ニューサトシのアニポケ冒険記   作:おこむね

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アニメBW・第24話『ロケット団VSプラズマ団!(後編)』

 ヒウンシティに逃げてきた大量のフシデの謎を解くため、アララギ博士と共にリゾートデザートに向かったサトシ達だったが、そこで見たのはロケット団による謎めいた発掘作業だった。

 ロケット団はメテオナイトの発見に成功し、その強大なエネルギーをイッシュ地方の征服に役立てようとしていたのである。

 そして、ロケット団がそのメテオナイトを運び出している途中、サトシは仲間を守るために自らロケット団に掴まり、砂漠のリゾートホテルにあるヘリポート脇の整備用格納庫に軟禁されてしまっていた。

 

「んぎぎぎ~~~!」

 

 後ろ手に拘束されたサトシが脱出しようと何とかもがく。最初は見張りのロケット団員が一緒に居たのだが、サトシが逃げられないと判断すると、すぐに別の場所に移動してしまったのだ。

 

 チャンス――と、サトシも脱出を試みるが、拘束は簡単には引きはがせない。

 

「何が何でも脱出してやる! ポケモントレーナーを甘く見るなよ!」

 

 そう言って、サトシは腰についているモンスターボールを落とした。出てきたのは、頼りになる仲間の一人であるミジュマルだ。

 

「ミジュマル! 『シェルブレード』で、俺の手を縛っている縄を切ってくれ!」

「ミッジュ!」

 

 ミジュマルはサトシの指示に従って、拘束に使われている縄を切る。

 

「サンキュー、ミジュマル! よし、これで――」

 

 と、サトシはドアの取っ手を力任せに引き開けようとするがビクともしなかった。

 

「んぎぎぎぎ……くそっ、やっぱり駄目かぁ、なら次は――」

 

 必要なのは、扉を壊せるだけのパワー――と、考え、サトシが新たにモンスターボールを投げる。出てきたのはポカブだった。

 

「頼むぞ、ポカブ! 『ニトロチャージ』!」

「ポカ!」

 

 サトシの指示で、ポカブは火を玉のように身に纏ってドアにぶつかっていく。

 ポカブが使った『ニトロチャージ』の効果で、スピードが上がり、その勢いもパワーにプラスされたこともあり、無事にドアをぶち破ることに成功した。

 

「ようし、やった!」

 

 一緒に喜んでいるミジュマルやポカブを連れて、サトシは外に飛び出していく。

 

「助かったよ、二人共。ありがとな!」

 

 ミジュマルとポカブもサトシに頭を撫でられて嬉しそうにしている。ミジュマルはそれほどでもと言いたげに照れており、ポカブは鼻から火を噴いていた。

 

 その時、グオオン――と、上の方から低い振動音が聞こえてくる。サトシが咄嗟に音のする方に視線を向けると、上空から見たことがない輸送ヘリがホテルに降下していくのが見えた。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 一方、庭園でデントの帰りを待っていたアイリスにも大事件が起きていた。ロケット団がホテル内でメテオナイトのエネルギーを高めると同時、ピカチュウもまたそれに反応するように、その身を強烈に発光させたのだ。

 

「ええっ、なにこれ!?」

 

 アイリスも、いきなりピカチュウが光り始めて大混乱していたが、そんな混乱など知らんとばかりにピカチュウがカッと目を開ける。

 先程までの不調は完全に消えたようで、発光するピカチュウもまた、別の場所にいるサトシ同様に降下していく輸送ヘリを見上げていた。

 

 そんな中、ホテルのホール内では ピカチュウの明滅にシンクロするかのように、メテオナイトも激しいスパークを起こしている。

 集まった悪の幹部達は、その光を発するメテオナイトに注目せざるを得なかった。サカキもまたステージ上で高らかに声を上げる。

 

「諸君。メテオナイトの力は十分にわかって頂けたことと思う。それでは我がロケット団と――」

 

 と、サカキが何かを言いかけると同時に、天井にバリバリバリ――と、円形の火花が走る。プラズマ団の3人は、それを見てニヤリと笑みを浮かべた。

 

「来た……!」

 

 流石のサカキもいきなり天井に火花が走ったことで、ゼーゲルと共に数歩後ろに下がる。

 その間に、円形にくりぬかれた天井が外され、粉塵や漆喰、照明機材が次々にホール内に落ちて観客達もまた唖然となっていた。しかし、すぐに異常事態だと察知すると、我先にとこの場から逃げようと動き出す。

 

 そんな逃げ惑う悪の幹部達の中、プラズマ団の3人はゆっくりと立ち上がった。

 

「奴らだ!」

 

 プラズマ団の3人の胸で、『P』マークの小さなバッジが光る。それを見て、ハンサムもまた自分の目的の相手を見つけた。

 

 混乱の中、プラズマ団のモノと思われる輸送ヘリは、巨大マニピュレーターでホテルの天井を外すとそれを外に放り投げる。

 どうやらプラズマ団は、外に待機しているジュンサーや警官隊にも気付いていたようで、まるで彼らを妨害するかのように天井を放り投げていた。それにより、ジュンサーや警官隊が退避のために慌てて身を隠し、一時混乱状態になってしまう。

 

 その間に、プラズマ団の輸送ヘリの巨大マニピュレーターが、スパークを放ち続けるメテオナイトをがっちりと掴んだ。同時に、ムサシ・コジロウ・ニャースもまた、サカキを守ろうと駆け寄って来る。

 

「ボス!」

「大丈夫ですか!?」

 

 サカキはジッとプラズマ団を見ていた。他のロケット団員も、愕然とメテオナイトが奪われるのを見ていることしか出来ずにいる。

 

 ホールの内部は、逃げ惑う悪の組織の者で騒然としていた。しかし、ハンサムはすぐさま目星を付けていたプラズマ団に飛び掛かっていく。

 

「とうとう現れたな!」

 

 飛び掛かって来るハンサムを素早く躱すと、プラズマ団の一人がモンスターボールを投げた。

 

「レパルダス! 『はかいこうせん』!」

 

 ボールから出てきたレパルダスが『はかいこうせん』を放つ。狙いはハンサムの背中だった。

 

「ハンサムさん!」

 

 相手の狙いに気付いたデントが慌ててハンサムを庇って床に伏せる。壁を打ち抜く『はかいこうせん』で、会場が爆発と閃光に包み込まれた。

 

 崩れた天井の煙と、『はかいこうせん』の爆煙で視界が悪くなっている。サカキが顔を上げると、既にメテオナイトはプラズマ団員3名と共に姿を消していた。

 

「メテオナイトがないニャ!」

 

 慌てたようにニャースも声を上げる。

 

 しかし、サカキは焦った様子もなく冷静にムサシ・コジロウ・ニャースに指示を出した。

 

「取り戻すぞ」

「「「はっ!」」」

 

 だが、ロケット団がそう意気込んだ瞬間、バーン――と、いう音と共にドアを蹴破り、ジュンサーと警官隊が中に飛び込んでくる。

 

「全員動くな! 拘束する!」

 

 いきなりの警察の登場に、悪の組織の幹部達は動揺を隠せずにいた。しかし、こういった事態にも慣れがあるロケット団は、捕まることなくすぐにこの場を脱出していく。

 

 そんな中、ハンサムとデントも立ち上がった。

 

「私は組織を追う! サトシ君がロケット団に掴まっているらしい。そちらの捜査も頼む」

「了解!」

 

 ハンサムがジュンサーに言葉少なく指示を出すと、すぐに外に向かって駆けだしていく。

 

「デント君、私達も!」

「はい!」

 

 デントとアララギもまた、すぐにハンサムの後を追った。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 リゾートホテルでメテオナイトを奪取し、闇夜を飛行するプラズマ団の輸送ヘリの機体コンテ部分からは、放熱による光が漏れ出ていた。

収容されたメテオナイトが激しくスパークを繰り返し、周囲の壁にその放電が弾け飛んでいる。

コックピットのコンソールに火花が走った。操縦桿を握るパイロットや、その後ろにいるプラズマ団員3名もまた、その凄さに驚愕を隠せずにいる。

 

「なんだ、このパワーは……」

 

 ロケット団は、メテオナイトを扱う際に地下と同じ環境を整えるといった工夫を施してメテオナイトのパワーを制御していたが、プラズマ団はそんなことは知らないのでただ確保しているだけ――その扱いの差が、メテオナイトに大きな影響を与えていた。

 

 そんなプラズマ団を追うサカキのVTOL機。

 

 中にはサカキの他に、フリント、ムサシ、コジロウ、ニャース、ゼーゲルが乗り込んでおり、フリントが機体を操縦してプラズマ団を追っている。

 サカキは、メテオナイトが奪われてからも特に慌てた様子を見せていなかった。むしろ、こうして自分達の邪魔をする者が出てくるのは予定通り――と、言わんばかりの余裕すら見せている。

 

「ついに表舞台に出てきましたね」

 

 フリントもまた、サカキの内心を理解しているかのようにそう声を上げた。

 

 それを聞き、遅れてムサシ・コジロウ・ニャースの三人も事情を理解する。

 

「ボスの言っていった謎の組織とは、もしや今の!?」

「間違いない。我々がイッシュ地方を制圧するためには、どうしても排除しなければならない組織だ」

 

 ムサシの言葉に頷くようにサカキが言葉を返す。

 元より、メテオナイトは彼らを釣るための餌の一つでもあった。あのまま、イッシュの陰の支配者達と手を組むのも良し。こうして、出てきたプラズマ団を叩いてメテオナイトを取り戻すのでも良し――全ては予定通りに進んでいる。

 

 勿論、理想はあの場でプラズマ団を倒して、メテオナイトを確保したままでいることだったが、まさか向こうがここまで大胆な手を使ってくるとは思わず後手に回った形だった。

 

「ただちにメテオナイトを取り戻します!」

「さらには組織の壊滅も!」

 

 コジロウとニャースの言葉に、サカキは深く頷きを返す。実際、この作戦はメテオナイトを取り戻せないと意味がない。

 このまま逃げられました――と、いうことは、メテオナイトの反応を追っている以上は有り得ないが、それでも油断して負けましたでは済まされなかった。

 

そんな中、ゼーゲル博士は機内のシステムを操作していたが、モニター上の反応に眉をくもらせる。

 

「メテオナイトの反応が強くなってるな……」

 

 

 

◇◆

 

 

 

 上空のプラズマ団の輸送ヘリが遠ざかって行き、サカキのVTOL機がそれを追って加速するのを見たピカチュウは、発光状態のまま後を追うかのように飛び出した。

 

「ピカチュウ!」

 

 アイリスの声に反応して、髪の中からキバゴも顔を出すと「待って」と言わんばかりに声を上げる。しかし、ピカチュウは止まることなくそのまま走り出した。

 

「あっ、行かないでピカチュウ!」

 

 アイリスもまたそんなピカチュウの後を慌てて追っていく。しかし、静止を振り切って走り出したピカチュウだったが、途中でいきなり飛び出してきた影にぶつかってしまう。

 

「ぶわっ!?」

「ピガッ!?」

 

 互いに派手にぶっ飛ぶ。そこに、アイリスも駆けつけてきた。倒れた人影を見て、驚いたように声を上げる。

 

「サトシ!?」

 

 声に反応して、ピカチュウとぶつかったサトシが飛び起きた。

 

「アイリス! ピカチュウ!」

「よかった、無事だったんだね」

 

 ピカチュウもまた起きると、サトシの姿を見て「ピカピ!」と嬉しそうに抱き着く。

 しかし、サトシはそんなピカチュウを抱きかかえながら、未だに体が発光していることに動揺を隠せなかった。

 

「どうなってるんだこれ!? ヘリの中で電撃を受けた時みたいに光ってるじゃないか!」

「あの変な岩の力と、同調してるみたいなの!」

「どーちょー!?」

「だって、あの岩と同じように光るんだよ!?」

 

 アイリスもまた輸送ヘリがメテオナイトを掴んで運んでいくのを見ていたので、ピカチュウとメテオナイトが同調していることに気付いていた。

サトシはイマイチ理解できない様子だったが、今はのんびり話をしている場合ではない――と、ピカチュウはサトシに声をかけて再び走り出す。そのまま植え込みを飛び越え、放電しながらプラズマ団の輸送ヘリを追って走り出した。

 

「おおい、ピカチュウ!?」

「ああっ、待ってー!」

 

 サトシとアイリスもすぐに後を追う――も、なかなか距離が縮まらない。

 

「ピカチュウって、あんなに速かった!?」

 

 アイリスの困惑を置いたまま疾走するピカチュウ。

 

 サトシとアイリスもまた、植え込みを飛び越え、必死に後を追いかけるが、ピカチュウは通常時とは比べ物にならない速さで走っていた。

 

「なんなんだ、あのスピード!?」

「追いつけないよぉ!」

 

 あっという間に、ピカチュウは二人を引き離してしまう。ピカチュウも時折、二人の方を振り返りながら「早く来い」と腕を振って誘って、また走り出す。

 

「あいつ、オレ達を呼んでる。何かを伝えようとしてるんだ」

 

 しかし、それが何なのかまではわからない。そのままピカチュウは、ますますスピードを上げ、もはや光かしか見えなくなってしまった。

 

 サトシ達もそれを追って街を抜け、再び夜の砂漠を走って行く。

 

「とにかく追いかけるしかない!」

「もう光しか見えないよ……翼が欲しい~!」

 

 そんな風にアイリスが文句を口にする中、しばらくして砂漠を走るピカチュウとサンドバギーがすれ違った。バギーの運転席にはハンサムが座っており、助手席にはアララギ、後ろにはデントがいる。

 

「ピカチュウ!?」

 

 デントも目の前を横切っていったのが自分の知るピカチュウだとすぐに気づいた。

そもそも、このイッシュ地方にはピカチュウは生息していない。異常なほど光ってはいたが、あれは間違いなくサトシのピカチュウで間違いないだろう。

 

 と、デントがピカチュウの方へ視線を向ける中、ハンサムはピカチュウが来た方向からサトシとアイリスが懸命に走っていることに気付いた。

 

「あれは!」

 

 ハンサムがハンドルを切って、サトシ達の前にハンサムのサンドバギーを止める。

 

「サトシ! アイリス!」

「デント!?」

 

 と、目の前に止まったサンドバギーを運転しているハンサムを見て、サトシはさらに驚いた様子を見せた。

 

「えっ!? ……ハンサムさん!?」

 

 意外な人物を見て驚くサトシだが、アイリスだけが事情もわからずキョトンとしている。

 

「……誰?」

「国際警察のハンサムさん。前に助けて貰ったことがあるんだ。お久しぶりです、ハンサムさん」

 

 サトシもハンサムのことをアイリスに紹介する。ハンサムも、サトシがロケット団に捕まっていたと聞いていたので、こうして無事に再会できたことを喜んでいた。

 

「久しぶりだね、サトシ君。大事件ある所、キミとピカチュウありか!」

「今、ピカチュウとすれ違ったわ。どこに向かっているの!?」

 

 喜ぶハンサムだが、いつまでも話をしている訳には行かない――と、アララギが話に割り込んでくる。それを聞いて、「そうだった」とサトシも声を上げた。

 

「ピカチュウのやつ、俺達をどこかに連れて行こうとしているみたいなんです。ハンサムさん、ピカチュウを追ってください!」

 

 そう言って、サトシとアイリスもバギーに乗り込む。アイリスは「やっと座れる~」と、ぐでっと体を背もたれに預けていた。

 対するサトシは、ロケット団に掴まっていた時に休んでいたこともあって元気一杯という様子を見せている。

 しかし、車の速度でも遥か前方を走るピカチュウとの距離は縮まらず、相変わらず光が移動しているようにしか見えなかった。

 

「もっとスピード、出ないんですか!?」

「これでも精一杯なんだ!」

「信じられないスピードだね。ピカチュウは……これもメテオナイトのパワーのせいなのかな?」

「メテオナイト!?」

 

 デントが口にする初めて聞く名称にサトシが首を傾げると、アララギは携帯端末を操作して何やら情報を検索しつつその問いに答える。

 

「ロケット団は、発掘した隕石をそう呼んでいたわ」

「隕石……ピカチュウがああなったのは、隕石の力なのか!」

 

 サトシが驚いたように状況を確認する中、アララギは携帯端末で情報を見ながら、メテオナイトの反応とピカチュウの位置が一直線になっていることに気が付いた。

 

「ピカチュウはメテオナイトを追っていると考えられるわね」

「そういえば、メテオナイトを奪った奴らの方に走り出したような……」

 

 アイリスもまた、ピカチュウがプラズマ団のヘリを見て走り出したことを思い出した様子を見せる。メテオナイトが関係していることに間違いないと見て良さそうだった。

 

「これを見てくれる?」

 

 改めて、アララギがメテオナイトについて調べたことを携帯端末に表示していく。そこには、画像と共に細やかな文字がびっしりと並んでいた。

 画像は古代の城とおぼしき巨大建造物と、その上で太陽のように光るメテオナイトだ。アララギは端末を見ながら、サトシ達もわかりやすいように説明していく。

 

「シッポウ博物館のデータベースによれば、私達が落ちたあの遺跡は『古代の城』と呼ばれる超古代技術の一部だったようね。メテオナイトは、古代の城を照らす太陽だったのよ」

「太陽!? あれが!?」

「超古代人はメテオナイトのコントロールに成功していたの。この辺り一帯は火山の暴走で長い間、太陽が覆われていたとされていて、その時人々を救ったのがメテオナイトなのね」

 

 アララギの説明を聞いて、ぽかんと口を開けているサトシ達。それだけ、アララギの話したメテオナイトというものは想像を超えていた。

 人類を救った超古代技術の太陽――と、いきなり言われても理解が及ばないが、実際にあのメテオナイトが凄いパワーを持っているのは見ているので全てが理解できない訳じゃない。ただ、スケールが大きすぎて実感がわかないというのが正解だった。

 

「おそらくロケット団は、当時の技術を現代の科学で蘇らせようとしているんだろうな」

 

 実際、メテオナイトを制御できる当てがあるからこそ、ロケット団は動き出したのだとハンサムは推測する。

 

「ハンサムさんが追っている組織も?」

「いや……私の任務は彼らの実体を明らかにすることでね。何を狙って暗躍しているのか、今一つ掴めないんだ……」

 

 デントの問いに、ハンサムは首を横に振った。しかし、裏で様々な事件を起こしている以上、何か目的があると言うことだけは間違いない。

 

「メテオナイトを横取りしたってことは、ロケット団と同じ目的かな?」

「どうだろう? そもそもロケット団が何をする気だったのかもよくわからないし」

 

 と、アイリスとサトシが話すのを聞きながら、アララギは端末からアクセスしたデータベースをスクロールしていた。そして、とある情報に目を止める。

 

「……気になる情報があるわね。データベースによれば、古代の城は、一夜にして滅亡したとされているわ」

「それって、メテオナイトが原因なんですか……?」

「間違いないわね。光と共に消え去ったということよ」

 

 サトシの疑問に即座に肯定を返すアララギ。

 

 それはつまり、メテオナイトのエネルギーというのは、とてつもなく危険な代物であり、このまま放置すれば何が起こるかわからないと言うことでもあった。

 メテオナイトが凄い力を持っているということはサトシ達も薄々わかってはいたが、それは古代の城を一夜で滅ぼすレベルだとは思わなかったようで、ゴクリ――と、緊張で唾を飲み込んでいる。益々、このまま放置しておく訳にはいかなくなった。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 一方、プラズマ団の輸送ヘリを追っているサカキのVTOL機だが、敢えて輸送ヘリから少し距離を取って後を追っていた。

 プラズマ団がどこにいるかはメテオナイトのエネルギーで手に取るようにわかる。故に、向こうを警戒させないために敢えて距離を取っているのだ。

 

 そんな中、ゼーゲルは、システム上のモニターに、点滅するメテオナイトの反応が、ある一角に停止したのを確認した。

 

「目的地に着いたようだ」

 

 そう言ってキーを操作すると、座標からウインドウが開き、近くのマップが表示される。

 リゾートデザートとヒウンシティの間にある岩石地帯には、打ち捨てられた飛行場跡があった。プラズマ団の輸送ヘリはそこに着陸したらしい。

 

「飛行場だな……20年前に閉鎖され、打ち捨てられたものだが――」

 

 と、ゼーゲルは言葉を止めてウインドウを睨みつける。ウインドウには、明滅と共に想定を超える数値がスクロールしていた。

 

 それを見て、コジロウがゼーゲルに声をかける。

 

「どうした?」

「メテオナイトのエネルギー反応が上昇している。暴走する可能性があるぞ!」

 

 慌てたような声を出すゼーゲルに対し、サカキは黙ったまま視線を向ける。

 

 元々、メテオナイトは扱いが難しいとされていたものだった。それでもあの莫大なエネルギーは、ロケット団の目的を叶えるために利用できるからこそ危険を覚悟で手を出した――が、たかだか数十分目を離しただけで暴走するというのは、思った以上に扱いに難があると言わざるを得ない。

 

 このまま回収して暴走を抑えられればいいが、もしもこのまま暴走するのであれば最悪の可能性を考慮せざるを得ない――と、サカキは思考していた。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 巨大なハンガーのある滑走路に、プラズマ団の輸送ヘリが着陸する。同時に、ハンガーから大型輸送機が出てきた。

 その前に、制服を纏ったプラズマ団の偉い人物と思われる人物が待機している。頭巾から口元には、インカムのマイクが突き出していた。どうやら、彼がこの部隊を率いている部隊長ということだろう。

 

 輸送ヘリから降りた団員3名とパイロットを、部隊長が迎え入れる。団員達も、部隊長の前で黒服を脱ぐと同じような制服姿となった。違いは、指揮をするためのインカムがあるかないかくらいである。

 

 輸送ヘリのコンテナを開けると、異常な発光状態のメテオナイトが現れた。ロケット団のホテルに潜入していた団員達は困惑して事情を説明し、部隊長も渋面になっている。しかし、コンテナ内のメテオナイトは、そんな動揺に関係なく凄まじい光と熱を放っていた。

 

「これがメテオナイトか……しかし、何故こんなにも光っている?」

「原因は不明ですが、エネルギーを放出し続けているのです」

「ふむ……」

「正直に申しまして……このまま、本部に運び込んでよいものかどうか」

「そうだな。ゲーチス様のご判断を仰ぐほかないか」

 

 その時、通信のピープ音が鳴り、部隊長がインカムで対応する。

 

「なんだ?」

 

 連絡してきたのは操縦席で待機していたパイロットだった。モニターの反応を見て即座に通信したようで、慌てたように「飛行物体が接近中です!」と声を上げる。

 

「飛行物体だと……!?」

 

 報告を聞き、空を見上げる部隊長――同時に、サカキのVTOL機が急速に上空を通過していった。

 

 通過直後、三つの光が機体から放たれる。

 

「むっ……!?」

 

 さらにその光から、高速で“何か”が放たれた。急速に降下してきたのはコロモリ――『エアスラッシュ』を発射し、プラズマ団員の足元に直撃させ、爆発を誘発させて相手を怯ませる。

 続いて降下してきたのは三つの光は、ムサシと隕石探査装置のケースを掲げたコジロウ、そしてニャースだった。3人とも、ジェットパックを背負って降下している。

 

「ロケット団か!」

 

 ロケット団は、降下するとコロモリと共にメテオナイトの側に立った。

 

「メテオナイトを返して貰おうか!」

 

 ムサシがそう声を出すと、プラズマ団員の一人がモンスターボールを投げてレパルダスを出す。

 

「レパルダス、『はかいこうせん』!」

「コロモリ、『エアスラッシュ』!」

 

 レパルダスの『はかいこうせん』とコロモリの『エアスラッシュ』が激突し、大爆発と共に閃光が発生した。

 

「ここは引き受けます。早くゲーチス様に連絡を!」

「よし!」

 

 部隊長は急いで、ゲーチスという人物に連絡を取る。すると、「メテオナイトに何が起きているのか、見極めよ」という指示が送られてきた。

 

 この時点で、プラズマ団にもまた撤退の二文字はなくなる――覚悟を決めてロケット団と向かい合う。しかし、その瞬間、輸送ヘリが凄まじい閃光に包まれた。

 

「これは!?」

「なんだ!」

「ニャ!?」

「「「「ぐぅっ!?」」」」

 

 輸送ヘリが閃光と共に融解し始め、滑走路一帯に異常なまでの放熱による陽炎が昇り始めた。ロケット団もプラズマ団達も愕然としている。

 

 そんな中、サカキのVTOL機はメテオナイトが閃光を放つ廃滑走路から遠く離れて滞空していた。ゼーゲルは変化するモニター上の数値に息を飲む。

 

 そして、慌てたような様子で――

 

「シッポウの隕石のパワーをメテオナイトに照射するのだ。エネルギー同士が中和され、暴走を抑えることが出来るかもしれん。このままでは古代の城の二の舞になるぞ!」

 

 ――と、指示を出した。

 

 装置を持っているコジロウもまた、メテオナイトが異常だというのは感じ取っていたため、「了解!」と言葉少なく持参したケースを開く。その中には隕石探査装置が入っていた。

 

 それと同時に、プラズマ団の輸送ヘリが激しく閃光を発しながらドロドロに融解していく。

 

「な、なんてことニャ……!」

 

 ニャースが思わずと言った様子で声を漏らした。プラズマ団のパイロットは何とか逃げたようだが、それでももはや人が近づけないレベルの温度を発しているのがわかる。

 

 輸送ヘリが完全に融解すると、その中からメテオナイトが浮上してきた。そのまま、地上十数メートルで滑空し、光と熱を放ちながらゆっくりと回転する。

 

 同時に、放熱のようなものがブワッ――と、リゾートデザート全体に拡散していく。その後も一定間隔で、呼吸するかのように何度も熱波が拡散していった。熱波には、時折バリバリとスパークのようなものが発生している。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 頬を放電させながらピカチュウが疾走する。その後を、ハンサムが運転するサンドバギーが追っていた。

 しかし、砂を蹴立てて走るピカチュウに、廃棄された飛行場から拡散するメテオナイトの熱波が浴びせかけられる。

 

「ピカ!?」

 

 思わず、足を止めるピカチュウ。放熱はそのまま彼方のヒウンシティへと伸びていく。

 走るサンドバギーで、携帯端末を見ていたアララギもまたその情報を見て絶句していた。

 

「なんなのこれ……!? エネルギーが加速度的に高まってる!」

 

 アララギの携帯端末にはイッシュ地方のマップが表示されており、ウインドウにはエネルギー拡散範囲が刻々と広がっているのが見える。

 

「衛星からのデータでは、今のエネルギーはヒウンシティまで達しているわ」

 

 その拡散範囲は、リゾートデザートからヒウンシティを覆いつつあった。

 

「ヒウンシティに!?」

 

 サトシが心配そうな声を上げる。セントラルエリアで保護しているフシデ達は勿論、アーティ達もまたヒウンシティにいるのだ。

 しかし、何も出来ないサトシはただ不安そうな表情を浮かべるしかない。アララギもこの状況を何とか出来ないかと、端末を操作して情報を集めようとするが、すぐに眉間に皺を寄せて画面を凝視してしまった。

 

「……大変だわ」

「どうしたんです、博士!?」

 

 サトシの疑問の声に、難しい顔をしてアララギが顔を上げる。

 

「……古代の城が一夜にして滅んだその日が、ここに再現されるかもしれない」

「「「えっ……!?」」」

「このエネルギーは、メテオナイトが放出しているものよ。このまま放出が続けば、何もかも消し飛んでしまう!」

「何もかも!?」

「吹き飛ぶぅ!?」

「被害の範囲は!?」

 

 デントの疑問に、アララギは自分が見ていた端末のウインドウを見えるように向けた。

明滅するメテオナイトを中心に、ヒウンシティを含む被害範囲が円状に広がっているのが見える。

 

「このリゾートデザートは勿論、ヒウンシティに至るまで、この辺り一帯全てよ!」

「「「ええっ!?」」」

「ロケット団め、とんでもないものを見つけてくれたものだ!」

 

 と、ハンサムが文句を口にするが、実際の所はロケット団というよりもプラズマ団のせいだった。

少なくとも、ロケット団が管理していた段階では、メテオナイトは暴走していなかった――勿論、未来永劫そのまま管理できるかどうかまではわからないが、少なくとも現状を引き起こしたのはどちらかというとプラズマ団の仕業である。

 

しかし、そんなことはサトシ達にしてみれば関係なかった。ロケット団もプラズマ団も、悪の組織ということで、悪いことは全て彼らのせいである。

 

「ジュンサーさんにも連絡を!」

 

 サトシがそう声を上げるが、仮にジュンサーがここに来ても問題が解決する訳ではない。

 デントはこの場で一番メテオナイトの知識を持っているであろうアララギに、「博士、どうします!?」と声をかける。

 

「研究者としてはジレンマだけど、こうなってはメテオナイトを破壊する他ないわ!」

「でも、どうやって!? 街一つ吹っ飛んじゃうエネルギーなのに!?」

 

 アイリスが悲鳴のようにそう声を上げるが、アララギはまだ諦めてはいなかった。

 

「……希望はあるわ」

 

 そう言って、アララギが見せた端末には、ピカチュウの現在のエネルギーが表示されている。

 そのパワーは、この先にあるであろうメテオナイト本体にも負けないパワーを示しており、メテオナイトに共鳴するかのようにチカチカと明滅していた。

 

 同時に、サトシ達もアララギの言葉の意図を察する。つまり、同質のエネルギーをぶつけて対消滅させようというのがアララギのメテオナイト破壊計画だった。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 一方、廃棄された飛行場では、エネルギーを放射してメテオナイトが宙に浮いていた。

 その下では、ロケット団とプラズマ団が、ほぼ互角の戦いを繰り広げている。

コロモリの『エアスラッシュ』をかいくぐり、レパルダスがジャンプにて爪の一撃を浴びせようとしていた。コロモリもまた、素早く上昇して攻撃を躱していく。

 

「コジロウ! 急いで!」

「おう! 準備完了だ!」

 

 ムサシがもう限界が近いと声を上げると同時に、コジロウがメテオナイトに向けて隕石探査装置を構える。

 妨害に動こうとするプラズマ団員達だったが、ニャースが回り込み、爪を出して威嚇することで動きを止めていた。

 

「出力最大! 発射!」

 

 装置内の隕石が光ると同時に、コジロウがトリガーを引く。

 

 装置内の隕石が輝き、ビームがメテオナイトを直撃する。それを見て、プラズマ団員達も驚いた。バリバリバリ――と、スパークが起こり、光が一旦収束する。

 

「む!?」

「やったニャ!」

 

 プラズマ団の部隊長がメテオナイトの変化に驚く中、ニャースが成功を喜ぶ声を上げた。

 

 そんな廃飛行場の状況を、サカキのVTOL機に乗ったフリントやゼーゲルもモニターで確認しており、安定した反応を見せるメテオナイトに安心した様子を見せる。

 

「制御に成功したか」

「うむ、読み通りだ!」

 

 喜ぶフリントやゼーゲルだが、サカキだけは黙ったままモニターを見つめていた。その表情から思考は読み取れないが、少なくとも喜んでいるようには見えない。

 

 そんなサカキの内心を読みとったかのように、収束したメテオナイトの表面が、うねうねとエネルギーの胎動を見せる。

 固唾を飲んで見守る現場のロケット団3人組だったが、バチバチ――と、表面に花火が散った。同時に、探査装置内の隕石も同じような花火を飛ばす。

 

「なんだ!?」

 

 コジロウの疑問と同時に、メテオナイトがぶわっ――と、強烈なエネルギーを再び放出した。その圧力に、ロケット団もプラズマ団も堪らず吹き飛ばされる。

 

「おおおっ!?」

「うあぁっ!?」

「ぐぅっ!?」

「な、なんニャー!?」

「これは――うわっ!?」

 

 さらには、コジロウが抱えていた探査装置までもが爆発し、コジロウ自身も吹き飛ばされた。破壊された装置から隕石が落ちて転がっていく。

 

 サカキのVTOL機に内にいたゼーゲルは、モニターの反応を見て肩を落とした。

 

「メテオナイトの力は想定をはるかに超えている……もはや制御は不可能だ」

「他に手はないのか!」

 

 フリントの疑問に対し、ゼーゲルは黙ったまま首を横に振る。それ見て、それまでずっと黙っていたサカキが静かに考えを口にした。

 

「決断する必要があるな」

「まさか、メテオナイトを……」

「ボス。イッシュ地方制圧には必要なものです!」

「コントロールが出来ないのならば、もはや夢のエネルギーにはなりえない」

 

 フリントの進言を一蹴して、サカキはそう断言した。

 メテオナイトが暴走の兆しを見せ始めた段階で、すでにサカキの中ではメテオナイトを廃棄することを考慮していたのだろう。

 勿論、サカキの中にもメテオナイトを惜しむ心がない訳ではない。だからこそ、ムサシ・コジロウ・ニャースの3人を廃飛行場に送り込んだのだし、ゼーゲルの言葉を信じてメテオナイトを制御するまでは様子を見ていた。

 

 しかし、これ以上はメリットよりもデメリットよりの方が強い。そう判断せざるを得ないだろう。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 ムサシ・コジロウ・ニャースの3人は、何やら妙な気配を感じてハッとその場を振り返った。そこには彼方から猛然と突っ込んでくるピカチュウの姿が見える。

 

「ピカチュウ!? にゃんでここに!?」

「近づけるな! 『はかいこうせん』!」

「『エアスラッシュ』!」

 

 敵だと判断したプラズマ団員がレパルダスに『はかいこうせん』を指示し、それに同調したムサシもコロモリへ『エアスラッシュ』をピカチュウに向けて放つように指示を飛ばすが、ピカチュウは素早く飛び跳ねてそれらの攻撃を躱す。

 

 しかし、レパルダスとコロモリに威嚇され、ピカチュウはメテオナイトに近づくことが出来なかった。

 

「なんだ、このポケモンは……」

「あいつのあの光は!?」

 

 プラズマ団の部隊長はいきなり乱入してきたピカチュウに困惑したような声を出す。

 対するムサシは、見知ったピカチュウがいつもと違う様子であることに驚いていた。そんな中、インカムを通じてゼーゲル博士の声が聞こえてくる。

 

『ピカチュウからメテオナイトと同質のエネルギーを感知した!』

「同質の……?」

 

 コジロウがそう呟きながらピカチュウの方を見ると、ピカチュウがバリバリと全身から放電を繰り返していた。

 

 そこに、ハンサムのサンドバギーも到着する。

 

「ピカチュウーッ!」

 

 サンドバギーから飛び降りるサトシ達。

 

「にゃっ! シンオウにいた国際警察のやつニャ!?」

 

 前にシンオウ地方で知り合った国際警察のハンサムの姿を見て、ロケット団も少し距離を取る。自ずと、サトシ達、プラズマ団、ロケット団と三角の形になり、三者の中心でメテオナイトが浮かんでいた。

 

 ピカチュウは、頬袋をバリバリと放電させながらメテオナイトを見て、あれは危険なものだと訴えている。

 

「ピカチュウ、お前もメテオナイトを破壊しに来たんだな!?」

「ピカ!」

「やっぱり! メテオナイトのパワーと同調してしまったピカチュウは、この危機をいち早くに察知していたのね」

 

 アララギが予想通りと言わんばかりに頷く。メテオナイトを何とか出来るのは、もはやピカチュウただ一人だった。

 

「ようし、やろうぜピカチュウ! 今のお前なら、メテオナイトを壊せる! 『アイアンテール』だ!」

「ピッカァ!」

 

 ピカチュウは、バリバリと放電しながらメテオナイトへとジャンプした。

 

 ギラリ――と、ピカチュウの尻尾が変化し、アイアンテールの体勢に入る。

 

「何するニャー!」

「コロモリ! 『かぜおこし』!」

 

 しかし、ロケット団も黙ってみていなかった。ニャースが悲鳴のような声を上げる中、ムサシが慌ててコロモリに指示して突風を巻き起こさせ、ピカチュウが空中でバランスを崩して弾き返される。

 そこに、レパルダスが追撃の『はかいこうせん』を撃ってきたが、ピカチュウも何とか身を反らして攻撃を躱した。

 

「くっ……こいつら……!」

「ピカ……!」

 

 流石のピカチュウも、こうも邪魔をされてはメテオナイトを攻撃できない。

 

「邪魔だてしないで貰おうか」

 

 プラズマ団の部隊長もまた、威嚇するようにそう声を上げた。

 三つ巴の中、メテオナイトの熱波が、じわじわと滑走路に亀裂を走らせていく。

 

「っ……!」

 

 そんな中、アララギもまた、携帯端末に記された情報を見て焦りを見せていた。

 それは少し前にメテオナイトから放たれた熱波が遅れて街を襲い始めたというもの――ガラスは割れ建物にも亀裂が入り、待ちゆく人々は不安そうな表情を浮かべているらしい。

 

「急がないと……」

 

 だが、サトシとピカチュウが奮戦するも、ロケット団とプラズマ団の妨害のせいで動けずにいた。

 放たれた熱波を始め、上昇し続けるメテオナイトのエネルギーに、廃飛行場にいた者達は危機感を募らせ自然と後退していく。

 

 しかし、当のメテオナイトは上空で滞空したまま、ずっと回転を続けていた。

 

「ピカチュウ! 『10まんボルト』!」

「ピーカ、チューッ!!」

 

 ピカチュウがメテオナイトに向けて大放電を放つ。

 

「『エアスラッシュ』!」

 

 しかし、コロモリの『エアスラッシュ』がピカチュウの『10まんボルト』を阻んだ。

 

「やめろ、ロケット団! このままじゃ、ヒウンシティが消滅するかもしれないんだ!」

「ハッ! やめろと言われて簡単にやめるなら、この世に警察なんかいらないのよ!」

 

 ムサシは子供の戯言――と、気にした様子を見せないが、サトシのことを知らないプラズマ団の部隊長は冷静に状況を見守っていた。

 

「消滅だと……?」

 

 しかし、そんなプラズマ団の部隊長の背後に、ハンサムがいつ間にか忍び寄っている。

 レパルダスがハッと我に返るより先に、ハンサムは部隊長の背後から腕をねじり上げた。

 

「貴様っ!?」

 

 部隊長に手を出され、プラズマ団員3名とレパルダスが、ハンサムを牽制するように包囲する。だが、部隊長を確保したハンサムは余裕の表情を見せつけていた。

 

「おっと、動かないでもらおうか。イッシュ地方全滅は、君達にとっても困るのではないかな……? プラズマ団!」

 

 部隊長と団員3名は、ハンサムに存在を名指しされて不敵な笑みを浮かべる。

 

 そして、遠く離れたVTOL機に乗っているサカキは、現場から聞こえるその音声を聞いて不敵な笑みを浮かべた。ようやく欲しかったものが手に入ったそんな表情だ。

 

「プラズマ団か……」

 

 サカキはそう呟くと、インカムに向かって――

 

「作戦は中止だ」

 

 ――現場の3名に帰還命令を出した。

 

 現場にいるムサシ・コジロウ・ニャースの3人は、サカキからの通信にギョッと顔を見合わせる。

 

「中止!?」

「ここまでか」

「メテオナイトを放棄するにゃんて……!」

 

 悔しそうな表情を浮かべる3人に、サカキは続けて指示を出す。

 

『イッシュ地方制圧計画は見直しを計る。お前達はこの地方での活動を続けろ』

「「「はっ!」」」

 

 サカキの命令は絶対――この時点で、ロケット団は撤収の準備を始める。

 

 一方、ハンサムと部隊長もまた緊迫した状態が続いていた。部隊長を確保したものの、ハンサムはプラズマ団員3名とレパルダスに囲まれている。サトシ達はハンサムを援護するように、プラズマ団の近くに寄っていった。

 

「このメテオナイトは、プラズマ団の野望に役立つと言えるのかな?」

「我らは英雄を待っている。野望などという下賤な言葉で、我らを理解した気にならないで頂きたい」

「うわー、なんかあの喋り方やだ」

「英雄……?」

 

 アイリスが鳥肌が立つと言わんばかり仕草を見せ、サトシが首を傾げる中、周囲を舞っていたコロモリがモンスターボールに回収される。ハッと振り返るサトシ達だったが、ロケット団3人組は既にジェットパックを噴射させて急上昇していた。

 

「ロケット団が!」

「逃げちゃうー!」

「メテオナイトを見捨てるのか! お前達が発掘したんだぞ!」

 

 サトシ、アイリス、デントがそう声を上げるが、ロケット団は黙ってこの場を脱出していく。

 

「構うな、サトシ君! ピカチュウ、今だ、メテオナイトを! 他に手はない!」

 

 ロケット団が居なくなり、プラズマ団の動きを止めている今こそが唯一のチャンスだった。サトシとピカチュウもまた、ハンサムの言葉に頷いてメテオナイトに向き直る。

 

「はい! ピカチュウ、頼む! メテオナイトを壊せるのはお前だけだ!」

「ピカ!」

 

 サトシとピカチュウがいざメテオナイトに攻撃を仕掛けようとしたその瞬間――プラズマ団の部隊長が耳に仕込んだ受信機にピープ音が鳴る。

 

「む……」

 

 ハンサムも音は聞こえないが、何か通信が入ったのであろうことは理解した。絶対に離さない――と、部隊長を掴む力を強くする。

 対するプラズマ団の部隊長の受信機には、「もうよい。帰還せよ。メテオナイトは、英雄を称えるための器にあらず」という新たな指示が届いていた。

 

 そんな中、ピカチュウは、尻尾にパワーを集約し始めた。そのあまりのパワーに、対峙するレパルダスも驚いている。

 

「『エレキボール』だ!」

 

 ピカチュウの尻尾のパワーの増大に、巨大なエネルギー球が発生し始めていた。

 

 アララギは情報端末を見ながら、「凄い……! あの『エレキボール』に、物凄い量のエネルギーが集約されてる!」と、驚愕の表情を見せる。事実、メテオナイトの力を宿したピカチュウの力はこれまでとは比べ物にならないくらい大きなものとなっていた。

 

「跳べ、ピカチュウ! 全パワーをメテオナイトにぶつけろ!」

 

 ピカチュウは、レパルダスを飛び越えてジャンプする。

 

「……!」

 

 プラズマ団の部隊長や団員達も、険しい顔でピカチュウを見上げた。

 上昇し、遠ざかるロケット団の3人もまた、凄まじい放電のピカチュウに目を見張る。

 

「これほどのパワーとは!」

「メテオナイトをモノともしないニャ!」

「やはり、あのピカチュウはタダモノじゃない!」

 

 改めて、自分達が狙っていた相手が特別なピカチュウだと確信した様子を見せる。

 今まで自分達がピカチュウを狙っていたのは間違いではなかった――ロケット団の今までのことが全て肯定された瞬間でもあった。

 

「いけ! 『エレキボール』!」

「ピッカァ!」

 

 地上では、サトシの掛け声とともに、ピカチュウが尻尾に強烈なパワーを集約して『エレキボール』を放つ。もはや、邪魔者は誰もおらず、ピカチュウが放った『エレキボール』がメテオナイトを直撃した。

 

 同時に、パキィィィン――と、音が鳴り、メテオナイトがバリバリと凄まじいスパークに包まれながら、遥か上空に吹き飛んでいく。その衝撃波が巻き起こす突風が、サトシ達をなぶった。

 

 ムサシ、コジロウ、ニャースもまた、その突風に煽られ、夜空に消えていく。

 

 サトシ達が衝撃から身を守っていると、ピカチュウも地面に着地した。ハンサムもプラズマ団も倒れている。遥か上空へと消えたメテオナイトは、一際強烈な閃光を発し――遂に爆発した。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 遠く離れたVTOL機の暗い機内に灯るモニターを通して、サカキは爆発の反応をジッと見つめていた。

 同時に、フリントが「メテオナイトの反応、消滅」と報告し、サカキはようやくといった感じでシートに深く身を預ける。

 

「プラズマ団、ようやく姿を見せたか。実に大きな収穫だった。これから奴らの成すであろうことを、じっくりと見させて貰うとしようか……」

 

 メテオナイトを失ったが、代わりに手に入ったものもあった――サカキがそう呟くと、VTOL機が飛び去っていく。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 メテオナイトが爆発した瞬間、光と衝撃波が地上に降り注ぎ、サトシ達は滑走路を転倒して吹っ飛ばされる。エネルギーの奔流はまた上空へと戻っていって、ようやく消滅した。

 滑走路を覆う粉塵。

 辺りを覆っていた粉塵が風に押し流されていくと、サトシ達以外には誰もいない。ハンガーにも、プラズマ団の大型輸送機が消えている。

 

「あっ……プラズマ団が居ない!」

「ピカ!」

「あの衝撃波の中、逃げたのか」

 

 流石のハンサムも、メテオナイトの爆発の衝撃の前では自分の身を守るので背一杯だった。その隙を突いて、プラズマ団は撤収したらしい。

 

 気が付けば、ピカチュウは普通の姿に戻っていた。

 

「おおっ、元に戻ったな、ピカチュウ!」

「ちゃあ~!」

 

 サトシはピカチュウを抱き上げる。ピカチュウも嬉しそうに頬を擦りつけていた。

 

「一安心ね……」

 

 アララギも本心からホッとしている。もし、このままピカチュウがメテオナイトのエネルギーを体内に秘めたままだったら、第二のメテオナイトになってもおかしくなかった。

 しかし、メテオナイトと同時に、ピカチュウの体内の力も消えたのであれば、それは世界にとっても一安心といえる。心底ホッとした様子で、サトシとピカチュウを見ていた。

 

「はーっ、一時はどうなることかと……」

「こっちの命が縮んだよぉ……」

 

 間違いなく、今までの旅の中で一番大きな事件を無事に解決できたということで、デントとアイリスが疲れてへたり込んでいる。

 

「キバ!」

「あれ? それ何……?」

 

 そんな中、アイリスのキバゴが落ちていたシッポウ博物館の隕石を拾っていた。

 キバゴが自慢気に見せてくる隕石にアイリスが首を傾げていると、遅れて警察車両が大挙してやってくる。先頭のパトカーからは、ジュンサーが降りてきた。

 

「みんな! 無事なの!?」

「ジュンサーさん!」

 

 デントがジュンサーを見て笑みを見せ、ジュンサーはハンサムに駆け寄っていく。

 

「ロケット団とプラズマ団は!?」

「残念ながら、一歩及ばずでした」

 

 と、言いながらも、ハンサムはジュンサーにキラリと光るものを見せる。

 それはプラズマ団のエンブレムだった。部隊長と接触した時に、引きちぎって確保しておいたものである。

 これで一矢は報いた――というのが、ハンサム自身が思う今回の結果だった。しかし、今までずっと陰の世界に隠れていたプラズマ団の存在を表舞台に出せたというのは、大きな結果と言って良いだろう。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 メテオナイトの爆発で吹き飛ばされたムサシ、コジロウ、ニャースは、砂漠の真ん中に降り立ち、乾いた風の中で立ち尽くしていた。

 改めて、以後の行動について確認するために本部へと通信を試みるが、メテオナイトが爆発した影響か、それとも場所が良くないのか、通信は一向に繋がらず――3人は独自の判断を余儀なくされる。

 

「……ボスはニャー達に活動を続けろと言ったニャ」

「あたし達のそもそもの使命に立ち返る。それだけよ」

 

 自由にやっていいというのであれば、やることは今までと変わらなかった。ムサシの言葉に、他の二人も頷いている。

 

 そんな三人組の後ろを、デスマスがすーっと横移動していた。

 

「強いポケモン、珍しいポケモンを集めることが俺達の使命だ。そして今日、俺達は見た……メテオナイトさえ破壊する、あのピカチュウの強さをな!」

 

 コジロウがそう言いながら、何やら気配を感じたようにハッと振り返る――が、デスマスは既に消えていた。コジロウは不思議そうに首を傾げるが、何度見ても何かがいるようには見えない。

 

「……気のせいか?」

 

 

 

◇◆

 

 

 

 一方、サトシ達は警察のヘリでヒウンシティまで戻ってきていた。今はポケモンセンターで自身とポケモン達を休ませている。

 特にピカチュウは、メテオナイトのエネルギーを一時的にとはいえ身に宿していた。今の所、問題があるようには見えないが、一応本格的な検査を受けた方が良いというアララギの言葉に従って、今はピカチュウの検査が終わるのをじっと待っている。

 

 しばらくすると、首から何やらケースを下げたアララギ博士とジョーイが現れ、タブンネが押すストレッチャーの上でピカチュウも姿を見せる。それを見て、サトシ達が駆け寄ってきた。

 

「どうですか、ピカチュウは!?」

「大丈夫、心配ないわ。もうメテオナイトの影響もなくなってる」

「良かったな、ピカチュウ」

「ピカ!」

 

 アララギが太鼓判を押すのを聞いてサトシもホッとした様子を見せる。ピカチュウもまた嬉しそうにサトシに抱き着いていた。

 

「それじゃ、私はこれをシッポウ博物館に届けるわね」

 

 アララギが隕石を入れたケースをサトシ達に見せる。

 

「あの石、やっぱりシッポウ博物館の隕石だったんですね」

「お手柄だったね、キバゴ」

「キバ!」

「アロエさんによろしく」

 

 と、デント、アイリス、キバゴ、サトシが声を出す中、隕石の話になってアララギが苦笑いを浮かべた。

 

「さっき連絡したら、全然気づいてなかったって」

「えーっ、館長さんなのに……」

 

 デントもまた苦笑いを浮かべ、サトシとアイリスもその適当さに少し呆れた様子を見せる。

 

「でも、勿体なかったよねぇ。ピカチュウにあのパワーがあったら、これからのバトル楽勝でしょ?」

「だめだめ、バトルは自分達の力で勝たなきゃ!」

「ピカ!」

 

 トレーナーとしてのこだわりを見せるサトシに、アイリスが「えーっ、ほんとにぃ?」と疑う様子を見せた。

 とはいえ、サトシはお調子者ではあるがズルを喜ぶタイプではない。アイリスも揶揄っただけで、本気でサトシがメテオナイトの力を求めるとは思っていなかった。

 

 そんな二人のやり取りを聞きながら、デントもまた笑みを浮かべて会話に混ざっていく。

 

「そうそう、本来の力で挑まなきゃ、アーティさんもがっかりするよ」

「そうか、サトシ君はこれからヒウンジムに挑戦なのね。頑張って!」

「はい! 頑張ろうぜ、ピカチュウ!」

「ピカ!」

 

 アララギに応援され、笑顔でそれに応えるサトシとピカチュウ。

 

 メテオナイトを巡る大事件はこうして幕を閉じた――サトシとピカチュウは、これからヒウンジムに挑戦する。正々堂々、自分達の力を信じて。

 

 

 

 




・台本解読で困った点。

 前編の最後でサトシ君が捕まるのだが、その時にはロケット団の見張りが居たのに、後半の台本では見張りが居なくなっていた。ので、どうしていなくなったのかを独自解釈&追加加筆。

 台本では捕まっているサトシに対する言及が何もないため、流石に心配してやれよということで独自解釈&追加加筆。

 プラズマ団が来ることを予測しておきながら何故メテオナイトを奪わせたかの理由が皆無だったため、独自解釈&追加加筆。

 アララギの「希望はあるわ」のセリフの後、どうやって対策するのかの言及が皆無の為、独自解釈&追加加筆。

 サカキが台本だと殆ど喋らないため、メテオナイトについての扱いとかの内心は独自解釈&追加加筆。


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