ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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#028 『本気でかかってこい』

 11歳 λ月β日 『植物園のラブコメ』

 

 裏山の植物園でリンドウとかいうお嬢様と、カードキャプターさくらの山崎君に似た声の男がラブコメをしていた。

 それに触発されたのか、俺のフシギダネもお嬢様のクサイハナとラブコメをしている。ちなみにタケシはリンドウお嬢様の気持ちに気付いておらずいつも通り暴走していた。

 

 こりゃ振られたな。あーあ、俺しーらね。

 

 

 

 11歳 λ月ε日 『エビワラーの挑戦』

 

 いつも通り、オーキド研究所でトレーニングに励んでいると、タケシとカスミさんが四天王のシバがミヤザキ山で目撃されたという情報を持ってきた。

 四天王のシバといえば、ウーハーで有名なかくとうタイプのポケモン使いである。

 タケシが「ポケモンバトルの奥義を聞きに行こう」とか言っているが、ぶっちゃけそんな奥義より、シゲルのように四天王とバトルしてみたかったので、とりあえずそのミヤザキ山とかいう所へ行ってみることになった。

 

 ミヤザキ山に着くと、通常の二倍近い大きさのイワークが元気に山を走っている。どうやら、ミヤザキ山は土が良いようでイワークが良く育つらしい。

 パワーもありそうなのでゲットするのも悪くないと思いながら、走ってくるイワークをじっくり眺めていると、「あまり近づくと危険だぞ」と声をかけられた。

 

 振り返ると、上半身裸のおっさんがドヤ顔で仁王立ちしている。っていうか、四天王のシバだった。

 

 本物のシバに会えて感激したらしいタケシが、出会って早々シバのことを先生と呼びながら、ポケモンバトルの奥義について聞いている。

 そんなもんある訳ないだろうと思いながら様子を見ていると、シバも「そんなものはない」と即答していた。ですよねー。

 しかし、見た感じ修行をしに来たという感じではなかったので、ここに何しに来たのか聞いてみた。すると、シバはここに住んでいる大きいイワークの中でも一番大きいイワークを探しにここまで来たらしい。

 

 つまり、そのイワークが見つかるまでは暇ということだ。物は試しの精神で、「俺とバトルしてくれませんか?」と聞いてみると、何故か上から下までじっくり見られた後、「……うむ。君なら問題ないだろう」と言われ、何だかんだバトルをすることになった。やったぜ。

 

 シバの案内で、山の中にある自然の岩山フィールドへ移動する。フィールドも大きな凹みのような場所なので、念のためにトゲ様をカスミさんに預け、俺とシバは崖から飛び降りて行った。

 

 そのまま、ある程度の距離を取って向かい合う。

 この人はワタルと同じく、カントーの四天王をやっている男だ。生半可なレベルじゃないのは間違いない。油断したら即敗北と考えて良いだろう。

 勝負は1対1。ただの野良バトルなので、レベル制限も何もない全力バトルである。向こうが何を出してくるか見ていると、エビワラーを出してきた。

 

 それならと、俺も同じくエビワラーを出す。

 それを見てシバが「ほう、この俺相手に格闘戦を仕掛けてくるか……」と楽しげな表情を浮かべた。

 勿論、俺だってエスパータイプやひこうタイプで相性を責めるのがセオリーなのはわかっている。だが、敢えてこの男に真っ向勝負を挑んでみたかったのだ。

 それでこそ、俺は四天王との力の差を肌で感じることが出来る。そう思ったからだ。

 

 すぐにバトルが開始されるかと思ったが、シバは様子見をしているのか動かなかった。先手をくれるということだろう。

 お言葉に甘え、俺はエビワラーに『こうそくいどう』を指示し、素早を上げていった。かくとうタイプ相手にはいつものカウンターだ。そのまま小さくステップを繰り返し、いつでも動ける状態をキープさせる。

 

 こちらがスピードを上げたのを見て、シバのエビワラーも突っ込んできた。技は何も指示されていないが、小さく左右のワンツーを放ってくる。

 こちらがどう動くのか試しているのだろう。舐めるなよ、俺のエビワラーは強いぞ。

 

 シバのエビワラーの左右をかわし、カウンターを合わせる。そのままシバのエビワラーにこちらの右が入ると、俺のエビワラーは再び距離を取った。

 これは技の『カウンター』ではない。ただ、拳を返しただけである。当然、シバのエビワラーにはたいしたダメージは入っていないだろう。

 

 しかし、代わりに伝えたのだ。

 

 本気で掛かってこい、と。

 

「俺のエビワラーに拳で会話するとは、こしゃくなやつだ」

 

 シバが『マッハパンチ』を指示し、エビワラーが素早くパンチを連打してくる。

 こちらは『こうそくいどう』のおかげで速度が上がっているので、ギリギリで反応できていた。ガードを混ぜながら、攻撃を回避していく。

 流石のシバのエビワラーもこう凌がれると鬱陶しいのか、大振りの一撃を打とうとしてくる。その一撃に『みきり』と『カウンター』を合わせ、今度こそ俺のエビワラーがシバのエビワラーに一撃を入れた。

 

 本来なら、『きあいパンチ』で迎撃したかった所だが、あの『マッハパンチ』の早さでは、いくら『こうそくいどう』を積んでいても貯めのいるパンチは打てない。だが、ダメージはしっかり入ったようで、シバのエビワラーが怒りの表情を見せる。

 対するこちらは冷静だった。

 再び距離を取り、『こうそくいどう』で、もう二段階素早を上げていく。シバのエビワラーがそのまま突っ込んでこようとしていたが、「心を静めろ、エビワラー」と言って、シバが頭に血の上ったエビワラーを落ち着かせていた。

 

「慢心するな。相手は強いぞ。リーグ戦だと思って戦え」

 

 その一言が効いたのか、フッと一息ついて、シバのエビワラーが再び拳を構える。

 本当なら落ち着かせたくはなかった。しかし、俺のエビワラーは技スロットの関係で自分からは攻めにくいのだ。必然的にシバのエビワラーの動きを待つしかなかった。

 シバのエビワラーが距離を詰めてくる。

 右で大技を狙っているのは明らかだった。左のジャブで様子を見ながら、タイミングを計っている。しかし、いいジャブだ。こちらは『こうそくいどう』で速度が上がっているから回避可能だが、ノーマルの状態ならこのジャブを避けるのすら苦労するだろう。

 

 リズムに乗ってきたのか、シバのエビワラーが左を引いて右拳に力を込めた。右拳に光が集中する。『きあいパンチ』だ。

 きあパンは攻撃を受けたら失敗する技だが、これまでの動きから俺のエビワラーが攻めてこないと判断したのだろう。だが、こっちはそれを待っていたのだ。

 先程までの高速戦闘から一撃必殺を狙う戦い方に変わったことで、こっちも全力を出せるようになった。向こうの『きあいパンチ』を『みきり』でかわし、そのままこちらも『カウンター』からの『きあいパンチ』で右を叩き込んでいく。

 

「なっ!?」

 

 直撃する――そう思った瞬間、シバのエビワラーが左の拳で、俺のエビワラーの拳をガードしていた。

 馬鹿な、俺のエビワラーの高速見切りカウンターきあパンが防がれただと!?

 

「『マッハパンチ』」

 

 こちらの動揺した隙を突くように、シバのエビワラーが伸びきっていた右拳を引き戻し、高速の『マッハパンチ』を打ってきた。

 駄目だ。こっちはパンチを打った形で硬直している。回避出来ない――俺のエビワラーの顔面に『マッハパンチ』が命中し、ダメージで膝から崩れ落ちていく。

 

「君のエビワラーがカウンターを狙っているのは読めていた」

 

 シバは言う。バトル開始の段階で、俺のエビワラーは『こうそくいどう』を積んだ。

 インファイタータイプのかくとうポケモンは、開幕から詰めてくることが多い。この時点で、シバは俺のエビワラーを外から足を使うアウトファイタータイプのかくとうポケモンだと判断した。

 おまけに、序盤の『カウンター』を見て、俺のエビワラーがカウンター使いであることも見抜いた上、技を出してこない所から完全にカウンター特化したタイプだということもわかったと言う。

 

 後は来るであろう『カウンター』を待つだけだ。

 シバのエビワラーは、これまであらゆるかくとうポケモンと戦ってきた百戦錬磨のエビワラーである。いくらこちらの『カウンター』が早かろうと、来るとわかっていれば防御することは可能だと言っていた。

 

「念のために、俺のエビワラーが左拳を胸の高い位置においていたのに気付かなかった君の負けだ」

 

 いや、仮に気付いていたとしても、俺はエビワラーに『カウンター』を打たせただろう。それだけ、あの必殺パンチには自信があった。

 それはエビワラーも同じようで、四つん這いの体勢で悔しそうに地面を叩いている。

 これが、『まもる』や『みきり』のような技で防がれたのならまだ良かった。しかし、シバのエビワラーは単純な技術でこれを凌いで来たのだ。悔しくない訳がない。

 

 俺のエビワラーが膝を震わせながら立ち上がる。

 シバは手加減する気などないのだろう。『インファイト』を指示して、至近距離からパンチを連打してくる。こちらはガードを固めて、攻撃を凌ぐしか出来なかった。

 だが、このまま亀のように固まっているつもりはない。シバのエビワラーが『インファイト』を終える瞬間を『みきり』で狙って、再び『カウンター』からの『きあいパンチ』を打つ。拳の位置はガードに間に合わない。当たる――

 

「『みきり』」

 

 今度はしっかりと技で回避してきた。

 高速見切りカウンターきあパンをかわされ、エビワラーの体が流れる。同時にシバのエビワラーの右拳が光った。『きあいパンチ』だ。

 

 顔面にシバのエビワラーの『きあいパンチ』が直撃する。さっきは、こちらに攻撃を避ける隙を与えないために『マッハパンチ』を選択したシバだったが、今回はこちらの隙を突いた完全な大技が直撃した。

 あまりのダメージに、俺のエビワラーが再び崩れ落ちる。元々、俺のエビワラーは物理防御が紙だ。

 きあパンやマッパの威力から見ても、向こうの特性はおそらく『てつのこぶし』だろう。おまけに鍛え抜かれたシバのエビワラーだ。純粋な攻撃力も俺のエビワラーより上と見ていい。そんな奴の威力270技をもろに顔面に受けて立っていられるはずが――

 

「ほう、まだ倒れないか」

 

 ――エビワラーは倒れていなかった。

 右拳で地面を叩き、崩れそうになる体を無理矢理立ち上がらせている。しかし、いつ戦闘不能になってもおかしくない状態だった。

 正直、トレーナーである俺も驚いている。

 仮に防御の個体値がVでも、あの威力のパンチをくらったら立っていられないはずだ。倒れていないのは、偏に負けたくないという意地である。

 

 これだけの意地を見て、燃えない男がいるはずがない。シバに頼んで少しだけタイムをもらい、エビワラーに駆け寄る。まだ目は死んでいない。ならば、俺が考えついた唯一勝てる策をエビワラーに授けることにした。

 

 時間にして、ほんの数十秒の作戦タイムを終え、俺がトレーナーポジションに戻ると、俺のエビワラーがシバのエビワラーを挑発するように手招きする。

 こちらはもう動けない以上、罠であるのは重々承知しているはずだ。だが、四天王という肩書きが持つ絶対的な自信が、シバのエビワラーを進ませる。

 左拳を高く構え、シバのエビワラーが右拳に力を集中させた。こちらも右拳に力を集中させて構える。隠すつもりのないカウンターの構えだった。

 

「面白い」

 

 シバがそう呟くと、そのままエビワラーに『きあいパンチ』を指示する。こちらもまた、『みきり』で攻撃をかわし、『カウンター』からの『きあいパンチ』で反撃に移った。

 ここまでは、完全に先程までの焼き直しである。

 当然、このままではシバのエビワラーの左拳で攻撃を防がれることになるだろう。違うのはここからだ。シバのエビワラーの左拳が動くのと同時、俺のエビワラーが『こうそくいどう』を発動させ、パンチのスピードをさらに二段階上昇させる。

 向かってくるパンチの速度が変わったことで、シバのエビワラーも防御のタイミングを外されたのだろう。ようやく俺のエビワラーの拳が顔面に直撃し、そのままシバのエビワラーを岩山の壁に叩き付けた。

 

 ぶっ飛ぶシバのエビワラーを見ながら、俺のエビワラーが膝をつく。文字通り、全てのパワーを使い切ったのだろう。やりきったという表情をしていた。

 しかし、これはシバがこちらに付き合ってくれたからこそ成功した策だ。冷静に『みきり』を使われたら防がれていたし、『インファイト』で乱打戦を仕掛けられても勝てなかっただろう。強者である向こうの余裕につけ込んだ姑息な手段だった。

 

「凄まじいパワーのカウンターだ。これほどの威力を持ったパンチは今まで見たことがない。だが――」

 

 ――シバのエビワラーもまた立ち上がった。

 膝を震わせ、瓦礫を支えにする姿はダメージの大きさを表している。それでも、四天王のポケモンとして負けることは許されない。シバのエビワラーの目はそう訴えていた。

 

 シバのエビワラーがファイティングポーズを取ったことで、俺のエビワラーもまた立ち上がり拳を構える。

 しかし、決着はつかなかった。俺とシバのエビワラーが構えた瞬間、ぶつかった岩山が崩れ、地面から顔に十字傷の入った巨大なイワークが出てきたのだ。

 

 咄嗟に俺とシバがエビワラーをボールに戻すと、そのままイワークが襲いかかってきた。

 当然、逃げるしかないのだが、ここは自然の岩山フィールド内なので逃げるには崖を登る必要がある。

 だが、俺達とイワークの距離を考えれば、とてもそんな時間はなかった。

 

 逃げられない以上は迎撃するしかない。

 シバを後ろに下げ、マサラ式肉体言語術――マサラ正拳突きでイワークの『たいあたり』を迎え撃った。

 

 まさか人間に迎撃されるとは思わなかったのか、思わぬダメージにイワークが怯む。しかし、まだ暴れるつもりのようなので、大人しくなるまで追撃することにした。

 再度、イワークに襲い掛かろうとすると、様子を見ていたシバが制止の声をかけてくる。

 何だと思って振り向くと、「イワークの体に何か異常が起きている」と言う。そのまま、前にいた俺を無理やり後ろに下げると、いきなりイワークの体を調べ始めた。

 

 一瞬、近づいてくるシバを警戒したイワークだが、「何も恐れることはない。俺に身を委ねよ」と言われると、シバが攻撃してこないとわかったのか、させるがままにしている。力を使わないコミュニケーションに関しては、シバの方が一枚上手のようだった。

 そのまま、シバがイワークを形成する岩と岩の間を調べていくと、尻尾近くの岩の隙間に何かを見つけたのか、その異物を引きずり出そうとしている。

 出てきたのはサンドパンだった。

 通常なら有り得ないことだが、巨大過ぎるが故に隙間に入ってしまったのだろう。ここに来たのも、痛みをどうにかして欲しかったのかもしれない。

 

 異物がなくなったことにより、暴走も収まったのか、笑顔を見せるイワーク。

 そのまま詰まっていたサンドパンが逃げていくのを見送ると、シバがイワークに自分と一緒に来ないかと声をかけていた。

 イワークも自分を助けてくれたシバに懐いたのか、素直に頷いてゲットされている。ぶっちゃけ、俺がゲットしたかったのだが、助けたのはシバなので諦めるしかなかった。

 

 ふん! いいもんね! 俺はオレンジ諸島でクリスタルのイワークをゲットするし!

 

 

 




 原作との変化点。

・第68話『植物園のクサイハナ』より、フシギダネやゲストキャラのラブコメを見守った。
 アニメのサトシ君はお子様なのでその辺の機微に疎いが、ニューサトシは普通に気付いた。

・第69話『ポケモン・ザ・ムービー』、第70話『ニャースのあいうえお』がスキップされた。
 キャンプには参加しなかったので映画の話もなくなった。それにより、映画を見る話もなくなった。

・第71話『四天王シバ登場』より、シバとバトルをした。
 レベル差はおよそ10。技術の差もあり、普通にボコボコにされた。シバがもっと容赦なく戦っていれば、一矢報いることも出来なかっただろう。


 現在ゲットしたポケモン。

 ピカチュウ Lv.50

 ピジョット Lv.45

 バタフリー Lv.44

 ドサイドン Lv.50

 フシギダネ Lv.47

 リザードン Lv.51

 ゼニガメ  Lv.47

 クラブ   Lv.44

 エビワラー Lv.46→47

 ゲンガー  Lv.48→49

 オコリザル Lv.45

 イーブイ  Lv.32→36

 ベトベトン Lv.42

 ジバコイル Lv.44

 ケンタロス Lv.43

 ヤドラン  Lv.43

 ストライク Lv.43

 トゲピー  Lv.4→6

 プテラ   Lv.43

 ラプラス  Lv.41→42

 ミュウツー Lv.70

 バリヤード Lv.40→41


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