ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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♯266 『はて? テイスティングタイムとは?』

 14歳 δ月θ日 『サンヨウジム ガチ戦 VSポッド・コーン・デント 後編』

 

 予定通り、二連勝したが当然のように三番手のデントを引きずり出してバトルを続行する。これまでの傾向から見ても、切り札はヤナップの進化系であるヤナッキーでまず間違いない。後は、もう一体が誰でどんなバトルをしてくるか――と、考えていると、デントと変わって審判になったポッドが試合開始を告げた。

 

 デントは開幕、ドレディアを出してくる。ドレディアはくさ単タイプで非常に美しいポケモンだ。ルージュラなどと同じく♀しかいないポケモンで、正直バトルよりも煌びやかなコンテストの方が似合ってそうな容姿をしている。

 

 こちらはハヤシガメを出していく。

 

 いろいろな苦労を経て自分のスタイルを掴んだハヤシガメは確実に強くなっている。当然のように開幕、『からをやぶる』で防御と特防を一段階下げる代わりに、攻撃・特攻・素早を二段階上げていった。

 重量はそのままなので、ナエトルの時のような細かい機敏な動きは出来ないが、それでもスピードが上がったことで得意の高速戦が再び出来るようになって、重量級のパワーを相手に押し付けるバトルを新たに会得している。

 

 こちらが『からをやぶる』を使ったのを見て、デントも『ちょうのまい』を指示してきた。まるで花が舞うかのような美しい舞で、特攻・特防・素早が一段階ずつ上がっていく。

 

 お互いに積み技で様子見――とはいえ、ドレディアの素早種族値はハヤシガメの三倍近くある。いくらこちらが素早を上げた所で、追いつくのはそう簡単なことではない。

 しかし、そんなことはわかりきっていた。

 まだハヤシガメがナエトルだった頃、自慢のスピードが通用せずに打ちひしがれたのは無駄な経験ではない。真っ向からステータスをぶつけ合うだけがポケモンバトルではないのだ。

 

 ハヤシガメに『ヘビーボンバー』を指示する。この技は相手との重量差があればあるほど威力が上がる技であり、ハヤシガメは基本的に100キロ近く重量があり、ドレディアは20キロもない。優に最大ダメージが出せる状況だった。

 

 ドレディアに向かって走り、ジャンプしてプレスをしていく。とはいえ、流石にデントもただ見ているだけではなかった。回避を指示して、ドレディアに攻撃を避けさせる。

 だが、避けられるのは最初から考慮の内だ。

 ハヤシガメの体が地面にぶつかると同時に、『じならし』に技を派生して『ヘビーボンバー』の威力を『じならし』にプラスしていく。避けたと思った所に思わぬ追撃を受け、流石のデントも驚いていた。

 

 しかし、くさタイプにじめんタイプは効果今一つということもあり、ダメージは1/4程しか与えられてない。それでも先制のダメージを与えることに成功している。

 

 ならばと、デントは『かふんだんご』を指示してきた。むしタイプ威力90の特殊技だ。タイプ不一致だが、『ちょうのまい』でステータスも上がっているし、くさ単タイプのハヤシガメにむし技は効果抜群だった。この上ない技のチョイスと言えよう。

 とはいえ、真正面からの技をそう簡単に受けてやるほどこちらも甘くはない。上がったスピードを駆使して、ハヤシガメがフィールドを駆け回っていく。

 

「鈍足なはずのハヤシガメで敢えての高速戦闘とは……! サトシのバトルは本当に驚きと新鮮さが上手く調和しているね!」

「ビックリ箱みたいなバトルだとはよく言われる」

「ビックリ箱! まさに、言い得て妙だ!」

 

 だが、まだまだビックリするのはこれからだ。再び『からをやぶる』でステータスを上げる。スピードが上がれば上がる程、有利になるのはこちらだ。

 

 しかし、デントもされるがままじゃなかった。

 

 こちらがステータスを上げる一瞬の隙を突いて、『フラフラダンス』を指示してくる。

この技は見た相手を混乱状態にする特殊技だ。当然、相手の動きにすぐ対応できるようにハヤシガメはしっかりとドレディアを見ており、ばっちり混乱状態になってしまった。

 

 ぐぬぬ、出鼻をくじかれたが、まだまだバトルはこれから――一度、ハヤシガメを戻してジュカインを出していく。

 

 この交代の間に、デントはしっかりと二度目の『ちょうのまい』を指示しており、ドレディアもかなりステータスが上昇してしまっていた。

 だが、単純な速度で負けていたとしても、素のスピードが速く高速戦闘に慣れているジュカインなら、ドレディアの動きにも対応できるだろう。

 

 デントは再び、『かふんだんご』を指示してくる。しかし、舞で自身のスピードが上がっていても、技の速度自体が上がっている訳ではない。

 相手の『かふんだんご』を躱しながら、ジュカインが距離を詰めていく。この身のこなしは高速戦が出来るようになったとはいえ、重量級のハヤシガメには出来ない動きだった。

 

 すれ違いざまに『れんぞくぎり』を決めていく。

 

 単純な技の威力なら『シザークロス』の方が上だが、ジュカインならば攻撃を連続で当てるのは苦ではないと判断しての『れんぞくぎり』チョイスだ。

 

 デントは、それなら――と、再び『フラフラダンス』を指示してきた。だが、一度見せた技がそう何度も通用すると思って貰っては困る。

 ジュカインに目を閉じるように指示を出す。『フラフラダンス』はその踊りの動きを相手に見せることで混乱状態に追い込む技だ。踊りを見なければ混乱にはならない。

 

 とはいえ、相手が見えなきゃ攻撃が出来ない。

 

 ならばどうするか――簡単だ、相手の位置を把握するのに必要なのは視覚だけではなかった。ジュカインは耳を澄まし、ドレディアが踊ることで発生する音を拾って距離を詰めさせる。

 

 それを見た瞬間、デントはなりふり構わずにドレディアをボールに戻した。再び『れんぞくぎり』の刃がドレディアにぶつかる寸前――光がドレディアにぶつかって、その姿が消える。

 

 苦笑いを受けるデントを見ながら、ジュカインはこの隙を突いて『こうそくいどう』でスピードを上げていく。デントは、やはり他の二人と同じく、切り札にヤナッキーを出してきた。

 アニメでもゲームでも使っていたヤナップの進化系――基本的な種族値は、バオッキーやヒヤッキーと同じだが、果たしてデントはこのヤナッキーをどういう風に育てているのか。油断はできない。

 

 まずは挨拶代わりに、『れんぞくぎり』を指示する。トントンと自身の調子を確認するように、ジュカインがその場で軽くジャンプすると、その姿が掻き消えた。

 しかし、デントは焦ることなく、『ニードルガード』を指示する。同時に、ジュカインの腕の刃が、ヤナッキーの展開した針の盾に阻まれた。『ニードルガード』はくさタイプ版の『まもる』と言っていい技で、相手の攻撃を必ず防ぐと共に、直接攻撃してきた相手に最大HPの1/8ダメージを与えるという効果を持っている。

 

 だが、『まもる』系の技は確かに防御としては破格の性能を持ってはいるものの、ゲームと違って発動タイミングが難しいという欠点もあった。

 相手の攻撃に合わせなければ、守りは透かされるだけに終わる。故に、『こうそくいどう』でスピードの上がったジュカインの攻撃を防ぐのはそう簡単なことではないのだが、デントは笑みを浮かべたまま軽く攻撃をいなして見せた。

 

 ジュカインが『ニードルガード』の針の迎撃を受けて、頬に傷が付く。しかし、『まもる』系の技は連続で発動すると成功率が下がる欠点があった。

 それは『ニードルガード』も同様であり、ジュカインはその隙を突くべく、すぐに再び体勢を立て直して、『れんぞくぎり』の構えに入っていく。

 

 そのまま攻撃が命中すると同時に、今度はヤナッキーの姿が掻き消えた。『みがわり』――否、『かげぶんしん』だ。フィールドにヤナッキーの分身が現れて、こちらを惑わせてくる。

 分身を消すのはそう難しいことではないが、問題は一拍置いたことで再び『ニードルガード』が使用可能になったという点だ。下手に攻撃を仕掛ければ、また反撃されるのは目に見えている。

 

 戦いにくい――デントは特に凄い攻めをしているという訳ではないのに、何故かこちらが追い詰められていた。

 

「やるな。デント」

「単純な攻撃技の打ち合いだけがポケモンバトルじゃない。紅茶がそのブレンドによって味が変わるように、戦い方一つで相手の選択肢を変えることだって出来るんだよ」

 

 流石はジムリーダーだけのことはある。決して舐めていた訳ではないが、やはりただのポエマーじゃなかったな。

 

「ポットが相手に求めるのは情熱とパワー。コーンが相手に求めるのは冷静さと知識。そして、僕が相手に求めるのは技術と、トレーナーとポケモンの絆だ。ポケモンだけが強くても、トレーナーだけが凄くても僕は倒せないよ」

「……そうかい」

 

 思わず、笑みを浮かべる。

 

 絆――それを、俺に試す?

 

「おもしれぇ」

 

 ならば、見せてやろう。俺とポケモン達の絆を。

 

 ジュカインに二度目の『こうそくいどう』を使わせて、スピードをさらに上げさせる。

 そして、今度は、『つばめがえし』を指示した。この技は必中技故に、何体分身が出ていようと本体に向かって追従していく。その効果を逆手にとって本体を補足する。

 

 だが、デントは変わらぬ笑みを浮かべていた。いや、正確には少し違う。俺がどうやって、この状況を突破するのか期待するような目でこちらを見ている。

 

 先程よりも高速で接近するが、デントもヤナッキーも決して技の発動タイミングを間違えなかった。こちらが『つばめがえし』を振り切るモーションに合わせて、『ニードルガード』を発動してくる――ここだ。

 

 腕を振り始めると同時に、腕の刃から空気の刃が飛び出して盾にぶつかっていく。同時に、ヤナッキーを守るための盾が消え去り、『つばめがえし』が命中してヤナッキーが吹き飛んでいった。

 

「驚いた! まさか、『しんくうは』を使って、無理やり技の間に技を差し込んで来るなんて! とても普通じゃない……熟成されつつも尖った味わいというべきか、まさに破天荒なテイストだよ!」

 

 とはいえ、そう難しいことは何もしていない。否、それなりに難しい技術ではあるが、二つの技を同時に出して、先に『しんくうは』を発動させてから『つばめがえし』を当てただけだ。

 技の仕組みは『あなをほる』の待機中に、他の技を挟むのとほぼ同じである。今回は、『つばめがえし』のモーションから連動させ、『しんくうは』を出し、そのまま『つばめがえし』を決めた。

 

 しかし、『あなをほる』の時のように、他の技を仕込む時間があった訳ではないのもあり、無理をしている分、どうしても技の威力が下がってしまっている。

 だが、『ニードルガード』は、どんな威力の攻撃でも当ててしまいさえすれば消えるのだから関係なかった。『つばめがえし』の威力も多少は下がってしまったが、それでも弱点の一撃で体力は多少なりとも削れているはずだ。

 

 デントも驚いているが、ヤナッキーも予想外と言わんばかりの顔で起き上がって来る。やはり、この程度じゃまだ余裕を奪うまではいかないか。

 

 けど、これで『ニードルガード』だけでこちらを追い詰めることは出来なくなった。デントも、「じゃあ、次だ」と、新たな技を指示してくる。

 デントが新たに指示してきたのはどく技の『ダストシュート』だった。ハヤシガメもジュカインもくさ単タイプなので、どく技は弱点になってくる。

 

 しかし、『こうそくいどう』を二回詰んだジュカインならば、単純な攻撃は回避余裕だ。

 半身になるだけで攻撃を回避し、デントも「それなら、これでどうだい?」と、今度は『かげぶんしん』で数を増やしてから攻撃を仕掛けてくる。

 

 増えた分身達による、四方八方からの『ダストシュート』――だが、実体は一つだけだ。

 

 向かってくる毒攻撃を視界に入れながら、『つばめがえし』を発動する。同時に、必中効果でジュカインの体が右に流れた。つまり、相手の本体は右寄りに存在するという証明だ。

 それが分かった時点で、ジュカインに技をキャンセルさせて左に走らせる。左からの攻撃がジュカインに命中するが、それらはすべて幻影でありダメージを与えるモノではない。

 

「『つばめがえし』をレーダー代わりに攻撃を回避するとはね……! いい隠し味だ!」

 

 数が絞れれば、本体を見つけるのはそう難しくなかった。再び、『つばめがえし』と『しんくうは』の同時技で、ヤナッキーに攻撃を仕掛けていく。

 

 デントも『ニードルガード』で攻撃を防いだ――が、防いだのは先程と同じく『しんくうは』であって、二段目の『つばめがえし』がまだ残っている。

 

「おっと、ダメダメ! どんないい配合の紅茶も、繰り返せば飽きが出る。それじゃ、僕には勝てないよ!」

 

 しかし、同じ技がそう何度も通じるはずもなく、ヤナッキーは二段目の『つばめがえし』を両手で白羽取りし、動きが止まったジュカインに『ダストシュート』をぶつけてきた。

 

 動きを止められては流石に避けられない。ジュカインが弱点攻撃を受けて苦悶の表情を浮かべる。毒状態にならなかったのはラッキーだった。

 

 成程な。動きが早くて当てられないのであれば、動きを止めてしまえばいいってことか。『ニードルガード』による防御で、ジュカインの攻撃位置を捕捉し、威力の下がっている『つばめがえし』を受け止めるとは、デントのやつもなかなか味なことをしてくれる。

 

 ――ジュカインをボールに戻す。

 

 ジュカインは確かに強いが、その本領が発揮されるのは同じようなタイプの真っ向勝負でだ。こういうじっくり受けられるタイプの相手はあまり得意ではない。いずれは克服も必要だが、相手が受けタイプならばハヤシガメの方が上手く立ち回れるだろう。

 

 ハヤシガメに再び『からをやぶる』を指示する。同時に、デントは『ダストシュート』を指示してきた。弱点攻撃で少しでもダメージを与えようという狙いだろう。

 積み技は足を止める都合上、どうしても回避に難が出る。舞系の技は踊りに合わせた回避も出来るが、『からをやぶる』はその名の通り、殻を破ってステータスを上げるので、回避をするだけの余裕はない。

 

 運よく毒状態にはならなかったが、それでも体力が軽く1/4以上削れた。タイプ不一致とはいえ威力120は伊達ではない。物理技じゃなかったらダメージはもっと高かっただろう。

 

 だが、これでこちらも準備は万端だ。防御と特防が一段階下がった代わりに、攻撃・特攻・素早は二段階上がり、ハヤシガメのエンジンもかかっている。

 再び、『ヘビーボンバー』を指示していく。ハヤシガメとヤナッキーの体重差はおおよそ1/3程だ。威力は80程まで下がるが、それでも火力が上がっているので直撃は受けるのは危険だった。

 

 デントは『かげぶんしん』を指示して攻撃を回避させてくる。ならば、そのまま『じならし』に繋げて、範囲攻撃で一気に分身を消してやろう。

 

 ハヤシガメが地面に衝撃を与える――同時に、デントは『ニードルガード』を指示してきた。『ニードルガード』の反射ダメージは直接攻撃にしか効果はないが、攻撃を防ぐ効果は適用される。本体以外の影は消えてしまったが、ヤナッキーは攻撃を受けきっていた。

 

 ここだ。

 

 ハヤシガメの『じならし』によって、地面に落ちていた『かふんだんご』の花粉が舞い上がり、ハヤシガメの姿を一瞬隠す。

 普段のハヤシガメであれば間に合わないが、『からをやぶる』で速度が二段階上がっているからこそ、ここからの追撃が間に合った。

 

 こちらを見失ったヤナッキーの一瞬の隙を狙い、最後の技である『すてみタックル』をぶち当てていく――この瞬間を狙った完全な不意打ちだ。デントもヤナッキーも反応は出来ても対処できない。

 

 攻撃が二段階上がったハヤシガメの一撃でヤナッキーが吹き飛んでいく。タイプ不一致だが、火力がこれだけ上がればダメージは大きいだろう。

 こちらも反動でそれ相応のダメージを受けたが、このチャンスを生かさない手はなかった。この間に二度目の『からをやぶる』で火力とスピードをさらに上げていく。防御や特防が二段階下がるが、攻撃・特攻・素早が四段階上がれば、次の一撃でトドメも視野に入って来る。

 

「まさか……僕の『かふんだんご』を目くらましに使ってくるなんて……!」

「使えるものは何でも使う主義なんだ」

 

 ヤナッキーが何とか体を起こす。パッと見、残り体力は1/3あるかどうかくらいか。

 ジュカインの『つばめがえし(威力低)』を受けた後とはいえ、ハヤシガメの火力の上がった一撃はタイプ不一致でもかなりのダメージを与えることが出来たらしい。

 

 ここで、デントはヤナッキーを戻した。

 

 このまま真正面からのぶつかり合いは不利だと判断したようで、再びドレディアを出してくる。

 しかし、こちらは既に攻撃・特攻・素早が四段階上がっていた。代わりに、防御・特防が二段階下がってしまっているが、『すてみタックル』の反動を入れても体力はまだ半分近く残っているし、ドレディア相手なら一撃で倒されることはないと見て良い。

 

 と、考えていると、デントも新たな一手を打ってきた。先程は温存していたらしい、『ちょうのまい』と『フラフラダンス』のコンボで、バフとデバフを同時に使ってきたのだ。

 技を掛け合わせるのとはまた違い、同じ踊りで二つの技の効果を同時に使っている。

 前に、ミュウツーが『ビルドアップ』と『めいそう』を同時使用したが、ステータス関係の技を同時使用するのはかなりの高等技術だ。デントの場合はバフとデバフの同時使用だが、その難易度は同等と言って良いだろう。

 

 ドレディアが特攻・特防・素早を一段階上げると同時に、ハヤシガメが混乱状態になる。

 

 これが『フラフラダンス』だけであれば技の開始と同時に距離を取れたが、同時技にしたことでダンスの細部が変わっていて、技の同時使用だと気付くのが一瞬遅れてしまった。

 再び混乱状態になるハヤシガメだが、俺は迷わずハヤシガメをボールに戻す。上がったステータスに未練を残すのは二流だ。これまでの戦いから見ても、デント相手に欲を見せたら付け込まれるのは目に見えている。

 

 再び、ジュカインを出していく。

 

 すると、デントもまた『かふんだんご』を指示してきた。先程のバトルの焼き直しか――と、思いつつ、回避して距離を詰めさせる。

 そのまま、必中の『つばめがえし』で弱点を突きつつ、隙を見て『こうそくいどう』でスピードを上げていくつもりだったが、『つばめがえし』が直撃した瞬間。ドレディアがジュカインの腕を掴んで、そのまま抱き着いてきた。

 

 デントがにやりと笑みを浮かべて『はかいこうせん』を指示してくる。しまった――肉を切らせて骨を断つ。『かふんだんご』は、こちらをおびき寄せるためのブラフだったのか。

 

 タイプ不一致とはいえ、ゼロ距離での『はかいこうせん』を受けてジュカインも大ダメージを受ける。だが、『はかいこうせん』には技の後、少しの間動けなくなる弱点があった。

 ジュカインが立ち上がり、動けないドレディアに『れんぞくぎり』をぶつけてUターンし、さらに二発目をぶつけて火力を上げていく。向こうの残り体力は僅か――このまま、押し切ろうとしたが、デントは笑みを浮かべて『かふんだんご』を指示してきた。

 

 しかし、その『かふんだんご』をドレディアは自身に向けて放つ。

 

 そうか、『かふんだんご』には、味方に使った時、体力の半分を回復させる回復技としての効果を持っている。この世界において、味方とは自分自身も当然含まれるため、『かふんだんご』を回復技としても使用することが出来るんだ。

 

 くっ、これでジュカインが与えたダメージも半分以上回復されてしまった。何とか『れんぞくぎり』の最終段を当ててダメージを取り戻そうとするも、とどめになるはずの一撃はなんとかドレディアの体力を半分削るか削らないか程度のダメージに留まっている。

 

 逆にジュカインは、先程のヤナッキーとのバトルで受けたダメージに、先程の『はかいこうせん』をくらって体力が1/3まで削れていた。もし、また『はかいこうせん』か『かふんだんご』の直撃を受ければ戦闘不能になってもおかしくない。

 だが、ここでジュカインを戻しても、ハヤシガメでは『からをやぶる』を使っている間に、『かふんだんご』で体力を回復されかねなかった。こうなれば、一気に畳みかけて勝負を決める以外に手段はない――と、焦る頭を横に振って冷静になる。

 

 落ち着け。

 

 熱くなるのはいい。でも冷静さは失ってはダメだ。ポケモンバトルは勢いも大事だが、それと同じかそれ以上に冷静な戦術や戦略が求められる。

 デントのトレーナーとしての能力は一流だ。ここで、俺が焦って馬鹿みたいな真似をしたら勝負が一気に決まりかねない。考えろ、考えるんだ。ここから、デントはどうするか、俺はどう立ち回るべきか、考えて考えて考えて考えまくれ。

 

「ジュカイン! 『つばめがえし』!!」

「ドレディア! 『かふんだんご』だ!」

 

 ――結果、デントはこちらの読み通りに動いた。

 

 ドレディアの体力は約半分。対して、こちらは『れんぞくぎり』、『こうそくいどう』、『つばめがえし』、『しんくうは』と全ての技を使い切ってしまっている。

 

 そして、その中でドレディアの体力を一撃で持っていける技はない。だが、唯一『つばめがえし』だけは急所に当たればワンチャン、ドレディアを倒せる可能性があった。

 こちらがもし『れんぞくぎり』や『しんくうは』を選んでいれば、デントは喜んでとどめを刺しに来ただろう。しかし、『つばめがえし』だけは、先程のように技を受けて捕まえようとした場合、万が一急所に当たればドレディアが先に倒れかねなかった。

 

 なら、どうするか。

 

 もし、これがおおざっぱな性格のトレーナーなら、気にせずとどめを刺しに来ただろうが、デントはそういうタイプじゃない。これまでのバトルで、俺の意外性を見せつけられたデントは万が一を警戒しているはずだ。

 だからこそ確実性を求めて回復を狙う。

 先に体力を回復して、体力をほぼマックスにしてしまえば、仮に『つばめがえし』が急所に当たろうが体力は削り切られないし、通常のダメージなら体力に余裕が出来る。次を考えれば、デントは『かふんだんご』を選んでくると思っていた。

 

 当然、読んでいるということは対策も出来ているということで、ジュカインは俺の思考がわかっていると言わんばかりに、ドレディアが自身に向かって放とうとした『かふんだんご』を『つばめがえし』のモーションから出した『しんくうは』で切り裂いた。

 

 ドレディアを直接狙った場合、距離の問題でいくらジュカインでも回復前には間に合わない。しかし、『じこさいせい』や『なまける』と違って、『かふんだんご』の回復には技を自分にぶつけるモーションが存在する。

 その僅かな時間のおかげで、『かふんだんご』がドレディアに直撃する前に、『かふんだんご』そのものを狙うことができた。ドレディア自身には届かなくても、そのドレディアの前に存在する技自体にはギリギリで手が届く。

 

 先程も使った『つばめがえし』のモーションからの『しんくうは』で、『かふんだんご』そのものを打ち消していったのだ。

 そして、回復の一手を潰され、予想外のデントは動きが止まり――ドレディアも隙だらけになっている。とどめを刺すならここしかなかった。

 

 ジュカインが、身を翻して追撃の『つばめがえし』を放つ。デントが警戒していたその技は、隙だらけのドレディアの急所を貫き、一撃で残り体力を削って戦闘不能まで持っていった。

 

 同時に何やらデントが興奮したように、「こっちの動きを全て読んで尚、急所への一撃まで決めてくるとはね……お見事! イッツ、テイスティングタイム!」と声を上げる。

 

 はて? テイスティングタイムとは?

 

「流石は僕らの本気を求めるだけあって、君とポケモン達のテイストは素晴らしい! バトルの内容も文句なしの深みが出ていて、攻撃パターンも多彩で味わい深い。まさに最高のフレーバーだよ!」

 

 は? あぁ、どうも? 多分褒められてる?

 

 よくわからないが、ポケモンソムリエ語を話しながら、デントは倒れたドレディアをボールに戻して「ご苦労様」と労いの声をかけた。

 同時に、こちらもジュカインを戻す。先程のバトルで、ジュカインも肩で息をしている。苦手なヤナッキーを相手にするなら、少し休ませておきたい。

 

 そうして、デントがヤナッキーを、俺がハヤシガメを出してバトルは一気に終わりに向かっていった。

 

 向こうのヤナッキーは、大体残り体力が1/3程。技も『ニードルガード』、『かげぶんしん』、『ダストシュート』と三つ使っている。

 対するこちらのハヤシガメは、体力は半分くらいで、『からをやぶる』、『ヘビーボンバー』、『じならし』、『すてみタックル』と技は全て見せてしまっていた。

 

 ジュカインももう全ての技を使い切っているため、手の内は完全にバレていると言って良い。後はデントがどんな隠し玉を残しているか。

 

 だが、何はともあれ、まずは『からをやぶる』だ。スピード戦が大好きなハヤシガメにとって、この技はエビワラーにとっての『こうそくいどう』と同じである。

 ダメージを受けるとわかっていても使わないといけない技であり、デントも当たり前のように『ダストシュート』でダメージを与えてきた。これで残り体力は、互いにほぼ五分。

 

 しかし、これで準備は整った。

 

 とはいえ、向こうには『ニードルガード』がある以上、迂闊に動けば防がれる――と、考えていると、いきなりヤナッキーが大きくジャンプする。『アクロバット』だ。

 

 ヤナッキーが覚えられる威力55の物理ひこう技。それも『アクロバット』は持ち物を持っていない時、威力が倍になる効果を持っており、この世界のポケモンバトルではそれこそメガストーンくらいしか持ち物らしい持ち物を持たせない。

 よって、デントのヤナッキーの『アクロバット』も当然威力110の大技となっていた。タイプ不一致ではあるが、こちらも『からをやぶる』のデメリットで防御・特防が下がっており、今のハヤシガメの残り体力では受けきれるかどうか怪しい。

 

 回避――いや、ヤナッキーの素早種族値は101だ。いくら、『からをやぶる』で素早を二段階上げていても、元が鈍足なハヤシガメでは逃げきれるか微妙だった。

 それならば一か八か、『すてみタックル』で反撃するしかない。『からをやぶる』は素早だけではなく、攻撃・特攻も二段階上がる。下手に逃げ回るよりも勝ちの目は高いだろう。

 

「これで決めるよ! ヤナッキー、『アクロバット』!!」

「踏ん張れ、ハヤシガメ! 『すてみタックル』だ!!」

 

 先に仕掛けてきたヤナッキーの『アクロバット』が直撃する。ハヤシガメも『すてみタックル』で踏ん張るが、上から体重をかけているヤナッキーの方が体勢が良かった。

 

 受けきれない――デントもそう判断したようで笑みを浮かべる。だが、勝負というものは最後までわからない。勝利の女神は常に、諦めないものに微笑みかけてくれるものだ。

 

 ハヤシガメの体が輝く。

 

 これまでの努力、負けたくないという意思。それらがハヤシガメをドダイトスへと進化させる。

 進化したことで重量が増し、種族値も上昇した。受けきれないはずの攻撃を受けきり、ドダイトスは返しの『すてみタックル』でヤナッキーを吹き飛ばす。とはいえ、残り体力が限界だったことも有り、反動ダメージでドダイトスがその場に倒れた。

 

 しかし、進化してパワーの増したドダイトスの『すてみタックル』を受けて、ヤナッキーもまた完全に戦闘不能になってしまっている。

 

 これで、デントの手持ちは全て戦闘不能になり俺の勝利が決定した。とはいえ、流石は本気のジムリーダーだけあって、デントだけでなく、ポッドやコーンもとんでもない強さだったな。

 

 進化したドダイトスの方へ行くと、ゆっくりと体を起こしている。進化したことで、またしばらくはその重量差に慣れるのが大変だろうが、じめんタイプが追加されたことで火力の面では間違いなく強くなっているはずだ。

 これまで以上に、『からをやぶる』を使った戦術は大事になって来る。この経験を糧に、次もよろしく頼む――と、声をかけると、ドダイトスも満足そうな顔で頷いていた。

 

 そんなこんなで俺の勝利なので、改めてサンヨウジムを制した証であるトライバッジを受け取る。

 前回のシンオウリーグで、チャンピオンリーグの挑戦権は既に更新されているため、別にイッシュリーグには挑戦しなくてもいいのだが、それはそれとしてやはりジムバッジは集めたいので全てのジムを回るつもりだ。

 

 ラティが「ゲットだぜ」を待っているような気がしたが、俺は安売りはしない男だった。ラティもわかってはいたようだが、「けち!」と文句を言っている。

 アイリスもまた俺のバトルを見てかなり勉強になったと頷いており、出来れば今度はドラゴンタイプを使ってジム戦をして欲しいとお願いされた。とはいえ、手持ちのドラゴンタイプは未熟な奴らが多いから、公式戦デビューはいつになることやらという感じである。

 

 

 




 原作との変化点。

・かふんだんごの効果。
 シングルでも使えるようにデントが調整した。よって、自分に当てると回復。敵に当てるとダメージの最強技になっている。

・ドダイトスに進化した。
 原作と大分遅れて進化した。からやぶのおかげで、高速戦闘も出来て大分戦い方が定まってきている。

・デントから高評価を受けた。
 サトシリセットされていないのでちゃんと評価を受けている。


 現在ゲットしたポケモン

 ピカチュウ Lv.66

 ピジョット Lv.61

 バタフリー Lv.61

 ドサイドン Lv.64

 フシギバナ Lv.61

 リザードン Lv.66

 カメックス Lv.61

 キングラー Lv.61

 カモネギ  Lv.61

 エビワラー Lv.61

 ゲンガー  Lv.63

 コノヨザル Lv.61

 イーブイ  Lv.61

 ベトベトン Lv.61

 ジバコイル Lv.61

 ケンタロス Lv.61

 ヤドラン  Lv.61

 ハッサム  Lv.61

 トゲキッス Lv.61

 プテラ   Lv.61

 ラプラス  Lv.61

 ミュウツー Lv.76

 バリヤード Lv.61

 イワーク(オレンジ諸島の姿) Lv.60

 カビゴン  Lv.61

 ニョロトノ Lv.60

 ヘラクロス Lv.60

 メガニウム Lv.59

 バクフーン(ヒスイの姿) Lv.60

 ラティアス Lv.56

 ヘルガー  Lv.58

 ワニノコ  Lv.58

 ヨルノズク(色違い) Lv.57

 カイロス(部分色違い) Lv.57

 ウソッキー Lv.58

 バンギラス Lv.62

 ドンファン Lv.58

 ギャラドス(色違い) Lv.58

 ミロカロス Lv.53

 ラグラージ Lv.53

 オオスバメ Lv.53

 ジュカイン Lv.53→54

 ヘイガニ  Lv.53

 フライゴン Lv.58

 コータス  Lv.51

 サーナイト(色違い) Lv.46

 オニゴーリ Lv.51

 ワカシャモ Lv.51

 メタグロス(色違い) Lv.49

 エテボース Lv.47

 ムクホーク Lv.46

 ハヤシガメ→ドダイトス Lv.46→47 NEW!

 ブイゼル  Lv.47

 ムウマージ Lv.50

 カバルドン LV.46

 ミカルゲ  Lv.57

 グライオン Lv.45

 ロトム   Lv.47

 ユキノオー Lv.43

 フカマル  Lv.37

 ゾロア(ヒスイの姿) Lv.5

 タツベイ  Lv.35

 カイリキー(変異体) Lv.32

 ミジュマル Lv.10

 ポカブ   Lv.10


 とりあえず、初回連続更新はここまで。まぁ、サービスがいいとか活動報告では言われてたけど、序盤のバトル描写3連発はくどくなるから一気に更新したかったってだけなんだよね(笑)


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