持ちが視線を通じて痛いほど伝わってきた。

 

 だからこそ、返り打ちにしてやる。

 

 確かに、お前とゴウカザルは強い。原作と違って、互いにしっかりとわかりあって、強力な『もうか』を使いこなし、俺やリザードンにも負けない絆を作り上げてきた。

 

 けど、それでも俺とリザードンが今まで積み上げてきたものはそう簡単には崩れない。

 

 見せてやる。俺達の本気を――

 

 相性的には通常のリザードンの方が、かくとうタイプのゴウカザルを相手にするのに有利だ。

 だが、違う。これはそういう問題じゃない。この最終バトルは、俺とシンジの持てる力を全てぶつけた、全力のぶつかり合いなのだ。そこに細かい駆け引きは無用。ただ、互いに力を尽くすのみ。

 

 ――リザードンと心を一つにし、絆を結ぶ。

 

 紅く、赤い、灼熱の業火のような朱色の肌、焔が形作る火炎の四枚羽、炎の竜の化身がここに降臨する。タイプはほのお・ドラゴンへと変化し、俺とリザードンの二つの視界がマルチに映った。

 

 シンジはそれを見て嬉しそうな笑みを浮かべる。そうでなくては面白くないと言わんばかりに、俺達を前にやる気を漲らせていた。

 

 ならば、その期待に応えよう――先手必勝の『ドラゴンクロー』を指示する。対するシンジは『マッハパンチ』で対抗してきた。

 互いに防御無しで、拳をぶつけ合う。

 当然ながら、単純な火力はきずなリザードンの方が上だ。早く本気を出せと言わんばかりに、そのまま振り抜いてゴウカザルの体力を削っていく。

 

 続けて、こちらは『きりばらい』で『どくびし』を撤去した。流石にこの戦いで毒にさせられるのは御免なので、技スロットを一つ使ってでも状況を万全にしていく。

 

 シンジはその間に、『つるぎのまい』で素直に火力を上げてきた。どうやら、俺が『どくびし』を撤去するであろうことは読んでいたらしい。

 リザードンが地面に着地すると、今度は負けないと言わんばかりに、再びゴウカザルが『マッハパンチ』で殴り掛かってきた。では、今度は技術を見せよう。『ドラゴンクロー』で相手の拳を弾きながら、攻撃を受け流していく。

 

 流石のシンジもこれには驚いていた。

 

 まさかリザードンが、かくとうタイプ顔負けの近接技術を見せるとは思っていなかったのだろう。ぶっちゃけ、俺も最初はそこまで極めさせるつもりなどなかった。

 しかし、気が付いたらこいつは勝手にエビワラーを始めとしたかくとう組に師事して、技術を身に着けていやがったのだ。基本的には特殊型で使いたいという俺の意向をガン無視して、近接特化になってやがるのである。

 

 故に、その程度の甘い攻撃はリザードンには通用しない。普段、もっと鋭い拳でボコボコに殴ってくる相手と戦っているリザードンの守りは意外と固いのだ。

 

 ならばと、シンジは手数を増やすために『インファイト』を指示してきた。単発ではなく連打なら受けきれまいという考え――実際に間違っていない。

 流石のリザードンも器用ではあるが、本職のかくとうタイプではないのだ。そもそもの体格がかくとうタイプ向けの体をしていない。当然ながら、ある程度は捌けても本気になられたら受けきれなかった。

 

 攻撃が二段階上がっているインファを受けつつ、返しの『ドラゴンクロー』でダメージを与えていく。こちらの体力は2/3以下、向こうが半分という所か。

 

 シンジも出来ることなら、『もうか』を発動させる前に、こちらの体力をギリギリまで削っておきたい所だろう。いくらゴウカザルの業火とも言える『もうか』でも、きずなリザードンの『ブラスターバースト』を受けきれるかは五分だ。

 いや、仮に勝てるとしても、その後に殴り勝つには反動で動けない隙を突くしかない。リザードンを反動中に倒すなら体力は出来るだけ少ない方がいいと考えるのはセオリーだ。

 

 だからこそ、受けて立つ。

 

 前回は危うくゴウカザルのパワーに負けそうだったからな。あれがこちらの全てだと思われるのは癪だ。今度は真正面から、シンジのゴウカザルを打ち破る予定でいる。

 

 故にこうして殴り合いに付き合っていた。

 

 体力を削りたければ頑張って削れ。

 

 それでも、最後に勝つのは俺達だ。

 

 と、考えながら五分程殴り合っていると、こちらの体力が約半分、向こうが1/3となり、ゴウカザルの『もうか』が発動した。

 

 とはいえ、ゴウカザルはここまでに『インファイト』を二度使用しており、防御と特防が二段ずつ下がっている。下手な攻撃をくらっただけでアウト――攻撃は慎重に行わなくてはならない。

 

 と、シンジは考えているだろう。

 

 安心しろ、そんな卑怯な真似はしない。

 

 リザードンに距離を取らせて、『にほんばれ』を指示する。シンジは、ここで天候を変えてきたことに首を傾げた。ほのおタイプの技が上がる晴れ状態は、リザードンだけでなく、ゴウカザルにも利を与える行為だ。

 

 しかし、そうじゃないんだよ。

 

 俺は、俺達は全力のお前達を倒したいんだ。これは、そのお膳立てに過ぎない。

 

 シンジも遅れて、俺からの挑戦状を理解したようで、「全く、お前という奴は」と笑みを浮かべた。

 

「ゴウカザル! 全エネルギーを拳に集約させろ! 『だいふんげき』で、リザードンを倒す!」

「リザードン! 『ブラスターバースト』! エネルギーを貯めて貯めて貯めまくれ! ここで前の不甲斐なさを払拭するぞ!!」

 

 本気と本気――互いに全力。

 

 ゴウカザルは『もうか』の炎エネルギーを全て拳に集約させ、リザードンは五つの炎に全エネルギーをチャージする。

 

 赤を通り越して金色に輝く拳をゴウカザルが振り上げた。これが、俺の自慢の拳だ――そう言いたいのが伝わってくる。

 

 だからこそ、こちらも受けて立つ。

 

 唯一無二の力を見せてやる――チャージを終えて大きくなった五つの炎球は、一つ一つが小さな太陽と言ってもいいくらいの密度を持っていた。

 

「真正面からぶつける!」

「真ん前からぶっ飛ばす!」

「「いけっ!!」」

 

 互いが同時に動き出す。『ブラスターバースト』が全弾発射され、ゴウカザルがそれを迎え撃つように『だいふんげき』で殴り飛ばしていく。

 

 本来、『だいふんげき』は2~3ターン連続で攻撃し、以後混乱状態になるという技だが、ゴウカザルは『もうか』のエネルギーを使って攻撃ターンを無理やり増やしていた。

 

 一射目を右の拳で無理やり弾く。『もうか』のエネルギーを集約させているとはいえ、相手はきずなリザードンの全力『ブラスターバースト』だ。弾くだけでもかなりのパワーを使っている。

 

 だが、それでも怯まずに、ゴウカザルは二射目を左の拳で弾いた。こんな所で立ち止まれるかと、真っ直ぐ前に進んでいく。

 

 続く、三射目も右の拳で弾いた。段々と威力が上がる『ブラスターバースト』に対し、ゴウカザルは一撃を弾く毎に足が止まっていく。

 

 四射目も左の拳で殴り飛ばした。しかし、ここで完全に足が止まる。拳からも光が消え、貯めていたエネルギーを全て使い果たしてしまったようだった。

 

 互いの勝敗を分けたのは、レベルの差だ。

 

 シンジもゴウカザルを仕上げてきてはいるが、それでもカントーからずっとレベリングしてきたリザードンの方がレベルは上。どうしてもステータス差というものは重くのしかかってくる。

 

 もし、ゴウカザルのレベルがリザードンと同じだったなら、負けていたのはこちらだったかもしれない。だが、それは言い訳だ。もし、たら、れば――そんなものは勝負の世界には関係ない。

 

 俺とリザードンが築き上げてきた今までの全てが、俺達を支えてくれている。

 

 それと同じように、ゴウカザルを支えていたのは負けたくないという意地だ。

 

 五射目の本流に包まれ、ゴウカザルが吹っ飛ばされていく。しかし、それでもゴウカザルは意地で倒れなかった。逆にこちらは究極技を超えた反動でしばらく動けなくなる。

 

 ゴウカザルはゆっくりと歩きながら、再び『だいふんげき』できずなリザードンを殴ってきた。混乱しているはずだが、本能で敵を殴っているのか、きずなリザードンを倒そうと奮起してくる。

 

 だが、きずなリザードンも倒れなかった。

 

 意地や根性などというものではない。ただ純粋に、ゴウカザルがもう限界に来ていたのだ。

 

 本来であれば、『ブラスターバースト』の最終段を受けた時点でゴウカザルの体力はゼロになっていた。倒れなかったのは偏に、シンジを勝たせたいという思い一つ。

 

 それがゴウカザルの体力を1残した。

 

 いつ切れてもおかしくない意識の糸を必死に繋ぎながら、ゴウカザルは持てる力を振り絞った。

 

 しかし、届かない。

 

 動けない体力半分のリザードンを殴り倒すだけの力が、もうゴウカザルには残っていなかった。

 

 そして、その意地ももう限界だった。

 

 リザードンは硬直が解除されて尚、ゴウカザルの拳を受け続けている。情けでも、憐みでもない。相棒のために頑張るゴウカザルへの敬意が、リザードンに動くことをさせなかった。

 

 その全てを受け入れ――ゴウカザルが倒れる。リザードンは、そんなゴウカザルをそっと受け止めた。

 

 ゴウカザルの戦闘不能判定がされ、シンジの敗北が決定する。しかし、そんなことを気にした様子もなく、シンジはゴウカザルの下へ走ってきた。

 

 意識が朦朧とするゴウカザルが申し訳なさそうにシンジの顔を見る。シンジはいつもの無表情で、ゴウカザルを見つめていた。

 しかし、ゴウカザルをボールに戻さずにわざわざ駆け寄ってきた――その姿が、シンジのゴウカザルへの思いを物語っている。

 

「負けは負けだ。俺とお前の実力が足りなかった。だけど、これで終わりじゃない。次は勝つぞ」

 

 その言葉を聞いてゴウカザルは目を閉じた。負けはしたが、満足そうな顔を浮かべている。

 

 シンジもまた、少しスッキリした顔をしていた。全てを出し切ったことで、いろいろ抱えていたものが軽くなったのかもしれない。

 

「俺達は強かったか?」

「ああ、強かったぞ」

 

 他に、言葉はいらないだろう。シンジはゴウカザルをボールに戻すと、「そうか」と呟いて去っていく。

 

 一旦、俺とシンジのバトルは、俺の勝ちだ。けど、これで終わりじゃない。いずれまた、互いの道が交われば、どこかでバトルする機会はきっとあるだろう。

 

 だからこそ、必要な言葉はさよならじゃない。

 

「またな! シンジ!」

 

 シンジは歩きながら軽く手を挙げて応えた。

 

 あいつも、これで終わりだなんて全然思っていないからこそ、この場をさっさと去っていく。

 

 さて、これで準決勝進出――次は、噂のダークライ遣いとやらが相手だ。しかし、その前に、準々決勝のもう一つの見所、ムサシVSミツル君のバトルが始まろうとしていた。

 

 

 

 14歳 μ月ρ日 『シンオウリーグ 準々決勝 ムサシVSミツル 前編』

 

 準々決勝の二回戦目は、ダークライ遣いのタクトとかいう奴が、相変わらずダークライ一体で六体抜きしていた。

 良く鍛えられたダークライだというのは見ればわかるが、仮にあそこに立っていたのが俺とミュウツーでも同じことは出来ただろう。あいつや俺を苦戦させたいなら、シンジクラスの相手を連れてこい。

 

 と、思いながら、観客席で仲間達と共に試合を見ていると、遂にムサシとミツル君の試合がやってきた。

 

 既に試合に負けたヒロシ君も応援のために残っているようで、何故か罰金野郎と一緒になってベンチでミツル君を応援している。

 むさくるしいやつ――と、思いながらも、こっちはこっちで女率が高すぎる。カスミさんにハルカ、ヒカリ、ノゾミ、ラティと、俺とタケシ、マサト以外は女だからな。

 

 まぁ、だからといって何かが起きる訳でもない。何度も言っているが、ニューサトシと仲間達はそういう関係ではないのである。

 

 そんなこんなでバトルは始まった。

 

 互いに一体目を繰り出していき――ムサシはオニドリル、ミツル君はチルタリスを出している。

 

 お互いにひこうタイプを持つポケモンだが、ミツル君のチルタリスが優雅に飛行しているのに対し、ムサシのオニドリルはメンチ切ってガンつけていた。トレーナーに似て品がない奴である。

 

 とはいえ、強気なのは良し――と、思っていると、ムサシが開幕『ドリルくちばし』を指示して先手を取りに行った。

 得意の攻撃で真っ直ぐ突っ込むオニドリルに対し、ミツル君は『コットンガード』を使って防御を三段階上げてくる。身に纏っている綿雲が、羊毛のように大きく膨らみ、オニドリルの貫通力のある一撃を上手く受け流していた。

 

 ムサシのオニドリルは基本的に物理一色だ。特殊技など全く覚えていない。このままではミツル君の起点にされかねなかった。

 だが、ムサシもしっかり対策はしているようで、『ふきとばし』で無理やりチルタリスを戻して、ポケモンを強制交代させている。技での強制交代は、トレーナーにポケモンを選ぶ権利がないのでランダムで残りの五体の中から一体が出てくることになっていた。

 

 相性が悪いのであれば、対面相手を変えればいいとはなかなか強引だが、相手の積み技を無効に出来たり、控えのポケモンを探れたりとメリットがあるのも事実だ。

 

 チルタリスが戻されると、お次はエネコロロが飛び出してくる。今度こそと、ムサシが再び『ドリルくちばし』を指示すると、ミツル君はお返しとばかりに、『メロメロ』を指示した。

 どうやら、あのエネコロロは♀のようで、♂であるオニドリルは攻撃前にメロメロ状態になってしまっている。これではまともに勝負にならない――ムサシも、チッと舌打ちしてオニドリルをボールに戻した。

 

 ムサシの手持ちは確か♂が多かったはずだ。もし、チョイスしているのが♂のポケモンだけなら、このままエネコロロで全抜きも有り得る。

 

 と、考えていると、ムサシはルージュラを出してきた。成程、ルージュラは♀しかいないポケモンだ。これならエネコロロに対抗することだって出来る。

 ミツル君も、「そうそう上手くは行きませんね」と呟いて、ルージュラを警戒する素振りを見せた。こおりタイプのルージュラは、後ろのチルタリスにも有効打を持つポケモンだ。ミツル君としても、ここで倒しておきたいだろう。

 

 ムサシとしても、後ろの♂共のことを考えたら何とかしてここで勝負を付けたいはずだ。互いに引けない女同士の戦いが今始まろうとしている。

 

 今度もムサシが先手を取った。得意の『れいとうビーム』で、ダメージを稼ぎに来る。対するミツル君も、『れいとうビーム』で反撃してきた。

 互いに威力90の特殊技――だが、何故か一方的にルージュラが押されている。種族値的にもエネコロロは突出して強いタイプではない。むしろ、ルージュラの方が、タイプ一致な上、特攻種族値115でエネコロロを上回っているはずだ。

 

 これはおそらく。エネコロロの特性が『ノーマルスキン』なのだろう。自分の出す技が全てノーマルタイプになる代わりに、威力が1.2倍になるという特性だ。

 ゴーストタイプには手も足も出ないが、全ての技がノーマルタイプになることで、タイプ一致の1.5倍に、特性の1.2倍が掛け合わされる。つまり、本来タイプ一致の『れいとうビーム』は威力135だが、エネコロロだけはそこから1.2倍の威力162になっていた。

 

 自慢の『れいとうビーム』を突き抜けて、ノーマル技となったエネコロロの『れいとうビーム』がルージュラに直撃する。

 

 しかし、ムサシもすぐさま反撃に出てきた。ルージュラの専用技である『あくまのキッス』でエネコロロを眠らせに来る。キスと言っても、ブチュッとするタイプではなく投げキッスのようで、命中率75を引いてエネコロロが眠りに入ってしまった。

 

 眠ってしまえば、攻撃も避けられまいと再び『れいとうビーム』で反撃していく。ミツル君も一歩遅れてエネコロロをボールに戻した。

 

 目まぐるしく状況が変化していくが、まだ探り合いと言う感じだ。とはいえ、こおりタイプ相手にチルタリスは投げづらいということで、ミツル君は次に三体目としてカクレオンを出してきた。

 それを見て、ムサシもルージュラを戻す。

 エネコロロがまた出てきた時、ルージュラが居ないと『メロメロ』で全抜きされかねない。ムサシとしても、ルージュラがこの試合のキーになると判断したようだ。

 

 続けて、再びオニドリルを出していく。

 

 ミツル君は手始めとばかりに『ほごしょく』を使ってきた。これは自分のタイプを地形によって変化させる技だ。今、ムサシとミツル君は岩場のフィールドで戦っているので、カクレオンはノーマルタイプからいわタイプに変化する。

 また、カクレオン自身も辺りの色と同化して、相手から見えづらくなってしまった。前にジョウトリーグのハヅキと戦った時も、同じような戦術を使ってきたっけか。

 

 しかし、カクレオンの胴体にある赤みのあるラインだけは消えないので、目を凝らせば見える。はずなのだが、ムサシもオニドリルもバッチリ姿を見失っていた。

 

 とはいえ、ベンチにいるコジロウが『ほごしょく』の効果を説明したようで、今いわタイプになっていることをムサシも理解したらしい。

 その隙に、ミツル君は『げんしのちから』を指示して、オニドリルの弱点を突いてきた。苦手ないわタイプの攻撃を受けて苦しそうな声を上げている。

 

 だが、相手がいわタイプなら手はある――と、ムサシは『ドリルライナー』を指示してきた。ひこうタイプはじめん技を覚えないことが多いが、オニドリルやドードリオなどの嘴の鋭いポケモンは、例外的に『ドリルライナー』を覚える。

 特に、オニドリルはデフォルトで『ドリルライナー』を覚えるので、いわタイプ相手でも有利に立ち回ることが出来た。

 

 お返しと言わんばかりに、嘴を起点に体を回転させてオニドリルが突っ込んでいく。先程攻撃された時に、しっかりと本体の位置を特定していたようで、想定外の弱点攻撃を受けてカクレオンが吹き飛んでいった。

 

 しかし、じめん技を受けたことで、カクレオンのタイプが今度はじめんに変化する。これは相手の攻撃を受けた際に、その技のタイプに変化する特性『へんしょく』の効果だ。

 

 これにより、次の『ドリルライナー』は等倍で受けることが出来る。だが、ミツル君はもっと先のことを考えて動いていた。

 

 ムサシが再び『ドリルライナー』を指示すると同時に、『ほごしょく』で自身のタイプを再びいわに変えてフィールドに隠れていく。

 目標を再び見失うオニドリルだが、カクレオンが十分に距離を取ると、ミツル君は『スキルスワップ』を使用してきた。これで、お互いの特性が入れ替わり、オニドリルが『へんしょく』に、カクレオンが『するどいめ』に特性が変化する。

 

 カクレオンが技を使ったことで、再びオニドリルが『ドリルライナー』で突っ込んでいく。ミツル君も『げんしのちから』で反撃に出た。

 向かってくる岩を砕いて進むオニドリルだが、『へんしょく』の効果で自身のタイプがひこうからいわに変化していることに、まだ本人やムサシも気づいていない。

 

 カクレオンは弱点のじめん技を受けながら吹き飛んだ――だが、この時点でミツル君は全ての準備を終わらせていた。ミツル君は最後の技として、『シンクロノイズ』を指示する。

 

 この技は、自分以外の全員が対象の技で、自分と同じタイプのポケモン全員に威力120のエスパー特殊ダメージを与えるという強力な技だ。

 何が凄いかというと、この攻撃は目に見えないのである。『サイコキネシス』と同じで、気が付くと体にダメージが入っている特殊技で、回避がほぼ不可能と言える力を持っている。

 

 勿論、『まもる』系や『みがわり』などで防御は可能だが、『まもる』系はタイミングが計れないし、『みがわり』もタイミングをミスればただ自分の体力を減らすだけの結果になりかねない。

 偶然相手が自分と同じタイプでない限り、今のような下準備が必要でなかなか使いにくい技ではあるが、こうして決まれば結果は見ての通りだった。

 

 ムサシはそれなら――と、『オウムがえし』を指示する。相手が最後に使った技で相手を攻撃する技だ。

 しかし、既に『へんしょく』の効果で、オニドリルはエスパータイプに変化していた。『シンクロノイズ』はあくまで、お互いに同じタイプのポケモン全員にダメージを与える技なのでムサシの狙いは不発に終わる。

 

 ミツル君は冷静に『げんしのちから』でオニドリルにとどめを刺していった。また、追加効果である一割の確率でステータス上昇を引き当てたようで、カクレオンの素早が一段階上昇している。

 

 あまりに技が複雑すぎて、コジロウですらムサシがどうやってやられたのかよく理解していないようだった。実際、このコンボを正確に理解できているのは、俺やタケシ、後はVIP席にいるシロナくらいだろう。

 しかし、カクレオンも無傷ではなかった。技は全て使わされてしまったし、弱点の『ドリルライナー』を二回も受けて体力は半分以下――否、下手をすれば1/3近くまで削られている。

 

 ムサシはオニドリルを戻すと、ギャラドスを出してきた。ギャラドスもひこうタイプが入っているので、いわ技は効果抜群だが、逆にギャラドスはみずタイプなので弱点を突くことも出来る。

 また、ギャラドスの特性『いかく』により、カクレオンの攻撃も下がった。ここでミツル君は一旦、カクレオンを戻していく。疲労などを考えて連戦は避けるべきと判断したのだろう。続けて、再びチルタリスを出してくる。

 

 ミツル君はチルタリスに『うたう』を指示した。エネコロロの仕返しにギャラドスを寝かせようという魂胆だろう。

 しかし、ムサシはしっかり対策していた。『うたう』というよりは、面倒な『コットンガード』封じとして、『ちょうはつ』で変化技を封じに来たのだ。

 

 僅かにギャラドスの方が早かったことで、チルタリスは歌うことが出来ずに技が不発に終わる。

 

 続けて、ムサシは『れいとうビーム』を指示した。流石にコジロウのポケモンだけあって、ここ数年でしっかりといろいろな技を覚えている。

 チルタリスはドラゴン・ひこうタイプなので、こおり技は四倍弱点だ。ミツル君も、これを受ける訳にはいかないと、『りゅうのはどう』で反撃していく。

 

 ギャラドスはどちらかというと物理タイプということもあって、『れいとうビーム』は押し返されてしまった。

 反撃の『りゅうのはどう』は何とか避けたようだが、特殊技が効かないのであれば空中にいるチルタリスに有効打はない。

 

 だが、ムサシはここで見様見真似のカウンターシールドを披露した。俺達が練習しているのを見ていたのか、それとも前回のシンジのカウンターシールドを真似したのかはわからないが、ギャラドスが上手く『れいとうビーム』を使って自分を守りながらチルタリスに範囲攻撃を仕掛けていく。

 

 ミツル君も、前回のシンジの試合を見てはいただろうが、流石にほぼ初見でこれに対応するのは無理なようで、チルタリスがカウンターシールドの『れいとうビーム』を受けて大ダメージを受けていた。

 

 それならと、ミツル君は最後の技として『ゴッドバード』を指示している。力を貯めて、無理やりカウンターシールドを突破していこうという狙いだろう。

 ならばと、ムサシもここで技を変えてきた。ギャラドスに『はかいこうせん』を指示して、突っ込んでくるチルタリスを撃ち落とすように指示していく。

 

 ギャラドスが『はかいこうせん』を発射してから少しして、チルタリスも動き出した。真っ直ぐに飛んでくる光線を、身を翻して避けながらギャラドス目掛けて垂直に落ちてくる。

 ギャラドスは避けられたと判断した瞬間に、カウンターシールドに移行して『はかいこうせん』の乱舞でチルタリスにダメージを与えていく。しかし、チルタリスは止まらなかった。ダメージを受けながらも、ギャラドスに真っ直ぐぶつかって――いや、落下していく。

 

 どうやら、『はかいこうせん』の一撃を気合で耐えてギャラドスにぶつかったようだが、それで限界を迎えたようでチルタリスも戦闘不能になった。

 しかし、ギャラドスも鼬の最後っ屁というには大きすぎるダメージを受けている。『ゴッドバード』の直撃で、軽く体力も1/3以上減らされていた。

 

 互いにポケモンが一体ずつ戦闘不能になり、消耗も大体同じくらいの消耗度――戦況はほぼ互角と見て良い。

 

 ミツル君はチルタリスを戻すと、今度はノクタスを出してきた。サボネアの進化系であり、ホウエンではハーリーが相方として使っていたポケモンでもある。

 タイプはくさ・あくなので、むし技が四倍弱点だが、ギャラドスならこおり技や得意のひこう技なんかも二倍弱点として期待できるだろう。逆にひこうタイプを持っているギャラドスはくさ技を等倍で受けられるので相性自体はギャラドスの方が良さげだ。

 

 とはいえ、割と勤勉なミツル君がそんな素人でもわかる相性に気付いていないはずがない。わざわざノクタスを出したということは狙いがあるはずだ――と、考えていると、ミツル君は『すなあらし』を指示してきた。

 これにより、天候が変化し、フィールドが砂嵐に包まれていく。そういえば、ノクタスの通常特性は『すながくれ』だったっけか。これで目を眩ませて、攻撃を防ごうという狙いのようだ。

 

 ムサシもギャラドスも、この砂嵐で見事にノクタスを見失ったようで、敵を探してキョロキョロしている。

 すると、不意に植物の種のようなものが飛んできて、ギャラドスの体に巻き付いていく。『やどりぎのタネ』だ。どうやらミツル君のノクタスは、真正面から殴り合うのではなく、変化技で小細工するタイプのノクタスだったらしい。

 

 これで、ギャラドスは『すなあらし』で毎ターン1/16、『やどりぎのタネ』で1/8のダメージを受ける。おまけに、やどりぎでノクタスは1/8体力を回復するという有利な状況だ。

 

 だが、ムサシもやられたままではいない。やどりぎを受けたことで、ノクタスを発見したようで、『ちょうはつ』でこれ以上の変化技を封じていく。

 ここで、ミツル君は攻撃に出た。

 どうやら『ちょうはつ』がくるのは読んでいたようで、『ニードルアーム』でギャラドスをぶっ飛ばしていく。威力60のくさタイプ物理技だ。弱点ではないが追加効果で、三割の確率で相手を怯ませる効果があり、実際にギャラドスは怯んでしまっていた。

 

 そのまま追撃の『ニードルアーム』をぶつけていく。二度の攻撃と砂嵐、やどりぎの継続ダメージでギャラドスの体力は一気に1/4近くまで削られてしまった。

 ムサシも『れいとうビーム』で反撃を指示するが、特性『すながくれ』の効果で命中率が下がっていることもあって攻撃が当たらない。それなら天候を変えてやると『あまごい』を指示するムサシだが、その間にやどりぎと砂嵐の継続ダメージでギャラドスは戦闘不能になった。

 

 しかし、ギリギリで雨には出来たようで、天候は砂嵐から雨に変わっていく。とはいえ、それがムサシのパーティに有利に作用するかどうかは不明だ。

 だが、天候や変化技を使ったトリッキーなバトルで、ミツル君はムサシを翻弄していた。実際、ノクタスはノーダメージでギャラドスを戦闘不能まで持っていっている。

 

 ムサシは次のポケモンとしてユレイドルを出した。同じくさタイプであれば、やどりぎは効かないし、ユレイドルはいわ・くさタイプなので、仮に『すなあらし』になっても特防が1.5倍になって有利だ。

 

 逆にミツル君は不利を察してノクタスを戻した。続けて、再びカクレオンを出してくる。

 

 一度ボールに戻したことで、カクレオンの特性は『へんしょく』に戻っていた。だが、今は、雨状態で岩のフィールドに水溜りが多く出来ている。『ほごしょく』を使った場合はじめんタイプになるが、もしムサシからいわやくさ技を受けた場合は、カクレオンはそのどちらかのタイプになるので『シンクロノイズ』が使える。

 

 ムサシも「また来たわね、よくわからないやつ……!」と、カクレオンを睨みつけていた。しかし、後ろのコジロウが、この間にカクレオンについて調べていたようでアドバイスを送っている。

 

 それを聞いたムサシは「オーキードーキー」と、返事をしながら、『ヘドロウェーブ』を指示した。

 自身のタイプではないどく技だが、ムサシとコジロウには初期ポケモンとしてもどく技に精通するアーボックやマタドガスがいるため、覚えるのはそう難しくなかったのだろう。

 

 ミツル君のカクレオンは、『ほごしょく』、『げんしのちから』、『スキルスワップ』、『シンクロノイズ』と、既に全ての技を使ってしまっている。

 メインウェポンである『シンクロノイズ』を封じられた今、カクレオンが対抗できるのはタイプ不一致の『げんしのちから』だけだった。もし、ムサシが『あまごい』でフィールドに水溜まりを作っていなかったら、砂嵐が止んだタイミングで『ほごしょく』を使ってカクレオンをいわタイプにも出来たのだが、ここに来て雨がミツル君を不利にしている。

 

 偶然というか、執念というか、ここぞのラッキーを掴む力は持っているようで、カクレオンの『げんしのちから』を突破して、カクレオンに『ヘドロウェーブ』でダメージを与えていく。

 おまけに、運よく一割で毒状態にする追加効果も引けたようで、カクレオンが毒になった。その後、『へんしょく』の効果でカクレオンもどくタイプになるが、毒を受けたのはどくタイプになる前なので状態異常は治らない。

 

 元々、カクレオンは体力が1/3近くまで削れており、そこに『げんしのちから』で相殺したとはいえ『ヘドロウェーブ』のダメージに毒を受けて、もうカクレオンも長くは戦えなかった。

 ミツル君もムサシなら適当にくさやいわ技を使ってくるという読みだったようだが、ブレインコジロウの活躍で裏をかかれた形になっている。

 

 もはや、ここでカクレオンを戻しても無意味と悟ったようで、最後に『げんしのちから』で少しダメージを稼いでカクレオンは戦闘不能になった。

 

 先程と変わって、今度はムサシがほぼ無傷で相手を戦闘不能に持っていっている。これで戦況は再び五分に変わった。

 

 ふと、仲間達の方を見ると、ゴクリと唾を飲み込む姿を見せている。俺のバトルの時は、こいつらも何だかんだ俺が勝つと信じてくれているからか割と応援も雑だが、こうしてどちらが勝つかわからないバトルはハラハラするようで手に汗握ってバトルを見守っていた。

 

 たまにはニューサトシのことも心配しろよ――と、思ったが、カスミさんが俺の考えを読んだのか、目線で「アンタはそういうタイプじゃないでしょ」と言ってきた。解せぬ。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・第188話『決着ライバルバトル! サトシ対シンジ!!』より、お互いの全てをぶつけあった。
 ゴウカザルのレベルは58。シンジの育成能力+レイジの助けもあり、戦える所まで育ったが、流石にシゲル程の育成能力はないので限界があった(シゲルの育成能力が異常なだけであって、シンジも十分な育成能力を持っている。育成能力だけならニューサトシ以上)。もし、同レベル帯だったなら勝負はまだわからなかったかもしれない。その他のポケモンについても平均55前後となっている。

・レベルについて。
 前々からもっと古株組のレベルを上げた方がいいという意見がありますが、仮にニューサトシの旅に古株連れていった所で、アニメの話以外は移動や朝昼晩のトレーニング、低レベルの野良バトルしかしてないのでレベルなんかまず上がりません。むしろ、オーキド研究所での自主練の方が時間一杯使えるのでレベリングになるくらい。だから今のスタイルが一番いいんです。
 じゃあ旅すんなっていうなら、もうこの作品読まない方がいいです。戦うだけの作品じゃないんで。
 確かにニューサトシが育成に専念すればレベルは上がるかもしれませんが、正直誤差です。60から61になるのが少し早くなる程度で大きくは変わりません。シゲルが異常に育成上手なだけで、50、60くらいになったら停滞するのが普通なんです。シロナブートキャンプが特殊なだけで、そんな簡単にポコポコ育ったらみんな四天王、チャンピオンですよ。

・ムサシVSミツル君のバトルが始まった。
 ミツル君はまだ廃人前。だが、これまでの旅でポケモンを上手く育ててきている。バトルよりも育成能力の方が高いシゲルタイプ。とはいえ、バトルの勉強は病気の時にしっかりしていたので弱い訳ではない。

・フィールドの変化について。
 オリジナル設定。けど、水溜りでじめんタイプになるのはゲーム通り。本当ならあまごい状態でみずになってくれれば話が早かったのだが、フィールドの変化に天候は含まれないのでこういう設定を追加。技によってフィールドの状態が変化してもいいじゃない。



 現在ゲットしたポケモン

 ピカチュウ Lv.65

 ピジョット Lv.60

 バタフリー Lv.60

 ドサイドン Lv.63

 フシギバナ Lv.60

 リザードン Lv.65

 カメックス Lv.60

 キングラー Lv.60

 カモネギ  Lv.60

 エビワラー Lv.60

 ゲンガー  Lv.62

 コノヨザル Lv.60

 イーブイ  Lv.60

 ベトベトン Lv.60

 ジバコイル Lv.60

 ケンタロス Lv.60

 ヤドラン  Lv.60

 ハッサム  Lv.60

 トゲキッス Lv.60

 プテラ   Lv.60

 ラプラス  Lv.60

 ミュウツー Lv.76

 バリヤード Lv.60

 イワーク(オレンジ諸島の姿) Lv.59

 カビゴン  Lv.60

 ニョロトノ Lv.59

 ヘラクロス Lv.58

 メガニウム Lv.58

 バクフーン(ヒスイの姿) Lv.58

 ラティアス Lv.54

 ヘルガー  Lv.57

 ワニノコ  Lv.57

 ヨルノズク(色違い) Lv.56

 カイロス(部分色違い) Lv.56

 ウソッキー Lv.57

 バンギラス Lv.61

 ドンファン Lv.57

 ギャラドス(色違い) Lv.56

 ミロカロス Lv.51

 ラグラージ Lv.52

 オオスバメ Lv.52

 ジュカイン Lv.52

 ヘイガニ  Lv.51

 フライゴン Lv.57

 コータス  Lv.50

 サーナイト(色違い) Lv.45

 オニゴーリ Lv.49

 ワカシャモ Lv.47

 メタグロス(色違い) Lv.45

 エテボース Lv.43

 ムクホーク Lv.42

 ナエトル  Lv.42

 ブイゼル  Lv.43

 ムウマージ Lv.46

 カバルドン LV.41

 ミカルゲ  Lv.56

 グライオン Lv.40

 ロトム   Lv.42

 ユキカブリ Lv.38

 フカマル  Lv.28

 タマゴ   何が生まれてくるのかな? 生まれるまでまだまだ時間がかかりそう


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