ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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♯269 『苦しい時ほど笑え』

 14歳 δ月ψ日 『シッポウジム ガチ戦 VSアロエ』

 

 中一日を調整として、早速ガチ戦のためにシッポウジムへと足を運ぶと、アロエに何故か本棚で好きな本を選べと言われた。そういえば、ゲームでも本棚を調べると先に進めるシステムだったっけか。

 

 ゲームだとどこの本棚が当たりだったか――と、思い出そうとすると、アロエが何やら意味深に本をお勧めしてくる。

 試しにその本を取ってみると、試合場に進む階段が現れた。同時にアロエが、何やら笑顔で頷いている。

 聞けば、本の選び方によって、トレーナーの性格やバトルスタイルが自ずと見えてくるということらしい。後で聞いた所、俺は『挑発に乗りやすいタイプのトレーナー』と、思われたようだが、実際間違ってはいないような気もする。

 

 とはいえ、この時は「ふーん」と、適当に頷いていただけだが、アロエはこの時点で俺を煽ろうとしていたらしい。いきなり、今回使うポケモンを事前に見せると言って、ハーデリアにミルホッグ、そしてチラチーノの三体を出してきたのだ。

 アロエ曰く、挑発に乗りやすい俺なら憤ってバトルが単調になるであろうという狙いがあったようだが、逆に敢えてこちらも今回のバトルで使うポケモンを見せることにした。

 

 バリヤード、フライゴン先輩、ムクホークの姿を見せると、俺以上にアロエの方が驚いている。

 

 しかし、別にアロエの考えを見抜いてしたことではない。ただ、こちらだけ事前に相手の情報を知っているのは不平等だと思っただけだった。

 それでも、アロエの思惑を外したのは間違いなく、小声で「やるねぇ」と呟いている。

だが、これで俺がただ挑発に乗るだけの安いトレーナーじゃないということがバレてしまい、アロエの警戒を買うことになったのだが、当然この時の俺は全く気付いていなかった。

 

 いざ、バトルが始まると、アロエは宣言通りにハーデリアを出してきたので、こちらは先手フライゴン先輩でお相手していく。

 

 応援のアイリスがフライゴン先輩を見て、黄色い悲鳴を上げながら応援を始めた。フライゴン先輩も、予想外のファンの存在に少し恥ずかしそうにしている。

 前世ではガブリアスの劣化呼ばわりされていたフライゴン先輩だが、この世界では最終進化系のドラゴンタイプというだけでも人気であり、飛行能力という点でも優秀だった。

 

 特に、俺のフライゴン先輩は劇場版出身ということで能力も高く、今現在の俺の手持ちのドラゴンタイプの中では群を抜いて強い。

 まぁ、俺の手持ちの純粋なドラゴンタイプは、フライゴン先輩抜きだとラティ、フカマル、コモルーくらいしかいないのだが、それでも群を抜いて強いことには違いなかった。

 

 開幕の挨拶として、タイプ一致の『じしん』を指示する。対するアロエは、ジャンプを指示してきた。

 流石に素直な攻撃をそのまま受けてくれない――所か、空中にいるハーデリアに『ほえる』を指示している。『ほえる』の効果でフライゴン先輩が強制的にボールへと戻され、ランダム選出でムクホークがフィールドに飛び出していった。

 

 相性が悪いと見て、強制交換でこちらのペースを乱しに来たのか? にしても、貴重な技枠を使ってすることとは思えない。

 と、思っていると、フライゴン先輩とムクホークの交代劇が起きている間に、向こうもハーデリアからミルホッグにポケモンを交代していた。向こうが後に交代したので、ムクホークの『いかく』も完全にすかされている。

 

 何の狙いがあるのかサッパリわからないが、このままやられるがままなのは面白くない。

 目には目をではないが――こちらも『ふきとばし』を指示して、敢えてミルホッグを強制交代させてやる。再び、ハーデリアがフィールドに戻ってきた。

 すると、流石のアロエも驚いた様子を見せる。

 まさか、俺までもが技枠を一つ使ってまで、交代技を使ってくるとは思わなかったのだろう。実際、深い意味がある訳ではない。驚かせたいと思ったからやっただけだ。

 

「成程、読めない男だねぇ。アンタも」

「そっち程じゃないさ。開幕、『ほえる』戦術をこっちで受けたのは流石に初めてだ」

「こっちで?」

「いや、独り言だよ」

 

 前世の世界では、『ほえる』系の技による交代戦術は割と有り触れたものだった。

 強いて言うのであれば、『ステルスロック』や『まきびし』のような技を使った方がより強いのだが、ハーデリアは覚えることが出来ないので仕方ない部分はある。

 まぁ、仮にその手の技を使われていたとしても、こちらも『きりばらい』で速攻対策したが――と、考えていると、流石のアロエもこの期に及んでまだ『ほえる』を続ける気はないようで、『こおりのキバ』をハーデリアに指示してきた。

 

 成程、俺の手持ちのムクホークとフライゴン先輩の両方に通りがいい技をチョイスしてきたか。

 

 とはいえ、そのまま素直に食らってやる義理はないので、空を飛んでいる有利を利用して攻撃を回避していく。

 その瞬間、アロエは『みがわり』を指示し、ハーデリアは自らの『みがわり』を足場にして、空中にいるムクホークに追撃をかけてきた。それなら、『インファイト』で反撃――と、指示した瞬間、ムクホークの意識が『みがわり』に向けられる。

 

 俺も初めての経験だったので知らなかったのだが、ゲーム同様に『みがわり』がフィールドに残っている場合、それが偽物だとわかっていてもポケモンの意識は『みがわり』の方に向いてしまうようだった。

 

 当然、向かってくるハーデリアからよそ見をする形となり、弱点攻撃で大ダメージを受ける。しかし、ムクホークはそのダメージを受けながらも、『みがわり』に向かってインファイトを決めた。

 これで『みがわり』は消えたが、代わりに『インファイト』のデメリットで防御・特防が一段階ダウンする。受けたダメージも1/3程はあり、予想外の『みがわり』戦術に翻弄される形になってしまった。

 

 ここは一度、ムクホークを戻し、再びフライゴン先輩を出していく。だが、その瞬間、アロエはまた『ほえる』で強制交代を狙ってきた。徹底的にこちらのリズムを崩すつもりか――と、思っていると、次はバリヤードがフィールドに飛び出してくる。

 

 俺のバリヤードの特性は『フィルター』だが、バリヤードの特性に『ぼうおん』があるというのは、アロエほどのジムリーダーなら知っていてもおかしくない。

 技を無駄にしてこちらに隙を作るような真似、アロエはしないだろう。それならば、次の手は間違いなく攻撃を仕掛けてくる――と、読んだ瞬間、ハーデリアの体が光り出した。

 

 ガチ戦に進化前のポケモンを出してくるということは、おそらくはまだ成長の余地を残していたということなのだろう。アロエも、これを狙っていたのか、ハーデリアはムーランドへと進化を果たし、こちらに牙を向けてくる。

 

 おいおい、進化フラグは基本的に主人公側の特権だろうが――と、言いたいが、こちらの手持ち側に進化できるポケモンは誰も居なかった。

 

 アロエのムーランドは、進化したばかりでまだ体の変化に未対応なはずだ。その隙を突くべく、バリヤードに『サイコキネシス』を指示するが、アロエはムーランドを戻して再びミルホッグを出してきた。

 

 一度間を置いて、ボールの中で少しでもムーランドに自身の変化に慣れさせる時間を作るつもりなのだろう。

 

 アロエは『かみくだく』を指示してきた。今回はストレートに攻撃を指示して来たか。

 ならば、こちらは『きあいパンチ』を指示する。きあパンは攻撃を受けると失敗するデメリットがあるのはアロエも知っているようで驚いているが、バリヤードは気合を貯めながら当然のように向かってきたミルホッグの手を取って受け流していく。

 

 最近は合気道に嵌っているのか――と、思っていると、投げたミルホッグに『きあいパンチ』をぶつけて残心を取っていた。合気道というよりは太極拳か?

 相変わらず、エスパータイプの癖にかくとう技が似合う男である。アニメではママさんと一緒にこの才能を殺していたと思うと、しっかりバトル脳に育成してマジで良かったぜ。

 

 アロエもまさか、バリヤードが近接戦をここまで極めているとは思わなかったようで、先程からずっと驚きっぱなしだ。

 しかし、安心してほしい。驚いているのは俺も同じである。何せこいつ――いや、俺のポケモン達は、しばらく会わない内に、何故か近接能力が磨かれているのだ。

 

 だが、それで近距離は不利と判断して『シャドーボール』を指示するのは迂闊としか言えなかった。

 腐っても、こちらはエスパータイプだ。『サイコキネシス』で『シャドーボール』の矛先を逸らすなど朝飯前のことである。逆に反撃でサイキネのダメージを与えてやった。

 

 それならばと、今度は『いかりのまえば』を指示してくる。当たれば、体力半分――バリヤードの体力を減らして少しでも後続を楽にしようという狙いか。

 悪くない考えなのだが、アロエは少し驚愕で視野が狭くなっていたようだ。『いかりのまえば』が決まった瞬間、バリヤードの姿が消え、その後ろで『きあいパンチ』を貯めているバリヤードの姿が現れる。

 

「しまった『みがわり』か――ミルホッグ、『まもる』!」

 

 すぐにこちらが『みがわり』を使っていたことに気付き、即座に『まもる』を指示するが、それよりも先にこちらの『きあいパンチ』が決まる方が先だった。

 サイキネときあパン2回の直撃で流石に体力も0となり、ミルホッグが倒れていく。

 先程やられた『みがわり』戦術を、基本的な使い方でやり返した形だが、それもこれも型にはまらないうちの謎バリヤードでアロエが混乱したからというのが大きいだろう。

 

 普通、近接に強いバリヤードなんていないもんな。ペースを奪われてしまっても仕方ない。

 

 ちなみに、もしアロエが補助技で攻めてきた場合は、最後の技で『ちょうはつ』を使って防ぐ予定だった。得意の『ひかりのかべ』や『リフレクター』を使わなくても、うちのバリヤードは遠近変とバランスよく戦える力を持っている。

 これを超えるには、バリヤードを超えるだけのスピードでかく乱するか、超パワーでごり押しするか、『ちょうはつ』を超えた上で変化技を使って翻弄するくらいしか択はない。どの道、初見のアロエやミルホッグでは難しかっただろう。

 

 アロエがミルホッグをボールに戻すと、バリヤードがファンサービスに演武を見せていく。この辺りのサービス精神は、コンテストで覚えたものだ。

 バトルだって、応援してくれる人がいるならそれに応えるのは礼儀である。経験があればわかるが、応援されるって言うのは意外とトレーナーやポケモンのテンションにも大きな影響を与えるからな。

 

 その証拠に、応援しているアイリスとデントも、バリヤードを見て、「サトシにそっくり!」、「不意を突いた時の悪役顔なんて瓜二つだったよ!」と絶賛していた。絶賛しているでいいんだよな?

 

 と、思っていると、アロエがチラチーノを出してきた。まだ進化したばかりのムーランドに時間を与えたいのだろう。ミルホッグはほぼ初見殺ししてしまったからな。

 

 とはいえ、アロエもミルホッグのおかげで俺のバリヤードの特異さは理解しただろうし、流石に何度も初見殺しは効かないと見て良い。続投はさせるが油断せずに行こう。

 

「チラチーノ! 『メロメロ』だよ!」

 

 今回、俺の選出したポケモン達は全員♂だ。

 

 故に、『メロメロ』が刺さるとアロエは判断したようで、♀らしいチラチーノがバリヤードに甘える仕草を見せる。

 素早は向こうの方が早いので『ちょうはつ』は後出しじゃ間に合わない。ならばと、向こうの『メロメロ』が届く前に、最後の技として『マジックコート』を使って対処した。

 この技は先制技であり、自分が受ける変化技を使用した相手に返すという効果を持っている。これで、『メロメロ』を相手に叩き返してやると、アロエは『メロメロ』に『メロメロ』をぶつけて相殺するという荒業で対処してきた。

 

 成程、俺が弾き返したことで、『メロメロ』の効果はオスがメスを誘惑するに書き換わっている。だからこそ、メスがオスを誘惑する『メロメロ』で相殺できるのか。

 

 勉強になる――と、思っていると、アロエが『トリプルアクセル』を指示してくる。『マジックコート』を見て、変化技で攻めるのは難しいと判断したのだろう。

 この『トリプルアクセル』というのは、威力20のこおりタイプの物理技で、技が外れるまで最大で3回連続で攻撃が出来るのだが、2回目は威力40、3回目威力60と、使う度に威力が20ずつプラスされていく技だった。

 

 この技を採用しているということは、おそらくアロエのチラチーノの特性は威力60以下の技が1.5倍になる『テクニシャン』で間違いないだろう。『トリプルアクセル』は最大威力が60なので、全ての攻撃に1.5倍が適応される。

 

 つまり、タイプ不一致とはいえ、30、60、90の3回攻撃を受ける可能性があるということだった。

 

 おまけに、こおりタイプなので、後ろにいるムクホークやフライゴン先輩には特に刺さる。

 上手い攻撃チョイスだ――と、思いつつも、近距離戦ならばそう簡単に負けはしない。得意の受け流しで、相手の攻撃を捌いていく。

 

 そのまま、三回の攻撃を受け流すと、再び『みがわり』を指示した。これで、次に攻撃を仕掛けてきた時、『みがわり』が攻撃の壁になってくれる。その隙に、最大限に気合を貯めた『きあいパンチ』でチラチーノもKOだ。

 

 実際、攻撃後ということで、チラチーノには隙があり、あの状態からの攻撃は不可能。しかし、バリヤードの目の前に『みがわり』が出現した瞬間、その『みがわり』が影も形もなくなってしまった――遅れて、自分の失敗を自覚する。

 

「ッ!? しまった、『おかたづけ』か!」

 

 見れば、チラチーノは自分の毛を上手く使って掃除をするようなモーションを見せていた。

 この『おかたづけ』という技は、お互いの場の『みがわり』、『まきびし』、『ステルスロック』、『ねばねばネット』、『どくびし』を解除する効果を持つ技だ。おまけに、自分の攻撃・素早が一段階上がるというかなりの優れ技である。

 

 攻撃は間に合わないなら、変化技――当然の選択肢ではあるが、『マジックコート』で変化技は封じたと思って完全に油断した。

 

 おまけに、アロエは『おかたづけ』と『メロメロ』と同時に使っている。こちらが『トリプルアクセル』の後に、『みがわり』を使うと先読みしていたのだろう。当然、『みがわり』を使っていたので、今から『マジックコート』を使用しても対処は間に合わない。

 

 結果、バリヤードは無防備に『メロメロ』を受け、メロメロ状態になってしまう。

 

 さらに、『みがわり』を無駄打ちさせられたことで、体力は既に半分になってしまっていた。『みがわり』は優秀な技だが、技の発動に体力を1/4使う。二度使えば、攻撃を受けていなくても体力半減だ。

 

 ここは一度、バリヤードを戻すしかない。

 

 そう判断して、腰のボールに手を伸ばす。

 

 だが、俺がバリヤードを交換するよりも、チラチーノの動き出しの方が早かった。

 元々チラチーノは素早115族で足が早い方だが、それが『おかたづけ』でさらに一段階早くなっている。メロメロ状態で動けないバリヤードへの追撃は容易だった。

 

 再び、『トリプルアクセル』で攻撃してくる。

 

 メロメロ状態では受け流しも出来ない――さらには特性『テクニシャン』の強化もあって、タイプ不一致でも実質威力180の大技となっていた。

 それに加え、『おかたづけ』の効果で攻撃も一段階上昇している。対するバリヤードは物理耐久が低い上、防御もままならないのでは、全てが当たれば体力半分など余裕で持っていかれるだろう。

 

 しかし、連続攻撃ならば、1回目の攻撃は無理でも2回目の攻撃には交代が間に合う――と、思ってボールの光をかざした瞬間、チラチーノは『トリプルアクセル』の一段目でバリヤードを大きく吹き飛ばした。

 

 ボールの光は外れ、チラチーノが吹き飛んだバリヤードに2回目の攻撃を決める。

 

 光が収まり、再びバリヤードに狙いを定めた頃には、3回目のフィニッシュでバリヤードは戦闘不能にされてしまっていた。交代封じとは、面倒なテクニックを見せてくれる。

 とはいえ、これはアロエの読みがこちらより一段上だったというだけ。わからん殺しをした分のアドバンテージは取り返されてしまったか。否、バリヤードを倒すのに、チラチーノは技を3つも使っている。決して無駄ではない。

 

 バリヤードを労ってボールに戻す。

 

 だが、どうするか。『トリプルアクセル』がある以上、迂闊にじめん・ドラゴンのフライゴン先輩は出せない。

 まぁ、それは『こおりのキバ』のあるムーランドもそうなのだが、まさかバリヤードがここまで何もさせて貰えずにやられるとは予想外も良い所だ。とはいえ、ムクホークもこおり技が弱点なので、強気に出せるという訳ではない。

 

 それでも、『いかく』もあるしフライゴン先輩よりはマシだろう――と、いうことで、ムクホークを出していく。

 

 アロエもこちらがムクホークを出すと読んでいたのか、すぐにチラチーノを戻してムーランドを出してきた。『いかく』での攻撃一段階低下のデバフを嫌ったのだろう――と、思っていると、ムーランドの『ほえる』でこちらを再び強制交代させてくる。その瞬間、再びアロエもムーランドを戻してチラチーノを出してきた。

 

 成程、有利対面を作るために、わざわざムーランドで『ほえる』を使ってきたのか。

 

 つまり、フライゴン先輩ならこおり技で確実に倒せると思っているということだ。舐めやがって、俺のフライゴン先輩がそう簡単に倒せると思うなよ。

 開幕、再びアロエは『メロメロ』を指示してきたので、『あなをほる』で地面の中に逃げる。いくら『メロメロ』でも対象を見失ってしまえば効果は不発だ。

 

 次はその自慢の足を潰してやる。

 

 穴の中から、『すなじごく』を使って、チラチーノの足を止めていく。この技は『おかたづけ』でも解除できない。『すなじごく』の効果によって、足を掴まれ4~5ターンの間は毎ターン体力1/8ダメージを受ける上、ゴーストタイプ以外は交代も出来なくなる。

 

 これでお得意の高速移動や足技も使えなくなった。穴から飛び出して、『あなをほる』をぶつけていく。

 アロエもまた『メロメロ』を指示するが、それならばこちらもまた『あなをほる』で再び地面に逃げるだけだった。『じしん』や『マグニチュード』という技が使えないチラチーノにこれを対策するすべはない。

 

 何とか『すなじごく』から逃げようとチラチーノも走り出すが、『すなじごく』は効果が切れるまで永遠にチラチーノを追ってその動きを封じ続ける。

 

 それならばと、アロエは『おかたづけ』を指示してきた。だが、『すなじごく』は拘束技であって、『みがわり』や設置技ではない。

 勿論、攻撃・素早は上がるので、完全な無駄打ちではないが状況打開にはならない――と、思っていると、チラチーノの『おかたづけ』によって、『すなじごく』が解除されてしまっていた。同時に、チラチーノの攻撃・素早が一段階上昇していく。

 

「マジかよ……!」

 

 片付ける技であるが故に、応用が利くということか――と、予想外の効果に驚きを隠せなかった。

 また、自由を取り戻してステータスが上がったことで、チラチーノも『あなをほる』を回避していく。すれ違い様にチラチーノも『メロメロ』を使ってきたが、特性『ふゆう』による急上昇で何とかメロメロ状態になるのを回避した。

 

 しっかし、『すなじごく』を『おかたづけ』で解除は予想外が過ぎる。原作のサトシ君が『シザークロス』で『トリックルーム』を破壊した時くらいの衝撃を受けたぞ。

 

 技の応用で普通なら出来ないこともできる――これだから、ポケモンバトルって奴は楽しいんだ。

 

「随分と、楽しそうに笑う坊やだねぇ」

「楽しめるようになったんですよ。自分自身の実力不足も、困難も、相手の強さも、全部飲み込んで自分の強さに出来るように! ま、バトル自体は、最初から死ぬほど好きなんですけど」

 

 昔は、負けて前を向けない時もあった。

 

 負けた時は、ああすればよかった、こうすればよかったって、何度だって後悔した。

 

 でも、それを受け入れないと駄目だ。

 

 悲しみも、後悔も、それらがあって初めて俺は俺になれる――と、どこかの復活した男も言っていた。だから、俺だけは俺を否定してはいけない。

 

 苦しい時ほど笑え。

 

 ――逆境は、自分を強くする最高の環境だろう。

 

「フライゴン! チャージ! そのまま『じしん』!」

 

 チラチーノの『メロメロ』を回避しながら、フライゴン先輩が指示を理解したように頷くと地面に落下していく。

 アロエも『メロメロ』が当たらないと判断すると、すぐに反撃に移ってきた。『トリプルアクセル』を指示し、一度目の踏み込みで地面をジャンプして『じしん』を回避しながら攻撃を仕掛けてくる。

 

 仕掛けてくるのは読めていた。

 

 本来、『じしん』を使っている間は、技を終えるまで他の技は使えない。が、技術を上げていくと、下半身で『じしん』を使って、上半身で別の技――と、いうミュウツーのようなことだって出来るようになってくる。

 まだフライゴン先輩は、下半身と上半身を使い分けるレベルではないが、顔と体で分けるくらいのことは出来るようになっていた。

 

 フライゴン先輩の照準が、飛び掛かって来るチラチーノに向く。普通であれば、まだ『じしん』の発動中なので、フライゴン先輩に反撃のすべはない。

 

 だが、フライゴン先輩は仕掛ける前に『りゅうせいぐん』をチャージしていた。ドラゴンのエネルギーを体に貯めたまま『じしん』を仕掛け、後は発射するだけという状態を維持していたのだ。当然、照準があっているので後は発射するだけでいい。

 

 アロエは何か違和感に気付いたようだが、もはや回避するだけの隙は残っていなかった。

 

 そのまま、本来であれば範囲技である『りゅうせいぐん』を敢えて弾丸として発射していく。

 昔、ヒカリのフカマルの圧縮率が高すぎて拡散しなかった失敗技――だが、ここではその失敗技こそが最適解だった。まさに『流星』と呼ぶべきエネルギー弾は、威力はそのままに、こちらに向かっていたチラチーノに完全直撃する。

 

 それでも、技の発動に別の技を挟んでいるし、ダメージ自体はどうしても下がってしまう。しかし、耐久が低く、『あなをほる』と『すなじごく』の継続ダメージで体力が半分近く削れているチラチーノにしてみれば、致命傷と言えるダメージのはずだった。

 

 実際、チラチーノは既に体力がミリまで追い込まれている。このまま追撃の『じしん』で終わらせようとした瞬間、チラチーノが起き上がり、こちらに向かって突撃してきた。

 早い――一段階スピードが上がっているが故に、立て直しも早くなっていたか。

 いや、だが、それでも『トリプルアクセル』も『メロメロ』も一段目が当たるか当たらないかというタイミングだ。こちらはまだ無傷だし、仮に当たったとしても、もう『じしん』の発動は止められないのでチラチーノの体力はゼロになる。

 

 と、考えていると、チラチーノは最後の技として『じたばた』を使ってきた。自分の残り体力が少ないほど威力が高くなるノーマル技――当然、今のチラチーノならば最大火力が出る上、『じたばた』は触った瞬間に効果が出る技だった。

 

 おまけに、タイプ一致で威力は1.5倍。つまり、チラチーノの『じたばた』は威力300の大技となってフライゴン先輩を襲った。

 実質、タイプ不一致『はかいこうせん』の2倍の威力である。しかも、運悪く急所に当たってしまった。体力は一撃で0まで持っていかれ、フライゴン先輩が倒れる。

 

 まさかの一撃――だが、こういうことだってあるのがポケモンバトルだ。

 

 もし、これがアロエによる口頭指示だったのであれば、俺も即座に『じしん』をキャンセルさせてフライゴン先輩を上空に逃がしていただろう。

 だが、今回の一撃はチラチーノの独断だった。

 アロエを勝たせようとしたチラチーノの粘りが生んだ勝利だ。実際、ポケモンがトレーナーの指示を待たずに技を勝手に使うことも、その技がたまたま急所に当たることだって普通にある。俺だって、過去に何度もそうしたポケモン達の機転や偶然に助けられてきた。その点に文句はない。

 

 しかし、チラチーノもどうやらダメージの限界だったようで、『じたばた』を使うと同時に戦闘不能になっていた。まさかのダブルノックアウト――これで残りは互いに1体。

 

 フライゴン先輩を労いながらボールに戻し、最後のムクホークを出して『いかく』を決めていく。

 向こうもムーランドを出してきた。もうお互いに後がないので、ポケモンを交代して『いかく』のデバフを無効にすることはできないので、『いかく』の攻撃一段階ダウンはこちらの有利になる。

 

 後、重要なのは、お互いに『ほえる』と『ふきとばし』は半分死に技になっているという点だ。最後の一体同士なので、交換技はもう意味をなさない。実質、技3つで相手を倒す必要がある。

 

 だが、進化したとはいえハーデリア時に失った体力はまだ回復しきっていないはずだ。今のムーランドは体力残り3/4程で、技は『ほえる』、『みがわり』、『こおりのキバ』の3つ。

 対するムクホークは、体力は2/3くらいで、技は『ふきとばし』と『インファイト』しか使っていない。とはいえ、『インファイト』は火力の代わりに防御力が下がる諸刃の剣でもある。迂闊に使うとこちらが厳しくなるし、レベルもこちらの方がまだまだ低い。

 

 総じて、互角――それでもこちらの方が厳しい気もするが、互角と言ったら互角なのだ。

 

 ムクホークに『つばめがえし』を指示する。威力はそこそこだが、必中で使い勝手のいい技だ。

 流石にいきなり『インファイト』ぶっぱして、耐久下げた結果ワンキルくらいましたは話にならないので、ここは適度に使い勝手のいい技で様子を見ていく。

 

 しかし、攻撃が当たるか当たらないかという瞬間に、『こおりのキバ』で迎撃された。

 お互いに羽とキバがぶつかり合って技が相殺されていく。威力的なことを言えば、『いかく』とタイプ一致込みでこちらの方が強いはずなのだが、向こうの方がレベルが高いので技の威力はほぼ互角だった。

 

 どこかで隙を見て、『インファイト』を叩き込めれば――と、考えていると、ここでアロエも動き出した。

 

 互いに距離を取った瞬間、ムーランドが再び『みがわり』を使ってきたのだ。普通、『みがわり』という技は、相手に発動を隠して使うか、前世のように変化技に合わせて使うものだと思い込んでいたが、こうして真っ向から使われるのは意外と面倒だった。

 

 こちらは『みがわり』を破壊してからしかムーランドに攻撃できないので、どうしても隙が出来てしまうのである。とはいえ、同じ手が何度も通じると思われるのは癪だ。ここで一度、アロエには痛い目を見せてやろう。

 

 と、いうことで、アロエが『こおりのキバ』を指示した瞬間、こちらも『ふきとばし』を指示した。

 

 交代技故に効果はない――が、生み出された風によって、ムーランドが吹き飛ばされていく。その隙を突いて、『みがわり』を『つばめがえし』で破壊した。

 フハハハハ。これまでのバトルでも、何度か『ふきとばし』は使ってきたのだ。この技が、交換以外の用途にも使えるであろうことは既に理解済み。

 それこそ遠距離技であれば、跳ね返しすら不可能ではない(勿論、いろいろ条件はあるが)のである。これでアロエも迂闊なことは出来なくなっただろう。

 

 それならば――と、アロエは『こおりのキバ』でまた近接戦を仕掛けてくる。こちらも再び、『つばめがえし』で応戦していくことにした。

 

 やはり技術的にはほぼ互角のようで、互いに互いの技を相殺し合っている。だが、これでは決定打にはならない。

 

 どこかで隙を作りたかった。

 

 最後の技の使い方で勝敗は決まる。

 

 と、考えていると、アロエが『ほえる』を使ってきた。近距離で大声を発せられ、流石のムクホークも一瞬驚きで体が硬直する。その隙に、アロエは最後の技として『とっておき』を使ってきた。

 

 この技は、自分の使える他の3つの技を使った時のみ使うことが出来るノーマルタイプ威力140の物理技だ。タイプ一致で威力210――タイプ不一致でこちらの二倍弱点である『こおりのキバ』を決めるよりも威力の高い一撃だった。アロエも勝負を付けに来たのだ。

 

 当然、防ぐ余裕すらなく直撃を受ける。

 

 ムクホークが地面に叩きつけられ、フィールドにヒビが入り、砂埃のようなものが発生していく。残りの体力的にも戦闘不能になってもおかしくなかったが、『いかく』による攻撃力一段階ダウンが、ギリギリでムクホークの命を救っていた。

 ここでこちらもまた仕掛けていく。

 再びの『ふきとばし』で砂埃を巻き上げて、上手く自分の姿を隠していく。同時に、最後の技である『でんこうせっか』を指示し、先制という特性を利用して一気にムーランドの距離を詰めていった。向こうからすれば、いきなり敵が横に現れたという状況だろう。

 

 先程のバリヤードもそうだったが、ムーランドもほぼ無傷とは言え、このバトルを通して『みがわり』を二度使っている。一度の発動に体力の1/4を使う技を二度も使っているということは、体力が半分になっているということだった。

 

 しかし、それでもこちらの方がレベルが低い。

 

 おまけに、『インファイト』は高威力だがタイプ一致ではなかった。体力半分を削り切れるかは運が絡む――が、ここで引く意味などない。

 ムクホークが『インファイト』でムーランドを吹き飛ばしていく。弱点の不意打ちだが、やはり決めには少し足りないようで向こうも体力ギリギリで起き上がる。

 

 お互いに、もう後はない。

 

 技も全て使ったし、後は先に一撃を入れた方が勝ちという状況だ。『でんこうせっか』も、先程は初見だから通用したが、見られていれば防ぐのはそう難しくない。

 むしろ、勝ちを焦って先制技に頼れば、その動きを見切られてカウンター一閃――ということも十分に有り得た。お互いに、動くに動けない状況と言って良いだろう。

 

 だが、『ほえる』と違って、『みがわり』は発動に必要な体力が残っていない以上、本当に死に技と言って良かった。

 そういう意味では、まだ技に択のあるこちらが若干有利。向こうの攻撃手段は小回りが利く『こおりのキバ』と、大技の『とっておき』だ。もし、俺がアロエならば、どういう手段でムクホークに止めを刺してくるか――

 

「ムーランド、『とっておき』!」

 

 ――選ばれたのは最大火力による真っ向勝負だった。ムーランドがこちらに向かって走って来る。

 

 対するこちらは、威力210に対抗できる高威力の技はない。真っ向からのぶつかり合いなら、『いかく』で攻撃力が下がっていても向こうの方が有利だ。

 だからこそ、俺は真っ向から受けない。

 相手の攻撃に合わせて、『でんこうせっか』の一撃を入れて終わらせる――普段の俺なら間違いなくそう考える。そして、アロエもそれを読んでくるはずだ。

 

 ムクホークに『でんこうせっか』を指示する。

 

 同時にアロエは笑みを浮かべた。『とっておき』という指示を出していながらも、ムーランドは『ほえる』を使ってきたのだ。

 これにより、ムクホークの動きは一瞬止まり隙が出来る。おそらくは予めサインで別の技を指示していたのだろう。後は、隙が出来たムクホークへ『こおりのキバ』か『とっておき』をぶつければアロエの勝利だった――俺が本当に『でんこうせっか』を指示していたのなら。

 

「『つばめがえし』だって!?」

 

 サインで別の技を指示する可能性は既に考慮済みだった。だからこそ、俺もまたハンドサインでムクホークに別の技を指示していた。

 ムーランドの『ほえる』で驚き、体が硬直してしまっていても、必中技であるのなら止まらずに攻撃が可能――むしろ、あのまま本当に『とっておき』を使われていれば負けていたのは俺だった。が、アロエならば確実に裏を掻いてくると信じた俺の勝ちだ。

 

 ムクホークの一撃でムーランドの体力がゼロになり戦闘不能となる。これにより、アロエの手持ちが全員戦闘不能になったことで、このガチ戦は俺の勝利が決定した。

 

 今回もギリギリ――だが、またいろいろと学べるものが多いバトルでもあった。

 特にアロエは、技の使い方が上手く、途中バリヤードによるわからん殺しが決まっていなければどうなっていたかわからなかった部分が多い。しかし、それでも勝ちは勝ちということで、有難く勝者の証であるベーシックバッジを頂いていく。

 

 毎度の如く、ラティがゲットだぜ――を期待しているようだったが、俺は安売りはしないので今回もスルーを決めると、頬を膨らませてプリプリ怒っていた。

 

 

 




 原作との変化点。

・第15話『シッポウジム戦! VSジムリーダー・アロエ!!』より、アロエの性格診断を覆した。
 素直に見せかけて素直じゃないニューサトシクオリティ。原作のサトシ君と同じくらい挑発に乗りやすい性格はしているが、ただ挑発に乗るのではなく相手にやり返すタイプ。
 
・みがわりについて。
 思い付きではあるが、今まで出てこなかったのが不思議なくらいな追加設定。

・アロエに勝利した。
 原作だとアロエの強制交代戦術に負けているが、ニューサトシの場合は勝利している。

・ロケット団暗躍中。
 原作通り、夜中にこっそりシッポウ博物館に忍び込んで隕石を偽物とすり替えた。



 現在ゲットしたポケモン

 ピカチュウ Lv.66

 ピジョット Lv.61

 バタフリー Lv.61

 ドサイドン Lv.64

 フシギバナ Lv.61

 リザードン Lv.66

 カメックス Lv.61

 キングラー Lv.61

 カモネギ  Lv.61

 エビワラー Lv.61

 ゲンガー  Lv.63

 コノヨザル Lv.61

 イーブイ  Lv.61

 ベトベトン Lv.61

 ジバコイル Lv.61

 ケンタロス Lv.61

 ヤドラン  Lv.61

 ハッサム  Lv.61

 トゲキッス Lv.61

 プテラ   Lv.61

 ラプラス  Lv.61

 ミュウツー Lv.76

 バリヤード Lv.61

 イワーク(オレンジ諸島の姿) Lv.60

 カビゴン  Lv.61

 ニョロトノ Lv.60

 ヘラクロス Lv.60

 メガニウム Lv.60

 バクフーン(ヒスイの姿) Lv.60

 ラティアス Lv.56

 ヘルガー  Lv.59

 ワニノコ  Lv.59

 ヨルノズク(色違い) Lv.58

 カイロス(部分色違い) Lv.58

 ウソッキー Lv.58

 バンギラス Lv.62

 ドンファン Lv.58

 ギャラドス(色違い) Lv.58

 ミロカロス Lv.54

 ラグラージ Lv.54

 オオスバメ Lv.54

 ジュカイン Lv.54

 ヘイガニ  Lv.54

 フライゴン Lv.58→59

 コータス  Lv.52

 サーナイト(色違い) Lv.47

 オニゴーリ Lv.52

 ワカシャモ Lv.51

 メタグロス(色違い) Lv.50

 エテボース Lv.48

 ムクホーク Lv.47→48

 ドダイトス Lv.47

 ブイゼル  Lv.47

 ムウマージ Lv.50

 カバルドン LV.46

 ミカルゲ  Lv.57

 グライオン Lv.45

 ロトム   Lv.47

 ユキノオー Lv.43

 フカマル  Lv.39

 ゾロア(ヒスイの姿) Lv.12

 コモルー  Lv.37

 カイリキー(変異体) Lv.36

 ミジュマル Lv.18

 ポカブ   Lv.18

 ツタージャ Lv.18

 タマゴ   中から音が聞こえてくる! もうすぐ生まれそう!


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