14歳 μ月σ日 『シンオウリーグ 準決勝 VSタクト 後編』
インターバルが開けると、タクトが四体目としてライコウを出してくる。こちらは再びミュウツーを送り出した。
こいつも、まだまだ戦い足りないと言っている。これから先は、行ける所までミュウツーで押し切るつもりだった。
相手のライコウもやる気のようで、バチバチと体から電気が溢れてスパークしている。
前世では、霊獣ボルトロスやレジエレキの影に隠れてあまり使われないが、こいつも準伝だけあって足が速くて特殊が強い。
ここは素直に、ライコウの弱点であるじめん技の『じしん』で一気に体力を減らしていく。ジャンプで回避してくるかと思ったが、タクトはライコウに避けろとは言わなかった。逆に攻撃を受けながら『かみなり』を指示して、こちらに攻撃を仕掛けてくる。
流石のミュウツーも、技使用中だけは大きく動けなかった。その隙を突いて、確実にダメージを狙いに来たらしい。俺も良くやる肉を切らせて骨を断つ作戦だ。
安定の『10まんボルト』や『ほうでん』でなく、威力重視の『かみなり』を選んでいる辺り、タクトはここで何してもミュウツーを倒すつもりなのだろう。
それなら、隙の少ない近接戦に持ち込む。はがね技の『アイアンテール』はでんきタイプには半減なので、かくとう技の『かわらわり』で攻撃を仕掛けていくと、タクトは『まもる』で攻撃を防いできた。
ならば、『はどうだん』で追撃――しようとした瞬間、『ボルトチェンジ』でダメージを与えながら手持ちに戻っていく。結果的に『はどうだん』は、相手を見失って不発に終わった。
続けて、タクトは五体目としてスイクンを出してくる。エンテイ、ライコウと続いたからもしかしてと思ったが、どうやらジョウト三犬はしっかり揃えていたらしい。
スイクンは他の二体と違って防御や特防が高いタイプだ。前世は三犬の中でもトップの使用率を誇っていた。
しかし、この世界には持ち物という概念がまだ普及していない。ならば、耐久型の線はないと見ていいか? エンテイやライコウと違ってどう動いてくるのか読めないな。
とはいえ、いつまでも様子を見ていても始まらないので、『かわらわり』を指示して探りを入れていく。
スイクンもまた、みずタイプ故にはがね技が半減だ。『アイアンテール』は半分死に技になったが、受けとしては使えるので攻めは『かわらわり』に任せる。
タクトは『まもる』を指示してきた。『かわらわり』が不可視の壁に守られ、スイクンが距離を取っていく。
それなら追撃で『はどうだん』を撃つ――と、『ねっとう』で相殺させられた。何というか、攻めっ気を感じない。まさか、遠距離から一撃必殺を狙う型か?
再び、ミュウツーに『かわらわり』を指示して距離を詰めさせる。また、タクトは『まもる』を指示して、スイクンを防御に徹させてきた。スイクンもスイクンでガードが成功すると、すかさずまた距離を取ってくる。これはまさか――
「君のミュウツーは確かに強い。だが、真正面から戦うだけがポケモンバトルではないよ」
やはりそうか。ライコウもスイクンも、通常特性は『プレッシャー』だ。『プレッシャー』は技を使った時に追加でPPが1削られるという特性で、意外と面倒な特性でもある。
ダークライとのバトルで、ミュウツーの戦闘能力を把握したが故に、真正面からぶつかりつつも、ライコウとスイクンでサイクルを回してPPを削って動きを制限しようという狙いに変えてきたのだろう。
流石のミュウツーも技が使えなくなれば脅威ではなくなる。だが、別に卑怯と罵るつもりはなかった。相手のPPを枯らすのも戦術の一つだ。
それにPP涸らしは、こちらへの牽制に過ぎない。トレーナーが技を使うのを躊躇えば、ポケモンの動きも鈍くなる。このレベルになると、トレーナー同士の駆け引きでミスをすれば致命傷になりかねない。それを狙っているのだろう。
あくまでも、タクトは真正面からミュウツーを倒すつもりだ。PP枯らしはサブプランに過ぎない。
とはいえ、わかっていても気にしてしまうのがポケモントレーナーのサガだ。タクトも、あの手この手でこちらを崩そうとしてくる。
だが、気を取られていつものバトルが出来ないのが一番駄目だ。後ろにはまだ仲間も残っている――故に、ここは全力でスイクンを倒しに行く。
今度は『アイアンテール(スプーン)』を指示する。当然、タクトは『まもる』で防御させてきた。先程までは上手く受け流されてしまったが、相手が確定で『まもる』を使ってくるのであれば話は別だ。
こちらの攻撃が『まもる』で弾かれた瞬間、スプーンを消滅させ、反動を無理やり解除し、スイクンを捕まえてゼロ距離『じしん』で一気体力を削っていく。
震源地からの直撃で、スイクンも通常よりも大きなダメージを受ける。一気に体力を2/3程まで削ることが出来た。
これはまずいと、タクトがスイクンをボールに戻していく。PPを削ってこちらに技を使えなくさせるのは向こうの作戦の一つではあるが、それでスイクンが簡単に倒されてしまっても困るのだろう。
再びライコウを出してくる。迂闊に『まもる』等で、こちらのPPを削りに来るのが諸刃の剣だとわかると、タクトは一気に勝負をかけに来た。
ダメージ覚悟で、最後の技である『しんそく』で攻撃を仕掛けてくる。流石のミュウツーも、素早種族値115の『しんそく』にカウンターは合わせられない。
仕方なく、ガードを固める。
しかし、ライコウはそのままミュウツーに組み付くと、再び『かみなり』を撃ってきた。ゼロ距離での『かみなり』は防御不能――ならば、こちらも『じしん』で反撃する。
ミュウツーは『かみなり』の直撃2回で残り体力が約半分近く削れていた。ライコウもタイプ不一致とはいえ、弱点である『じしん』を2回受けて体力は1/3に届く所まで来ている。
だが、いつまでもこの状況を続けるつもりはない。ゼロ距離『はどうだん』で反撃――しかし、即座に『まもる』で攻撃を防御してきた。
読まれたな。こちらの『まもる』破りも何の技でも使えるという訳ではない。動きを読まれればこうして普通に攻撃を防御されてしまう。
なら、逃げる足を追って『かわらわり』――だが、それも『しんそく』で回避される。
クッ、単調な攻撃は駄目だ。『アイアンテール(スプーン)』を混ぜつつ、向こうの防御を崩していかなければPPの無駄遣いにしかならない。
こちらが『アイアンテール(スプーン)』で再び突撃をかける。が、その瞬間、タクトは『ボルトチェンジ』で、攻撃が直撃する前にライコウをボールに戻した。
クソ、こちらのペースで戦わせて貰えない。
真正面からぶつかれば、ライコウであれ、スイクンであれ、ミュウツーならば勝てるのだ。しかし、それがわかっているが故に、タクトも真正面からぶつかるという択を取るのを止めてきた。
まるでチャンピオンリーグ中堅のような動きだ。
ミュウツーは最強だが、決して無敵ではない。戦い方次第で、こうして動きを止められる。このままでは突破は難しい。普通なら一度ミュウツーを戻すことも考慮に入れるレベルだ。
だが、舐められたままというのは気に入らない。それはミュウツーも同じようで、闘志を滾らせて再び出てきたスイクンを見つめている。
力づくでも、このサイクルを崩してやる――『はどうだん』を撃ち、同時にミュウツーが走り出す。
こちらの技は必中故に、防御か迎撃をする必要がある。タクトは迎撃を選択した。『ねっとう』で『はどうだん』を相殺させる。
続けて、『アイアンテール(スプーン)』で攻撃を仕掛けていく。これは『まもる』では防御出来ないので、必然的に回避せざるを得ない。『しんそく』を使って、スイクンが距離を取っていく。
だが、距離を取れば安全だとでも? 『アイアンテール』が近接技だと誰が決めた? あくまで物理技であるというだけで、スプーンで代用できるなら遠距離にだって攻撃が出来るはずだ。
ミュウツーが回避先のスイクンに向けてスプーンを投げる。咄嗟にスイクンは『まもる』で攻撃を防御してしまった。狙ってのことではない。予想外の攻撃にトレーナーの指示前にポケモンが反応して反射で技を使ってしまったのだ。
まさかの『アイアンテール(スプーン&投げる)』は、タクトやスイクンの予想外だったようで、その間にミュウツーは再びスイクンとの距離を詰めていた。
防御後、『しんそく』の発動が間に合わないタイミングで、『かわらわり』を振り下ろし、スイクンを組み伏せていく。続けて『じしん』――と、行きたいがPPが少ないので、仕方なく『はどうだん』で追撃をかけた。
しかし、タクトもされるがままではなかった。『はどうだん』を受けた瞬間、最後の技である『ミラーコート』で攻撃を返してくる。
この世界の『ミラーコート』は相手の技を倍返しするので、『はどうだん』がそのまま返ってくる(エスパータイプのミュウツーにはダメージ半減なので、ほぼ等倍ダメージ)。自身の技がそっくりそのままゼロ距離で返ってきて、流石のミュウツーもダメージを受けていた。
続けて、反撃とばかりに『しんそく』で追撃してくる。が、ライコウと違ってスイクンはそこまで足が速いポケモンではない。
咄嗟に、突っ込んでくるスイクンの一撃を受け流す。タクトも、この速度域に対応してくるとは思わず驚いたようだが、即座に『ねっとう』を指示してきた。
こちらは『はどうだん』で『ねっとう』をかき分けてダメージを与えていく。タクトも、防ぎきれないとわかると、再び『ミラーコート』で『はどうだん』を倍返ししてきた。
それなら、こちらは『アイアンテール(スプーン)』で『はどうだん(ミラーコート)』を打ち返してやる――想定外の攻撃にタクトも驚いた様子を見せるが、即座に『ミラーコート』で倍返ししてきた。
だが、こちらが『アイアンテール(スプーン)』で攻撃を弾き返した段階で、『はどうだん』の必中効果は消えている。
倍々返しされた『はどうだん』を躱して、とどめの『はどうだん』を決めていく。『ミラーコート』の後で、『ねっとう』の反撃は間に合わないし、こちらの『はどうだん』は必中だ。『しんそく』で逃げてからの『ねっとう』迎撃はギリギリになりかねない。
タクトは『まもる』を指示した。
当然、安定の択だ――故に読みやすい。こちらは既に追撃の『かわらわり』で、とどめを刺しに出ていた。
タクトも、ここで『はどうだん』ですら釣りだったことを察し、即座に『しんそく』を指示する。反応が早い――が、間に合わなかった。『かわらわり』で、一気にスイクンを戦闘不能にしていく。
流石のスイクンも『はどうだん』をあれだけくらえば耐えられまい。途中、グランドフェスティバルのムサシのように、倍返ししたものを倍返ししていたのだ。回復技なしでは、いくらスイクンでも耐えられるものではない。
タクトも、「攻めずに守りに徹するべきだった。済まないスイクン」と自分のミスを悔やんでいる。最初の『ミラーコート』の反撃の後、『しんそく』で攻めに転じず、冷静にライコウに交代していれば、まだスイクンは戦えていただろう。
そういう意味では、今度は俺達の方がタクトをこちらのペースに乗せることが出来たというべきか。
結局、ポケモンバトルは自分の強みを相手に押し付けた方が勝つ。とはいえ、圧勝だったわけではない。スイクンはスイクンでしっかり自分の仕事をしていった。
こちらの残りPPは『アイアンテール』が5回、『はどうだん』が5回、『じしん』が2回、『かわらわり』が3回と、かなり減らされてしまっている。仮にライコウを倒せたとしても、最後のポケモンが出る頃にはどうなるかわからなかった。
タクトは当然のようにライコウを出してくる。
しかし、こいつも既に技は全て割れていた。『かみなり』、『まもる』、『ボルトチェンジ』、『しんそく』で、『しんそく』に至っては既に2回使っている。技を残していたスイクンと違って、種が割れていればどう動くにしろ対処できるだろう。
こちらは開幕、『はどうだん』で攻めた。
同時に、再びミュウツーが走りだす。この遠距離技と、ミュウツーの動きでかく乱しつつ、相手を近接戦に持ち込むという動きで先程はスイクンを下した。
それならば――と、タクトはライコウに『まもる』を指示する。必然的に、『はどうだん』は弾かれるが、その間にミュウツーは既に距離を詰めていた。
そのまま、『かわらわり』で一気に勝負を賭けにいく。だが、タクトは敢えてそれを受けた。受けたまま組み付き、『かみなり』でこちらの体力を削りに来る。
スイクンとのバトルで、ミュウツーの体力も1/3近くまで削られていた。相打ちになったとしても、残りの体力を一気に削り取ってしまおうという狙いだろう。
まさかの取っ組み合いで、ミュウツーの体力が1/4以下まで削られる。しかし、されるがままでは済まさない。PPを使い切ってしまうが、『じしん』でライコウの体力も奪っていく。
本来ならば倒れてもおかしくない場面――だが、ライコウは意地で耐えた。そのまま、『かみなり』の連続で、こちらにとどめを刺そうとしてくる。
我慢比べだな。
しかし、ライコウに耐えられて、ミュウツーに耐えられないはずがなかった。向こうの『かみなり』を受けつつ、『はどうだん』で再びとどめを刺してやる。
だが、このギリギリの状況でもタクトは冷静だった。ライコウが咄嗟に『かみなり』をキャンセルしてくる。
逆にこちらは止まらない。相討ち覚悟の『はどうだん』が発射されていく。タクトは『まもる』で攻撃を防いできた。
そのまますかさず、『しんそく』で反撃に出てくる。やられた――『かみなり』は、こちらの『はどうだん』を撃たせる囮か。
体勢が悪い。『じしん』の状態なら、両腕が空いていたので対処も出来たが、『はどうだん』を使用した直後では、手を使う『アイアンテール(スプーン)』や『かわらわり』は使えない。
最初のダークライで、『じしん』を撃ちながら攻撃を対処する動きを見せていたが故に、この状況でもタクトはこちらの動きを誘導してきたのだ。おまけに、素早種族値115の『しんそく』は避けきれない。
しかし、気が付けばライコウは倒れていた。
当然、ニューサトシのマサラアイはその現場を捉えていた――咄嗟にミュウツーはその場で一回転したのだ。
そして、『アイアンテール』の本来の使い方である尻尾での一撃で、『しんそく』で突っ込んでくるライコウを打ち落としていったのである。
この極限で、こいつは勝ちを諦めなかった。その強い気持ちが、咄嗟に体を動かしたのだろう。
だが、対処できたのは運も絡んでいた。ちょっとでも反応が遅れていたら倒されていたのはこちらだったかもしれない。
ライコウが真っ直ぐ突っ込んできたから運良く倒せたが、こいつがもし横や後ろから攻撃されていたら負けていただろう。それだけ追い込まれていた。
とはいえ、勝ちは勝ちだ。ライコウが戦闘不能になり、ミュウツーもかなり疲れた様子を見せている。それでも、最後の一体までタクトを追い詰めた。
タクトも、戦闘不能になったライコウを労ってボールに戻していく。負けはしたが、スイクン、ライコウはしっかり役割を果たした。
これで、こちらの残りPPは『アイアンテール』が3回、『はどうだん』、『かわらわり』が残り1回のみだ。体力も1/4以下で、いつ倒れてもおかしくない状況――際際の際だな。
「見事だ、サトシ君。これまで、僕が仲間にしてきた伝説のポケモン達をこうも続けて倒してしまうとは……正直、夢としか思えない状況だよ。でも、もうミュウツーも限界のはずだ。この僕の切り札で、一気に勝負を付けさせてもらうよ!」
そう言って、タクトが最後に出してきたのは、伝説でも、準伝でもない――ルカリオだった。
「伝説ばかり使っている僕が普通のポケモンを使うのが意外かい? でも、こいつは特別なんだ。僕が初めて手に入れたポケモン――相棒だ。このルカリオと一緒に、僕は数多の伝説ポケモン達と戦い抜いてきた!」
タクトは首元を捲ると、中からペンダント型のキーストーンを出してくる。成程、最後の最後はメガシンカポケモンか!
ルカリオが、メガルカリオへとメガシンカしていく。これで、ステータス的には伝説や準伝とそこまで変わらないレベルまで上がった。
「悪いけど、手早く倒させて貰うよ。流石に、ここから六体抜きするのはかなり厳しいからね」
そう言って、タクトが余裕の笑みを浮かべる。確かに、メガルカリオのスペックなら、ここからの六体抜きも不可能ではないだろう。
しかし、手早く――ね。
「『舐められたもん(の)だな』」
確かに、俺達は追い込まれた。それは認めよう。インターバル明けから、PP枯らしを絡めてこちらの消耗を狙ったタクトの戦術は素晴らしいと称賛できるし、準伝達も自分の仕事を全うしていた。
ルカリオがメガルカリオに進化したことでステータスも上がり、体力もマックスで、技も全開で使える。成程、確かに一見するとこちらが不利に見えなくもない。だが――
「関係ないんだよ」
『まだ体は動く、技も使える』
「チェックとチェックメイトは違う。あんたはまだ王手をかけたに過ぎない」
『だからこそ言わせて貰う』
「『こっちのキングはしぶといぜ(ぞ)』」
――燃える闘志が、自分達は負けないと確信する自信が、一つとなりて絆を結ぶ。
きずな現象が使えるのは、リザードン一人ではない。そうわからせるかのように、ミュウツーのフォルムが変化していく。
この姿を見たことがあるのは、この会場では五人。タケシ、カスミさん、ハルカ、マサト、ラティだけだ。ヒカリや、シロナですら、この姿は見せたことがない。
当然ながら、まだ意図的に使える段階ではなかった。今回、使えたのもたまたまに過ぎない。しかし、何となく使えるという確信は、タクトがルカリオをメガシンカした辺りからぼんやりと感じていた。
まだ、俺達の知らない何かが、この現象には隠されている――けど、今はどうでもいい。
向こうが全力で来るなら、こちらも持てる力の全てを出して戦う。それだけで良かった。
タクトも、こちらが未だ切り札を隠しているとは思わなかったようで、驚きを通り越して渇いた笑いを浮かべている。人間、どうしようもなくなった時は笑うしかないと言うが、あのクールなタクトがそうなるとはな。
「ははは……まさか、まだ切り札を隠していたとはね」
「これはいつも言っていることだが――切り札は先に見せるな、見せるなら奥の手を持て」
「まさにその通りだ。しかし、僕達は負けないっ!!」
タクトの宣言と同時に、メガルカリオが『ボーンラッシュ』で突っ込んできた。こちらも、『アイアンテール(スプーン)』でそれを受け流していく。
しかし、格好つけたはいいが、きずなミュウツーになったとはいえ、PPが回復した訳ではない。ステータスは上昇したが、技を全て使っている今、専用技の『サイコバーン』も今は使えないし、依然としてピンチなことには変わりなかった。
タクトが自信を持つだけあって、メガルカリオは確かに強い。近接能力に長け、きずなミュウツーになっている今ですら、油断をすれば防御を突破されかねなかった。
逆にタクトはメガルカリオで、きずなミュウツーを突破できないとは思わなかったようで、仕方ないとばかりに『しんそく』を指示している。残り1/4の体力を一気に削り切るつもりなのだろう。
実際、ミュウツーといえど、素早種族値112クラスが使用する『しんそく』は防御に回るしかなかった。そう、今までは――
だが、能力が上がったのはそっちだけじゃない。
“ミュウツー”では対応が難しかった攻撃も、“きずなミュウツー”ならば対処できる。『しんそく』の一撃を受け流し、脳天に『かわらわり』を叩きこんだ。
地面に叩きつけられ、メガルカリオが苦しそうに体を起こす。これまで余裕の笑みを浮かべていたタクトも、もうなりふり構わない様子でルカリオに声をかけていた。
「頑張れ、メガルカリオ! 頑張ってくれ!」
その声に背を押されながら、メガルカリオが立ち上がる。ちなみに、うちの暴君はそんなお涙頂戴の場面を見ながら、『じしん』が使えれば追撃したものの――と、血も涙もないことを考えていた。
起き上がったメガルカリオは『インファイト』で突っ込んでくる。こちらは攻撃を全て見切った上で最小限の動きでそれを受け流していった。
とはいえ、『かわらわり』を使い切ったので、こちらが使える技は『アイアンテール』2回と『はどうだん』1回だけだ。あまりのんびりとバトルをしている余裕はない。
タクトも、こちらの残りPPが切れるのを期待しているのだろう。それ以外に勝ち筋がないが、勝ち筋が残っているからこそ諦めずにいる。
メガルカリオが最後の技である『はどうだん』を使ってきた。こちらも、最後の『はどうだん』で対抗していく。
向こうはメガシンカして特攻も上がっておりタイプ一致だ。対するこちらは、これまでの戦いでかなり消耗しており、そもそもタイプ不一致――
「なのにっ! なんでこっちが負けるんだ!?」
それでも、メガルカリオの『はどうだん』が吹き飛び、こちらの『はどうだん』が相手に直撃した。
メガシンカしているだけあってなかなかしぶといな。だが、向こうの残り体力もそう多くはない。弱点である『かわらわり』と『はどうだん』の直撃で、1/4近くまでは追い込んでいるはずだ。
後使える技は、『アイアンテール(スプーン)』2回だけだが、半減とはいえ今の力なら十分に倒しきることが出来るだろう。
気合で痛む体に鞭を打って、メガルカリオが起き上がる。しかし、全ての技がきずなミュウツーには通じない。下手に攻撃すればカウンターの攻撃で倒されかねない状況だ。
それでも、ポケモンバトルに逃げるという択はない。それがどんなに苦しい状況でも、戦わなくていけないのがトレーナー同士のポケモンバトルである。
再び、メガルカリオが『ボーンラッシュ』で突っ込んできた。こちらも、『アイアンテール(スプーン)』で対処し、そのままとどめを刺しきる――と、考えながら攻撃を受けきって反撃の一撃を入れた瞬間、まるで魔法が解けたかのようにきずなミュウツーが元に戻ってしまった。
とはいえ、きずなミュウツー状態で反撃したので、メガルカリオはまた向こう側まで吹き飛んでいる。しかし、まだ三分くらいしか経っていないはずなのに、なんできずな化が解除されてしまったんだ?
いや、疑問は後でいい。
まだメガルカリオはギリギリで体力を残していた。あと一息で倒れる。残りの『アイアンテール』を決めればこちらの勝ちだ。
だが、こちらの変化が解けたことで、タクトもまだこれからだと自分を奮い立たせている。突然やってきた勝機に、向こうも息を吹き返したな。
本来であれば、こちらの反応できない『しんそく』を使ってミュウツーを追い込みたい所だろう――が、もしまたライコウの時のようなカウンターが決まればメガルカリオが倒れかねない。
迂闊な近接戦は不利と判断し、タクトは『はどうだん』を指示した。必中の一撃で確実にとどめを刺すつもりなのだろう。
実際、効果今一つとはいえ、今のミュウツーの体力でメガルカリオの『はどうだん』を受けたらまず倒れるのは間違いなかった。
ミュウツーもまた、全力で突っ込んでいく。『はどうだん』は必中だが、ギリギリで回避すればホーミングして当たるまで僅かな間が出来る。その間に、メガルカリオにとどめを刺すつもりなのだろう。
しかし、タクトはしっかりと対策してきた。ミュウツーが避けられないギリギリまで引き付けて、『はどうだん』を撃たせている。これには技を使って対処するしかなく、最後の『アイアンテール(スプーン)』で技を相殺していく。
その瞬間、タクトは笑みを浮かべた。
相殺と同時にスプーンが消え、向こうもこれでミュウツーが全て技を使い切ったとわかったのだろう。もうメガルカリオの体力も残り僅かのはずだが、それでも勝てると言わんばかりの喜びようだ。
だが、その喜びもぬか喜びに終わる。
近接したミュウツーがメガルカリオを殴り、残りの体力を削って戦闘不能まで持っていったからだ。
「馬鹿な! 有り得ないっ! 技を使うパワーには限りがある。ミュウツーは確かに全ての技を使い果たしたはずだっ!」
そうだ。実際、ミュウツーは全ての技を使い切った。だがな、タクト、ポケモンバトルは技を全て使い切っても終わりじゃないんだよ。
遅れて、タクト自身も気づいたようで、ハッとした様子を見せる。そう、ポケモンにはあるのだ。技を全て使っても使用することの出来る技が――
「『わるあがき』……」
そう、伝説だろうと、準伝だろうと、神様であろうと、それがポケモンであるのであれば、その理から逃れることは出来ない。
ポケモンは全ての技のPPを使い切ると、『わるあがき』という威力50のノーマル物理技を使用することが出来る。これは必中技でもあり、反動で1/4のダメージを受けるものの、タイプ相性を無視してダメージを与えることができるのだ。
本来、はがねタイプを合わせ持つルカリオにノーマル技は半減だが、『わるあがき』だけはそういうタイプ相性を無視してダメージを与えられる。だからこそ、残り僅かな体力を削り切ることが出来たのだ。
ちなみに、同じ理由でノーマルタイプが使っても威力は1.5倍にはならないし、ゴーストタイプにもダメージを与えることが出来る。普段見ることはまずない技だが、この世界にもしっかりと『わるあがき』は存在していた。
メガルカリオのメガシンカが解除され、ルカリオが戦闘不能になる。同時に、ミュウツーも限界を迎えてその場に座り込んだ。
普段、飄々としているこいつが座り込んで動けない。それだけ、後半は追い込まれていたのだろう。実際、きずな化できなければ、メガルカリオには勝てなかった。
タクトのポケモンが全て戦闘不能になったことで、ニューサトシの勝利が宣告される。
結果的にこちらは誰も戦闘不能にはなっていない。とはいえ、圧勝という内容ではないことは明らかだ。何かの歯車が違えば、追い込まれていたのは俺の方だった。
負けたタクトは最後こそ取り乱していたが、すぐに普段のクールさを取り戻している。「負けたよ。また一から出直しだ」と、柔和な笑みを浮かべて握手を求めてきた。
こちらも、良いバトルだった――と、健闘を称える。実際、こいつはチャンピオンリーグにいてもおかしくないくらい強かった。
ぶっちゃけ、サトシ君絶対に優勝させないマンの中で最強と名高いタクトを倒せたのは嬉しい。後半はミュウツー一体で行ける所まで行ったが、ライコウとスイクンの二体にはかなり追い詰められたしな。
やはり、序盤でダークライを力押し出来たのがかなり大きかった。勿論、勝てたのは前世の知識でダークライを知っていて、めちゃんこメタったってのが大きい。
何も知らなければ、俺も『ダークホール』でやられていたかもしれなかった。少なくとも、あそこまで簡単に勝つことは出来なかっただろう。そういう意味では平等ではなかったかもしれないが、それも含めて俺の実力だから気にしないことにする。
それに結果的には、シンオウに来てから二度目のきずな現象を起こすことに成功した。だが、今回のきずな化はいつもと違って三分程で解除されてしまっている。
詳しい理由はわからない。
今までは、ほぼ突発的にきずな化していたが、今回は何となくではあるものの、きずな化できるという認識を持ってきずなミュウツーになった。その違いもあるのかもしれない。
まぁ、何であれ意図的に使えるようになってきたのは前進と言って良いだろう。準決勝は乗り越えたし、後は次の決勝戦に勝てば、晴れてシンオウリーグ優勝だ。
追記。もう一つの準決勝は接戦の末にミツル君が勝利を収めた。これで、次の決勝戦はニューサトシとミツル君の夢の対決となる。さぁて、次はどんなメンバーで戦うかな。
原作との変化点。
・第189話『シンオウリーグ準決勝! ダークライ登場!』より、ミュウツーで残り全てを倒しきった。
当初のプロットでミュウツー一体で勝ち抜かせようとしたのも、PPを減らしてこのわるあがきのシーンが書きたかったから。でも、結果的に今の方がライコウとスイクンの強さが際立っていい感じになったので良しとする。
・ライコウ、スイクンについて。
まず、タクトパーティを決める際、ダークライ、ラティオスは確定として、OPで戦うだけ戦って出番がなかったエンテイとルカリオを採用することに決めていた。続けて、水か氷タイプが欲しいと考え、スイクンかフリーザーの採用を考え、それならジョウト三犬で固めちまえと言うことで、ライコウ、スイクンが採用されている。もっとらしいパーティがあるかもしれないが、そういうのは自分で書いてくり。うちではこれ。
・ルカリオが相棒について。
オリジナル設定。けど、余程主人公体質じゃない限り、最初の一体が伝説ってことはないと思うので、ルカリオが相棒でいいじゃないと思った。メガシンカすれば準伝クラスだし、唯一の通常ポケモン枠として採用している。
・タクトの実力について。
結果的には6対0で終わったが、その実力の高さはチャンピオンリーグクラス。しかし、原作でもシロナに挑戦していたのがオーバだったことから、四天王クラスではないということで、レベルは60代、チャンピオンリーグ中堅クラスに実力を設定した。作者がタクトのトレーナーとしての能力の高さを上手く表現できているかどうかわからないので蛇足かもしれないが追記した。
・きずなミュウツーについて。
絶体絶命の危機で、意図的にきずな化できた。とはいえ、ほぼ偶発的なもので、マスター出来てはいない。おまけに、突発的に変化していた時とは違って3分程で元に戻ってしまう。原因は不明。
・残りのポケモンについて。
出番のなかった残り3体は、フシギバナ、リザードン、カメックス。エースのリザードンは当然として、理屈抜きで古い付き合いのカントー御三家をチョイスしていた。
現在ゲットしたポケモン
ピカチュウ Lv.65
ピジョット Lv.60
バタフリー Lv.60
ドサイドン Lv.63
フシギバナ Lv.60
リザードン Lv.65
カメックス Lv.60
キングラー Lv.60
カモネギ Lv.60
エビワラー Lv.60
ゲンガー Lv.62
コノヨザル Lv.60
イーブイ Lv.60
ベトベトン Lv.60
ジバコイル Lv.60
ケンタロス Lv.60
ヤドラン Lv.60
ハッサム Lv.60
トゲキッス Lv.60
プテラ Lv.60
ラプラス Lv.60
ミュウツー Lv.76
バリヤード Lv.60
イワーク(オレンジ諸島の姿) Lv.59
カビゴン Lv.60
ニョロトノ Lv.59
ヘラクロス Lv.58
メガニウム Lv.58
バクフーン(ヒスイの姿) Lv.58
ラティアス Lv.55
ヘルガー Lv.57
ワニノコ Lv.57
ヨルノズク(色違い) Lv.56
カイロス(部分色違い) Lv.56
ウソッキー Lv.57
バンギラス Lv.61
ドンファン Lv.57
ギャラドス(色違い) Lv.56
ミロカロス Lv.51
ラグラージ Lv.52
オオスバメ Lv.52
ジュカイン Lv.52
ヘイガニ Lv.51
フライゴン Lv.57
コータス Lv.50
サーナイト(色違い) Lv.45
オニゴーリ Lv.49
ワカシャモ Lv.47
メタグロス(色違い) Lv.45
エテボース Lv.43
ムクホーク Lv.42
ナエトル Lv.42
ブイゼル Lv.43
ムウマージ Lv.46
カバルドン LV.41
ミカルゲ Lv.56
グライオン Lv.40
ロトム Lv.42
ユキカブリ Lv.38
フカマル Lv.28
タマゴ 何が生まれてくるのかな? 生まれるまでまだまだ時間がかかりそう